仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

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EP.05[2000:あばよ涙]

 20年前の帝久乃市。

 時代が時代だけあって今ほど大規模な発展はしていないものの、既にN-フォンが存在しており、建ち並ぶ建造物に大都市としての片鱗は見せている。

 

「さて。到着したはいいが」

 

 ここからどうするか。

 NEWタイムジャッカーたちを探すにしても、方針を固めようにも、情報が少ない。

 まずは現地で調査をするべきだろう。鷹弘が提案しようとした、その時だった。

 

『市民の諸君!』

 

 街頭モニターの映像が切り替わり、そんな音声が街中に鳴り響く。

 

「なんだ!?」

「あの人は……!」

 

 見上げれば、モニターに映っているのは、中央に『J』と書かれた仮面を被っているグレーのスーツ姿の男。

 翔たちには分かる。あれはアナザーアズールの変身者、ジョー・ヒサミネだ。

 街の人々は皆、映像に注目している。

 

『これより、地上はこのJが支配する! 我が統治を受け入れよ! 受け入れぬ者には……死を与える!』

「な……」

『六時間後に最初の刺客を放つ! 心静かに時を待つが良い!』

 

 それだけ言うと、ジョーは通信を切る。

 今の放送に住民たちは騒然とするものの、すぐに何かの告知やイタズラの類と考え、静けさが戻る。

 しかし、ゲイツや鷹弘たちは息を呑んでいた。

 

「マズいな……今の放送通りだとしたら、すぐに刺客の怪人が街に来るぞ!」

「そんでそれを連中が処理してヒーロー気取りってワケか。胸クソ悪ィ……どこにいるかさえ分かればな」

 

 ソウゴもゲイツもウォズもツクヨミも、唸り声を上げる。時間の猶予も、情報もない。

 士は腕を組んだまま、何も答えない。思い当たるものは僅かにあるようだが、決め手に欠けているのだろう。

 そんな中。

 

「いや。今ので僕には分かりました」

 

 確信めいた強い瞳で、翔が断定する。

 翔の言葉に、訝しんで「本当か?」とゲイツ。すると翔ははっきりと頷き、言い放った。

 

「はい、間違いありません。ヤツらはサイバー・ラインにいます」

「何!?」

 

 驚いたのは鷹弘だ。しかし、それを聞くと士は納得して「なるほどなぁ」と首肯する。

 

「大体分かった。電脳空間からこの街に干渉したってところか」

「恐らくは。現代で形を失っているのも、2000年にタイムジャッカーやジョー・ヒサミネが介入したからだと思います」

「そうと分かれば、早速行くぞ」

 

 翔と鷹弘が頷き、マテリアフォンを操作する。すると、一行の目の前にサイバー・ラインへのゲートが出現した。

 

「よし、この時代でもちゃんと使える」

「待ってろよクソッタレ共め……今すぐにでもブン殴ってやる!」

 

 

 

「ここが20年前のサイバー・ライン……」

 

 電脳世界の地に降り立った翔たち。

 2000年のこの場所には、広大な黒い空間だった。夜闇の中のように暗いというワケではなく、見通しは良好。石や草花が生えているが、生物の姿はない。

 そして。真っ黒な世界とは対照的な、まるで雪か氷でできているかのような輝きを放つ、白い西洋の巨城が遠方に建っている。

 否、よくよく見ればそれは城ではない。装飾こそそれらしくされているが、白亜の城とは似て異なるもの。翔も鷹弘も、既視感がある。

 

「国会議事堂……!?」

「これがヤツらの領域か」

 

 臆する事なく、ソウゴやゲイツたちは進んでいく。翔もその後に続いた。

 士は周囲の静けさを怪しみつつ、警戒を続けて中に入っていく。

 内装は現実の国会議事堂と大きく違っており、金の額縁に入ったNEWタイムジャッカーたちとジョー・ヒサミネの肖像画が飾られている他、剣を構える西洋鎧が配置されている。

 そして正面の最も目立つ場所には、大理石でできている、巨大なスウォルツの像があった。

 

「思ったより速かったねぇ、ジオウ」

 

 突如、頭上のシャンデリアから声が聞こえる。

 七人の仮面ライダーは全員身構え、その場から散開した。

 シャンデリアの上に立っていたローパとドーサは、飛び降りてスウォルツ像の前に立つ。

 

「お前たちを通すわけには行かない……ここで死んでもらうよ」

「せいぜい苦しみなさい、ジオウ!」

 

 そう言って、ローパとドーサはある物を取り出し、それを装着する。

 

《ジクウドライバー!》

「何っ!?」

 

 ソウゴとゲイツ、ツクヨミも使っている変身ベルト。それを、NEWタイムジャッカーたちが所持しているのだ。

 さらに、右手にはライドウォッチを持っている。それも左側に差し込む平成ライダーのウォッチではなく、ジオウたちの持つものと同じ右側に装填するタイプだ。

 ローパが持つのは青と黄、ドーサは赤と青のカラーリングが施されたライドウォッチだ。

 

「バカな、こいつら……!?」

 

 ゲイツが驚いているのを見下ろしながら、ローパ・ドーサの順にライドウォッチを起動した。

 

《ビーファイト!》

《ウインブレフト!》

『変身!』

 

 ライドウォッチを装填し、ロックを外してドライバーを同時に回転。

 そしてローパの身体に左右で青と黄に分かれたメカニカルなスーツが装着され、両眼に赤く『ライダー』の文字が貼り付く。

 ドーサの方には頭部が赤、上半身が青で腕が緑、下半身が黄色く両足が黒いスーツが形成。両眼には黄色い『ライダー』の字が記された。

 

《仮面ライダー! ビーファイト!》

《仮面ライダー! ウイン・ブレ・フト!》

「これが仮面ライダーの力かぁ……」

「中々良い着心地ね」

 

 ローパとドーサが変身した新たな仮面ライダーに、ソウゴ・ゲイツ・ウォズ・ツクヨミは目を奪われていた。

 

「バカな……一体どうやってジクウドライバーとライドウォッチを!?」

「ハハッ! 簡単だよ……あのマテリアプレートってヤツを使っただけさ。アレには、ジオウを含めた全ライダーの力が封じ込められているからねぇ」

 

 階段を降り、二人は翔たちに近づいていく。

 ツクヨミとゲイツは視線を合わせて頷き合うと、ジクウドライバーを装着してライドウォッチを装填。ロックを解除した。

 

「……ソウゴ! 先に行って!」

「ここは俺たちが!」

『変身!』

《仮面ライダーゲイツ!》

《仮面ライダーツクヨミ! ツ・ク・ヨ・ミ!》

 

 仮面ライダーゲイツ、仮面ライダーツクヨミの登場。

 対するは、NEWタイムジャッカーが変身する仮面ライダービーファイトと仮面ライダーウインブレフトだ。

 翔と鷹弘とソウゴは躊躇しながらも、先へと進む決意を固め、走り出した。

 が、士とウォズがついてこない。何事かと思っていると、まだ階段を登りきっていないそのウォズから声がかかった。

 

「お先へ、我が魔王。どうやら私と彼にも相手がいるようだ」

「本当に会いたくなかったけどな」

 

 二人の視線、階段を下った先には、シアンカラーの銃を構えた白いジャケットの男とサイクロプスサングラスをかけている男がいる。

 どちらも、士とウォズの知る顔だった。

 仮面ライダーディエンド、海東 大樹。最初に変身した仮面ライダーウォズ、白ウォズ。

 

「やぁ士、奇遇だね」

「……お前なんでこんなところにいるんだ、海東」

「何度も言わせないでほしいな。僕も通りすがりの仮面ライダーなんだよ」

 

 意味深な笑みを浮かべ、海東は銃型の変身アイテム、ネオディエンドライバーを構えつつ、カードを手に取った。

 一方、黒ウォズと白ウォズも互いにビヨンドライバーを装着してライドウォッチを握っている。

 

「白ウォズ……君はデジブレインではない、本物だな?」

「その通り。よもやこんな形で再会する事になるとはね……我が救世主も元気そうで何よりだ」

「消えたはずの君がどうやってここに?」

「おや、忘れたのかい? スウォルツ氏がアナザーディケイドの力で生み出した、アナザーワールドを」

 

 それを聞いて、黒ウォズは瞠目する。

 

「まさか……!」

「そう。私は消滅しつつある無数の分岐世界からやって来た……別世界の白ウォズだ」

 

 白ウォズの言葉と同時に、全員が距離を取って変身を開始する。

 

KAMEN RIDE(カメンライド)

《ウォズ! アクション!》

『変身!』

DECADE(ディケイド)!》

DIEND(ディエンド)!》

《投影! フューチャータイム! スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!》

 

 変身が完了した瞬間、二人の仮面ライダーウォズが、ジカンデスピアをぶつけ合う。

 同じ姿故にパワーは互角。槍で強く圧しながら、黒ウォズは語りかける。

 

「なぜ君が彼らの味方をする? スウォルツ氏は君を利用していた、彼らも同じじゃないのかな?」

「そんなのはどうだって良い。私にとって重要な事は他にあるからね」

 

 そう言いながらバックステッップし、白ウォズは電子ノートを開きつつ槍を突き出した。

 黒ウォズは慌てて柄でそれを受け止めるものの、防ぎ切れずに階段から転がり落ちる。

 

「くぅっ!」

 

 下階の床でうつ伏せに倒れる黒ウォズ、その拍子に転がるひとつのライドウォッチ。

 その様子を眺め、白ウォズはゆっくりと彼の後を追い、黒ウォズが落としたウォッチを拾い上げた。

 

「ウォズ!?」

 

 倒れた黒ウォズに、ソウゴが駆け寄ろうとする。しかし、その足元に銃声と共に火花が散った。

 海東、ディエンドの攻撃だ。

 

「命を狙われてるのに他所見してる余裕、あるのかい?」

「お前がな」

 

 直後、ディエンドが腹を殴られて蹲った。

 

「が……!? やってくれるね、士!」

「お前が油断し過ぎなだけだ!」

 

 言いながら、ディケイドはディエンドの顔面を蹴り飛ばす。

 そして、翔とソウゴと鷹弘に眼で指示を出した。さっさと進め、と。

 

「……行こう、二人とも!」

「はい!」

 

 ソウゴに連れられて去る翔と鷹弘を見送り、ディケイドは改めてディエンドと向き直った。

 

「またロクでもない事考えてんだろ、海東」

「失礼だな。僕はただこの世界のお宝が欲しいだけさ、そのために君と戦ってるんだよ」

「ふーん……」

 

 ディケイドがライドブッカーを構え、刃を撫でる。

 そしてそれを素速く振り下ろし、ディエンドは銃身で止めた。

 鍔迫り合いのようになり、ディケイドとディエンドは頭をぶつけ合う。

 

「大体分かった。少し『乗せられてやる』」

「……! へぇ……そうかい!」

 

 腹を蹴って距離を開け、ディエンドが銃撃。

 ディケイドもライドブッカーを変形させ、反撃とばかりに連射する。

 

「オオオォッ!」

「ハァァーッ!」

 

 マゼンタとシアンのライダーが、叫びながら互いへと向かっていく。

 一方、ビーファイト並びにウインブレフトと交戦しているゲイツとツクヨミは。

 

「ぐあっ!」

「うぐっ!」

 

 反撃する事ができずに相手のライダーの攻撃を受け続け、苦戦していた。

 その姿を見下ろしながら、ローパが変身したビーファイトは、ゲイツとツクヨミに人差し指を突きつける。

 

「はははははっ! 魔王の手下はこんなものなのかい!?」

「誰が……手下だ!」

 

 立ち上がって、ゲイツが殴りかかる。しかしビーファイトはそれを軽々と避けると、ライドウォッチのボタンとジクウドライバーのロック部を押し込んで必殺の態勢に移った。

 

《フィニッシュタイム!》

「救世主敗れたりィッ!」

《タイムダイナミック!》

 

 ビーファイトが右手に手刀を作ると、その手にエネルギー体が放出されてドリルのように高速回転し始める。

 このままではゲイツが危ない。そう思ったツクヨミは膝蹴りの一撃でウインブレフトをダウンさせ、その間に両掌にエネルギーを集中させて光の球体を作り出す。

 満月のようになった光球を、右手を振り抜かんとするビーファイトに向けて弾丸のように放った。

 

「ハァァァーッ!」

「うっ!?」

 

 危険を察知してビーファイトは必殺攻撃を中断、左腕を光の球に向かってかざす。

 カチリ、という音と共に球体の動きが一時停止した。

 

「あ!?」

「アハッ、ハハハハハッ! 焦らせやがって……」

《スピードタイム!》

「へ?」

《リバイリバイリバーイ! リバイリバイリバーイ! リバイブ疾風! 疾風!》

 

 軽快な音声と同時に、先程まで目の前にいたゲイツの姿が消失。

 青い影が目にも留まらぬ速度でその場を駆け抜け、ビーファイトを攻撃し始めた。

 

「うぐあああっ!?」

 

 空中に打ち上げられるビーファイト、それを追って目の前に現れたのは翼を背負う青いアーマーのゲイツだ。

 仮面ライダーゲイツリバイブ疾風。スピードタイムの名の通り、時間延伸機能によって従来のスペックより遥かに高いスピードで戦う事ができる。

 手に持つジカンジャックローも、ゲイツリバイブ専用の強力な武装だ。チェーンソー・クローの二種類に変形でき、この武装は『つめ』となっている。

 

「このぉっ!」

 

 滞空しながらも、ビーファイトは時間停止を行使してゲイツを止めようとする。

 が、それよりも速くゲイツはビーファイトの背後まで降下し、ジカンジャックローを振り下ろしてビーファイトを地面に墜落させた。

 

「ぎぃっ!?」

「お前たちの時間停止能力では、目で追えるものしか止められないようだな」

《ジカンジャック!》

 

 ゲイツはファイズライドウォッチを取り出してそれをジカンジャックローに装着、再び高速移動する。

 

「な、何を……」

《ファイズ! スーパーつめ連斬!》

「何をっ!?」

 

 ジカンジャックローの爪が振られると同時に、ファイズが放つ赤色のポインティングマーカーのようなものが無数に飛び出す。

 気付けば、ビーファイトは四方八方をそれで埋め尽くされ、逃げ場を失っていた。

 

「ローパ!?」

「行かせない!!」

「くっ……スウォルツ様の妹なのに!! アタシたちの邪魔をするのかぁぁぁーっ!!」

 

 ウインブレフトが救援に向かおうとするものの、それはツクヨミの拳で阻まれる。

 そして二人が戦っている間に、マーカーは一斉に回転を始めた。

 

「ひっ……」

「これで終わりだ!!」

 

 ゲイツが叫び、飛び込もうとすると同時にマーカーがビーファイトに向かって動き出す。

 だが、その時だった。

 

《ファイナリービヨンドザタイム!》

「『救世主ゲイツリバイブは降り注ぐ惑星を受け、必殺は不発に終わるのであった』」

 

 そんな声と共に、惑星の形状を成したエネルギー弾が雨のようにゲイツの頭上から降り注いだ。

 

《水金地火木土天海エクスプロージョン!》

 

 エネルギー弾はビーファイトを避け、ゲイツを追尾しつつマーカーをも全て破壊する。

 いかに目に見えない程の高速移動ができようとも、無数に落下し追尾する攻撃を避け切る事はできない。爆発と共に、ゲイツはツクヨミの方に吹き飛ばされた。

 

「ぐあああああっ!?」

「ゲイツ!? きゃっ!?」

 

 落ちて来たゲイツを受け止められず、ツクヨミもその場に倒れ込む。

 ゲイツは慌てて体制を立て直しつつも、歯を軋ませて白ウォズを睨みつけた。

 今の白ウォズは、一回りほど大きいミライドウォッチをビヨンドライバーにセットし、背中からマントを垂らしている。

 仮面ライダーウォズギンガワクセイフォーム。本来であれば黒ウォズが所有しているはずのギンガミライドウォッチから変身できる、仮面ライダーウォズの三種類の最強形態の内のひとつだ。

 

「バカな! なぜ白ウォズがギンガの力を……」

「書かせて貰ったからだよ、我が救世主。『ウォズ、階段から転んでギンガミライドウォッチを落とす』とね」

 

 そう言いながら、白ウォズはギンガミライドウォッチを外して操作。ドラム部を回して、鏡文字で『タイヨウ』と書かれた面に合わせる。

 その後ろから、ジカンデスピアを持った黒ウォズが襲いかかった。

 

《投影! ファイナリータイム! 灼熱バーニング! 激熱ファイティング! ヘイヨー! タイヨウ! ギンガタイヨウ!》

「ハァッ!」

 

 白ウォズの頭部が赤く切り替わり、彼が両腕を広げると、火炎と灼熱地獄がその場を襲う。

 攻撃に動いていた黒ウォズは堪らず悲鳴を上げ、ゲイツも咄嗟にリバイブライドウォッチを操作してツクヨミをかばった。

 

《パワードタイム! リ・バ・イ・ブ・剛烈! 剛烈!》

「くうううっ!」

 

 ゲイツリバイブ剛烈。スピードタイムのように素速く動く事はできないが、強固な防御力と圧倒的なパワーが持ち味だ。

 しかしその防御の上でさえ、ギンガタイヨウの熱を防ぐのは厳しい。

 ゲイツは白ウォズを睨みながら、彼に声をかけた。

 

「お前の目的は何だ!? どうしてこいつらの味方をする……そんなに救世主になる道を選ばなかった俺が憎いか!?」

「我が救世主、勘違いだよそれは。私は彼らに助けて貰った義理立てをしているだけさ」

 

 白ウォズはそう返して、ビーファイトとウインブレフトに視線を投げた。

 

「今の内に使いたまえよ。アーマーなしでは厳しいんじゃないかな?」

「……それもそうだ」

 

 ビーファイトとウインブレフトが頷き、その右手にマテリアプレートを握る。

 そして、起動した。

 

《キング・オブ・ザ・ライダー!》

 

 すると、光と共に二人のライダーの左手に新たなライドウォッチが出現。同時にそれらを起動した。

 

《ダークカブト!》

《風魔!》

 

 音声を聞いて、ゲイツは驚く。

 その様子を、白ウォズは楽しそうに眺めている。

 

「そんなバカな……俺たちも所持していないライドウォッチを!?」

「驚くような事じゃないさ。オーマジオウが持つのは全ライダーの力、ならば形がなくともライドウォッチの中に他のライダーのデータが僅かに内包されているはず。存在する可能性がある限り……全てのライドウォッチの力を吸収したあのマテリアプレートで、作れないはずがない」

 

 ビーファイトがダークカブトのライドウォッチを、ウインブレフトが風魔のライドウォッチを装填。ロックを解除して回転させた。

 

ARMOR TIME(アーマータイム)!》

CHANGE BEETLE(チェンジ・ビートル)! ダークカブト!》

《レベルアップ! 風魔!》

 

 両肩から黒いカブトムシの角を生やし、顔に『ダークカブト』の文字を貼り付けたビーファイトは、再びゲイツの方に疾駆する。

 さらに両肩がガシャットの形状となって両眼が『フウマ』という文字に変わったウインブレフトは、忍者刀を左右の手に一本ずつ持ち、同じくゲイツに襲いかかった。

 

「さぁ第二ラウンドだ、アッハハハハハァ!」

「死になさい!」

 

 ビーファイトの拳が、ウインブレフトの忍者刀が剛烈状態のゲイツに命中。

 普段であればほとんどダメージを受けないような一撃だが、ギンガタイヨウの熱に焼かれた今のゲイツには、重い攻撃だ。

 既に防御しかできない状態のゲイツを少しでも援護するため、ツクヨミがウインブレフトへと足を蹴り出して乱入した。

 

「あなたもそんなに死にたいの? だったら! 望み通りにしてあげるわ!」

《フィニッシュタイム! 風魔!》

 

 柄頭で二つのライドウォッチのボタンを押し込み、回転。

 そして忍者刀を風車のように回し、ウインブレフトは必殺技を発動した。

 

《ハリケーン! タイムダイナミック!》

「イィヤァーッ!!」

 

 裂帛の掛け声と共に、忍者刀が竜巻を起こす。それを受け、ツクヨミは壁面に叩きつけられた。

 

「あ、ぐっ……」

「いいねぇ! こっちも終わらせてやる!」

《フィニッシュタイム! ダークカブト!》

 

 ビーファイトもジクウドライバーを一回転。足に漆黒のエネルギーを溜め込み、その場から姿を消す。

 クロックアップだ。攻撃が来る事を予感したゲイツは、腕を交差させて耐えようとする。

 

《クロック! タイムダイナミック!》

「てぇぇぇーい!!」

「がぁっ!?」

 

 直後に背後から勢い良く蹴りが飛んで態勢を崩され、踵落としが左肩に命中。ゲイツは、崩れ落ちて膝をついた。

 

「……この程度なのかい、我が救世主? 君は本当に……これで終わるのかい?」

 

 物憂げな声を出しながら、白ウォズはゲイツとツクヨミを見つめている。

 その白ウォズの背後で、立ち上がった黒ウォズがジカンデスピアを構え直した。

 

「まだやるのかな? 黒ウォズ」

「当たり前だろう」

「止めた方が良い。ギンガの力なしで、私に勝つ事など不可能だ。一度冷静になるべきだよ」

 

 諭すような口調で放たれた言葉。仮面の中で黒ウォズは眉をひそめ、ジカンデスピアを地面に下ろす。

 そうして冷静になってみると、白ウォズの行動は不自然だ。本当に倒す気があれば、ギンガの力で全滅させる事も不可能ではない。なのに、彼は積極的に手を出していない。

 まるで、何かを待っているように。

 

「……同じウォズだが、今は君の真意が分からない。一体何を求めているんだ?」

「私が求めるのはいつだって『真の救世主』だ。そして、彼らに味方しているのも単なる義理立て……理由がなくなればそれまでの関係だよ」

 

 そう言って、白ウォズは柱の陰にチラリと視線を送る。

 黒ウォズはハッとして、振り返った。先程白ウォズが見た方向では、ディケイドとディエンドが交戦していたはず。それが、いつの間にか戦闘音が止んでいるのだ。

 

「なるほど、そういう事か!」

 

 黒ウォズは叫び、腕についたミライドウォッチをひとつ手に取った。

 そんな中、ゲイツはビーファイトを前に再び立ち上がっている。

 しぶといな、と思いながらビーファイトは拳を顔面に目掛けて叩き込んだ。だが、それでもゲイツは倒れない。

 

「鬱陶しいな、いい加減にくたばれよ」

「断る……!」

「あのさ……ジオウに負けて軍門に下ったヤツが僕らに勝てると思ってるワケ? 救世主だかなんだかおだてられて、調子に乗ってんの?」

 

 ゲイツの首を掴み、絞める。ビーファイトは首の骨を折らんばかりに、徐々に右腕に力を込めた。

 だが、そんなビーファイトの腕をゲイツが捻り上げた。

 

「ぐっ!?」

「俺は……救世主ではない。世界を救ったのはジオウで、俺はあいつの仲間だ」

「……ハッ! 苦しい言い訳だなぁ!? ジオウの傍について、ヤツに従って戦って! それは手駒とどう違う!?」

「俺は!! たとえ俺自身が救世主ではなくとも……心から世界を良くしたいと願う真の王を……ジオウを護りたい!! 共に並びたい!!」

 

 ビーファイトが腕を離した瞬間、ゲイツは素速く彼の顔面に拳を叩き込んだ。

 

「それが俺の選んだ道だ!! お前らにとやかく言われる筋合いなどあるものか!!」

 

 吹き飛ばされ、ビーファイトは地面に倒れ込む。しかしすぐに立ち上がって、忌々しそうにゲイツを睨みつつ、マテリアプレートを取り出した。

 

「クソ……調子に乗るなよ!?」

 

 そして、起動スイッチを押し込もうとした、その時。

 

「問題」

「なに!?」

 

 突然黒ウォズの声が聞こえ、ビーファイトもウインブレフトも振り返る。

 見れば、そこには顔にオレンジ色の『クイズ』という文字を貼り付けている、装甲を赤と青に変化させた黒ウォズの姿があった。

 仮面ライダークイズの力を継承した、仮面ライダーウォズ フューチャーリングクイズ。その名の通り、クイズを出題して戦闘する能力だ。

 

「『NEWタイムジャッカー・モーハは用が済めば白ウォズもディエンドも始末するつもりである。マルかバツか?』」

「なっ……」

 

 思わぬ出題に驚き、二人とも言葉を詰まらせる。

 この場にいないモーハがどう思っているのか。ローパ・ドーサとも方針を聞かされてはいないが、処遇に関しては勘付いている。

 しかし、これをどう答えたものか。マルであれば白ウォズとディエンドの裏切りは免れず、だがバツという答えはモーハの性格上考えにくい。そもそもバツと答えて不正解であった場合も裏切るだろう。

 どう足掻いても、NEWタイムジャッカーたちは二人が裏切る大義名分を作ってしまう事になるのだ。

 

「ぐ……」

「答えられないようだね、ならば不正解だ!」

「がああああっ!?」

 

 瞬間、ビーファイトとウインブレフトに雷が降り注いだ。これがクイズの能力、問題に不正解・未回答の場合はダメージを与えるのだ。

 そして同時に、電子ノートを手に白ウォズが動いた。

 

「『NEWタイムジャッカーのローパとドーサ、雷を受けてマテリアプレートを落とし、ディエンドに盗まれる』……と」

「はっ!?」

 

 ノートに記入された直後、その通りに二人の手からプレートが滑り落ちる。走ってそれを取りに来ているのは、ディエンドだ。

 まずい。即座の判断で、ビーファイトとウインブレフトはプレートに手を伸ばす。

 しかしその手に火花が散り、痛みで思わず腕を引っ込めてしまった。柱の陰に潜んでいたディケイドの銃撃だ。

 

「貰ったよ、この世界のお宝……の、コピーだ」

 

 見事、ディエンドは二つのマテリアプレートをキャッチ。そして、それを白ウォズに投げ渡した。

 

「僕は本物の方を貰う。それは君が使いなよ」

「助かるよ」

 

 胸に手を添え、一礼する白ウォズ。いつの間にか変身を解除し、ギンガミライドウォッチを黒ウォズに返還していた。

 そんな彼に、ビーファイトとウインブレフトは怒鳴り声を吐き散らす。

 

「どういうつもりだ!! なぜ僕らを裏切る!!」

「あんたなんて、ただ歴史から消えるだけの存在だったのに!」

 

 すると白ウォズは一切悪びれる事なく、意地の悪い笑みを浮かべて二人を見下ろす。

 

「私は最初から、我が救世主の味方だよ。君たちを全滅させるために一芝居打っただけさ」

「何ィ……!!」

「まぁ上手く利用していたつもりだろうが、利用されているのはそちらの方だったというワケだ」

 

 そう言って、白ウォズはマテリアプレート二つを同時に起動。

 するとその頭上に、19のライドウォッチが浮かび上がり、マテリアプレートは爆ぜて壊れる。

 白ウォズはノートで何かを記そうとして、手を止め、ペンを放り捨てた。

 そして満足気な笑みを浮かべて、ノートをぐるぐると回るライドウォッチたちの中心に向かって投げつけた。

 

「もはや私が未来を綴る必要などない! 私が描く伝説ではなく、これから彼の歩む道こそが、新たな歴史となるのだから!」

 

 ノートと全てのライドウォッチが融合。

 他のそれらよりも大きい、真っ赤なライドウォッチが新生した。それは真っ直ぐにゲイツの方へと向かい、反射的にゲイツはそれを手に取る。

 そして、起動した。

 

《ゲイツマジェスティ!》

 

 その音声と共に、ウォッチの左右が展開。ライダーたちの顔が浮き彫りになる。

 ゲイツはそれをリバイブの代わりにドライバーの左側に装填して、ロックを解除、回転させる。

 

「変身!」

MAJESTY TIME(マジェスティタイム)!》

 

 ゲイツの周囲に19のライドウォッチが飛散し、全身が金色に発光。そして、背中からマントが飛び出した。

 

《G3! ナイト! カイザ! ギャレン! 威吹鬼! ガタック! ゼロノス! イクサ! ディエンド! アクセル! バース! メテオ! ビースト! バロン! マッハ! スペクター! ブレイブ! クローズ!》

 

 名前が読み上げられる度に、ゲイツの体にライドウォッチが順番に合体していく。

 そして最後に額へとゲイツライドウォッチが装着された時、赤く縁取られた金色の『らいだー』の文字が両眼に貼り付いた。

 

《仮面ライダー! ゲイツマジェスティ!》

 

 完成したのは、全身にライドウォッチを装備した金色のマントを背負う赤い仮面ライダー。

 ゲイツ、マジェスティ。

 その姿を目撃した時、白ウォズは歓喜の笑みと共に叫ぶ。

 

「祝え! 闇に苦しむ人々を救い、未来に光を取り戻す真の救世主(エル・サルバトーレ)! その名も、仮面ライダーゲイツマジェスティ! まさに生誕の瞬間である!」

 

 威風堂々とした、荘厳たる救世主の姿。

 ビーファイトは拳を震わせ、怒りのままに叫んだ。

 

「何が……マジェスティだ! 救世主だ! お前なんかに負けてたまるかぁ!」

CLOCK UP(クロックアップ)!》

 

 ビーファイトが前へと踏み出し、高速移動能力によって姿を消す。

 しかし慌てる事なく、ゲイツは右脚のライドウォッチひとつのボタンを指で押し込んだ。

 

「ふん!」

《ガタック!》

 

 これにより、ゲイツもクロックアップを発動。ビーファイトと同じ速度となり、突き出された拳を容易く受け止めた。

 

「何っ!?」

「まだ行くぞ」

《バロン!》

 

 ゲイツの手にバナナに似た形状の槍、バナスピアーが握られ、それを振るってビーファイトを突き倒す。

 

「がぁぁぁっ!?」

「まだまだ!」

《アクセル!》

《マッハ!》

 

 バナスピアーをツクヨミにパスし、ライドウォッチを操作。

 赤い仮面ライダーと白い仮面ライダーがゲイツの両脇に出現し、それらが各々の武器を使ってウインブレフトを叩きのめした。

 

《エンジン! マキシマムドライブ!》

《ヒッサツ! フルスロットル!》

「くうっ!?」

 

 その強さに、ツクヨミも黒ウォズも舌を巻くばかりであった。

 

「すごい……グランドジオウと同じ能力が使えるのね!」

「まさか、ゲイツくんのポテンシャルがここまで高いとは……」

 

 直後、ツクヨミはバナスピアーを投擲し、ウインブレフトを攻撃。必殺技で反撃しようとしていた彼女の行動を妨害する。

 

「くぐっ!?」

「こんな、こんなはずじゃ」

 

 よろめくビーファイトとウインブレフト。

 ゲイツは彼らの前へと、ドライバーのライドウォッチを操作しつつ悠然と歩む。

 

「覚悟しろ。これで終わりだ」

《フィニッシュタイム! マジェスティ!》

 

 そして、ジクウドライバーを回転。大きく跳躍し、左足を突き出した。

 

《エル・サルバトーレ! タイムバースト!》

 

 19人の仮面ライダーの姿が周囲に出現し、それらがゲイツマジェスティへと重なる。

 そしてゲイツは矢のようにビーファイト・ウインブレフトへと弾き出され、二体のライダーへとエネルギーを纏うキックを放つ。

 

「ギイアアアアッ!!」

「イヤアアアアッ!!」

 

 ローパ・ドーサの両名は悲鳴を上げて地面に倒れ伏し、外れたジクウドライバーとライドウォッチは粉微塵となる。

 ゲイツたちの勝利だ。変身を解き、気を失った二人をマフラーで拘束して、黒ウォズは白ウォズに向き直った。

 

「君に助けられたようだ。ありがとう」

「感謝は結構。他にやる事があるだろう?」

 

 黒ウォズは頷いて、変身を解除したゲイツたちも首肯。翔やソウゴたちを援護するために走る。

 海東と白ウォズも彼らの後に続き、その場には身動きの取れない二人のタイムジャッカーだけが残されるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

「見つけたぞ! モーハ!」

 

 ゲイツたちがNEWタイムジャッカーの相手をしている頃。

 翔・ソウゴ・鷹弘は、モーハのいる王の間に辿り着いていた。

 モーハは玉座の前に跪いており、翔の声を聞くと、ゆっくりと振り返って左眼をヒクヒクと動かしている。

 

「気安くこの聖域に足を踏み入れるとは、蛮人共がァ……」

「もうこれ以上、僕らの世界を荒らすのは止めて帰ってくれ」

 

 翔がそう言うと、モーハは両眼を血走らせ、歯を剥き出しにして叫んだ。

 

「帰る? 帰るだと!? できるものかァ!! スウォルツ様のいない世界など、私の帰る場所ではない!! ならば貴様らをブチ殺して!! ここをスウォルツ様の城とするのだァ!!」

 

 怒鳴り声と共にモーハが取り出したのは、ソウゴも持つベルトとライドウォッチ。

 それを目撃して、ソウゴは当然驚いた。

 

《ジクウドライバー!》

「貴様の歴史、終わらせてくれるわァ!! ジオォォォォォウッ!!」

《ギャリダー!》

 

 煌めく銀色のライドウォッチを起動し、ベルトに装填。そしてドライバーのロックを解除し、その左側を掴む。

 

「変身!!」

RIDER TIME(ライダータイム)!》

 

 叫び声と共にベルトを回し、その体が光沢を放つ銀色のスーツに包まれ、赤と青のメタリックカラーラインが両肩・両脚に走る。

 そして両眼には赤い『ライダー』の文字が貼り付き、発光。その名前が読み上げられた。

 

《仮面ライダー! ギャリダー!》

 

 モーハが変身する仮面ライダー、ギャリダー。両拳を握り込み、ソウゴを見下ろして、ゆっくりと歩いてくる。

 ソウゴもそれに応戦するため、ライドウォッチを取り出した。左右で二つに分割して使用する、ジオウⅡライドウォッチだ。

 

「ソウゴさん、僕も……」

「いや。こいつの相手は、俺一人でやるよ」

《ジオウ! Ⅱ!》

 

 ボタンを押してライドウォッチを起動し、左側の大きなリューズを回してロックを解除。これにより、ライドウォッチは二つになった。

 右手には金色、左手には白いライドウォッチだ。

 

《ジオーウ!》

 

 そしてそれぞれをジクウドライバーの左右に装着。ジクウドライバーのロックも外し、回転させる。

 

「変身!」

RIDER TIME(ライダータイム)!》

 

 ソウゴの全身が、通常のジオウとはまた異なる黒いスーツに包まれる。

 最も特徴的なのはその頭部で、両眼の位置に『ライダー』の字が貼り付いている他、銀色の時計の針が左右の目に二本ずつ伸びているのだ。

 

《仮面ライダー! ライダー! ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!》

 

 これこそがジオウⅡ。凄まじい力を持つ、時の王者の進化した姿。

 

「行くぞ……ジオウ!!」

「来い!!」

 

 ギャリダーはレーザー状の刀身を持つ剣、イレーザーブレードを両手で握り、ジオウがジカンギレードの他にも一振りの剣を手に取る。

 ジオウの仮面が貼り付いた武器、サイキョーギレードだ。

 二人がぶつかり合う様子を見ながら、翔は鷹弘の方を振り向いた。

 

「静間さん、僕らは……」

「慌てんなよ翔。向こうも退屈しないようにしてくれるみたいだぜ」

 

 鷹弘が親指で示した方向、三人が入ってきた扉から、怪人たちが無数に溢れ出て来る。

 ワームサナギ体やダークローチ、屑ヤミーに初級インベスと言った、いわゆる戦闘員とされる存在を模倣したデジブレインだ。

 怪人たちの奥に佇むのは、マテリアプレートを起動しているジョー・ヒサミネ。

 あの力で怪人を次々と生み出しているのだろう。そう思って翔と鷹弘は、すぐさまマテリアプレートとアプリドライバーを構える。

 

「手厚い歓迎ですね……」

《ブルースカイ・アドベンチャー!》

「まったくだ」

《デュエル・フロンティア!》

 

 バックルにマテリアプレートを差し込み、そこにマテリアフォンをかざして、二人は変身する。

 

「変身!」

「変……身!」

《蒼穹の冒険者、インストール!》

《孤高のガンマン、インストール!》

 

 仮面ライダーアズール、そして仮面ライダーリボルブ。

 ジオウとギャリダーの戦闘に介入させないように、二人は雪崩込んで来る怪人たちを足止めするのであった。

 一方、そのギャリダーはそのジオウに苦戦していた。

 何度攻撃を仕掛けても、思うように当たらない。確実に致命傷となるであろう死角への一撃も、寸でのところで回避されてしまうのだ。

 

「チィッ……力の大部分を失っているとは言え、魔王の名は伊達ではないという事か」

 

 右足から蹴りを出すと見せかけ、前に踏み込んでイレーザーブレードを上段から振り下ろし、あらん限りの力でジオウに攻撃。

 しかし、それも二つの剣を交差させたジオウによって防御される。

 見ればジオウの眼の位置にある時計の針が、一瞬だけクルクルと回転していた。

 これは未来に起こりうる事象を観測する、ジオウⅡの特殊能力。つまりは未来予知である。これによって、ギャリダーの攻撃を全てギリギリで回避しているのだ。

 

「ならばこれでどうだァ!!」

《キング・オブ・ザ・ライダー!》

 

 言うなりマテリアプレートの力を発動し、ギャリダーは新たな漆黒のライドウォッチを生成。そして、それのボタンを押してドライバーにセット。

 

《メタルビルド!》

 

 音声を聞きながら、ギャリダーはドライバーを一回転させた。

 

ARMOR TIME(アーマータイム)! ヤベーイ! メタルビルド!》

 

 アーマーと合着し、完成したのは漆黒の戦車のフルボトルを両肩から生やしている仮面ライダー。イレーザーブレードの刀身が纏う光も黒く染まった。

 

「ハァッ!!」

 

 タンッ、と踏み込んでイレーザーブレードを振るう。

 その破壊力は通常時よりも格段に増しており、双剣による防御は一撃で崩された。

 

「うっ!?」

「ヌゥラァッ!」

 

 続いて、回し蹴り。エネルギー体の履帯が足の周りに現出し、ジオウを薙ぎ倒さんとする。

 が、ここまでは予知の範疇。

 既に未来を見ているジオウは地面を蹴って天井へ飛び、さらにそこに足を付いて二つの剣を合体させてサイキョージカンギレードを作り出す。

 

《サイキョー! フィニッシュタイム!》

「これで終わらせる!」

 

 必殺技が来る。それを察知し、ギャリダーもライドウォッチを操作する。

 

《フィニッシュタイム! メタルビルド!》

「終わるのは貴様だ……!」

 

 剣のトリガーを引くジオウと、ドライバーを回すギャリダー。

 それぞれの剣から極光が放たれ、サイキョージカンギレードからは金色の光と『ジオウサイキョウー』の文字が、イレーザーブレードからは黒い閃光とエネルギー状の履帯が放出される。

 

《キング! ギリギリスラッシュ!》

《ハザード! タイムダイナミック!》

『ハァァァァァーッ!!』

 

 二つの輝きがぶつかり、光の刀身が火花を吹いているかのように明滅する。

 力と力の激しい迫り合いの果てに、打ち勝ったのは――ジオウだ。

 

「グアアアアアッ!?」

 

 ギャリダーは『ジオウサイキョウー』の文字と共に切り倒され、変身を強制解除されて地面に背中を打つ。

 ジクウドライバーとライドウォッチは、粉々に砕けて消えた。マテリアプレートを使おうにも、ジオウの予知能力がそれを許さないだろう。

 もはや反撃の手はない。ジオウはモーハの前に立ち、語りかける。

 

「もう終わりだよ。俺の勝ちだ」

 

 真剣な口調で告げられた言葉。頭では事実だと分かっていても、モーハは歯を食いしばって真っ向から抵抗する。

 

「終わり? 終わりだと……? ふざけるなァ!! 私には、取り残された我々には……!! スウォルツ様の理想を受け継ぐ道しかないんだよォォォ……!!」

「……」

「これで本当に全て終わりだというのなら……私はもう、もう……死ぬしか……」

 

 直後、変身を解いたソウゴが、涙して慟哭するモーハの胸倉に掴み掛かった。

 

「簡単に諦めんなよ!」

「な……」

「自分の命を簡単に捨てるなって言ってんだよ!!」

 

 彼の叱咤するような叫びに、怪人たちを倒しているアズールもリボルブも思わず目を奪われた。

 

「確かに俺は酷い事をしたのかも知れない。スウォルツを倒したから、あんたに恨まれるのも仕方ないと思う。でも、スウォルツが自分の理想を捨てて、行方がわからなくなっても……あんたはまだちゃんと生きてるだろ!!」

「……」

「だったら今っていう瞬間を大切に、必死に生きろよ……!! 死んだら、もう未来に進めないんだ……!!」

 

 怒りと哀しみの入り混じった目。すぐにモーハは回想した。彼の両親、その命を奪ったのは――。

 そうして言葉を詰まらせてしまう。ソウゴの眼差しに、気圧される。

 だが、やがてその沈黙もモーハによって破られた。

 

「……ジオウ。最高最善の魔王と言ったな……貴様の描く未来とは、何だ?」

「世界を全部良くしたい、みんなに幸せでいて欲しい。そんな未来を創る……それが俺の王道だ」

「なんとも甘い戯言だ。そんな王に、スウォルツ様は負けてしまったのか」

 

 言ったあとで、モーハは「だが」と紡ぐ。

 

「偽りであろうともそんな王を見出し、暗躍したのは……他ならぬスウォルツ様だったな」

 

 そうして自嘲めいて唇を歪ませ、モーハは改めてソウゴの眼を見つめる。

 

「ならばこの敗北も必然という事か。ハッ、滑稽だな私は」

「モーハ……」

「……貴様を認めはしない。しかし、私にスウォルツ様の代わりも貴様の代わりも務まらんという事は良く分かった。この世界からは手を引く……NEWタイムジャッカーも解散だ」

 

 完全な降伏宣言だ。それを聞いてソウゴは息をつき、立ち上がってモーハに手を差し伸べた。

 モーハは躊躇いつつも、観念した様子で手を伸ばす。

 しかし、その時。甲高い銃声が、王の間に鳴り響いた。

 

「かっ!?」

「え……?」

 

 鮮血がソウゴの足元に飛び散る。

 モーハもソウゴも、戦いの最中だったアズールとリボルブも目を見張った。

 引き金を引き、モーハを撃ったのは、ジョー・ヒサミネだ。

 

「フフ……フハハハハハハッ」

 

 ジョーは走り出して、モーハが落としたマテリアプレートを拾い上げる。

 

「いやぁ、実に私にとって都合の良い展開になってくれましたねぇ」

「き、さま……なに、を」

「私が本気であなた方に従っているとでも?」

 

 負傷したモーハを蹴り飛ばし、ジョーはプレートを起動。すると、目の前にタイムマジーンが生成された。

 

「私の目的は最初からひとつ。仮面ライダーの力を封じ込めた、この真作のマテリアプレートなんですよ」

「なに……!?」

 

 モーハの驚愕を聞き流し、ジョーはソウゴを指差して「彼は先程良い事を言いましたよねぇ~?」と言い放つ。

 

「世界を良くする。本当に良い言葉だぁ、共感しました。私もこの鬱々とした環境を変えたくて仕方なかったんですよ」

「どういう事だ!?」

「この世界は腐っています。あらゆる国の裏で大きな陰謀が蠢いている、それによって戦争や貧困が蔓延して……国を動かすはずの政治家共も、欲望にまみれた兄のようなクズばかり。とても陰鬱だ、吐き気がする」

 

 頭を抱えて首を振り、溜め息を吐くジョー。

 その後で大きく唇を歪ませ、ソウゴの顔を見下ろした。

 

「しかし、この仮面ライダーの力が! 英雄の力さえあれば、全ての障碍は取り除かれる! 私という王による世界の統治が可能となるのです!」

 

 ジョーはそう言いながら、モーハの腹の傷口を踏みにじった。当然、モーハは苦しそうに呻き声を上げる。

 そんなジョーへと、リボルブは銃口を向けた。

 

「ざっけんじゃねェ! 要はテメェが独裁したいだけだろうが! そんな大義名分のために、顔色ひとつ変えずに人を撃てるような野郎を王なんて認められるか!」

「フハハハハッ! 王の道に犠牲はつきものでしょう? そもそもまだ死んではいないんですから、落ち着いて欲しいですねぇ」

「テメェェェッ!」

 

 リボルブが叫んだ直後、ザンッ、と大きな音が轟く。

 背後に立っていたアズールが、湧き出ていた残る怪人たちを一息に殲滅したのだ。

 

「その歪んだ欲望……僕らが断ち切る!!」

 

 ソウゴの隣に立ち、剣を掲げてアズールは宣告した。

 するとジョーは呆れた様子で首を横に振り、モーハから足を放す。そして、タイムマジーンに飛び乗った。

 

「飽くまでも私に歯向かうつもりですかぁ。では私の後を追ってみると良い……ま、できればの話ですが」

《キング・オブ・ザ・ライダー!》

 

 再びジョーが自分の持っていた贋作のマテリアプレートを起動。

 それにより、アズールたちの前に形成されていくのは――城の天井を破壊せんばかりの、数多の巨大な怪物の影だ。

 

「マズいぞ! 野郎、なんて事しやがる……!」

 

 翔と鷹弘がそんな会話をしている時だった。

 息を切らしてモーハが立ち上がり、自分の手で傷口を押さえながらソウゴに語りかけ始めた。

 

「……ジオウ。手を出せ」

「モーハ?」

「貴様から奪った最後の力……全てのウォッチを束ねる、グランドジオウの力を返還する」

 

 ハッと目を見張るソウゴに、モーハは静かに頷いた。

 

「本当なら俺がライドウォッチを束ねて使うつもりだったが、これさえ戻ればあの程度の連中に負ける事はないのだろう?」

 

 自信満々に、今度はソウゴの方が頷いた。

 それを見て微笑むと、モーハはソウゴの右手を握る。そして、彼の手を介してソウゴへと力が注ぎ込まれる。

 否、返ったと言うべきだろう。その証拠とばかりに、ソウゴの持つ19のライドウォッチが、踊るように空中を飛び交った。

 

「確かに受け取ったよ。あんたの思いを!」

 

 避難するモーハに振り返って笑ってみせ、ソウゴはそのライドウォッチを起動した。

 

《グランドジオウ!》

 

 ドライバーに装着した後、ライドウォッチを使用した際に流れる変身音が、グランドジオウライドウォッチから流れる。

 それに合わせてソウゴの周囲に仮面ライダーの像が出現、錆びた部分が徐々に剥げ、ジオウを含めた20のライダーの姿が顕わとなった。

 

「変身!」

GRAND TIME(グランドタイム)!》

 

 雄叫びと共に回転するベルト。それと同時に、ライダーの像の背後に門のようなものが現れ、それらを収容した。

 

《クウガ! アギト! 龍騎! ファイズ! ブレイド! 響鬼! カブト! 電王! キバ! ディケイド! ダブル! オーズ! フォーゼ! ウィザード! 鎧武! ドライブ! ゴースト! エグゼイド! ビルド!》

 

 ソウゴの体に、黄金に輝くスーツが装着。

 さらに流れる音声に伴い、門がジオウの体の各部位に貼り付いていき、開いて小さな黄金のライダー像が姿を見せる。

 最後に頭部にジオウの像が合体し、顔面に金縁の『ライダー』の字が刻まれた。

 

《祝え! 仮面ライダー! グランドジオウ!》

 

 これが、20のライダー全ての力を継承した、荘厳なる王。

 仮面ライダーグランドジオウである。

 

「行きましょう、ソウゴさん! これが最後の戦いです!」

「よぉし! なんか行ける気がする!」

 

 仮面越しに微笑み合う二人。

 アズールがアズールセイバーを、リボルブがリボルブラスターを、そしてジオウがサイキョージカンギレードを構え、生み出される敵に向かって走り出すのであった。

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