ホメオスタシスの装備を扱うための改造手術の志願を蹴った鷹弘は、同組織の科学者として活動していた。
いずれその武装を使うであろう、先輩の御種 文彦をサポートする立場として、デジブレインとの戦いに加わる事を決意したのだ。
準備は滞りなく進み、その時は訪れた。
文彦が、施術を受ける当日となったのだ。立ち会う事ができないとはいえ、鷹弘も陽子もその日を心待ちにしていた。
医務室に向かう文彦の背に、鷹弘は駆け寄って声をかける。
「先輩!」
「やぁ静間くん、来てくれたんだね」
「はい! どんな手術か知らないスけど、頑張って下さい!」
「あはは、大げさだなぁ。戦いに行くワケじゃないんだから、気楽に気楽に」
手術を受けない鷹弘がやや緊張して興奮気味なのに対し、手術を受ける張本人の文彦は落ち着き払って返答する。
そのあべこべな反応に、陽子はくすりと微笑んだ。
「それじゃ、行ってくるよ」
見送りに来た二人に対して手を振りながら、文彦は手術のため医務室へと向かうのであった。
「流石、先輩だな。どんな時でも落ち着いてる」
「そうだねぇ。戦闘部隊の隊長だけあるよ」
そんな風に鷹弘と話しているが、陽子はふと思い出したようにある質問を彼に投げかけた。
「結局、手術が必要な武装って何なんだろうね?」
「俺も何も聞かされてないんだ。近取さんに聞いてみたけど、当事者にしか教えられないとか言われてな」
「んー、そっかぁ。ちょっと興味あったんだけどなぁ」
「まぁ運用試験もするみたいだから、その時に分かるだろ」
話しながら二人は医務室から離れて行くが、その途中で再び陽子は鷹弘に話しかけた。
「鷲我会長、今日いないのね?」
「あぁ、Z.E.U.Sの方で重要な会議があってな。後で来るってよ」
その言葉を聞くと、首を傾げ、腕を組んで陽子が立ち止まった。
「どうしたんだよ」
「……それ、なんか変じゃない?」
意図がわからず、鷹弘は頬を指で掻く。
一体、陽子は何を言いたいのか。訊ねる前に陽子は自らの考えを口にした。
「だって、会長はホメオスタシスの責任者でもあるでしょ? だったら、大事な手術や実験に少しでも立ち合わないなんて……そんな事ある?」
「……確かに、近取さんの話じゃ今回の武装はデジブレインへの切り札になるって事だったが」
「でしょ? 会議も大事かも知れないけど、人類の未来がかかってる道具のテストにも同席しないっていうのは妙に引っかかるっていうか」
陽子の話を聞いている内に、鷹弘も違和感を持ち始めた。
何かがおかしい。そもそもこの手術の事や運用試験の話を、父は知っているのだろうか?
知らないのだとしたら、それは何故だ? 疑問が浮かびはするものの、氷解しない。
「親父に確かめて……いや、忙しいのにこんな用事で電話するのもな……」
鷹弘と陽子が悩んでいると、その二人の背後からある男が声をかけた。
「やぁやぁやぁ鷹弘くん、奇遇だねぇ!」
今回の改造手術の志願者を募集した張本人、近取 疾拓だ。鷹弘の姿を見かけて、ニコニコと笑いながら歩み寄って来る。
鷹弘と陽子は彼の顔を見て、頭を下げる。そして鷹弘は早速、先程の疑問をそのままぶつけてみた。
「近取さん、親父は何故手術と実験に立ち合ってないんです? 知ってるんじゃないんスか?」
すると、疾拓はビクッと身を震わせて、禿げた頭に脂汗を滲ませて目を逸らして口籠る。
挙動不審な彼に訝しむ鷹弘だが、何事かを訊ねる前に疾拓は先んじて返答した。
「勿論! 勿論会長も知っているとも! ただ知っての通り会長もお忙しい身なので、その役割を私に譲って下さったのだよ、今回はとても重要な会議で外せないそうだからねぇ!」
「ふーん、そういうもんなんスか」
「それよりもぉ~……そうだ! 君たちも実験に立ち合ってみないかね!? 志願を断ったとは言え、気になるだろう!?」
それを聞くと二人とも目を輝かせ、興味津々と言った様子で「良いんですか!?」と言った。
疾拓はうんうんと首肯し、実験のためのトレーニングルームへと案内する。
「ホメオスタシスのエージェントは皆、いずれアレを見る事になる。ならば遠慮する必要などないとも」
鷹弘と陽子は顔を見合わせ、頷き合う。そういう事なら断る理由はない。彼らとて未熟とは言え科学者なのだ、興味がないワケがない。
二人は疾拓と共にトレーニングルームの隣にあるモニタリングルームに移動し、その時が来るのを待った。
そして手術が終わってしばらく経つと、にこやかな表情の文彦が現れ、部屋の中央に移動する。
彼は手に二つの機械を持っていた。メタリックグレーのベルトのバックルのように見えるものと、N-フォンに似た同じくメタリックグレーのデバイスだ。
「さぁ、いよいよ始まるぞ。仮面ライダーへの変身実験が……」
疾拓が歓喜に満ちた表情で、実験開始の合図を出した。
それを受けて、トレーニングルームにいる文彦はバックルを腹に押し当てる。するとグレーカラーの帯が伸び、文彦の腹に巻き付いた。
「アレが我々人類の切り札、アプリドライバーとマテリアフォンだ。今はプロトタイプだが、実験を繰り返せば完成に至る!」
「アプリドライバーにマテリアフォン……」
興味深そうに鷹弘は観察している。あのベルトが、一体どうして切り札になり得るというのか。それが気になって仕方がないのだ。
聞くところによれば、あのベルトは感情エネルギーを精製して『カタルシスエナジー』という動力を生み出し、それを利用して戦うのだという。
改造手術はそのカタルシスエナジーを身体に行き渡らせるための疑似神経回路、『リンクナーヴ』を体内に形成するために必要なのだ。
実験は進む。続けて文彦は、アプリドライバーの左腰側に提げてある二枚のプレートの内の一枚を手に取った。形状はSDカードに酷似しているが、大きさが明らかに違う。アプリドライバーのバックル部の窪みに丁度収まりそうな、掌大のサイズだ。
それのスイッチを文彦が起動し、音声を鳴らした。
《アーキタイプ・マテリアル……
「よし、マテリアプレートの起動成功! 次は変身に移ります!」
言いながら、文彦は滑り込ませるようにプレートをアプリドライバーのバックルへと差し込んだ。
すると、今度はアプリドライバーの方から音声が発せられる。
《ビギニング・トゥ・ラン! ビギニング・トゥ・ラン!》
「……よし! 変身!」
文彦はそのまま、アプリドライバーのバックル部に向かってマテリアフォンを振りかざす。
すると。
《
「何っ!?」
その電子音を聞いて思わず疾拓が目を見開き、文彦もベルトに視線を落とした。
直後、室内に雷でも落ちたかのような爆音が轟くと同時に、文彦の全身に電流と激痛が駆け巡り、その体にダメージを与え始める。
「グアァッ!? ガ、ギアアアアアッ!?」
「おい、なんだ!? 何が起きている!?」
ざわめくモニタリングルーム。すると研究員のひとりが慌てた様子で「オーバーシュートです!」と報告を挙げた。
ある程度の危険性は承知していた疾拓は、それを聞いてすぐに、実験が失敗した場合に備えて用意していたマテリアプレートの緊急排出プログラムを実行した。
だが、発動しない。従来の想定を超えて発現された強大なカタルシスエナジーが、プログラムに支障をきたしてしまったのだ。
研究員たちが困惑する中、地面に倒れてなおも電流を受け続け、苦悶し暴れている文彦が叫ぶ。
「だ、誰か……ベルトを、マテリアプレートを外してくれぇっ!!」
「先輩!」
見ていられずに鷹弘はモニタリングルームを飛び出し、行動に移った。
そして危険を顧みる事なく文彦の方に猛ダッシュすると、アプリドライバーに装填されたマテリアプレートに手を伸ばす。
プレートからは火花が散っており、触れようとした鷹弘を電撃が襲おうとするが、それでも臆する事なくアプリドライバーを掴んだ。
「ぐうううっ!! オラァァァッ!!」
手に火傷を負いながらも鷹弘は力任せにプレートを外し、そのままの勢いで放り捨てた。
アプリドライバーの方は無傷だが、マテリアプレートは罅割れて完全に破損しており、修理が必要となるだろう。
そして、文彦は。
「が、あ……」
「先輩? ……先輩っ!?」
文彦の両脚はマテリアプレート以上に損傷が大きく、内側から焼き切れて焦げた骨が露出し、出血していた。
「そんな……!? オイ、誰か救急車呼べ! 早く!」
鷹弘の指示のまま、研究員たちは手早く病院への連絡と応急処置を行った。
※ ※ ※ ※ ※
「なんという事だ……」
その後、Z.E.U.Sビルの付近にある帝久乃市の病院にて。
報せを受けて駆けつけた静間 鷲我は、ベッドの上に横たわる文彦を見て、頭を抱えて息を吐く。
幸いにも処置が早かったので命に別状はないものの、文彦の脚はある程度元の形には戻っても、二度と動かなくなってしまった。
鷲我の隣で、鷹弘と陽子も沈痛な面持ちで彼の惨状を見ている。つい先程までは、鷲我に事のあらましを話していた。
そう、鷲我は最初から今回の手術と実験の事を聞かされていなかったのだ。全ては疾拓の独断専行であり、それを鷲我の耳に入れずに進めていたのだ。
「……俺のせいだ、俺のせいで……」
「鷹弘?」
「俺が……俺があの時に手術を蹴ってなかったら、先輩に道を譲ってなかったら、今頃こんな事には……」
「やめろ鷹弘、そんなに自分を責めるな。今回の落ち度は私にある、私が部下の動向を把握していれば彼をこんな目に遭わせる事もなかった。この責任は私が取る」
「親父、何を?」
鷲我は文彦の状態を、歯を食いしばりながら見据え、一度頷いた。
「私自身が手術の被験者となり最前線に立つ。ホメオスタシスの長としてできる事は、それしかあるまい」
「なっ、なんだと!?」
これには鷹弘も陽子も驚いて、二人して必死に鷲我を止める。
「考え直せよ! 今それで親父まで倒れたら、一体誰がホメオスタシスと会社を引っ張んだよ!」
「静間くんの言う通りです、落ち着いて下さい! 会長こそ自分を追い詰めすぎでしょう!?」
鷹弘と陽子の説得に鷲我は唸るが、しかしなおも思い悩む。
確かに、仮に自分が倒れれば他にZ.E.U.Sとホメオスタシスを牽引できる人間はいない。それに、自分は最前線で戦うには少々老いているし、訓練も積んでいない。となれば変身したところで、むしろ足を引っ張りかねないだろう。
では、どのようにして文彦に対して責任を負えば良いというのか。
「ひとまず、地下に戻ろう。今回の事について近取君から全て聞き出すべきだ」
「……そういやあの人どこに行った?」
鷹弘は言いながら陽子の顔を見る。陽子は首を横に振った。次に、鷲我の顔を見る。渋い顔をしているため、彼も知らないようだ。
そして鷹弘自身も心当たりなどない。最後に見たのは、運用試験が失敗した時だ。
すると三人は、あるひとつの可能性に思い至った。最悪の可能性に。
「まさか、逃げたってのか!? 運用試験の後から!?」
「一体どういうつもりだ……!?」
「滝、お前は本部の方に戻ってろ! 俺と親父で隠れ場所を探す!」
陽子はそう言われて指示に従おうとするが、直前に立ち止まって鷹弘に質問を投げる。
「心当たりあるの!?」
「ねェよ、けど探すしかねェだろ! 親父、あの人の家とか行きそうな場所とか徹底的に調べんぞ!」
鷲我は頷き、鷹弘と行動を共にする。
一方の陽子は言われた通りにホメオスタシスの地下研究所へ、この事を他のエージェントたちに伝えに向かった。
Z.E.U.Sビルの入口に到着した陽子は、地下研究所の方に入った時、奇妙な違和感に気がついた。
普段から騒がしいというワケではないのだが、妙に静かなのだ。あんな事があった後だというのに、不気味な静けさがその場を包み込んでいた。
「何かしら、この感じ……」
陽子は警戒しながらゆっくりと廊下を歩き、そして一度モニタリングルームの方に入室する。
奇妙な事に、やはり自分の足音以外に足音はない。物音ひとつしない。
照明が自動的に点灯し、陽子は室内を見渡して、思わず「きゃあっ!?」と大きな声を出してしまった。
研究員やエージェントたちが倒れている。それも一人や二人ではなく、大勢が。よく観察してみれば、エージェントたちはマテリアガンを握って倒れている。
つまり、ここで戦闘があったのだ。
「大丈夫ですか!? しっかりして下さい!」
陽子が研究員たちに声をかけるものの、反応はない。彼らは全員、まるで魂のない抜け殻のように呆然と虚空を見つめている。
精神失調症だ。それは即ち、どこか近くにデジブレインがいるという事だ。
陽子はすぐにエージェントたちが落としたマテリアガンを拾い、手の震えを抑えるように努力しながら、周囲に目を配ってその場を離れようとする。
「え?」
その途中で、驚くべきものを目撃した。
司令室の前の壁に背を預け、ぼんやりと真上を見上げている、N-フォンを握った臙脂色のスーツの禿げた頭の男。
疾拓だ。自分たちの探していた人物が、既にデジブレインの被害にあっている。
「そんな……と、とにかく静間くんに連絡しなきゃ」
言いながら陽子がN-フォンを取り出し、直後に頭にひとつの疑問が浮かんで、ふとその手を止める。
何故、彼はN-フォンを握ったまま倒れているのか? デジブレインが出たのなら、他のエージェント同様にマテリアガンなどで武装しているべきだ。
それに落ち着いて考えてみれば、ここにデジブレインが現れている事そのものがおかしいのだ。
デジブレインはゲートの範囲外では力を失い、消滅するはず。もしもこの地下研究所の近くにゲートを作っていたとしても、それなら侵入される前に撃退されるし、そもそもこの隠された場所にある研究所まで来る理由がない。人や電子機器が多い上階のZ.E.U.Sのオフィスを襲撃する方が自然だ。
「まさか!?」
もはや答えはひとつしかない。デジブレインは誰かの所持する電子機器をゲートとして中に潜み、狙ってこの場所を襲ったのだ。
そしてそのゲートは、恐らく今疾拓が握っているN-フォンだろう。でなければ、彼が反撃する様子さえ見せていないのは不自然と言える。出てきたデジブレインにすぐに感情を食われ、意識を失ったのだ。
「だとしたらすぐに知らせなきゃ……!」
陽子は手に取ったN-フォンを素早く操作し、鷹弘への連絡を試みる。
数度のコール音の後に、鷹弘は通信に応じた。
『滝、何かあったのか?』
「静間くん、大変! こっちで疾拓さんは見つかったんだけど、デジブレインが出たみたいで……」
『なんだと!?』
「とにかく、すぐに戻って――」
陽子が言い終えようとした、その寸前。
バサバサッ、という鳥がはばたくような音が、背後から聞こえた。
短く悲鳴を上げつつ、ゆっくり、ゆっくりと陽子は振り向いた。
「クルオォォォーン!」
そこにいたのは、甲高い鳴き声を上げて翼を拡げている、ハゲタカのような姿の怪人だった。
「いや、いやぁぁぁーっ!?」
怪人の手が陽子の顔を覆い、彼女から感情と意識を奪っていく。
そしてそのままゲートとなっている疾拓のN-フォンを拾い上げ、PCの中に入り込んで去ってしまった。
『滝? おい、どうした!? 滝っ!?』
悲鳴を聞いた鷹弘が必死に呼びかける。
答える事のできる者は、誰もいない。
※ ※ ※ ※ ※
「……なんという事だ」
陽子からの連絡を受けた後、鷹弘と共に研究所に辿り着いた鷲我は、嘆きの声を発する。
研究所のエージェントたちが皆、精神失調症になっている。デジブレインの襲撃があった証拠だ。
鷹弘は、その被害者の中の一人である陽子の前で、膝をついて俯いている。
「恐らく既にデジブレインは別の場所に移っている。運が悪ければ……民間人に被害が出るだろう」
鷲我が言うが、鷹弘からは何の返事もない。
「気をしっかり持て、鷹弘。デジブレインさえ倒せば、彼女もここのエージェントたちもまだ……」
「なぁ親父」
身を震わせる鷹弘が、ゆっくりと顔を上げた。
その表情は強い決意と怒りに満ちており、思わず父親の鷲我でさえ息を呑んだ。
「手術をすれば、俺もあのベルトを使えるのか?」
「……自分が何を言っているのか、分かっているのか」
「危険は承知の上だ。もう何も迷いはねェ、俺がやる」
「その道を選べば後戻りはできないぞ」
「引き返すわけねェだろ!!」
鷲我の言葉を受けて、立ち上がって彼の白衣の胸倉を掴み、鷹弘は叫ぶ。
「俺が立ち止まったせいで、滝が、皆がこんな目に遭った! だったら! 迷ってる場合じゃねェ……俺は俺の決めた道を押し通る! これ以上誰も犠牲にならないように、俺以外の誰も戦う必要がなくなるように……この覚悟で!! この怒りで!! デジブレイン共を全部ぶっ潰す!!」
「……」
「親父! 頼む……俺に手術をしてくれ!」
「……ダメだ。旧方式の改造手術は認められない」
鷹弘は乱暴に手を放し、悔しげに鷲我に背を向けて机の上に手をつく。
しかしそんな鷹弘の背に、鷲我は躊躇いながらも「だが」と言葉を紡いだ。
「旧方式ではなく、私の提唱する新方式ならば。施術を認める」
それを聞いて、鷹弘は目を見張って振り向いた。だが、鷲我の表情は苦いままだ。
曰く、新方式は変身者にかかる負荷を減らすため、手足にリンクナーヴを生成するナノマシンの注入とカタルシスエナジーの制御チップを導入するのだという。
従来の方法ではエナジーが暴発する危険性を孕んでいるのだが、これならばその危険自体はなくなる。
「だが、まだ問題がある。あの試作段階のアプリドライバーは、当初アクイラを滅ぼすためにエナジーの出力を極端に大きく設定していた。その出力を落とすための調整が万全ではない」
「先輩の時に暴発したのは、その二つが重なった上で強行したせいなのか」
「それに、そもそもお前がライダーシステムで変身できるかどうかも分からん……リスクは多いぞ、本当にやるのか?」
鷹弘は迷いなく頷いた。
覚悟を決めた息子の姿を目の当たりにして、鷲我も何も言わない。同じように頷いて、早速作業に取り掛かった。
幸いにもアプリドライバーは無傷であり、マテリアプレートは一枚破損してしまっているものの、まだもう一枚ある。
「手術が終わったらすぐに行く」
「分かった。リンクナーヴが形成されるまでの間、私もデジブレインの行方を探知しておこう……頑張れよ」
その後、問題なく手術は終わり、デジブレインの出現を知らせるアラームが鳴り響くのであった。
※ ※ ※ ※ ※
外は雨が降り出していた。
それに構わず、鷹弘はホメオスタシスが開発したデータビークル『マシンマテリアラー』を駆り、帝久乃市の夜闇を走る。
敵は高架道路上にいる。そこで人を襲い、感情を捕食しているのかも知れない。
「デジブレイン……」
ヘルメットの内側で、鷹弘が口に出す。
頭の中にちらつくのは、陽子やエージェントたちの倒れている姿。文彦がアプリドライバーの起動実験に失敗し、重傷を負う姿。
怒りが募り、鷹弘は歯を軋ませる。
目的地が近づくごとに、怒りが溢れてくる。
「デジブレイン……!!」
父親の鷲我が嘆き、悲しむ姿。怒りが強くなり、マシンマテリアラーのスピードを上げる。
そしてついに鷹弘は、道路の真ん中に立つ、その憎むべき敵の前に辿り着いた。
腕に翼の生えた、鳥の蹴爪のような足が特徴の、ハゲタカのような姿の怪人。今までに見た事のあるベーシック・デジブレインとは大きく異なる、生物のデータを持つデジブレインだ。
その名も、コンドル・デジブレイン。鷹弘の姿に気がつくと、翼を広げて威嚇し始める。
「うおおおおおっ!!」
叫び、鷹弘はさらに速度を上げた。そして最高速度に達した瞬間、バイクから飛び降りて車体をコンドルにぶつける。
「クルオォーン!!」
コンドル・デジブレインはそれを跳躍して避けるが、その瞬間を狙っていた鷹弘は、マテリアガンを抜いて腕の翼を撃ち抜いた。
「クッ!?」
飛び去ろうとしていたコンドルが地面に落下し、そのまま素早く立ち上がる。
鷹弘はコンドルと睨み合い、再生が始まっている翼を見て、すぐにマテリアガンをしまった。
そして懐からアプリドライバーを取り出して、怒りに満ちた表情のまま自分の腹部に押し当てた。
《
その音声と共にグレーカラーの帯が伸び、鷹弘の身体に装着される。
認証成功だ。デジブレインへの激しい怒りを宿す彼を、アプリドライバーは適合者として認めたのだ。
雨足の強まる空に、稲光が輝く。鷹弘はその猛禽のような双眸に鬼気迫る怒りを滾らせながら、一枚のマテリアプレートを取り出した。
「テメェらだけは許さねェ……」
《アーキタイプ・マテリアル……
鷹弘がマテリアプレートを起動すると、そんな無機質な電子音声が流れる。
そしてそのまま、鷹弘は静かにマテリアプレートをプロトアプリドライバーへと差し込んだ。
《ビギニング・トゥ・ラン! ビギニング・トゥ・ラン!》
今度はドライバーから電子音声が流れ、さらに鷹弘の目の前に拳銃のマークが付いたガンメタルグレーのキューブが出現し、周囲をクルクルと回り始める。
続いて鷹弘は右腰からプロトマテリアフォンを抜き取り、それをアプリドライバーにかざして、叫ぶ。
「変……身!」
《
すると、キューブが分解されて一挺の黒いハンドガンが飛び出し、全身が赤いパワードスーツに包み込まれる。
《
そして展開されたキューブが装甲となり、上から合着してスーツをプロテクトした。
左手には先程のハンドガンが握られ、鷹弘は拳を握り込んでコンドル・デジブレインと真っ向から対峙する。
「デジブレインは……」
一歩、水溜まりの中に足を踏み込む。
さらに一歩、さらにもっと大きく踏み出して駆け、鷹弘は叫んだ。
「デジブレインは!! データの塵ひとつ残さず、この俺がァッ!! ブッ潰す!!」
走り出した赤色の戦士、それを迎え撃つのはコンドル・デジブレインだ。
「クゥルオオオーンッ!」
「覚悟しやがれ!! オォラァァァッ!!」
一人と一体は雄叫びを上げながら、拳を振り上げる。
互いの拳が顔面に命中し、両者とも仰け反る。だがどちらも退かず、鷹弘は右脚でハイキックを、コンドルは右拳を突き出した。
「ぐぅっ!」
「クルルルルッ!」
蹴りはコンドルの顔面を捉えて怯ませるが、鷹弘も胸部に一撃を喰らい地面に背を打ち付ける。
その隙を見て、コンドル・デジブレインは接近して蹴爪を食らわせようと脚を突き出すが、鷹弘はそれを読んでいた。
コンドルが右足を上げた瞬間、鷹弘は左手のハンドガンで素早く左膝を撃ち抜いたのだ。
「ゲッ!?」
想定外の攻撃にコンドルは態勢を崩し、跳ね起きた鷹弘は顔面に拳を打ち込む。
「うおおおおっ!!」
怒りのまま、鷹弘は攻撃を続ける。コンドルが抵抗しようと拳を構えれば、すかさずその手首を銃で撃ち、妨害し続ける。
だがそれだけではコンドルも止まらない。拳を鷹弘の仮面に打ち込み、さらに右脚の膝蹴りを脇腹に食らわせる。
鷹弘も負けじと、銃でふくらはぎを撃ち隙を作ってから、今度は自分が蹴りを食らわせる。その前蹴りはコンドルの左膝に当たり、既に負傷している故にコンドルも悶えて再び態勢を崩す。そこを、さらに鷹弘が殴り、蹴り、追い打ちする。
「クル、ルルゥゥーッ!!」
攻撃を何度も阻止されている内に、コンドル・デジブレインも怒りを顕にする。
拳を解いて指をピンと伸ばし、手刀や爪を駆使した素早い攻撃に切り替え始めた。
爪は装甲の隙間から鷹弘の身体に突き刺さり、手刀は拳や蹴りを止めつつダメージを与える。
「くっ、この!」
「ルルルゥーッ!」
銃撃に対しても、ごく短い距離を飛翔して避けながら攻撃し、ダメージを最小限に抑えている。
戦闘訓練もしておらず、まだ戦い慣れていない鷹弘には、このコンドル・デジブレインは非情に難敵であった。
「クソ……どうすりゃこいつを仕留められる」
そう口に出した、その直後。鷹弘はある方法を思いつき、実行に移した。
ガンメタルグレーの銃を右手に持ち替え、左手にマテリアガンを装備。つまり、二挺拳銃だ。
敵が手数を増やすのなら、自分も。単純だが、これは鷹弘にとって天啓だ。
「こいつでどうだ!!」
両手の銃で、鷹弘は飛び回るコンドルを乱れ撃つ。
連射による凄まじい量のデータの弾丸を前に、素早さを活かして避けながら立ち回っていたコンドルも、ついに翼を撃たれて地に墜ちた。
「クルッ!?」
「オラァァァッ!」
鷹弘は当然その隙を逃さない。怒りの叫びを上げてさらに射撃を続け、コンドルをその場に押し止める。
雨霰と襲い来る銃弾の前に、コンドルは疲弊し、膝をついた。
その決定的な瞬間を、反撃のチャンスを鷹弘は見落とさなかった。
アプリドライバーにセットされたマテリアプレートを、一度押し込む。直後に《フィニッシュコード!》と音声が流れ、ベルトにカタルシスエナジーがチャージされる。
「返して貰うぜ……テメェらが奪い取ったモン全部!」
鷹弘はマテリアフォンを握り、アプリドライバーに向かって振り下ろした。
すると、ベルトに蓄積されたエナジーが右脚に集中し、赤く輝いた。
《
「くたばりやがれェェェッ!!」
雨の降る空へと大きく跳躍し、鷹弘はコンドルの顔面に向かって渾身の飛び蹴りを食らわせる。
その一撃によってコンドルは高架下へと吹き飛ばされて地面に向かって落下していき、墜落と同時に爆散、消滅した。
戦いは終わった。鷹弘は変身を解き、大きく息を吐く。
「ヘッ……ざまァみやがれ、クソッタレが」
ニィッと唇を釣り上げる鷹弘だが、その身体はふらついており、頬や身体に傷がついて脚も引き摺っている。
コンドルの激しい攻撃に加え、必殺の発動による多大な肉体への負荷。消耗するのも当然である。
だが、鷹弘は倒れない。体の痛みに耐えながら、ひとりその場を立ち去る。
※ ※ ※ ※ ※
「……ん」
目を覚ますと、陽子は明るく真っ白な天井を見上げていた。
病院だ。あのデジブレインに襲われた後、どうやら病室まで搬送されたらしい。それも個室だ。
「起きたか、滝」
ベッドに横たわる自分の傍には、鷹弘がいる。心配そうな面持ちで、じっと陽子を見つめていた。
身を起こしてよく彼の体を観察してみると、負傷している事が分かった。
それで陽子は全てを察した。鷹弘が体を張って、自分を助けてくれたのだと。
「意識が戻って安心したぜ」
「私、確かあの時……デジブレインに」
「もう大丈夫だ。無理に思い出そうとすんな」
心から安心した様子で言った後、鷹弘は「飲み物でも買って来てやるよ」と席を立とうとする。
すると陽子は慌てたように彼の手を取り、引き寄せた。鷹弘は疲労と負傷もあって倒れ込んでしまう。
陽子がいるベッドの上に。
「あ……」
二人の視線が合う。お互いの顔と顔が、間近にある。
鷹弘が先に、気恥ずかしそうに視線を逸らし、陽子はそんな彼を強く抱き締めた。
突然の出来事で鷹弘はさらに驚愕するも、彼女の体が震えている事が分かると、落ち着きを取り戻す。
「お、おい?」
「静間くん、本当にありがとう。私、あのデジブレインが出て来た時……怖くて、怖くて……その感情も段々薄れていったのが、本当に……怖くて……」
「滝……」
「お願い、もう少しだけ傍にいて……」
彼女の言葉を聞いて、鷹弘は少し逡巡した後、優しく抱き返した。
「少しなんて言わねェよ。ずっと傍にいる」
「静間、くん……」
「約束する。お前が二度とそんな思いをしないように、俺が戦う。だから……もう泣かないでくれ」
「うん……!」
ぽろぽろと溢れる陽子の涙を、鷹弘が指で拭う。
そしてじっと見つめ合った二人は、そのまま静かに顔を寄せ、互いの手を握って唇を重ね合うのだった……。
※ ※ ※ ※ ※
「バカな、バカな……クソッ、こんなのは予定外だ!!」
鷹弘がコンドル・デジブレインを倒した後。
あのデジブレインを解放したのは、言うまでもなく疾拓だ。追い詰められた彼は、アレを操り鷲我と鷹弘を精神失調症にする事で、無理矢理会社を奪い取ろうと目論んでいたのだが、作戦は失敗し暴走したコンドルによって自分が精神失調症になってしまった。
疾拓も、既に目を覚ましていた。だが事件の主犯である彼は、既に着替えて病室を脱走している。
この件に関して追求されない内に、急いで逃げようという算段だ。
行く宛はある。彼がプロデューサーと呼んだ男のいるあの場所なら、絶対に見つかる事はない。そこで彼の庇護を受け、再起を図るのだ。
そうして疾拓は誰にも見つかる事なく、例のトレーラーまで辿り着いた。
「よし……頼む、いてくれよ……」
荷台を開き、中へ入る。
すると疾拓の思惑の通り、内部があの時の高級ホテルのような場所に変わっていた。
そして、ソファーの上にはプロデューサーがいる。疾拓は安堵し、彼の足元に膝をついた。
「す、すまないプロデューサーくん! 作戦は失敗だ、あのデジブレインも倒された!」
「ええ、知ってますよ」
足を組み、彼は冷静にそう言った。
「頼む! もう一度私にチャンスをくれ! そうすれば今度こそ私があの会社を――」
「いえいえ、いいんですよ。そんな事を気にする必要はありません」
プロデューサーが優しい声色でそう言ったので、疾拓は安心したように顔を上げる。
だが、直後に疾拓の表情は凍りついた。
疾拓を見下ろす彼の目は、驚くほどに冷たい……というよりも、まるで道端の石ころに偶然目が入ったかのような、全く興味のないものに対する視線だったのだ。
「プロデューサーくん、何を……?」
「私は、最初からあなたに期待などしていませんでしたよ。あなたも、あのコンドル・デジブレインも、最初から仮面ライダーの戦力を推し量るための捨札に過ぎません」
「で、ではあのデジブレインは暴走ではなく……!?」
「ええ。元々あなたの指示など聞きませんよ、当然でしょう」
疾拓は目を剥いて、立ち上がってプロデューサーに詰め寄った。
「待ってくれ!? 話が違うではないか!? わ、私をCytuberにするという話は!?」
「あぁ、アレはウソではありませんよ。期待はしていませんが、コンドルから逃げ延びて結果を出せたのなら高待遇で迎えるつもりでした……結果は想像通りでしたけどねぇ」
「そ、そんな……」
「それにですねぇ、あなたの欲望は本当につまらない」
パチンッ、と指を弾くと、プロデューサーの手元にワインとグラスが浮かび上がる。
それを見て、また疾拓は恐怖した。さらにプロデューサーが指を動かすと、ワインは勝手に開栓され、傾いてグラスに中身が注がれていく。
「確かにあなたは欲深い人間ですが、その程度ならどこにでもいるんですよ。それじゃあ世界を変える事などできない」
「何を、言って……」
くるくる、とプロデューサーがワイングラスを回す。中身もそれに従って揺れ動き、飛び出したと思った瞬間、その赤いワインが空中で球状になって留まった。
グラスを投げ捨て、プロデューサーが指を繰ると、そのワインの球体も疾拓の目の前に移動する。
「我々に必要なのは……文字通りに世界を変え得るほどの、傲慢な欲望の持ち主です。であれば、大きな器の人間でなければ成り立たないんですよ」
「な……」
「分かりますか? あなたのような極めて個人的な欲しか持たない凡人は、最初からお呼びじゃないんです」
プロデューサーが拳をぐっと握り込むと、ワインが疾拓の目の前で弾け飛び、その両眼を濡らした。
沁みる目に悶えて、疾拓は転がる。その間に、再びプロデューサーが指を鳴らした。
「まぁ、使い道はなくはないですがねぇ」
疾拓の視界が徐々に鮮明になっていき、周囲に広がる光景を目の当たりにして、また目を見張る。
触手めいて蠢く細長いケーブルが、無数に室内に出現しているのだ。
「ヒ、ヒィッ! 誰か助け……」
「この世界の土壌となるがいい」
逃げ場がないのに逃げようとする疾拓に対して冷酷にプロデューサーが言い放つと、疾拓の後頭部にそのケーブルが接続される。
すると疾拓は一瞬の内に意識を失い、その場で膝をついた。
接続されたケーブルは絶えず発光し続け、疾拓の中から何かを吸収し続けている。
「いいですねぇ、お似合いですよ。いずれは世界中の人類があなたと同じ状態になります、寂しくありませんよ」
「……」
「あぁ安心して下さい、ホメオスタシスの中に面白い人材を見つけていますので。あなたの行動も、無駄にはなりません。では」
そう言うと同時に、プロデューサーはまた指を弾く。
この閉鎖空間に取り残されたのは、物言わぬ疾拓だけとなった。
※ ※ ※ ※ ※
――その後。
鷹弘が仮面ライダーへの変身を成し遂げたのを目の当たりにした鷲我は、彼にホメオスタシスのリーダーとしての座を譲ると共に、自身は会社経営に専念。
三年経った今でも陰ながら鷹弘たちを補佐し、ホメオスタシスの創始者として使命を全うしている。
そしてその鷹弘は今、戦闘部隊に加わった陽子と共に、街の中に見つかったデジブレインの追跡を行っていた。
「
新たに開発されたリバーストライク型のデータビークル、トライマテリアラーを駆る鷹弘の後ろから、陽子が声をかける。
「やるさ、アイツなら」
確信を以て、鷹弘が言う。
彼には、その人物に対する『アプリドライバーを託してもいい』という大きな信頼があった。それを分かったので、陽子ももう何も言わない。
「もうじき目的地よ、市内の映画館!」
「了解、さっさと終わらせてやるか」
スピードを上げ、鷹弘がその地点へと急ぐ。
そうして辿り着いた場所には、逃げ惑う人々とハゲタカのような怪人がいた。
あの時と同じ、コンドル・デジブレインだ。しかし鷹弘はハッキリ覚えていないらしく、小首を傾げている。
「どっかで会ったか……?」
「鷹弘、どうしたの?」
「あー、いやなんでもねェ。陽子、下がっててくれ」
ポキポキと拳を鳴らして、鷹弘はトライマテリアラーから降りる。
そしてアタッシュケースから完成品となったアプリドライバーを取り出し、装着。新たなマテリアプレートを取り出し、起動してベルトへ装填する。
《デュエル・フロンティア!》
「行くぜ……!」
《ユー・ガット・メイル! ユー・ガット・メイル!》
マテリアフォンを左手で掲げ、それをアプリドライバーの前にかざす。
《
その音声と共に、鷹弘の全身が赤いスーツで包み込まれ、黒いポンチョと装甲がスーツをプロテクト、そして右手には銃が握られる。
右手の銃、リボルブラスターの銃口をコンドル・デジブレインに向け、緑眼の赤き戦士は名乗りを上げた。
「仮面ライダーリボルブ。テメェらデジブレインは……俺が残らずブッ潰す!!」
――こうして、仮面ライダーリボルブは誕生したのであった。
……時は、再び三年前に遡る。
「……」
実験の失敗によって両脚に重傷を負い、二度と歩く事ができなくなってしまった男、御種 文彦。
彼は入院し治療を受け、今ベッドの上で窓の外を眺めている。
そんな彼の病室に、ある男が訪れていた。
孔雀の羽がついた仮面を被っている、紳士服の男。プロデューサーと呼ばれていた男だ。
「災難でしたねぇ、その脚」
プロデューサーに言われ、文彦はゆっくりと彼の方を見る。
その虚ろな目は――狂喜に歪んでいた。
「災難? そんな事ないさ。むしろ楽しいね……大きな失敗があるからこそ人は飛躍できる……俺はそう考えるね」
「おや、そうですか」
「力さえあれば、脚が動かなくなろうが腕千切れようがなんとでもできる。力だ、圧倒的な力があれば!」
「ではそのためなら、誰であろうと蹴落とす覚悟があると?」
「当たり前だろ? だって、力のある人間こそが正義だ……
プロデューサーは笑い、パチパチと手を叩いた。
「素晴らしい。では、契約成立です。代償として捧げたあなた様の両親……彼らも良き礎となるでしょう」
そう言って、プロデューサーは姿を消した。
――こうして、ひとりの怪物がこの世に生み出された。