負けイベントに勝ちたい   作:暁刀魚

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EX.リリスと百夜の千夜一夜物語 その2。

 ――リリスは私の親友で、大切な人で、失いたくない人だ。

 

 白光百夜は永くを生きる。その中で無数に出会いはあって、今でも強烈に印象に残っている存在は数多くいるけれど、ともに生きてくれる人はいなかった。

 それはそうだ、百夜と人間では生きる時間が違う。存在そのものが隔絶している。

 

 それを苦に思ったことはないけれど、それ故に私が誰かにとっての部外者であることは、紛れもない事実だろう。

 というよりも――私は部外者であることが好きだ。ただ強いものと後腐れなく戦い、その強いものが何を為すか、遠くから眺めたい。

 そのためには永く生きることは大事なパーソナリティで、私の一部だ。

 

 歴代の、ローブと剣の魔法使いに、その生き方は寂しいと言われたことがある。彼らは仲間に恵まれて、一人でいることを嫌う人達だ。

 ――多くの人間にとって、善良で気丈な人間にとって、誰かと共に歩く時間はかけがえのないもので、何よりも尊ぶべきものだという。

 それを否定はしないけれど、それは私の生き方ではないと、私は常々思っていたのだ。

 

 

 ――だから、まさか自分にそんな人ができるとは、思いもよらなかった。

 

 

 けれど、できたからこそ思う。そういう人は、()()()()()()()()()()()()()()から大切なのだ。そうでない人は、たとえどれだけ好ましくとも、ともにはいられない。いつかは置いていかれてしまう。

 そう考えると、私は最初からそういう心の自衛ができていたのだな、と思う。

 

 人間性がない、と多くの人に私は言われるけれど、そんなことは決してない、私だって考え、思い、それを行動に反映して生きている。

 他人にそれが伝わらないのは、私が伝えるのは苦手だったのと、伝える必要性が薄かったから。

 

 彼らにとって、私は彼らとは違う存在なのだから。わかり合う必要は、残念ながら存在しなかった。

 

 リリスは、私と一緒に生きてくれる人だった。

 それは、まぁフィーも、紫電も、敗因もそうだけど。その中でも、とびきり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のがリリスだった。

 

 強さでは、直接戦闘能力がない分、あのメンバーの中では最弱で、直感で生きるために、あのメンバーの中では行動の中心になることは少ない。

 でも、私が一番惹かれたのはリリスだった。行動の理由がわからないからだ。

 何を言っているかはわかる。彼女は言葉を省略するきらいがあるけれど、きちんと順序立てて考えてみれば、それは論理的な思考の上で成り立っていることがわかる。

 

 そういうと、敗因から変な顔をされるけど、あの中で一番行動に突拍子がないのは敗因だ。ただ、どうしてそういう行動を取るのかは理解できるので、まだ私の中では飲み込みやすい人物だ。

 行動は読めないけど、行動原理は単純明快、そんな感じ。

 

 ――その真逆にあるのがリリス。行動の意図はわかるけど、そうなった原因はわからない。敗因はどうしてか、行動の意図は読み取れないのに、原因は読み取れることが多い。

 まぁ、このコンビも大概へんなコンビだと思う。

 

 あのパーティは、居心地がいい。

 共に同じ時間を歩いてくれる人達、私がいてもいい、もっといたいと思える場所。そんな中にいられたのは本当に幸運で、喜ばしいことで。

 

 ――生命には必ず終わりがある。私達のような存在は、その終わりがいつになるかはわからない。ただ、今の所――自分からそれを終わらせようという意思は、私の中には一片たりとも存在しなかった。

 

 

 そう、何モノにも終わりはあって――

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 ◆

 

 

“あーら! あらあらあらあらぁー!”

 

「……ッ」

 

 迫ってくる。

 何か、()だ。

 

()()()()()()()()()()()じゃなああああい! それが最強を名乗る概念使いの強さなのおおお!?”

 

 岩。

 それも、一種類ではない。

 焔をまとった岩、風をまとった岩、凍りついた岩、電撃を帯びた岩。

 とにかくすべて岩だった。

 

 それらが、音を超える速さで迫ってくる。

 

「……“W・W(ホワイト・ウィンドウ)”」

 

 それを、私は光の檻で弾きながら、その中を駆け抜ける。時折、岩の余波が私の身体を傷つけるけれど、この程度ならリリスの回復で問題なくフォローできる。

 しかし――

 

「“G・G(グローリィ・ゴースト)”」

 

 放つ遠距離攻撃。

 

“そんな見え見え、通るわけないでしょおおお!”

 

 ――ラファ・アークの周辺に浮かんでいた岩が彼の手の動きに合わせて誘導され、攻撃を弾いた。それに使われた大岩が、焔や稲妻をまとって飛んでくる。

 

“『大・岩(エレクト)』、『大・岩(フレイム)』”

 

 そして、それが放たれた直後には、再び周囲には大岩が浮かんでいた。

 

「それ、どこから来てるのー!」

 

“私の乙女袋からに決まってるじゃなあああい!”

 

 大きく飛び退いて躱しながら、そんなリリスとラファ・アークのやり取りを聞く。意味がわからない、理解できないが、する必要もない。

 

“『カバリツケ』、『チリザイ』”

 

 お祖父様がその力を振るう。風のギロチン、焔の振り子。もちろんこれも、大岩に弾かれる。

 弾かれた大岩はお祖父様に射出され――直撃する。あの巨体では躱しようがない。

 

“面倒な……”

 

 ――厄介なのは、あの岩の補充速度だ。ラファ・アークの周囲には常に十個近い大岩が展開され、射出されればそれと同時に次が補充される。

 この間に間断がないのだ。

 一切の隙間なく、常に侍らせているあの大岩は、さながら奴に忠誠を誓う騎士といったところか。

 

 何を言っているんだろう、私は……

 

「リリス」

 

「ガッテン」

 

 普通にやっただけでは近づけない。本気の私ならともかく、今の私では、無理やりあそこに割って入ることができないのだ。

 

 故に――

 

「出し惜しみはしない。“H・H(ホーリィ・ハウンド)”」

 

 ――最大火力を開放する。

 リリスのバフも乗ったそれは、間違いなく強化されていない嫉妬龍、暴食龍くらいなら一撃で吹き飛ばす威力だ。加えて――

 

“合わせるのも億劫だが……『ハメツ』”

 

 ()()()()()()()も加わって、これを無傷でやり過ごすことは不可能と言ってもいいだろう。それこそ、傲慢や強欲のような能力でも有していない限り。

 

 しかし。

 

 

“あらァ――夢見がちねぇ、あなた達”

 

 

 ――ラファ・アークは、しかし。

 傲慢のような無敵も、強欲のような不死身も。それこそ、敗因のような不可思議の無敵時間もなく。

 

“アメぇんだよ! 『大岩・集合(グレーター・ウォール)』!”

 

 周囲に出現した大岩が、()()()()()()()()()()()()

 

「な――」

 

 思わず、口から驚愕が漏れる。

 こんなこと、今までなかったことだ。私の最大火力を耐えたものはいた。何らかの手段で躱したものもいた。しかし、()()()()()()()()()()()()()()ものなどいなかった。

 自慢ではないが、私は強い。ここにいるものは、皆一線級の戦力だ。お祖父様だって、リリスだって。

 

 ――だが、今の攻防だけで、ラファ・アークはそれを上回ってきた。

 

 解ってはいたつもりだった。これまでの戦闘でも、それは間違いなく解っていたのだ。四天は強い、ウリア・スペルは最強を名乗ったし、ガヴ・ヴィディアは紫電を苦しめた。

 ああ、でも……

 

「……こんな奴に」

 

 思わず、溢れる。

 

“あらぁ? ――それは、アタシが四天だからいってるのかしら?”

 

 地獄耳、ポツリとこぼれたその言葉に、ラファ・アークは耳ざとく反応してきた。しかし、否定はできない。偽らざる本音だ。

 

「……最強は、私」

 

“その最強、アタシに弾かれてるんですけどーーーーー! マジ爆笑なんですけどーーーーー!!”

 

「違う。()()()()()()()()。敗因でも、強欲でも」

 

“ふぅん?”

 

 ――ラファ・アークは意外そうにこちらを見る。私が戦闘狂だと知っていれば、最強の座を他に明け渡すことが、気に入らないのだと思うかも知れない。

 でも、違うのだ。

 私にとって気に入らないのは、

 

「お前は……望んでも、いない」

 

 ()()()()()()()()()()が最強を望むことだ。敗因は何者にも負けないことを是とし、強欲は明確に最強を目指した。

 傲慢もそうだろう。あいつは常に頂点であろうとした。

 だから、そいつらが最強を目指すなら、歓迎する。最終的に勝つのは私だとしても。

 

 でも、こいつは違う。

 

「当たり前、みたいな顔で。望みもせず、目指しもせず。なのに最強を……名乗るな」

 

“あはァ――バカねぇ”

 

 ――言葉とともに、ラファ・アークの周囲に岩石が更に浮かぶ。――まだ、増えるのかと歯噛みする。こんなにもあっさりと、私の最強を打ち崩すそれを、これみよがしに。

 だが、違った。

 

 ――浮かび上がったそれは、さらに天上へとむかい昇っていくのだ。

 

“――私をウリアやガヴと一緒にしないでくれる? アタシはあんな連中とは違う。アタシは主様に、()()()()()()()四天なのよォ?”

 

 焔を纏う。

 否、焔ではない、あの岩は熱だ。熱をまとっているのだ。概念としては知っている。アレは――空より来る流れ星。隕石というやつだ。

 

“主様の思う最終形が私なの。最も優れた私は、否応なく最強なのよ。つまり、わかる?”

 

「……お前が、そう名乗らなくとも……マーキナーはそう目指して……作った?」

 

“そういうことよぉ、だからぁ――てんで笑っちまうんだよなぁ! なぁにが望んでないだ! これが最強の形なんだよぉ!!”

 

「…………!」

 

 確かにそれは、一つの最強の形だろう。四天は手足、マーキナーが作ったもの。ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 であれば、ヤツは、これまでの四天とは違う。

 

 ――そして。

 

 

“アタシの最強で消えやがれぇ! 『大岩・隕石(グレーター・コメット)』!! クッハハハハハハハハ!!”

 

 

「――百夜!」

 

 そこで、リリスが私に呼びかけた。

 

「リリス?」

 

「もう一回、もう一回行くの!」

 

「でも!」

 

「――いいから! リリスを信じて!」

 

 ――――!

 

「たいだりゅー様も! いい!?」

 

“……面倒だ”

 

 リリスは、前を向いていた。

 ああこれは、わかる。リリスは――

 

“クハハ! 何をしているのかしら!? アタシを笑い殺すつもりぃ!? 無駄無駄! 無駄なのよ! アンタ達じゃ、私には勝てないわ!!”

 

 

「――最強は、()()()()()()()()!」

 

 

 リリスは、()()()()()()()()()()

 私とも、ラファ・アークとも違う最強が。

 

「百夜は()()()()さいきょーなの! そもそも、弱者が強者を倒すことだってあるの! だったら、()()()()()()()()なんて、()()()()()()()()()()()()()の!!」

 

 白光を構える。

 ――リリスは私の親友で、大切な人で、失いたくない人だ。

 

 そんな人が、私を信じてくれるといった。

 

 だったら。

 

“ふん、無駄よ! アタシの最強は! 崩れない!!”

 

「――それはどーかしら、なの!」

 

 ――応えないわけには行かない!

 

「百夜! たいだりゅー様!」

 

 構えて、

 

 

()()()()()()!」

 

 

「“H・H(ホーリィ・ハウンド)”!」

 

“――『ハメツ』”

 

 ――私達は、それを放った。

 

“横って――そらすつもりぃ!?”

 

「……そういう、こと!」

 

 隕石からの手応えが私に伝わる。重い、弾けない。でも。

 ()()()()()()()()()()()()

 

“バカねぇ! たとえ反らせて、直撃を避けれたとしても! 余波をアンタたちはまともに受けるのよぉ!”

 

「――バカはそっちなの」

 

 そして、リリスは。

 

 

()()()()()()()()()()()、リリスはリリスの最強を信じることなんて、できませんの!」

 

 

 リリスにとって、私が最強であるように。

 ――リリス、私にとっては、貴方こそが最強の親友だ。

 

“ぬ、ぅ――億劫だが”

 

 そして、お祖父様も。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――怠惰だろうと、娘のために生命を投げ出せるお祖父様は、ここで引けないお祖父様だった。

 

「っ、あああああ!」

 

 声からすべてを吐き出して。

 

“ぬ、ぅ!”

 

 お祖父様が、ギリギリまで引きつけたそれを――避ける!

 

「今なの! “G・G(ガード・ガード)”! “B・B(ブレイク・ブースト)”!」

 

 余波が世界を明滅し。

 

 

 ――気がつけば、私達はまだ立っていた。

 

 

“バカな!!”

 

 ラファ・アークが叫ぶ。

 ああ、まったく。

 

「――百夜」

 

 きがつけば、リリスが横に並んでいた。

 

「リリスたちは、さいきょーなの。だから、こいつにだって負けないし」

 

「……うん」

 

 

「いつまでも、皆一緒に、笑顔で暮らすの!」

 

 

 ああ、そのために――

 

「――そのために、全てをおわらせに行こう」

 

 リリスの手には、宝石があった。

 赤色の、それは。

 

 ――私達を包み始める。

 

 大切な人と、これからも一緒に。

 最強を越えて、その先へ進むために。

 

 ――いずれ、それが終わってしまうとしても。

 

 私達は、先へ征く。

 

 

「――二重概念(デュアル・ドメイン)

 

 

合一展開(セッション・スタート)――!」

 

 

 ねぇリリス。

 貴方の突拍子もない世界は、私にとっては、何百年よりも価値があって、素晴らしいもの。

 

 だから、これからも。

 

 貴方の世界を、歩かせて?

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