仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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「そういえば、名乗り遅れていたようだ」

 電特課のオフィスにて。
 異界からの来訪者である五名の仮面ライダーは、鷹弘に招かれてこの場所に来ていた。
 ウォズは手を胸に添え、恭しく一礼する。

「はじめまして。私の名は……」
「あれ? ちょっと待って。ウォズ、あなたの場合は偽物が名乗ってたんだから自己紹介しなくてもいいんじゃないの?」
「え」

 ツクヨミの言葉を聞いて、ソウゴとゲイツも「言われてみれば」と納得したように頷いている。
 だが、ぴくぴくと眉を動かしてウォズは食い下がった。

「し、しかしだねツクヨミくん。実際に彼らと私が顔を合わせるのは初めてなんだ、必要な事だと思うが」
「そうかしら?」

 なおも首を傾げ疑問を呈するツクヨミ。
 そこへ、ウォズの正面にいた翔が、にっこりと笑って小さく手を挙げる。

「聞きたいです! 自己紹介!」

 眩しい笑顔でそんな事を言う翔を見て、先程まで慌てていたウォズも落ち着きを取り戻して嬉々とした表情になる。

「フフッ……そうか! そこまで言うのなら、聞いて頂こう! 私の名はウォズ! 真の歴史を読――」


EP.04[2000:ニュー・キングダム]

 ウォズの自己紹介が終わり。

 続いてゲイツが、腕を組んだ姿勢のまま口を開いた。

 

「次は俺だな。明光院(ミョウコウイン) ゲイツ、別の世界で2068年の未来から来た……最初は、最低最悪の魔王を潰すためだったんだがな」

 

 懐かしい思い出のように語り、ゲイツはほんの僅かに唇を釣り上げる。

 

「今じゃ俺もすっかり、この人使いの荒い魔王の仲間になってしまったな」

「『なってしまった』って割には随分嬉しそうじゃねェか」

 

 デジブレインとの戦いの折、彼の凄まじい強さを間近で見ていた鷹弘が、茶化すように言い放つ。

 すると、ゲイツは「嬉しいワケじゃない!」と少し狼狽して否定するものの、言い淀みながらも言葉を続けた。

 

「ただ、こいつが変えたんだ。俺たちの未来を、オーマジオウの……いや、バールクスのもたらした破滅の未来を」

「私たち自身の事もね」

 

 そう言いながら「今度は私ね」とツクヨミが一礼する。

 

「私はツクヨミ、ゲイツと同じ2068年から……まぁ、実際は少しややこしい事情があるんですけど……とにかく、同じ未来人です」

 

 彼女が話している間、アシュリィは目を輝かせてその話に耳を傾けていた。

 その眼には、尊敬や憧憬の念が宿っている。

 

「ツクヨミ、仮面ライダーに変身してたよね。すごい」

「ふふっ、ありがとう」

「なんか手から剣みたいなの出てたけど、あれどうやってるの? 私にもできる?」

「あぁ、アレはルミナスフラクターって言って……」

 

 アシュリィはツクヨミをすっかり気に入ったようで、彼女に懐いている。

 ツクヨミ自身もアシュリィと打ち解け、自分の世界の事や簡単に戦い方を伝授しているようだ。

 二人の様子を、ソウゴとゲイツはじっと眺めていた。ソウゴは微笑みながら、ゲイツは苦笑いで。

 

「なんか妹みたいだね。良かったね、ツクヨミ」

「良いのかアレは……? というか次はお前だぞ」

「あ、そっか」

 

 椅子に座っていたソウゴは立ち上がり、爽やかな笑顔で名乗りを上げる。

 

「俺は常磐(トキワ)ソウゴ、仮面ライダージオウ! 最高最善の魔王だ!」

 

 ウォズの拍手のみが流れ、紹介を受けたこの世界の面々は沈黙。

 堂々と魔王と名乗る少年に、どう反応していいのか分からない。翠月も鷹弘も、陽子や鋼作や琴奈も全く同じ感想を心に抱いていた。

 しかし、そんな中で翔は目を丸くしている。

 

「王様って本当にいるんですね、初めて見ました! よろしくお願いします!」

「うん、よろしく!」

 

 ソウゴと翔の二人はそんな会話をして、固く握手を交わす。その姿を、ソウゴの傍らで腕を組みながらウォズが眺めていた。

 一方、ゲイツと鷹弘は翔の様子に困惑している。

 

「……あの翔ってヤツ、ちょっと純粋すぎるんじゃないか?」

「正直……俺もたまに心配になる」

 

 鷹弘たちの心配も知らず、翔とソウゴは意気投合。

 しばらく話していると、オフィスの扉が開き、士と鷲我が顔を出した。

 

「戻ったぞ」

「あ、おかえりなさい。どうでした?」

 

 ふぅ、と息を吐いて椅子に座す鷲我。脚の上に肘を付き、指を組んで口を開く。

 

「……驚いた事に、ホメオスタシスの地下研究所が元に戻っていた。彼……門矢くんの言う通りだったよ」

 

 鷲我が視線を投げた男、仮面ライダーディケイドの門矢 士は、トイカメラを指で弄りながら続いて発言した。

 

「戻るのはまだ止めておけよ。この世界は、あのNEWタイムジャッカーとかいう連中のせいで、随分不安定になってるようだからな」

「どういう事ですか?」

 

 翔が訊ねると、士は椅子にふんぞり返るように座り、脚を組んで答える。

 

「あいつらの技術は全部スウォルツの不完全な模倣だ。アナザーライドウォッチもそうだし、ライドウォッチを封じる力も、時間停止能力も手製のマシンで擬似的に再現してるだけだ」

「えっと、そもそもそのスウォルツって誰です?」

「そこからだったか……」

 

 士は面倒くさそうに欠伸をし、ウォズへと手招きする。

 何事かと思ってウォズが近寄ると、士はトイカメラを握りつつ顎をしゃくり、指示を飛ばした。

 

「お前が状況整理でもしたらどうだ。得意だろ、そういうの」

「雑に面倒事を投げてくるね君は。まぁいい、我々としても良い機会だ」

 

 こほん、と咳払いして、ウォズは椅子に座ったまま右手の人差し指を上げて語り始める。

 

「スウォルツ氏とは、かつてタイムジャッカーのリーダーだった男だ。彼らの掲げる目的は……まぁ、概ねはモーハが語った通り、最低最悪の魔王であるオーマジオウという存在を陥落させる事だ。もっとも、スウォルツ氏の場合それは『表向きの』目的だったワケだが」

「表向き?」

「ツクヨミくんも言っていただろう? 彼の真意は、自らが王になる事にある。スウォルツ氏は元々時を司る王族の末裔で、自分も王となる事を信じていたが……後継者として選ばれる事はなかった。だから、彼と血縁関係にある正当な後継者を自分の世界から追放し、王として君臨しようとした」

「……ひどい人だな」

 

 沈んだ表情で翔が言い、アシュリィもそれに頷く。

 二人だけでなく、傍で彼の言葉を聞いていたツクヨミも、物憂げに視線を落としていた。

 

「しかし、スウォルツ氏の世界は滅びを迎えつつあった。詳しい話は省略するが、滅亡から脱するためには王の資質を持つ者……つまり我が魔王に全てのライドウォッチを継承させる必要があり、そのために暗躍していたんだ。そして我が魔王がオーマジオウとなった時、その力をも奪い取るつもりでいた……暴君さ」

「でも、その計画は事前に露見したの。スウォルツはアナザーディケイドの力で抵抗したけど、彼が十分に力を蓄える前に、ソウゴたちの手でスウォルツを倒す事ができた……」

 

 ここまでの話を聞いて、ソウゴは「懐かしいな」と腕を組みながら口にする。

 

「誰も死ななくて良かったよ、本当に。ウールとオーラも、戦いを止めてくれたし」

「お前がオーマジオウにならないんだったら、そもそもあいつらにやり合う理由はないからな」

 

 ソウゴたちの話を聞き、翔は聞き慣れない名前が出て来たので首を傾げる。

 その様子で察したウォズは、ソウゴの話に補足した。

 

「我が魔王の言った二人は、表立って活動していたタイムジャッカーだ。モーハ・ドーサ・ローパはあくまでも裏方で、我々も邂逅するまでその存在を認識していなかった」

「ウールやオーラも、連中について知っていたかどうかは疑わしい。さしずめヤツ個人の部下といったところだろう」

 

 ゲイツの話に首肯するウォズ。さらにそこへ、ソウゴが思い出したように手をポンと叩いた。

 

「そういえばもうひとりいたよね? ティードってやつ」

「ああ、アナザークウガの……状況が状況だったから仕方ないが、ヤツについては何も聞き出せなかったな。結局何者だったんだアレは」

 

 僅かに脱線し始めたため、ウォズが咳払いしつつ再び人差し指を上げて「話を戻そう」と言い出した。

 

「スウォルツ氏の野望を阻止した後、彼がどうなったのかは私も知らない。結局のところ……彼はただの傀儡だからね」

「どういう事ですか?」

 

 直後、ウォズがぐっと口を噤んでしまう。

 まるで古傷に触れられてしまったかのようで、苦しそうな、しかし申し訳無さそうな表情だった。

 そこへゲイツが、代わりに口を開く。

 

「そもそもスウォルツの世界が滅び始めたのも、俺たちの世界が滅びに向かったのも……クォーツァーという組織の陰謀だったからだ。ヤツらはできる限り手を汚さず、かつ簡単にライドウォッチを入手するため……スウォルツの世界を消そうとし、ジオウを利用したんだ。まぁ、だからといってスウォルツに同情の余地はないがな」

「しかし、我が魔王はそのクォーツァーさえ乗り越え、後に現れたアナザーオーマジオウすらも止めた。流石だよ」

 

 微笑みながら放たれた、畏敬と親愛の念が籠もったウォズの言葉。

 ソウゴも微笑み、真っ直ぐにウォズを見据える。

 

「俺だけが世界を救ったんじゃないよ。皆がいてくれたからできたんだ」

「その皆を救ったのはお前だ」

 

 そのゲイツの言には、ウォズもツクヨミも同意する。

 翔たちは、そんな四人の話に驚くと同時に、感心していた。

 何度も世界の危機や窮地といった修羅場に直面しつつ、それらを乗り越えて人々を救う強さ。

 陰謀を張り巡らされ、敵に利用されても立ち向かう断固とした意思。

 そして、この結束。生まれた時代も異なるのに、常磐 ソウゴという少年を中心にして彼らは強い絆で結ばれている。翔は素直に「すごい」と口に出してしまうほど、感嘆していた。

 

「とにかく。NEWタイムジャッカーの正体は、スウォルツ氏の配下として動いていた狂信者……タイムジャッカーの残党という事で間違いない」

「本来なら俺たちが手こずるはずはないんだが……」

 

 そう言いながらゲイツは、中央に『らいだー』と書いてある砂時計のような形状の物体を取り出す。

 ライドウォッチだ。しかし、表面がくすんだような色になっており、内部機構も錆びついたような状態だ。

 

「このリバイブライドウォッチをヤツらの力で封じられてしまった。俺だけじゃない、ジオウもウォズも……切り札のライドウォッチを使えなくなってしまった」

「直せねェのか?」

「できたら苦労はしない。それに、ジオウがライドウォッチを全て回収すればグランドジオウライドウォッチも使えると思っていたんだが……」

 

 チラ、とゲイツはソウゴの顔に視線を動かす。

 ソウゴは残念そうに首を横に振り、ゲイツもウォズも憮然とした表情になった。

 

「なんだ、そのグランドジオウってのは」

「平成ライダーの中の主立った20人の戦士、それら全ての力を一度に扱う事のできるライドウォッチだ」

「あァー……つまり、俺たちが集めてたやつか?」

「そうだ。本来ならライドウォッチ全てを所持していれば生成されるんだが……今はヤツらのせいで使えんらしい」

 

 どうしたものか、と腕を組むゲイツ。

 そこへ、頭の後からひょっこりと、忍び寄っていた浅黄がゲイツの肩に顎を乗せた。

 

「ウチらに見せてみない~?」

「うわっ!?」

「こー見えてウチ、機械いじるの得意だからさー。ちょっと見せてよ、ね? ね?」

「はしゃぐな! なんだこの子供は!」

「子供じゃないんだけどー!? 25歳ですけどー!?」

「えぇい、うっとおし……25!? これで!?」

「ハイとったー!」

 

 驚いている隙に浅黄はゲイツの手からリバイブライドウォッチを掠め取り、いつの間にか持ち込んだ機材で簡単に調べ始めた。

 

「お、おい! 勝手に何を!」

「いーからいーから。ふんふんほほーう……なるほどなるほど、ここはこうなってるから……とすると原因は……あーはいはいそういう事ね、うんうん……」

「なんなんだこいつは……」

 

 呆れてゲイツは溜め息を吐く。

 すると、同じように呆れて苦笑いしている翠月が、ゲイツへと声をかけた。

 

「すまないな。だが、浅黄は私の使っているタブレットドライバーの開発協力者でもある。信用してくれないか」

「しかしだな……」

「……ん?」

 

 翠月が何かに気付いたように目を丸くする。

 そして突然立ち上がって、自分のデスクの中や鞄を調べ始めた。

 彼の行動には、ゲイツだけでなく翔たちも訝しむ。

 

「どうした?」

「そうだ……なぜ忘れていたんだ。ホメオスタシスの研究所が元に戻ったという事は……!」

 

 それを聞いて、翔と鷹弘、浅黄も顔を上げた。そして各々自分の持ち物を調べ始める。

 すると。

 

「あった……マテリアフォン!」

「こっちもだ!」

「私のマテリアパッドも、浅黄の方もあるようだな」

 

 口々に、そのような事を話し始めた。マテリアガン・マテリアエッジなどの武装も復活している。

 アナザーアズールのライドウォッチが故障したため、歴史改変の影響が薄れているのだ。これで翔たちも戦う事ができる。

 

「ふっふーん! 原因も分かったし、これならこのライドウォッチも直せちゃうよ!」

「本当か!?」

「うん! そもそもこれ、ライドウォッチの中にウィルスみたいなのを仕込んでるだけみたいだし。ウチ、ハッカーだからそーいうの除去できるよ」

 

 言いながら浅黄は「丁度これもあるからねー」とマテリアパッドを見せびらかし、操作し始めた。

 マテリアパッドからケーブルが伸び、ライドウォッチに接続。見る見る内に、リバイブライドウォッチが修復されていく。

 さらに鋼作や琴奈、陽子も作業に加わり、オフィスの机の大部分がウォッチの修理スペースとなってしまった。

 

「これは……!」

「どうしてこんな簡単に!?」

 

 ゲイツが目を見開き、ツクヨミも愕然とする。

 すると、近くで見物していた士が「当たり前だ」と疑問に答えた。

 

「さっき言ったろ。NEWタイムジャッカーの連中はスウォルツとは違う、全部ヤツの力を模倣した技術だ。そもそも時間操作能力そのものは珍しいもんじゃないだろ、クロックアップや重加速……それからタイムスカラベだってあるんだ」

「でも、それって使えても制約があったり欠点があったりするでしょう?」

「……なんだ、お前らまさか連中が何の代償も払わずに力を使ってるとでも思ってたのか?」

 

 ツクヨミの質問に、逆に士の方が意外そうに聞き返す。

 頭に疑問符を浮かべ、ツクヨミは答えに詰まる。士の意図が読めなかったのだ。

 

「あいつらが使っているのはこの世界のテクノロジーだ。だから、同じようにこの世界に住む人間が原因を解き明かし、それを解決できる技術を持っている事には何の不思議もない」

「この世界のテクノロジー……って、まさか!?」

 

 翔が顔を上げて士を見、士も「気付いたか」と反応を示す。

 

「カタルシスエナジー……感情をエネルギーに変換して、時間操作能力を発動している!?」

「正解だ。その技術を提供したのは、間違いなく例のCytuberってヤツだろうな」

「だけど……あの人、何度も力を発動してましたよね? カタルシスエナジーにだって限界はある、そんな事を続けたら、体も心もおかしくなりますよ!?」

「だろーな。だが、あいつにはもうそんな事は関係ないんだろ」

 

 立ち上がって、士が浅黄たちの作業の進捗を覗き見る。

 リバイブライドウォッチは既に完成。ギンガミライドウォッチとジオウⅡライドウォッチも、段々と力を取り戻している。

 それを見て頷き、士はゲイツにライドウォッチを投げ渡した。

 

「あいつは狂信者だ。スウォルツ以外が統治する世界に興味はなく、スウォルツの敗北を受け入れられずに意思を継いだ。そんなヤツが今更……我が身大事さで力を出し惜しむと思うか?」

「……確かに……」

「まぁ、とにかくだ」

 

 士はオフィスの出口へと歩いていき、翔の方を振り返る。

 

「この世界を救いたいなら、急ぐんだな。じゃないと全部俺が破壊しちまうかも知れないぞ」

「門矢さんはそんな事をする人じゃありませんよ」

「……何を根拠に言ってんだそりゃ」

「僕らを助けてくれましたから」

 

 そんな事を言うと、士は肩を竦めて外へと出て行った。

 その後、オフィスでは修復作業の続行、並びにNEWタイムジャッカーの行方について調査・会議する場となるのであった。

 

 

 

「……そう、あなたも記憶喪失なんだね」

 

 作業を進めている間、アシュリィはツクヨミと共に警察署から外に出て、二人で話をしていた。

 

「ツクヨミもそうなの?」

「ええ、もう記憶は取り戻せたんだけどね」

「そう……なんだ……」

 

 俯くアシュリィ。その目に宿っているのは、不安と恐怖。

 すると、怯える彼女の姿に思うところがあったのか、ツクヨミは優しく背を撫でる。

 

「記憶を取り戻すのが怖い?」

「……私、人間じゃないから……」

 

 その言葉に、ツクヨミは目を丸くする。しかしアシュリィに対して嫌悪感などを示す様子はなく、落ち着いて話に耳を傾けていた。

 

「デジブレインなの……私……気がついたら、ショウの眼の前で身体が怪人に変わって……どうしたらいいのか、分からなくなって……このまま記憶が戻ったら、私……どうなるのかな……」

「そう……そうだったのね」

 

 震えるアシュリィを落ち着かせようと、ツクヨミは彼女の手を取った。

 

「私と同じね」

「ツクヨミ、と?」

「私はね……本当の名前も、住んでいた場所も奪われたの。スウォルツ……兄さんに」

 

 驚いて、ツクヨミを見上げるアシュリィ。そして先程のウォズの話と併せて、彼女の素性を理解した。

 スウォルツが追放した、時を司るの王家の正当な後継者。それは、ツクヨミの事だったのだ。

 

「突然時を操る力に目覚めて、私もあなたと同じように戸惑って……悩んでいた。どうしたらいいのか分からなくなった。でも、ある時出会った……私たちみたいに記憶喪失だった人が、気付かせてくれたの」

「何を……?」

「記憶とか力があってもなくても、過去に何があったとしても、本当はどこの誰なのかも関係ない。私は『私』のままで良いんだって」

「私の、まま」

「あの翔って子も、あなたが『あなた』だから……一緒にいてくれるんじゃないかな」

 

 そう言われてアシュリィは自分の手を見つめ、きゅっと強く握る。

 そして再びツクヨミの方を向いて、僅かに口角を上げた。

 

「悩みはなくなった?」

「うん。ツクヨミ、ありがとう」

「どういたしまして。それじゃ、そろそろ戻ろっか」

「うん!」

 

 

 

「ハッ! オラァッ!」

「ふん!」

 

 警察署内の訓練用道場にて。

 白い道着を着た鷹弘とゲイツは、互いにマテリアガンを装備し、戦闘訓練を行っていた。

 拳と拳をぶつけ合い、蹴りを足で受け止め、眼の前で何度も銃撃が飛び交う。

 しかし、近接戦闘ではゲイツに分があり、鷹弘の道着を掴んで投げに掛かった。

 

「おぉぉぉっ!」

「くっ!」

 

 バタンッ、と鷹弘の背が地面に叩きつけられる。ゲイツはそのままマテリアガンをマテリアエッジに変形させ、首を狙って振り下ろそうとした。

 だが、鷹弘は仰向けに倒れた態勢のまま、ゲイツの両眼を狙って正確に発砲。左眼への一撃はマテリアエッジで防いだものの、右眼に攻撃が命中してしまう。

 

「ぐ!?」

 

 とはいえ、マテリアガンの弾丸もマテリアエッジの刃も、元々対デジブレイン用装備のため人体へのダメージは排除されている。

 今回は訓練用にチューニングされているので、命中箇所が数秒間ほど僅かに痺れる程度だ。

 鷹弘は立ち上がって武器をマテリアエッジに変形させ、ゲイツに斬りかかる。

 ゲイツも右の瞼を閉じたまま、逆手に持ったマテリアエッジで攻撃を受け止めた。

 

「……」

「……」

 

 そのまま、二人は数秒間睨み合う。そして、アラーム音と共に武装を解除した。

 

「平和な世界の人間とばかり思っていたが、中々やるな。特に銃撃は見事なものだ」

「お前こそ。白兵戦だけなら完璧に俺が負けてたぜ、ただの生意気なガキじゃねェな」

 

 タオルを投げ渡し、自分も汗を拭いながら鷹弘が言う。

 そして床に座り込んで息をついているゲイツを見ながら、鷹弘は声をかけた。

 

「お前、その歳でなんでそこまで強くなったんだ? 一体どんな生活してたんだよ」

「……」

「ま、答えたくなきゃそれでも良いけどよ」

 

 ゲイツの正面に座り、マテリアエッジを床に置く鷹弘。

 しばらく互いに黙っていたが、やがてぽつぽつとゲイツの方から語り始めた。

 

「俺とツクヨミは、最低最悪の魔王……オーマジオウを倒すために結成されたレジスタンスに所属していた。強さを求めたのはそれが理由だ」

「オーマジオウ、ってそりゃあソウゴの事だよな」

「……実際には世界が滅びを迎えたのはヤツのせいではなかったがな。俺は50年前のジオウを倒す事で、オーマジオウの支配を阻止しようと考えた」

「で、あいつが生きてるっつー事は……殺せなかったんだな」

 

 鷹弘の指摘に対して、怒るでも笑うでもなく、ただ天井を見上げてゲイツは言う。

 

「ヤツは魔王にはならん。戦う内に、俺には断言できた」

「そうかい」

 

 それだけ言って、鷹弘は訓練場の床に寝そべる。

 しばしの沈黙。その後に、再び鷹弘が口を開いた。

 

「なァ」

「なんだ」

「もし、自分の身近なヤツが裏切り者だったり……戦わないと分かり合えないような状況になった時。お前、どうすんだ?」

 

 いつになく真剣な口調。

 裏切り者とは、当然ながら御種 文彦の事だ。

 しかし戦わなければ分かり合えない状況というのは、翔や翠月との事を想定もしている。

 

「戦うしかないだろうな」

「そうか」

「だが……本気で分かり合いたいと思っているなら、諦めなければできるんじゃないのか」

 

 鷹弘が身を起こす。ゲイツの瞳には、確信めいた光が宿っている。

 

「お前とソウゴみたいに。か?」

「……まぁ、そういう事だ」

 

 からかうように鷹弘が笑うと、ゲイツは顔を背けて鼻を鳴らす。照れているようだ。

 

「とは言え、一番良いのはそうならない状況を作る事なんだろな」

「違いない。お前、ホメオスタシスのリーダーなんだろう。だったら精々頑張るんだな」

「ヘッ、ガキが偉そうに。ま、その通りか」

 

 二人は立ち上がり、訓練場を後にするのであった。

 

 

 

 一方。

 警察署の外、というよりも帝久乃市駅内ショッピングモールのゲームセンターにて。

 

「うおぉー! すごい!」

 

 翔とソウゴとウォズは、この場所で遊んでいた。

 当初の目的は街の案内だったのだが、翔がゲームを得意としている事を知ると、その腕前を見るためにこの場所に訪れる運びとなったのである。

 ソウゴはゲームセンターに来て、早々に驚いていた。というよりもはしゃいでいた。

 自分たちの住む世界とは明らかに技術力が違っているためか、特にVRゲームに目を奪われているのだ。

 

「ふむ……どうやら我々の世界の2020年よりも二歩も三歩も先を行く科学技術を持つようだね。これが一般に普及されているというのだから、ライドウォッチを直せたのも頷ける」

「すごい面白そう! ウォズ、ウォズ! やろうよこのアーセナルなんとかってやつ!」

 

 興奮気味なソウゴに微笑み、付き従うウォズ。翔は楽しげに二人を筐体へと導いた。

 そして、三人でチームプレイをする事になるのだが――。

 

「ソウゴさん、そこ罠あります!」

「うぇ? あー!」

「ソウゴさぁーん!?」

 

 床に仕掛けられた罠に踏み込んだ瞬間、頭上から落ちてきた鉄球に潰されたり。

 

「ワイバーンか……我が魔王、ここは私が」

「おりゃあああー! ……うわああああ!?」

「我が魔王!?」

 

 敵の飛竜に反撃すらできず頭から食われたり。

 

「ここは毒を塗ったボウガンで一気にHPを削りましょう」

「分かっ……あっ」

「あぁっ、ウォズさんが!? ウォズさーん!?」

 

 操作中に手を滑らせ、前に立っていたウォズに誤射してしまったりという具合だった。

 そうしてしばらく遊んでいる内に、翔は気づいた事があり。

 三人で休憩所に入って、ウォズに訊ねる。

 

「……ウォズさん、ソウゴさんってもしかして」

「ああ。我が魔王はゲームが下手だ」

 

 グサッ、という音が聞こえそうな反応を示し、ソウゴは机に突伏する。

 翔は苦笑しつつ、ソウゴを励まし始めた。

 

「気にしないで下さい、誰だって最初はそういうものですよ! 僕も初心者の頃はあんな感じでしたし!」

「そうなの?」

「はい! 兄さんに初めて連れて来られた時なんか、今じゃ考えられないくらい弱くて……」

 

 自分で口に出して、翔は表情を曇らせる。

 その様子を訝しむように見ていたソウゴは、翔に「兄さん?」と訊ねた。

 

「はい。プロゲーマーなんです、僕の兄は。僕の知らない内に、いつの間にかホメオスタシスのエージェントにもなってたんですけど……」

「何かあったの?」

「……ある男に、サイバー・ラインに送られて……ずっと行方不明だったんです。この事件が起こるまでは」

 

 ソウゴとウォズが顔を見合わせた。その間にも、翔は話し続ける。

 

「兄さんは歴史改変の影響で記憶を失っていました。きっと、改変が起こった当時にサイバー・ラインにいた人たちは、みんな同じ状態になってるんだと思います」

「……」

「……ちょっと思うんです。この歴史ではデジブレインもサイバー・ラインもない。僕の知る人たちの、誰も苦しむ世界じゃない。ひょっとしたら……もしかして、このままの方が……」

「本当にそうかな」

 

 翔がハッと顔を上げる。

 真っ直ぐに自分を見つめるソウゴの姿が、そこにあった。

 

「確かに今のままなら、この世界は平和で良いかも知れない。でも……それはウソで塗り固められた歪な未来だ」

「ウソの未来……」

 

 確かに、と翔は思う。これでは自分の戦ったCytuberと同じだと。

 

「時計の針ってさ、未来にしか進まないんだ。ぐるっと一周してるように見えても、少しずつでも……確かに前に向かってる。けど、針や歯車がどこかで狂ってしまったら、絶対に正しくは進めない。きっとどこかで壊れるよ」

 

 言った後に、ソウゴは頬を緩ませる。ウォズも彼の姿を満足気に見ている。

 

「だからさ、この世界っていう大きな時計を元通りに直すんだ。俺はそうしたい」

 

 優しさと厳しさを兼ね備え、人々を導く真の王者。

 翔は今、その片鱗を見ている気がした。

 

「そうですよね。この世界が真実じゃないのなら……僕らにしか彼らの作った未来を変えられないのなら。ここで眼を曇らせちゃいけない、勝って真実を暴き出す。未来を奪い返す。もう迷わない……それが僕の意思だ」

 

 拳を握り、翔は立ち上がる。ソウゴも深く頷き、再び固く握手を交わした。

 

「じゃあ改めて、一緒に頑張ろう! ゲームも!」

「はい! ……ところで、ソウゴさんはどうしてゲームセンターに行こうと?」

「だってさ、民の娯楽を知るのも王の務めでしょ?」

「あはは、そうなのかも」

 

 ウォズは彼らの後ろについて行き、ソウゴを補佐するため再びゲームに興じる。

 そうしている間に警察署では準備が整ったという連絡を受けるまで、翔たちは一通り遊び続けるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 同じ頃。とある年のとある場所で。

 巨大な城内の空席の玉座に、一人の男が跪いていた。

 かつてスウォルツに仕えていた、モーハ。その両脇には、同じように跪くドーサとローパがいる。

 彼らの右手に握られているのは、マテリアプレートだ。

 

「見ていて下さい、スウォルツ様……あなたの理想は、かならずやこの私が……」

 

 念仏のようにモーハが唱えた後、三人はプレートを起動する。

 

《キング・オブ・ザ・ライダー!》

 

 直後、プレートから光の粒子が噴出され、ある物が形成されていく。

 ジクウドライバーだ。さらに、何も表示されていないブランクのライドウォッチまでも。

 各々それらを手に取ると、ライドウォッチに新たなライダーの顔が浮かび上がる。これまでに存在しない、彼らが使うライダーの力が。

 モーハは二人が持つ複製プレート、そして自分が持つ本物のプレートを見比べ、唇を歪める。

 

「素晴らしい……! 贋作でも同じ事ができるとは! という事は、この真作ならばきっと……!」

「本物はどれ程の力を持っているんです?」

 

 三人の背後から、そんな声が聞こえる。

 スーツ姿の男、ジョー・ヒサミネ。彼の質問を耳にすると、モーハは冷静に答える。

 

「君か。客人たちはどうしている?」

「あの二人なら食堂に案内しましたよ。腹が減っては戦ができぬと言いますからねぇ、今の内に腹ごしらえをと」

 

 ジョーの言葉を聞くと、納得した様子でモーハが頷く。

 そして、懐からアナザーアズールのライドウォッチを取り出した。

 

「形だけ修復はできた。しかし、歴史改変の力が損なわれてしまっている」

「む……そうですか」

「とはいえ戦闘は問題なく可能だ。ヤツらさえ討伐してしまえば、歴史など後で容易く塗り潰せる」

「それは良かった」

 

 心底安堵して、ジョーはそれを受け取る。

 そして立ち去ろうとしたその背に「待て」とモーハが声をかけた。

 

「君は何を望む? 何故我々と行動を共にする?」

 

 突如として投げかけられた質問。

 慌てるでもなく、偉ぶるでもなく、ジョーは答える。

 

「私には……兄がいます。国会議員の、次期総理大臣とまで言われているとても優秀な兄が。父と母だけでなく、周囲の人々の寵愛を受け続けた男が」

 

 一瞬の沈黙。その後、ジョーは眼力をぎらぎらと滾らせる。

 

「蹴落としたいんですよ、目障りだから。この歴史から存在ごと消し去り、私が一族の頂点になりたい。望むものはただそれだけです」

 

 野心に満ちた、妖しい光を帯びる眼差し。

 モーハは、それに見覚えがあった。スウォルツもかつて、同じ顔をしていた事があるのだ。

 そうしてモーハは玉座の方に視線を戻し、マテリアプレートをポケットに収納した。

 

「協力に感謝する。君の望みも、私の望みも果たされるだろう」

「そう願いたいですね」

 

 NEWタイムジャッカーたちに背を向け、ジョーはその場を去る。

 しばらく歩いていると、通路に二人の男が立っているのが見えた。

 一人はベレー帽を被った、白いコートを羽織る男。目は緑色のサイクロプスサングラスに覆われ、右手には電子ノートのようなものを持っている。

 もう一人は、シアンカラーのラインが入った黒いタンクトップと白いジャケットを纏い、黒のカーゴパンツを履いた茶髪の男。

 

「やぁ。食事はどうだったかね?」

 

 気さくに声をかけるジョー。するとサングラスの男も白ジャケットの男も、にこやかに答えた。

 

「この時代としては悪くないね」

「ナマコ料理がないのが残念だなぁ。士に食べさせたかった」

 

 二人の言葉に対して適当に頷くジョー。

 城内を歩き、案内を始める。

 

「君たちには客室が用意されている。時間が来るまで、そこで休むと良い」

「分かった。ところで」

 

 突然、茶髪の男が立ち止まった。その眼は、品定めするようにジョーを見つめている。

 

「この世界のお宝、本当にここにあるんだろうね。協力すれば素直に渡すって約束だったと思うけど」

「安心してくれ。戦いが終われば、必ず君に渡すとも」

「そうかい。じゃあ、待たせて貰うかな」

 

 答えを聞いて頷き、男たちはそれぞれ自分の個室へと入っていく。

 その姿を見てジョーは頬を歪ませ、スーツの内ポケットからある物を取り出した。

 スマートウォッチの用に見える、マテリアプレートを装填する緑色のデバイス。トランサイバーだ。

 

「ああ、渡すとも……全てが終わった時、君たちが生きていればねぇ……」

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 ライドウォッチの修復作業を始めて約三時間後。

 ソウゴたちの手には、それぞれ完全回復したライドウォッチが握られていた。

 しかし、グランドジオウライドウォッチだけは、何故出現しないのかという原因を突き止める事ができず、浅黄たちでもお手上げだった。

 

「でも、ジオウⅡが戻って来ただけ十分だよ」

「そうだな……これでヤツらにも勝てるはずだ」

 

 ソウゴとゲイツが頷き合う。後はNEWタイムジャッカーたちが向かった時代を特定し、彼らを打倒するだけだ。

 だが、その時だった。

 警察署の外、町中で人々の悲鳴と破壊音が響き渡った。

 

「何事だ!?」

 

 翠月が立ち上がり、状況を確認する。

 見れば、街では翔たちも知らない怪物たちの姿があった。

 だがゲイツとウォズ、そして士は知っている。それらの怪人たちの正体を。

 

「アレは……グロンギにアンノウン、ミラーモンスター!? 眼魔やバグスターやスマッシュまでいるのか!?」

「それだけじゃない。20の仮面ライダーの敵対者全て……それがデジブレインとして実体化したようだな?」

 

 怪人は人々を襲い続ける。一体、どうしてこんな事になったのか。何が起きたと言うのか。

 思考を逡巡させる中、ひとりが顔を上げた。

 

「……そうか! あいつらのいる時代分かった! 2000年だ!」

「ソウゴ?」

 

 突然声を上げたソウゴを訝しむツクヨミ。するとソウゴは「思い出してみて」と語り始める。

 

「NEWタイムジャッカーの目的は、俺のいない世界で平成ライダーの力を使って新しい国を作る事。だから、2000年から平成ライダーの敵をこの世界にバラ撒いてるんじゃないの?」

「……なるほど! その後で平成ライダーの力を使い、一年ずつ順番に処理してライダーの歴史をこの世界に定着させるつもりという事か!」

 

 ウォズもソウゴの言葉で納得し、ゲイツとツクヨミも理解を示す。

 それを聞き、鷹弘は歯を食いしばって拳を握り締めた。翔も、怒りを眼に宿してマテリアフォンを手にした。

 

「とんだマッチポンプ野郎だな、クソッタレが! この世界は野郎のオモチャじゃねェんだぞ!」

「僕たちで倒しましょう!」

 

 ソウゴたちもそれに同意し、戦闘準備に入ろうとする。

 だが、翠月が「待て」とそこに割り込んだ。

 

「君たちは2000年に行け。この場は私と浅黄で食い止める」

「英さん!?」

「行くんだ。この事件は、恐らく元を絶たなければ終わらない。ヤツらの潜伏先が分かった今……君たちが行くんだ」

 

 有無を言わさない程に、強く説く翠月。

 翔は首肯し、ソウゴも賛成した。

 こうして、翔・鷹弘・ソウゴ・ゲイツ・ウォズ・ツクヨミ・士の六人が2000年へと向かう事となった。

 しかしいざ外に出ようとすると、士は「待て」と静止をかける。

 

「わざわざタイムマジーンを使う必要はない。大体この人数じゃ入り切らないだろ」

「じゃあどうするの?」

 

 問われると、士はクンッと自身の手首を前後に動かす。

 すると彼らの前にオーロラのようなものが広がり、2000年の時代への入口となった。

 

「さっさと来い」

 

 唖然としていると、さも当然の事のように、士が先へと入っていく。

 

「翔! 絶対勝てよ!」

「一緒に行けないけど、応援してるからね!」

「鷹弘、私の分までガツンとやっちゃって!」

 

 過去に向かう翔と鷹弘に、鋼作を始めとしたホメオスタシスの面々が激励を送る。他にも、電特課の警官たちも声援を送っている。街を守りに向かう翠月と浅黄にもだ。

 そして、その中にはアシュリィも。

 

「アシュリィちゃん?」

「……ショウ。帰って来なかったら許さないから」

 

 そう言って、彼女は背を向けた。

 すると翔は微笑み、後ろからアシュリィの頭を撫でる。

 

「大丈夫。必ず帰るよ」

「……うん」

「帰ったらカレー作ってあげるね」

「……うん!」

 

 名残惜しそうにアシュリィの頭から手を離し、より一層気を引き締めて翔は振り返る。

 モーハによって閉ざされた、自分たちの未来を取り戻すために。

 翔たち五人も、オーロラへと飛び込んだ。

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