仮面ライダーアズール スピンオフ・アプリ   作:正気山脈

9 / 19
「ハッ! ホアタァッ!」
「うおりゃ! とりゃー!」

 2020年の帝久乃市。変身した翠月と浅黄は、今もなお異世界の怪人の姿をしたデジブレインとの戦闘を行っていた。
 何しろ数が多い。というよりも、無限に湧いて出てくるのだ。

「んもー、翔くんたちはまだなの!? ウチもー流石にキツくなって来たんだけどー!!」
「今は耐えろ! 過去に行った連中が帰って来れば、いずれ……!」

 言いながら雅龍がスタイランサーを振り回すが、直後に背後から迫って来たロイミュード・デジブレインとオルフェノク・デジブレインの強襲を受け、倒れてしまう。
 それに気取られたザギークも、ワーム・デジブレインやドーパント・デジブレインからの攻撃を受けた。

「チィ……」
「やば……」

 このまま押し切られるかに思えた、その時。
 頭上から黒い炎が降り注ぎ、周囲にいたデジブレインたちが瞬く間に一掃された。

「え!?」

 目を見張るザギーク。一体何が起きたのか、理解が追いつかなかった。
 それでもまだデジブレインたちは増え続けるが、今ので息を整え態勢を立て直す程度の間はできた。
 二人は再び槍を構え、敵勢の怪人へと突撃していく。

「……」

 そんな二人の様子を、ビルの屋上から見下ろす影がひとつ。
 スペルビアだ。先程の黒炎は、彼が放ったものなのだ。

「今、あなた方に死なれてこの世界が元に戻らなくなるのは困りますからねぇ」

 くつくつと笑い、空中で足を組んでスペルビアは観察を続ける。

「あなた方の働きぶりに期待させて頂きますよ、仮面ライダー」


EP.06[タイム・イズ・ナウ]

 アズールとリボルブ、そしてグランドジオウ。三人の仮面ライダーが、続々と現れる巨大な敵に立ち向かう。

 初めに実体化したのは、ケツァルコアトルス・ドーパント。三叉に分かれたクチバシと長い舌、頭の羽根飾りが特徴的な翼竜だ。

 続いて、触覚を生やした巨大な昆虫がその隣に立つ。わきわきと蠢く六本の脚が特徴的なこの怪物は、オトシブミヤミーである。

 

「来ます!」

「オッケー!」

 

 二体の怪物を前にしても、ジオウは堂々とした佇まいで先陣を切り、自分の体にあるライダーの黄金像を二つタッチした。

 

《ダブル!》

《オーズ!》

 

 すると、三人の目の前に門が出現し、その中から二人の仮面ライダーが飛び出した。

 一人は体の左右が緑と黒の配色で、中央が白銀に煌めくガイアメモリの戦士。仮面ライダーダブル サイクロンジョーカーエクストリーム。

 もう一人は全身が紫色となっている、肉体に恐竜の特徴を持つオーメダルの戦士。仮面ライダーオーズ プトティラコンボ。

 ダブルは剣が収納された巨大な盾を持っており、そこには四つのガイアメモリがそれぞれ既に装填されている。

 そして、その盾をケツァルコアトルス・ドーパントに向け、必殺技を発動した。

 

『ビッカーファイナリュージョン!』

 

 さらに、その隣にいるオーズは片手に持った斧を変形させてバズーカを作り、オトシブミヤミーに発射口を向ける。

 

《プ・ト・ティラーノ・ヒッサーツ!》

「いっけー!」

 

 二つの超高火力必殺技は、一撃で怪物を爆散せしめ、直後に二体の仮面ライダーは消え去った。

 その威力にアズールもリボルブも冷や汗をかいている。

 

「……味方で良かった……」

「本当にな……」

 

 しかし、それでもジョーは止まらない。次々に怪物を生み出し続けている。

 続いて出現したのは、巨大だが先程と比べればサイズに劣る青いトンボの怪物。ただし数は多く、王の間を完全に埋め尽くさんばかりに溢れている。

 群れで活動し超高速で飛行するミラーモンスター、ハイドラグーンだ。

 

『クククッ、この数を相手にしながら私を止める事などできないでしょう? 今の内に逃げさせて貰いますよ』

 

 その言葉と同時に、ジョーの乗るタイムマジーンの頭上にトンネルが徐々に開く。

 逃げるつもりだ。それが分かっていながら、アズールたちはハイドラグーンの処理で精一杯だった。

 

「行かせない……!」

《フィニッシュコード! Alright(オーライ)! マジック・マテリアルスラッシュ!》

 

 堅岩・流水・爆炎・轟風、四つの魔法の力を宿す斬撃が乱れ飛び、タイムマジーンへと向かう。

 しかしハイドラグーンが盾となって、消滅しながら全て防いでしまった。

 

「くっ!?」

 

 まずい、とアズールは思う。

 このままジョーが逃げてしまうと、手がかりとなるものが一切ない以上、追跡は極めて困難になるのだ。

 今この場で決着をつけなければならない。だが、無情にも時は訪れた。

 

『道は完全に開いた! では諸君、ごきげんよう!』

 

 タイムマジーンがバイク形態に変形し、浮遊。そのままトンネルへと飛び込まんとする。

 その寸前。トンネルの入口に、カーテンのようにオーロラが張られ、ジョーのタイムマジーンはそこに突撃した。

 

『……? へっ、あれ……?』

 

 直後に、タイムマジーンは議事堂の屋根から王の間へと一直線に突き刺さり、ハイドラグーンを潰しながらライダー三人の前に再び姿を現す。

 

「なっ!? なんだこれは、一体何が起きた!?」

 

 破損して使い物にならなくなったタイムマジーンから脱出しながら、ジョーは当惑した様子で叫ぶ。

 すると、王の間の入口から複数の足音が転がり込んでくる。

 その先頭に立つ者。それは、ディケイドだ。

 

「俺がいる事を忘れていたようだなぁ?」

「ディケイド……おのれぇ!!」

 

 ダンッ、とジョーは拳をタイムマジーンに叩きつける。

 さらにディケイドの背後には、ディエンド・白ウォズ・黒ウォズ・ツクヨミ、そしてゲイツマジェスティが立っていた。

 ゲイツの姿を見たソウゴは、感激した様子で手を叩いている。

 

「おぉ~! ゲイツなんかカッコよくなってるじゃん!」

「茶化すな……それより、あの恥知らずを仕留めるぞ!」

 

 グランドジオウとゲイツマジェスティが並び立ち、さらにジオウの右隣にウォズギンガファイナリー、ゲイツの左隣にツクヨミが加わる。

 魔王の仲間が揃い踏みだ。彼らの行く手を阻むのは、元人間の巨大な怪物、エラスモテリウムオルフェノク。さらに、ウィルスの集合体であるバグスターユニオンだ。

 それらを目にして、四人は頷き合って、言葉を交わすまでもなく行動に移った。

 

《ファイズ!》

《カイザ!》

《エグゼイド!》

《ブレイブ!》

 

 グランドジオウの手にガシャコンキースラッシャーが握られ、さらにツクヨミにはフォトンバスターモードのファイズブラスターが装備される。

 ゲイツの前にはサイドバッシャーが出現し、ウォズはジカンデスピアとガシャコンソードを同時に装備している。

 それぞれ、各敵怪人に有効な武器を手にしたのだ。

 

「喰らえぇぇぇ!!」

 

 ガシャコンキースラッシャーとファイズブラスターの砲撃が、サイドバッシャーのミサイル爆撃が、ガシャコンソードの極氷が怪人たちを打ち砕く。

 これにより、ハイドラグーンも全て消失。

 完全に追い詰められ、舌打ちしたジョーは懐からアナザーアズールライドウォッチを取り出した。

 

「こうなれば奥の手を使わせて貰いますよ!!」

《アズール……》

 

 言いながらアナザーアズールウォッチを起動し、体内に埋め込むジョー。

 そうして、アナザーアズールに変身した瞬間、あるものを左腕に装着した。

 トランサイバーだ。そして、右手には《キング・オブ・ザ・ライダー》のマテリアプレートを握っている。

 

「……まさか!?」

 

 瞬間、翔は気づいた。ジョーの真の狙いに。

 

「もう遅い! これで私の勝利だ!」

《キング・オブ・ザ・ライダー!》

 

 起動後、ジョーはトランサイバーにそのプレートを装填。電子音声が流れ始めるのを聞きつつ、トランサイバー中央のENTERアイコンをタッチする。

 

《アイ・ハヴ・コントロール! アイ・ハヴ・コントロール!》

背深(ハイシン)!」

Roger(ラジャー)! マテリアライド!》

 

 音声入力に伴って、アナザーアズールの姿がさらに変異していく。

 それはまるで、グランドジオウやゲイツマジェスティのように。全身の各所に小さな檻のようなものが現れ、その中に小さな仮面ライダーの姿が見える。ただし、顔は粉々に砕かれ鎖で手足を繋がれているが。

 頭頂部には左右で真っ二つに割れた小さなジオウの頭部が冠のように乗っており、顔にも身体にもアナザーアズールとしての面影は既にない。

 

《キング・アプリ! 新時代の覇王、トランスミッション!》

 

 変わり果てた自分の姿を見て、ジョーは高々と歓喜の声を発する。

 

「クヒッ……フハハハハハハ! やったぞ! これで私はアナザーライダーにしてサイバーノーツ、そして平成ライダー全ての力を持つ究極の時の王者となったのだ!!」

「究極の時の王者……!?」

「名付けるとするならば、この陰鬱たる世界に革命を齎す者……そう、陰鬱の革命家(ミゼラブルレボリューショニスト)と言ったところかな?」

 

 自身に満ち溢れた様子で、自称王のミゼラブルは言い放つ。

 しかし、ディケイドはそんな彼を鼻で笑った。

 

「お前、バカだな」

「なに……?」

「考えられる限りで最悪の選択をしたって言ったんだよ」

 

 ミゼラブルはそんな言葉を、相手と同じように一蹴し、トランサイバーに手を伸ばす。

 

「ならば試してみるが良い。私の力と君たちの力……どちらがより優れているのか!!」

Roger(ラジャー)! ファーストコード、オン!》

 

 トランサイバーのボタンをひとつ押し込むと、ミゼラブルの周囲に無数の仮面ライダーオーズ ブラカワニコンボが出現する。

 ただし、ミゼラブルの体の檻に収容されているものと同じで顔面は割れているため、もはや偽物(デジブレイン)である事を隠す気さえない。

 その姿を目にしたツクヨミは、大いに驚いていた。

 

「どうしてオーズがこんなに……!?」

「私の力で生み出したデジブレインに、ライダーの力を注ぎこめば……この程度、造作もない!」

Roger(ラジャー)! セカンドコード、オン!》

 

 続いて、ミゼラブルは別のボタンを押す。

 今度は顔の割れた仮面ライダー電王 ソードフォームが数体、先程までの巨大怪物と同程度のサイズで出現した。本来、このような能力はないのにも関わらず。

 

「増殖や巨大化するはずのないライダーたちが続々と!?」

「これじゃ革命というより冒涜だな」

 

 ゲイツとディケイドのそんな会話もよそに、ミゼラブルはさらにボタンを押していく。

 

Roger(ラジャー)! サードコード、オン!》

 

 今度は仮面ライダービルドが使用するフルボトルバスターが出現し、ミゼラブルの手に握られた。

 

「さぁ行くぞ! 王の力の前に平伏せぇ!」

 

 巨大電王が剣を振り、ディケイドたちに斬りかかる。アズールは空を飛んで難を逃れるが、他のライダーたちは回避し切れず、壁に吹き飛ばされた。

 

「うわあああ!?」

「みんな!?」

 

 振り返り救援に向かおうとするアズールだが、その彼にもミゼラブルの魔の手が迫る。

 フルボトルバスターによる地上からの砲撃だ。

 

「わっ!?」

「フハハハハ! 堕ちろ、小バエが!」

「くっ、この!!」

 

 ミゼラブルの乱れ撃ちに四苦八苦しつつも、攻撃を避け続けるアズール。

 巨大電王の体を盾にして凌ぎ、打開策を見つけ出そうとする。

 せめて、近づく事さえできれば。方策を考えている間にも、巨大電王やミゼラブルの攻撃は続く。

 

「飽くまでも隠れるつもりなら……こんな手はどうかな!?」

Roger(ラジャー)! フォースコード、オン!》

 

 ミゼラブルが最後のボタンを押すと、無数のオーズ・巨大電王・フルボトルバスターが光に包まれ、形を変えていく。

 そうしてオーズは龍騎に、巨大電王は巨大ウィザードに、フルボトルバスターはザンバットソードへと変化する。

 が、龍騎はただ獣のように飛びかかったり、ウィザードは魔法を使う素振りを一切見せない。やはり完全な偽物のようだ。

 

「さぁ、捕まえろ! 処刑は私の手で直接行う!」

 

 巨大化した偽ウィザードの手が、命令通りにアズールへと伸ばされる。

 だが。

 

《ファイズ!》

FINAL FORM RIDE(ファイナルフォームライド)! FA-FA-FA-FAIZ(ファ・ファ・ファ・ファイズ)!》

 

 その時、ジオウとディケイドが同時に動いた。

 グランドジオウの能力によって通常形態のファイズが召喚され、それを確認しながらディケイドが自らのドライバーにカードを差し込む。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

 そう言いながら、ディケイドがファイズの背中に自分の手を突き入れると、ファイズの身体が巨大な銃器に変形していく。

 これはディケイドの使用する一部のライダーカードの特性で、他のライダーを武器にする事ができるのだ。

 

「ツクヨミ、使え」

「分かった!」

FINAL ATTACK RIDE(ファイナルアタックライド)! FA-FA-FA-FAIZ(ファ・ファ・ファ・ファイズ)!》

「ハァーッ!」

 

 ポイントマーカーが龍騎とウィザードの脚にセットされ、大出力の光線が照射。そのまま龍騎もろともウィザードを消し飛ばした。

 

「な……!?」

「今だ!」

 

 目の前から敵が消え、アズールは飛翔したままミゼラブルへと接近する。

 アズールセイバーとザンバットソードがぶつかり合い、金属と金属の擦れ合う音が耳に突き刺さる。

 見れば、既に残りのデジブレインたちもゲイツと黒ウォズの手で大きく数を減らされていた。

 

「チッ、思ったより厄介ですね……! ですが!」

 

 ザンバットソードを握る手の力を強め、アズールを押し返すと、ミゼラブルはまたもトランサイバーへと手を伸ばそうとする。

 その時、銃声と同時にミゼラブルの指が弾かれた。

 

「ぐっ!?」

 

 リボルブの精密な速撃ち(クイックドロウ)が炸裂したのだ。

 これまでのサイバーノーツとの交戦経験から、このタイミングでエフェクトを発動する事を、彼は見抜いていたのだ。

 

「この……ぐおっ!?」

 

 今度は反対側から、頭部への発砲。ディエンドの仕業だ。

 全く無関係のタイミングで行われたため、彼の場合はただの嫌がらせ程度のものらしい。

 その後も、エフェクトを使おうとすればリボルブに妨害され、便乗したディエンドが嫌がらせで追撃。

 二つの銃撃で冷静さを欠いたミゼラブルは、怒り狂ってザンバットソードをディエンドに向かって投げつけた。簡単に回避されてしまったが。

 

「いい加減にしろよお前!! そんなに死にたいのなら今すぐ……!?」

 

 直後、突然周囲に影が差し込み、ミゼラブルの身体が持ち上がる。

 巨大な機械の手が、自分を握っているのだ。

 見覚えがある。つい先程、ミゼラブル自身が作り出して使い物にならなくなったはずのタイムマジーンの手。

 

『捕まえた』

 

 タイムマジーンの中から聞こえる声の主は、白ウォズだ。

 仮面ライダーウォズがミライドウォッチによって変化する形態、フューチャーリングキカイ。その能力によって、タイムマジーンをこの短時間で完全に修理してしまったのだ。

 

「何ィィィッ!?」

 

 ブンッ、とタイムマジーンに乗った白ウォズは、ミゼラブルを投げ飛ばす。

 その先にいるのは、巨大な青い剣を持ったアズールだ。

 これはグランドジオウの能力で呼び出されたブレイドをディケイドのファイナルフォームライドで変形させた、ブレイドブレードだ。彼はこれを持って、飛んで来るミゼラブルを待ち構えている。

 

「ヒッ……」

「これで、どうだぁぁぁ!!」

FINAL ATTACK RIDE(ファイナルアタックライド)! B-B-B-BLADE(ブ・ブ・ブ・ブレイド)!》

 

 ディケイドのカード発動と同じタイミングで、アズールは咆哮と共に剣を振り下ろす。

 解き放たれた光の斬撃がミゼラブルを斬り裂き、大きな深手を負わせた。

 

「が、ぐっ……な、なぜだ!? サイバーノーツでありアナザーライダーの力を持つ私に、攻撃が通じるはずがないのに!?」

「まだ気づいてないのか? 自分のミスに」

 

 その言葉を放ったのは、ディケイド。確信に満ちた眼差しを、ミゼラブルに向けている。

 見れば、そんな目をしているのは彼だけではない。アズールもリボルブも、ジオウやゲイツ、ツクヨミにウォズにディエンドでさえも、その真実に辿り着いている。

 状況を理解していないのは、ミゼラブルだけだ。ディケイドは、溜め息混じりに彼に語りかける。

 

「確かにアナザーライダーは同じライダー以外の攻撃では倒されない性質を持っている。が、お前はそのマテリアプレートで全ライダーの力と融合しただろ?」

「それが一体……ハッ!?」

「そうだ。お前は『同じライダーの力が弱点になるアナザーライダー』と『全ライダーの力を持つサイバーノーツ』の力を融合させた事で、確かに全ライダーの力を操る事ができるようになったが……同時に、『アズールを含める全ライダーの力が弱点』になったんだよ」

 

 ようやく自分の身に置かれた状況に気づいたように、ミゼラブルは自分の両手を見る。

 さらにそこへ、黒ウォズとディケイドが言葉を投げかけた。

 

「おまけに、君自身の力で生み出したデジブレインは、君と同じ性質を持つようになる。つまり……いくら偽物を呼んでも、攻撃能力が少しあるだけで弾避けにもならないって事さ」

「小せぇ器に欲張って詰め込むからそんなザマになるんだよ……今のお前はアナザーライダーにすら劣る、王なんか務まるワケがないって事をそろそろ理解しろ」

 

 わなわなとミゼラブルが身を震わせる。

 プライドを傷つけられ、恥をかかされ、辛酸を舐めさせられ。苛立ちが募っているのだ。

 

「まだだ……まだ終わっていない! 私が! 私だけが! この世界を変えられるんだ! 私が王になれば全てが正しくなるんだぁぁぁ!!」

「王になったからって、一人で変えられる世界なんてない!! みんながいるから変わるんだ!!」

「黙れ!! 黙れ黙れ黙れ!! 黙れぇぇぇ!!」

《オーバードーズ! ビーストモード、オン!》

 

 ジオウの言葉にも耳を貸さず、妨害されるよりも前に、ミゼラブルは素早くトランサイバーのリューズをひねる。

 するとミゼラブル全身がモザイクで覆われ、キャパシティを超えた膨大なカタルシスエナジーによってその体が泡立ち、巨大化する。

 体にあった鉄の檻は全て溶け合って大型化し、背中に移動。眼球は冠のようであったジオウの割れた顔と融合し、手足さえも喪失した。

 飛行能力も完全に失い地を這う姿は、まるで蝸牛だ。

 

「……ヤケクソになりやがったな」

『だが、少なくとも先程よりは戦えるようだね』

 

 リボルブの言葉に反応する白ウォズ。見れば、ビーストミゼラブルの能力によって既にデジブレインが召喚されていた。

 今までと同じように、顔の割れたライダーの姿をしたデジブレインだ。しかしその手に持つ武器はバラバラで、マイティフォームのクウガがハンドル剣とドア銃を持っていたり、鎧武が音撃棒を持っていたりする。

 その上、戦闘能力も今までとは段違いに高く、アギトの持つガンガンセイバーの銃撃だけでタイムマジーンの左腕が吹き飛んでいた。

 

「確かに強いらしい! 気をつけるんだ、我が魔王!」

 

 黒ウォズの声援を受けつつ、ジオウはビーストミゼラブルへと立ち向かう。アズールもその隣に並んだ。

 そしてジオウの右手に光が集まると同時に、ジクウドライバーに装填された二つのライドウォッチが外れ、最後の力が取り戻される。

 黄金に輝くその力の名は――オーマジオウライドウォッチだ。

 

「その歪んだ願い……僕らが断ち斬る!!」

《ブルースカイ・アドベンチャーV2!》

「この世界の過去も、今も、未来も!! 絶対に奪わせない!!」

《オーマジオウ!》

 

 二人はそれぞれのベルトにマテリアプレートとライドウォッチを差し込み、アズールはマテリアフォンをかざし、ジオウはベルトを回転させた。

 

Alright(オーライ)! オプティマイズ・マテリアライド!》

《キングタイム!》

 

 そしてアズールとジオウは、姿を変えながらビーストミゼラブルの方へと駆け抜けた。 

 

《ブルースカイ・アプリV2! 蒼天の大英雄、インストール!》

《仮面ライダージオウ! オーマ!》

 

 現れたのは、額にジオウのライドウォッチを装備している、黄金のジオウ。

 背中には二本の大きな時計の針が伸びており、グランドジオウのような荘厳さを感じさせる凝った装飾はないが、それ故に神秘的かつ無駄がない。

 仮面ライダージオウ オーマフォーム。

 オーマジオウの力を継承し、常磐ソウゴが辿り着いた最終王者の姿だ。

 

「ルロロロロロロォォォ!!」

 

 自分に向かって来るアズールたちを威嚇するように、ビーストミゼラブルが咆哮し、両眼のジオウの仮面が輝く。

 すると二人の前に、何体もの偽ライダーたちが生み出された。

 その瞬間、ジオウの背中に付いた時計の針『アラウンド・ザ・クロック』が回転を始める。

 それによって偽ライダーたちは全て錆びついたように固まって動かなくなり、そこをジオウが殴って消し飛ばした。

 

「ルルルルッ!!」

 

 負けじと、ビーストミゼラブルはまた仮面を輝かせて偽ライダーを召喚する。

 今度呼び出す位置は、ジオウたちの背後。

 

「やらせん!!」

 

 しかしそれは、ゲイツたちが必殺技を発動して阻んだ。

 

《エル・サルバトーレ! タイムバースト!》

《超ギンガエクスプロージョン!》

《フルメタルブレイク!》

《タイムジャック!》

FINAL ATTACK RIDE(ファイナルアタックライド)! DE-DE-DE-DECADE(ディ・ディ・ディ・ディケイド)!》

FINAL ATTACK RIDE(ファイナルアタックライド)! DI-DI-DI-DIEND(ディ・ディ・ディ・ディエンド)!》

 

 ゲイツマジェスティがライダーの武器を無数に放って制圧し、頭上からは黒ウォズのギンガの能力によるエネルギー弾が降り注ぎ、巨大な個体は白ウォズが討滅。

 さらにツクヨミはゲイツの発射した武器をそのまま手に取って白いエネルギーを付与して次々に攻撃し、ディケイド・ディエンドは極大の光線で敵を全て薙ぎ払った。

 

「ルゥ……ルルォォッ!!」

 

 それでもビーストミゼラブルは召喚を続けようとする。

 今度は武器の召喚、ゲイツがやったようにアズールとジオウへと放射して来る。

 だがジオウが両腕を前に突き出し、そして左右に開くと、向かって来た武器はぶつかる事なく腕を動かした方角へと飛んで壁に埋まった。

 

「ルッ!? ……ルガァァァ!!」

「これ以上は何もさせない」

《ライドヘイセイバー!》

 

 ジオウの手に、ピンク色に輝く刃を持つ、中央に時計の針が付いた武器が握られる。

 ディケイドアーマーに変身した際に装備する、ライドヘイセイバーだ。本来ライドウォッチを装填する位置には、サイキョーギレードに付属するジオウの仮面がはめ込まれている。

 歩きながら、ジオウは何度も何度も中央の針を指で回転させた。

 

Hey(ヘイ)! 仮面ライダーズ!》

「うおおおおおおおっ!」

Hey(ヘイ)! Say(セイ)! Hey(ヘイ)! Say(セイ)! Hey(ヘイ)! Say(セイ)!》

「ハアァァァァァァッ!」

《キング! 平成ライダーズ! アルティメットタイムブレーク!》

 

 20の平成ライダー全ての力が込められた、強烈な光の斬撃。

 横薙ぎに放たれたそれは、ビーストミゼラブルの両眼を裂いて破壊し、さらに下から上へと斬り上げ、巨体を上空に打ち飛ばした。

 

「ルギィィィィィッ!?」

 

 吹き飛ばされたさらにその上にいるのは、アズールセイバー・サイクロンモードを構えるアズールだ。

 既にマテリアプレートを装填しており、必殺の準備を整えている。

 

Alright(オーライ)! ブルースカイ・サイクロンマテリアルスラッシュ!》

「そぉりゃあああああっ!」

 

 叫びながらアズールは剣を振り下ろし、そのままビーストミゼラブルと共に地上に向かって降下する。

 高所から地面へと墜落し、悲鳴を上げるミゼラブル。もはや、抵抗の術さえ残されていない。

 

「ルォオオオォォォ……ワタシ、ハ……セカイヲ……!!」

 

 それでも未練がましく、己の欲望に縋り付く。

 アズールとジオウはそんな彼に終止符を打つべく、動いた。

 

《アクセラレーション!》

《キングフィニッシュタイム!》

「あなたの(欲望)は……」

「ここで終わりだ!!」

Alright(オーライ)!》

 

 発動の瞬間、二人は同時に飛び上がる。

 そしてミゼラブルの周りを取り囲むように、四方八方へと金色の『キック』の文字が散布された。

 逃げ場がない。今のジョーにそんな思考ができているのかは定かではないが、少なくとも恐怖は感じているらしく、震える声で鳴いている。

 

「ル、ル……!?」

《スーパーブルースカイ・マテリアルバースト!》

《キングタイムブレーク!》

『ハァァァァァーッ!!』

 

 アズールとジオウ、二人の叫びが重なり合い、必殺のキックがビーストミゼラブルに炸裂。

 胴体に大きな穴を空け、その巨体に見合った爆発を引き起こし、木っ端微塵となった。

 

「ギャアアアアア!?」

 

 悲鳴と共に変異が解け、ジョーは地面に倒れ伏す。その拍子に、マテリアプレートが地面に転がり落ちた。

 四つん這いになりながらも立ち上がろうと足掻くものの、五体は空間ごと歪んで徐々に消失し、立つ事さえままならない。

 その悲痛な姿を見て、変身を解除した翔は思わず声を上げた。

 

「アレは!?」

「不完全なウォッチと力を使った報いだよ。彼の肉体は、もうこの時空に留まる事はない」

「どう……なるんですか?」

「どうにもならない。この世界から引き裂かれて、どこに向かう事もなく、無となるだけだ」

 

 白ウォズの言葉を耳にして、翔の表情は暗くなっていく。

 翔は、ただジョーを止めたかっただけだ。こんな結末を望んでいたワケではない。

 そう思っていると、呻くジョーが翔の顔を見据える。

 怨恨や負け惜しみから睨みつけているのではなく、それはむしろ、翔に対する『憐憫』に近いものだった。

 

「く、そ……なんという事だ……私が、世界を変えるはずだったのに……死ぬと、いうのか……」

「……」

「後悔……するぞ……私を、王にしなかった事を……特に、君はな」

「え……?」

「真実は……いつだって、残酷なものだ。この世界には、その『残酷な真実』が多すぎる……暴いてはならない、狂気と悲劇が……。君はいずれ……今日という日を、この選択を、一生悔いる事になるぞ――!!」

 

 その言葉を最後に、ジョー・ヒサミネの肉体は20に分割され、塵となる。

 苦悶の断末魔を発しながら、跡形もなくこの世から消え去った。

 戦いは終わった。そして領域の主が消失した事により、サイバー・ラインも崩壊が始まる。

 

「うおっ、やべェ!」

「元の時代に戻るぞ! 急げ!」

 

 ゲイツが叫んだ直後、仮面ライダーたちと避難していたモーハはオーロラのカーテンに包み込まれるのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 数刻の後。

 門矢 士の素早い対応によって、翔たちは無事に2020年に戻った。場所は帝久乃市の緑地公園だ。

 モーハの他にも、拘束された状態のドーサ・ローパが転がっている。そして何より、街に溢れ返っていた怪人の姿がない。

 平穏は取り戻されたのだ。その事実を改めて確信し、翔は安心したように息をついた。

 

「良かった……皆が無事で」

 

 そう言いながら、翔はソウゴの方を振り返った。

 ソウゴはフッと微笑み、翔に向かって右手を差し出す。

 

「一緒に戦ってくれてありがとう。助かったよ」

「それはこっちのセリフですよ! これで僕の世界は元に戻るんですよね?」

 

 訊ねると、ソウゴはどこか曖昧な笑みを見せた。

 不思議そうに翔は首を傾げる。直後、彼にとって信じられない出来事が目の前で起こった。

 周囲の風景、そして人々の身体が、光とともに透け始めているのだ。

 翔自身も、鷹弘も。

 変化がないのはソウゴとゲイツとウォズ二人とツクヨミ、士と海東、そしてNEWタイムジャッカーたちだ。

 

「ソウゴさん!? これは!?」

「歴史が元に戻り始めてるんだ、本来あるべき形に。もうじき、君の記憶から……俺たちの事も消える」

 

 それを聞いて、翔は安心すると共に寂しさを感じる。

 せっかく出会った彼らの事を忘れてしまうのが、惜しくなってしまった。

 ツクヨミも同じ気持ちでいるのか、僅かに目に涙を浮かべていた。

 

「アシュリィちゃんにもお別れを言っておきたかったんだけどね」

「まぁ、こうなっては仕方がないだろう」

 

 腕を組みながら、ゲイツはそう言った。

 そして鷹弘が近付いてくるのを確認すると、互いに何も言わず、拳と拳を軽くぶつけ合わせる。

 一方、黒ウォズは白ウォズと話していた。

 

「白ウォズ、君はどうするんだい?」

「彼らに元の世界に帰して貰うさ。何がどうあっても、そこが私のいるべき場所だ」

 

 白ウォズは士を見て、そう言った。

 黒ウォズは僅かに視線を俯かせて「そうか……」と、心配そうに呟く。

 

「君たちが気に病む必要はない。私は……我が救世主の戦いを見届ける事ができた。それだけで充分だ」

 

 黒ウォズの肩に手を置き、白ウォズは満足気に微笑む。

 そして士の隣に立って、頷いた。口には出さないが、別れの言葉は済んだと。

 士も頷き、続いて海東の方を確認する。

 

「お前はどうすんだ、海東」

「士と同じだよ、また旅を続けるだけさ。お宝も手に入ったしね」

 

 海東は懐からあるものを取り出し、見せびらかす。

 例の《キング・オブ・ザ・ライダーズ》のマテリアプレートだ。戦闘後のドサクサに紛れ、回収していたのだろう。

 

「相変わらずだなお前……。……俺も、そろそろ帰らせて貰う。じゃあな」

 

 そう言って士は翔に向かってトイカメラのシャッターを押し、オーロラカーテンからソウゴたちとNEWタイムジャッカーのタイムマジーンを召喚した後、白ウォズと共にその場から姿を消す。

 海東も、軽く手を振って同じくこの世界から去った。

 それを見届けた後、ソウゴたちも各々タイムマジーンに乗り込んで行く。

 

「じゃあね! もし、いつかまた俺たちの道が交わる事があったら……」

「はい! その時はまた、一緒に遊びましょう! 平和になった世界で! たとえ今日の事を忘れてしまったとしても……僕、待ってます!! 皆さんと会ったこの空を、護り続けます!!」

 

 トンネルに向かって消えていくロボットたちに、中にいる者たちにも見えるように大きく手を振る翔。

 ――そして、歴史は正された。




「んんー……」

 明朝。
 いつものように、自分のベッドの上で翔が目を覚ます。大きく伸びをして、着替えてから荷物を持って部屋を出る。
 そして、いつものように朝食の準備だ。前日に余った、生姜焼きの残り物だが。

「……あれ?」

 不思議そうに、翔は首を傾げる。以前にも、何か同じような事があったような。
 しかし、これは自分にとっていつもと変わらぬ日常なのだ。以前に同じ体験をしていたとしても、何もおかしくはない。
 だが翔には、朝起きてからずっと妙な感覚があった。
 長い、長い夢を見ていたような。内容は思い出せないが、戦って、戦って。しかし、大切な出会いがあった。そんな夢を。

「……気のせいなのかな」

 そう結論付けて、翔は窓から空を見上げる。
 いつもと変わらない、どこまでも広がる青い空を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。