突如として現れた謎のデジブレインを倒すため、帝久乃市の街に駆け付けた翔とアシュリィたち。
しかし、原因は不明だがアプリドライバーを始めとした変身ツールが使えなくなってしまい、怪人への対処ができなくなっていた。
そんな彼らの元に現れたのは、フェイクガンナーに似たアイテムであるトゥルースガンナーを使う四人組。
彼らを味方かと思った翔たちであったが、彼らの代表格である善来 識は、正体不明のデジブレインを操って翔の右肩を撃ち抜くのであった。
「オオオオオオッ!!」
そんな混乱の中で登場したのは、翔の兄である天坂 響。
修繕されたフェイクガンナー、リペアガンナーを使ってペイルライダーRとなった彼は、即座に四騎士へと立ち向かっていく。
「マヌケが! 四対一で勝てるワケないだろ!」
「おまけにそんな旧式の出来損ないシステムなんかでさあ!」
ホワイトライダーとレッドライダーが、同時にトゥルースガンナーを連射し、攻撃する。
砂煙が舞い上がり、二人は彼の倒れる姿が目に浮かぶようだとせせら笑う。
だが直後、ムカデを模した鋼鉄の鞭が砂塵を斬り裂き、白と赤の騎士の頬を打った。
《
「邪魔だ!!」
「ぐっ!?」
ペイルライダーRの持つデジブレインの封入されたマテリアプレート、武装化能力だ。
彼はそのまま自分の方に倒れ込もうとしているホワイトライダーを踏み台にし、ブラックライダーの頭上も飛び越え、ペイルライダーTに鞭を振るった。
「ほう……狙いは私か」
一目で自分をリーダーと見抜いた事に感心し、識は仮面の内でニヤリと笑う。
そして鞭が直撃する寸前、ペイルTはトゥルースガンナーを突き出して攻撃を防ぐ。
「だが、君では私を倒せないよ」
「なに……!?」
着地したペイルRは驚愕しつつも油断せず、背後から殴りかかろうとしているブラックライダーの攻撃を避け、ホワイトライダーの銃撃をキアノスサーベルで断ち斬り、レッドライダーの突進を足払いで妨げる。
「君は確かに優秀だ。これまで大きなスペック差がありながら果敢に敵へと立ち向かい、勝利を収めた。今も四人の包囲を前に一撃も食らわず立ち回っている……それは君自身の戦闘センス、才覚によるものだ。素直に称賛に値する」
ペイルTはそこまで言った後に「しかしながら」と付け加え、再びジャスティス・レギオンのマテリアプレートを手に取った。
「我々と君とでは差がある。四対一でも渡り合える怪物じみた才能を持つ君の上を行ける、決定的な差が」
「どういう意味だ……」
「君の持つフェイクガンナーは単なるデータ収集用で、このトゥルースガンナーの『不完全品』なのだよ。内部に組み込まれた、あるシステムが機能していないからね」
瞬間、ペイルRは理解する。
彼の言うシステムが、鷲我の言っていた『ブラックボックス』とするなら。
さらに、この善来 識がその秘密を知っているという事は――。
「まさか!!」
「そう、そのフェイクガンナーを作ったのは我々だ。あるべきパーツを廃し、あえて劣化させた紛い物……即ち
《
「偽りの死神である君にはできない事が、我々にはできる……このジャスティスウェポンモードがそうだ!」
先程と動揺、彼らの持つトゥルースガンナーが異なる武装に姿を変える。白い弓と赤い大剣、黒い鎚と灰色の瘴気に。
「
ペイルTの叫びと同時に、ホワイトライダーたちは一斉に仕掛けた。
それでもペイルRは冷静に動く。放たれた矢は飛んで避け、大剣はリペアガンナーで弾いて逸らす。
《
後ろから迫る天秤型の鎚に対しては、リペアガンナーから触手を伸ばして絡め、重い一撃を妨げる。
しかし、続くペイルTが右腕を自身の方にかざした瞬間、ペイルRの動きは止まってしまった。
「なん、だ……!? 身体の自由が、効かない……!?」
「終わりだ」
何かに縛られているかのように、手足の身動きが取れずにいるペイルR。
その間にペイルTを除く三騎士がトゥルースガンナーを元の形態に戻すと、グリップエンドを叩いて必殺技の態勢に移った。
《オーバードライブ!
銃口から放たれる、弓・大剣・鎚を持つ天使たち。
それらが無防備なペイルRへと殺到し、彼を吹き飛ばしてしまう。
「ぐぅっ!?」
変身が解除された響は、地面に放り出されて頭から血を流していた。
「ヘヘ……社長、こいつはもう用済みですよねェ? ブッ殺して良いですよねぇ!」
「クックックッ! これがあの天坂 響だと思うと笑いが止まらないなぁ」
さらに追撃をかけようと三人の騎士が迫る中、肉体を縛る何かが消失している事に気付いた響は、すぐに身を起こす。
そして振り返って翔たちが既に逃げ果せているのを確認してから、地面を撃って砂煙を巻き上げ、その場から去った。
「チッ! 野郎、逃げやがった!」
「アクイラのガキもいつの間にかいなくなってます!」
レッドライダーとホワイトライダーが報告し、四騎士はそれぞれ変身を解く。
「放っておきなさい。どの道、彼らには何もできませんよ。それより……逃した場合のプランを実行しましょう」
三人の男女はそれぞれ頷き、走り出す。
識は唇を釣り上げ、空を仰いで大きく両腕を広げた。
「正義は今、成就されるのだ……この私こそが正義となるのだ!」
※ ※ ※ ※ ※
真の死神を自称する四人組の猛攻から、命からがら逃げ延びた響。
彼はすぐにZ.E.U.Sグループの所有するビルへ足を運び、その地下に作られたホメオスタシスの研究施設へ逃れた。
すると、傷を負った彼を静間 鷹弘が出迎える。
「響! 無事だったか!」
「俺の事より翔は!? 大丈夫なんですか!?」
息を切らしつつ、響は鷹弘に問う。
だがその質問に答えたのは、同じく響を迎えに現れた、鷹弘の父・鷲我だった。
「意識はある。だが、かなり厄介な状況だ」
そう言いながら、鷲我は医務室にいる翔の方へ響を案内する。
室内には既にアシュリィとツキミとフィオレ、さらに話を聞いて駆け付けたらしい翠月がおり、ベッドの上で苦悶する翔へ必死に声をかけていた。
「検査の結果、彼の体内を未知のウィルスが侵蝕している事が分かった」
「ウィルス!?」
鷲我は自身の持つタブレット機器で、現在の状態を見せる。
身体に灰色の斑点のようなものが広がっており、ウィルスが翔の体内のリンクナーヴからカタルシスエナジーを無理矢理に発生させつつ、それを吸収してさらに活性化しているようであった。
このまま放置すればどんな悪影響が出るか分からない。そこで、翠月が疑問を口に出す。
「だが……翔くんはアクイラの力を持っている。これなら、彼自身の能力で除去できるのでは?」
「私もそう思っていたのだが……」
結果として、翔はその抵抗さえできないでいる。治療法も分からない。
奇妙な点はその他にもあった。なぜ、一緒にいたアシュリィや響たちには同じ症状が出ていないのか?
必死に頭を悩ませていると、室内のモニター映像が突然切り替わる。
そこに映し出された顔は――。
『ごきげんよう、ホメオスタシスの皆さん』
「善来 識!?」
『私からのささやかなプレゼント、
AAウィルス。その単語を聞いて、響はこの状況が識によってもたらされたものだと確信した。
『フフフ、安心したまえ。このウィルスが他人に感染する心配はない、アクイラの細胞に対抗するための力だからね。私の邪魔をしないのなら、用が済んだら治してあげよう』
「……あの妙な姿のデジブレインに仕込んでいたのか」
『その通り。今、その少年に動かれては困るんだよ。私の正義を為す事ができない』
識は苦しむ翔を眺めて、喉を鳴らして笑う。
その姿に響は目つきを鋭くするが、何事かを言う前に鷲我が口を開いた。
「まさか君とはな、善来くん」
『これはこれは静間さん、お久しぶりですね。最後に会ったのは……そう、あなたの会社から独立する時でしたか』
「目的は何だ? 何のために翔くんをこんな目に遭わせた。彼とは何の関わりもないだろう」
『いいえ。私はCytuberでしたので関係はありますとも』
あっさりと、しかし唇を釣り上げたまま識は自白した。
『我が社は久峰の一族とは別に、スペルビアPへ技術と人員を提供していたのですよ。他者の記憶を操作する面堂 元作から、天坂 響という最高の実験台も手に入れた! 結局は失敗しましたがそれも計算通り。何しろ、最初からCytuberは見限るつもりでいましたからね』
「だから不完全品のフェイクガンナーを響くんに持たせたのか」
『その通り。まぁ、あなた方がアクイラを倒したのは本当に計画外でしたよ。私は復活させずに終わらせるつもりでしたので』
識は愉快そうに笑いつつ、自らの指を組んで話を続ける。
『さて、私の目的の話でしたね? 簡単です。我が社がホメオスタシスに代わり、この世界を守る正義となること。その手始めとして、あなた方ホメオスタシスの即時撤退とライダーシステムの無償提供を要求致します』
直後に、ダァンッという机を叩く音が響く。
音のする方を見れば、鷹弘が真っ直ぐにモニターの向こうにいる識を睨みつけていた。
「ふざけてんのかテメェ……!!」
『いいえ、本気ですとも。というか、もう持っていても仕方ないでしょう? 変身できない民間人の皆さんでは』
「この状況を作ったのはそっちだろうが!!」
『何か証拠でも? まぁ断るというのなら構いません、その少年が死ぬだけですから』
再び識があっさりと言い放ち、アシュリィたちの表情が変わる。
「まさか……!!」
『ええ、AAウィルスの治療方法は私しか知りません。なので要求を呑んで頂けないのなら彼を見捨てる事になりますね、
「人質のつもりか!?」
『見捨てるかどうかを判断するのはあなた方です。というか、なんで生かしてるんです? アクイラの細胞の持ち主を。いつか、アクイラと同じ存在にならないとも限らないのに』
それが当然だろう、と呆気なく断言する識に一同は絶句し、その間に彼はさらに言葉を紡いだ。
『あなた方も正義を追い求める組織であるならば、時には非情な決断も必要でしょう。それとも彼が普通の人間と同じだとでも? 過度な期待は身を滅ぼしますよ』
「どの口が抜かす!!」
響の一喝がホメオスタシスの面々を我に返らせ、しかし識はその言葉を鼻で笑って受け流す。
そして、自身が最も優位な立ち場である事を強調するように、さらに要求を口に出した。
『まずはライダーシステム一式を我が社まで持って来て頂きましょう。受け渡しには、そうですねぇ……天坂 響くんを指名しましょう。本日の18時までにお越し下さい』
「ふざけんな! なんでそんな事まで勝手に――」
『逆らえば面堂 彩葉の生死は保証できません』
鋼作が要求を突っぱねようとした瞬間、識はそのような言葉を口走る。
先程とは逆に、今度は響が絶句した。
「なんだ、と……? 今、何を……」
『面堂 彩葉の身柄は既にこちらが確保しています。当然じゃないですか、相手にならないとは言えペイルライダーに変身できる君を野放しにするとでも?』
「……貴様!!」
『彼女も見殺しにしますか?』
識の表情から笑みが消え、何もかも凍らせるような視線が真っ直ぐに響へ突き刺さる。
響だけでなく、その場にいる全員が、何も答える事ができなかった。
『良い返事を期待していますよ』
その言葉を最後に、識は通信を切る。
全員、言葉を出せずにいた。自分たちがどうすれば良いのか決断できず、立ち尽くすばかりだった。
響以外は。
「響! 考えるまでもなく……これは罠だ、行くな!」
ホメオスタシスの面々から離れて、今にも走り出そうとしている響へ、鋼作が言う。
鷹弘も陽子も、琴奈もアシュリィたちも。鋼作と同じように、彼を引き留めようとしていた。
だが、響は首を左右に振る。
「俺は失うワケには行かないんです。たった一人の弟も、彩葉さんも。ウィルスの治療だって、ヤツがちゃんと約束を守るとは限らない。なら、全員打ちのめして力づくでやらせるしかないでしょう」
「でも……!」
「俺自身の命に代えても!! 必ずヤツらを倒して、家族を守る……守らなきゃいけないんです!!」
そう言って響は彼らに背を向け、一人でヴェーダ・エレクトロニクスへ向かうのであった。
※ ※ ※ ※ ※
一方、そのヴェーダ・エレクトロニクス本社である4階建てのビルの傍らにある倉庫にて。
白いパーカーの青年、
シューティングゲームで鼻歌交じりに操作し、スコアをどんどん稼いでいく。
だがその手が、突如としてピタリと止まる。
「来たか」
彼の視線の先には、リペアガンナーを手に倉庫へと向かって歩いて来る響の姿があった。
「ようやくお前とゆっくり話ができるな、天坂ァ……ずっと待ってたぜ、この日をよぉ!」
理楠はそう言いながら、詰め所を出て響の前に立ち塞がる。
「ま、どうせお前は俺を覚えてねぇだろ。俺の名は間藤 理楠、昔ゲームの世界大会でお前と試合を」
「偽装」
「へっ?」
《
間の抜けた声を上げたのも束の間、響は問答無用でペイルライダーRへと変身し、鍵のかかった門へ射撃した。
「はぅおおお!?」
「どこの誰か知らんが……邪魔をするな」
「て、テメェいきなりかよ!? 真装!!」
《
慌てながらも陸守は同じくホワイトライダーへ姿を変える。
さらに騒ぎを聞いて赤毛の軍服女、
「おいおいマジか? 人質の命が惜しくないワケ?」
「さ、崎守!! 早く助けろ、こいつマジで洒落になんねぇ!!」
「しょうがないねぇ。真装!」
《
レッドライダーに変身したアンは舌打ちしながら、銃口をペイルRに定める。
「余計な真似をするんじゃないよ、天坂 響。人質がどうなっ――」
だが怒気に満ちたペイルRは目にも留まらぬ速度で二人に接近し、そのままリペアガンナーとキアノスサーベルを顔面に叩きつけ、一撃で白と赤の騎士を地面にめり込ませた。
「げぉぶ!?」
「あぐ!?」
ペイルRの進軍は止まらず、彼は真っ直ぐに1番の倉庫に向かい、シャッターを蹴破って中に入る。
すると、中には侍のような風貌の異国の男、ケビン・マツオがいた。
さらに彼の隣には、猿轡をされて手足を縄で縛られて気絶している彩葉の姿もある。
「
人質の彩葉を起こさないよう静かに立ち上がり、トゥルースガンナーを手にケビンは言った。
「
尋ねると、響が答える代わりに二つのマシンが彼の背後から出てくる。
フォトビートルとレドームートン。これらの探査機能を利用し、到着する前に彩葉の居場所を割り出したのだ。
全てを察したケビンは、得心した様子で数度頷く。
「良かろう。ならば正々堂々、
「既に三対一の状況で、人質まで取っておきながらよくもそんな言葉をぬけぬけと吐けるな」
ペイルRはそう言って、背後から迫って来たレッドライダーとホワイトライダーの蹴りを前に跳躍して回避。
そのまま彩葉を横抱きにして救助し、窓を割って倉庫の外に飛び出した。
ケビンは彼の鮮やかな手並みに苦笑しつつも、唇を引き締め直してグリップエンドを叩く。
「
《
「
そんな掛け声を発し、ブラックライダーは他の二人と共に、本社に向かうペイルRを追走する。
「クソッ、響のヤツ勝手な事を……!」
時は遡り、響がZ.E.U.Sグループ所有のビルを出た直後のこと。
鷹弘たちはこの状況を打破すべく、会議室に集まって話し合おうとしていた。
だがいざ会議を始めようとしたその時、一人の青年が姿を見せる。
翔だ。意識を取り戻してすぐ、アシュリィと共に医務室を飛び出して来たのだ。
「お前大丈夫なのか!?」
「平気、です……それより、話は……大体、聞きました。一刻を争う状況みたいですね」
咳き込みながらも、話を続ける翔。
全員が彼を医務室へ戻そうとするが、続いて彼の口から出て来た言葉に、誰もが目を見張った。
「僕に……考えが、あります。上手く行けば……兄さんも義姉さんも、僕自身も……みんな助かる……!」