負けイベントに勝ちたい   作:暁刀魚

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33.ただ純粋に救いたい。

 ――救うって、なんだろう。

 単なる押しつけか? 自己犠牲は、救うことにはならない。犠牲になったモノの心に傷を残す以上、自己犠牲では誰かは救えない。だから、人は()()()()()()()()()()()()()ことはできない。

 全てを幸せにして、丸く収めたいなら()()()()()()()()()()()()()()()()必要がある。

 

 つまり、人って自分が生き残った余力でしか誰かに救いを与えられないんだよな。それは、嫉妬を司るものとしては、完全に上から目線にしかならなくて。

 その上から目線に、エンフィーリアは嫉妬でしか返せないわけだ。

 

 だからこそ、純粋にただ救いたいという思いは、押し付けにしかならないのではないか? 僕はそのお題目をエンフィーリアに否定され、自分の意思で、自分のやりたいを為すために戦うことを選んだ。

 でも、だからといって僕の救いたいという気持ちは否定されるべきものか? エンフィーリアが否定しない、上から目線の押しつけじゃない救いって、どういうことだ?

 

 それは今まで、正直はっきりしてこなかったのだけど、今、目の前で泣きそうになっているエンフィーリアを見てよく解った。

 

 僕から救おうとしてしまうことが押し付けならば、逆にすればいい。僕ではなく、彼女が心の底から思えるようにすればいい。

 そう、

 

 僕はエンフィーリアから、「助けて」という言葉を、引き出したいと思ったんだ。

 

 

「――“嫉妬ノ根源”ッ!」

 

 

 閃光が、遺跡に煌めいた。

 直後、僕の側を通り抜けたそれを一瞥してから、一気に僕は距離を詰める。

 先程と比べて、弾幕の密度はより濃さを増した。三次元的な機動で持って接近するが、それすらも加味した上でエンフィーリアが仕掛けてくる。

 

「なんでそうまでして、アタシに構うのよ! 負けたくないから!? ふざけんな、アンタはもう負けたのよ、そのまま負けたままでいなさいよ!」

 

「だったら君がとどめを刺せばいいだろ。この戦いは、君を嫉妬から引き剥がすのが目的だ。そして、それを達成できなくなる条件は、僕の死だけだ」

 

「――ッ! “後悔ノ重複”!!」

 

 ――たとえエンフィーリアがこの場から逃げ出したとして、僕はそれを追いかける。君が力を取り戻し、野に放たれたのは僕の責任であるからだ。

 その罪滅ぼしをしなくてはならない。()()()()()()()()()()()()()()、僕は君を追いかけることをやめない。

 

 ストーカーだと思ってくれて結構。気持ち悪いと切り捨ててもらって結構。君は僕よりも強い、僕を不要と思うなら、僕を切り捨ててしまえばいい。

 

「――それができない時点で、君はまだ僕に勝ててないんだよ!」

 

「ふざ、けないでよ――! この、異常者ッ!」

 

 エンフィーリアが全霊で持って鉤爪を振り下ろす。

 その刃が地をえぐり、僕に迫る。これは――回避できない。

 

 僕の身体が、宙を舞った。

 

 ――概念崩壊だ。手にしていた剣が喪われ、地に直撃した痛みも合わさって、僕は、

 

「っが、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

 人生で、今まで一度も上げたことのないような声を上げる。

 それでも、

 

「まだ、ま、だああああ!」

 

 もう一度復活液を取り出し、起き上がりながらそれを叩き割る。

 

「……ま、た!」

 

 嫉妬龍が、どこか怯えたような声を上げながら、僕を見る。ははは、悪いけど僕は異常者なんだ。人生の数割を負けイベントに割ける程度にはね。

 そしてそれは、この世界にやってきて。この世界の人間になって、より加速しているように思える。

 この痛みも、この苦しみも、

 

 僕が前に進むための燃料になるんだよ。

 

「さぁ、もう一回行くぞ!」

 

「もう来ないでよ! 変態!」

 

 駆け出して、滑り込もうとして、阻まれて。

 僕はまた宙を舞った。激痛に悶え苦しみながら、そしてまた立ち上がる。概念崩壊する度に吹き飛ばされるものだから、一向に近づけはしないけれど。

 

 幸い、僕の無茶のタネは、まだ山程ある。具体的には、僕たちがあの山の上で倒した暴食兵の数よりも多い。それだけしかない、とも言えるが、

 

「だったら、君ももっと自分の嫉妬を愉しみなよ、どうしてそんな顔をする。さっきの僕よりひどい顔をしているぞ!」

 

「アンタには関係ないでしょ! アタシはアタシよ、アンタはアタシに嫉妬されてればいい。救ってくれなんて言ってない!」

 

「言ってなかったとしても、僕は感じた!」

 

 ――迫る刃、僕は身を翻す。円を描いて、彼女の攻撃から遠ざかるように、隙を伺いながら飛び回る。チャンスは来る、STを稼がなくてはいけない現状、チャンスを待ち、時間稼ぎに徹することには意味がある。

 後一発。

 あまりにも遠いそれを、僕は彼女からもぎ取らなくてはならないのだ。

 

「結局それも押し付けじゃない! どれだけアンタが言ったところで、そんな憐憫がアタシに届くもんか! アンタにアタシが届けられるのは、刃とアンタのそのイカれた信念だけよ!」

 

 時を待つ。

 

「それでもいいさ。でもな、それだけじゃ君が満足しないだろうと思ったからな! 僕は君から全てを引き出したいんだよ。僕が求めるのは完全無欠の勝利のみだ。それがないなら、僕は君に勝ったとは言えない」

 

 時を待つ。

 

「この戦いが終わったとき。僕が君に勝利したとき、君はどうする。嫉妬を捨てて生きるのか? その先に何がある。僕はそれを助けることはできるが、選ぶのは君だ!」

 

 時を待つ。

 

「――勝ったつもりで、ごちゃごちゃ抜かすんじゃないわよ!!」

 

 今――!

 

 飛び出した。

 一瞬、弾幕にほころびが生まれた。頭の中で、その道筋を描き出す。そしてそれを、現実に出力しなぞりだすのだ。

 

「だったらどうした! それが嫌なら、君が選べ! 僕を殺せば、全部終わるぞ!」

 

「……っ! ほんっと、馬鹿――!」

 

 しかし、途中でそのほころびに道が途切れることがわかる。否、わかりきっていたことだ。一瞬ほころびがあったとしても、それはすぐに挽回できる。

 どうやっても、僕は途中で詰む運命にあるのだ。

 

 ――ならば。

 

「君がこの場に来ることを選んだ以上、すべて君が選ぶしかないんだ! 僕はすでにやるべきことが機械のように定まっていて、それをなぞっているにすぎない。だから、選んでないのは、君だけだ」

 

「だったら――!」

 

 僕は、地面に概念の刃を突き刺す。そして、足元に復活液を転がして、更には足を振り上げる。

 

「――“怨嗟ノ弾丸”!」

 

 迫りくる攻撃に対し、僕は突き立てた刃を支柱に、一瞬だけ耐える。すぐに概念崩壊を起こし、それは消えていくが、十分だ。吹き飛びさえしなければ、まだ僕にはチャンスがある。

 

「だ、ああああああッ!」

 

 概念崩壊。

 直後、僕は痛みに震える身体を無視して、地面に足を叩きつけた。

 

 復活液の瓶が破壊され、中身が僕の身体に飛び散る。即座に概念崩壊から復帰すると、僕はそのまま前に踏み込んだ。

 

「これで、届くぞエンフィーリアッッ!」

 

「もう、どうなってんのよ、アンタは……ッ!」

 

 目前に迫ったエンフィーリアは、なんだか。いつもの彼女より、少し小さく思えた。その在り方が、信念が、何かを寂しがっているように見える。

 

「“B・B(ブレイク・バレット)”!」

 

 まず一発、この距離ならBBが届く。そして、一気に次の技へと移行しつつも叫ぶ。

 

「“D・D(デフラグ・ダッシュ)”!」

 

 距離を詰めた。目と鼻の先。ようやくエンフィーリアをこの手に捉える。まずは、

 

「“S・S(スロウ・ストライク)”ッ!!」

 

 三連撃。

 僕の基本とも言える動きだ。コレなくして、僕の戦闘は成り立たない。

 

「っぐ……!」

 

 エンフィーリアは一撃を受けて吹き飛んだ。僕がやったわけではない、彼女が自分から攻撃の勢いを利用したのだ。僕はBBでそれを追撃しつつ、向こうの反撃はSSで透かした。

 

「アンタにアタシは救えない! アンタが勝ったところで、アタシの何が変わるのよ! これを破壊すれば嫉妬の能力が喪われでもするの!? そうでもなければ、結局アンタが死んだ後、アタシが人間の玩具にされるだけよ!」

 

 ――落とし所、というべきか。

 そもそも、僕は彼女とここまで交流を持つつもりはなかった。ただ、嫉妬の星衣物を破壊しておきたかっただけ。エンフィーリアに対しての同情はたしかにあったが、だからといって肩入れするほどではなかったのだ。

 最低限、星衣物を破壊しておけば、最悪の手前で彼女が止まれるかも知れないな、という程度。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()話も違ってくるけれど。

 

「君が救われない理由は、そこにあるってことか」

 

 追いすがる、僕の剣が、エンフィーリアを掠め、エンフィーリアの鉤爪を僕はなんとか受け流す。その度に、エンフィーリアは後方へ。

 先程の追いかけっこと、状況はそこまで変わらない。

 

「ええ、そうよ! アタシの末路は決まってる。アタシが嫉妬龍であるかぎり、その権能がある限り、報われない最後になる!」

 

 激しい火花が散って、閃光は薄暗がりの洞窟に煌々と輝く。

 

「色欲龍を頼ったとしても」

 

 間近で、それに照らされた、エンフィーリアの顔が見えた。

 

「――頼っちゃいけないのよ!」

 

 泣きそうな顔は、変わらずに。けれども苦痛と寂しさと、それから嫉妬に歪んだ眉は、彼女の今をありありと物語っていた。

 

「エクスタシアは、強くて、前向きで、そして何よりアタシを守ってくれようとするでしょうね。そしてアタシはそのことを考える度に、()()()()()()()()()()()()()なのよ!」

 

「それは――」

 

 ――仲を深める度に、人を好きになる度に、その好きになった部分に嫉妬するとしたら。エンフィーリアは、そりゃあ人嫌いにもなるはずだ。

 キライな相手に、どれだけ嫉妬しようと傷つかない。でも、好きな相手に嫉妬してしまったら、傷つくのは相手だけじゃない。

 

 そこで初めて、僕は言葉に詰まってしまった。

 

「――――アタシをッ! 好きになるなァ!!」

 

 “嫉妬ノ根源”。

 エンフィーリア最大火力の熱線が、間近から僕に放たれた。

 

「ぐ、あ――」

 

 痛みに襲われながらも、復活液をぶちまける。思考は冷静だ。負けイベントはまだ続いてる。その事にたいして、僕が怖気づくことはない。

 しかし先程から心のなかに合った、彼女から救いを引き出したいという願いは、今、僕の心のなかで急速にしぼみつつある。このまま僕らが戦ったとして、彼女が敗北したとして、それしか結果を残せないのではないか。

 

 結局、エンフィーリアは元の嫉妬龍のまま、いつか訪れる破滅を受け入れるしかないのか? 希望があるとしたら、あの星衣物――アレを破壊すれば、エンフィーリアが嫉妬の大罪ではなくなること。だが、あの力はあくまで彼女から抜き取られたもので、彼女の一部でしかない。

 それに、その可能性に希望を見出すと、今度はあの衣物が破壊された後、彼女が消滅する可能性も考えなくてはならない。

 

 どちらにせよ、他力本願だ。

 

 エンフィーリア――嫉妬龍はゲームでは星衣物が第二形態に移行する暴走に巻き込まれて死亡する。だから、第二形態が破壊された後の彼女については未知数で、やってみないとわからない。

 どちらにせよ、そこで彼女がどうなろうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――君が救われる世界に、君がいなければ意味はない」

 

「……何よ、それ」

 

「君が君でいられるまま、嫉妬であるがままに、幸せでなくちゃ意味がないんだ」

 

 そうだ。彼女から嫉妬を、()()を奪っちゃいけない。あんなに寂しそうに、けれども必死にそれを抱え続けてきた彼女から、僕の憐憫に、その感情を高らかに振り回した彼女に。

 

「君は、今の君が、一番素敵で、生きているから!」

 

 僕の中にある救いたいは、彼女の救いになりたいというわけではない。彼女の生きている今が、美しかったから救いたいんだ。

 

「それこそ無茶な話よ。アンタの勝利はアタシの否定。アンタが勝つってことは、アタシに嫉妬を受け入れろってことじゃない!」

 

「違う! 君が嫉妬龍であっても生きていられるように、僕は不要な部分を切り捨てたいだけだ!」

 

 ――駆け出す。

 

「こんな力、君にはいらない。君は誰かを嫉妬して、けれどもその嫉妬を抱えながら、それを誇りに立ち向かう今が、僕は好きだ!」

 

 迫る弾丸も、風の刃も切り抜けて。

 

「――ッ!! アタシに、これを脱ぎ捨てて、また弱い頃にもどれって言うの!?」

 

 周囲に広がる衝撃波も、飛び越えた。

 

「嫉妬は悪いものじゃないって言った! 君が僕にそれを証明した。妬ましいことも、嫉むということも、前に踏み出す力だと見せてくれた! 君は弱くない!」

 

「そんな、心の話を聞きたいんじゃない!!」

 

 ――僕の刃が、エンフィーリアと激突する。

 何度もぶつかりあって、その度にエンフィーリアの心が届くんだ。

 

「心が強ければ、変わろうという意思が生まれる、君は与えられたものを受け入れられないといった。けれど、そうじゃなくなれば、君は与えられたもので、今よりずっと強くなれる!」

 

 それに、君は何度も言っているじゃないか。

 

 君の心は、ずっとそう叫んでいるじゃないか。

 

 だから僕は、それに答えるだけだ。

 

「だから!」

 

 手をのばす。

 

「なに、を――!」

 

 決まってる。

 君はずっと言っていただろう。――置いてかないでくれって。

 

 

「一緒に行こう、エンフィーリア! 僕は君を置いていかない! ずっと一緒にいるって、約束する!」

 

 

「――――ッ」

 

 お互いに、一瞬だけ、停止した。

 それは刹那にも満たない短い時間。止まっていたことすら両者気付かないほどの、小さなほころび。

 

「あ、あああ! ああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 直後、エンフィーリアから、猛烈な風が吹き荒れて、僕の身体は大きく吹き飛ばされた。

 

「ぐ、ぅ……」

 

 概念崩壊一歩手前で、なんとか踏みとどまる。けれど、今のはキツイ、技ではないから助かったが、HPはほとんどない。本当にギリギリでこらえたんじゃないか?

 

「なら――」

 

 見れは、エンフィーリアは宙に浮かんだまま、顔を伏せて、その表情は伺えない。

 

「――アンタを殺すわ。アタシにそんな言葉をかけてくるやつ。鬱陶しくて、上から目線で、そして命が輝いてる奴」

 

 そして、

 

「一番、アタシがキライなタイプよ。だから、殺す。もうアンタに、期待も希望も――抱きたくない」

 

 涙をにじませた、顔を上げて、僕を睨んだ。

 

「本当に好き勝手してくれたわね。いきなりアタシをこんな場所に連れ込んで。命を盾に一緒に行動することを強要して」

 

 振り上げた手から、風の濁流が生まれる。

 ――彼女の宣言に嘘はないだろう。だから、これが最後のアタックになる、ここまで、ある程度の削りは入れた。おそらく最上位技を叩き込めれば、僕の勝ち。

 

「身動きの取れないアタシを助けてくれて、囲まれたときは一緒に戦って、切り抜けてくれた」

 

 ――行くしかない。

 最後の攻防が始まった。

 

「アタシが自分を変えられないって言ったら、それを思いやって勝手に暴走した!」

 

 嫉妬龍が、叫びとともに刃を振り下ろす。

 

「挙句の果てに、アタシがここまでやっても、アンタは諦めなかった!」

 

 僕は、少しだけ戦い方を変えた。

 STは十分にある。だから、接近するまでの間にコンボを稼ぐのだ。基本はDDとSSの組み合わせ。そこに時折BBを挟んだSBSで攻撃をやり過ごす。

 

「何なのよ、本当に! ふざけるのもいい加減にして! アンタは人間、アタシは大罪龍。一緒になんていられない。それなのに! そんな優しいこと言わないでよ!!」

 

 ――ああ、全く素直じゃないけれど。

 聞きたいことは、聞けたよ、エンフィーリア。

 

 そして、接近する。エンフィーリアに手が届く。

 けれど、そのまま近づいても彼女は遠ざかるだけだろう。要するに、ここで向こうに僕は、これが最後の攻防だということを印象づけなければならない。

 

 だから――

 

「“C・C”!」

 

 二回目と同じだ。爆発で視界を覆う。

 

「――ッ! 二度も同じ手を!」

 

「さて、どうかな!」

 

 ここで取れる選択肢は少ない。向こうは弾幕を維持しなければいけないし、僕はこの爆風を利用しなければならない。

 

「それと――」

 

 とはいえ、僕のやるべきことは決まっていた。

 

「――僕は、人間じゃないと思うので、大丈夫だよ、きっと」

 

 彼女の言葉に、ただ一言だけ。

 

 僕は爆風の中に突っ込んでいった。

 

 ――エンフィーリアは可愛らしい少女だ。こちらのことをからかったり、恥ずかしがったり。けれど、そんな彼女の一番の魅力は、自分の嫉妬を大事にしているところだと思う。

 それは、言ってしまえば諦めかもしれない。絶望かも知れない。

 

 でも、だとしても、

 

 それを捨てなかったから、僕は君と出会い、君を救いたいと思ったんだ。

 

 小石を外へ投げ込む、反応はない、そのまま突っ込む。否、僕はここで一度SSからコンボを入れる。直後。僕の正面に、風の弾丸が迫っていた。

 

 ――それをすり抜けて、見る。

 

 エンフィーリアは、拳を握りしめた状態で、熱線を構えていた。確かに、モーションが動かないその二段構えなら間髪入れずに打ち込めるな!

 合わさった手のひらは、それはいうなれば祈りのようで。

 

「“D・D”」

 

 僕は、熱線が待ち構える彼女の懐へと突っ込んでいく。

 

「――――まさか」

 

「気付いても遅い。これで――!」

 

「――ッ」

 

 僕は、剣を振りかぶる。

 さぁエンフィーリア。

 

 

 ()()()()()

 

 

「――“L・L(ルーザーズ・リアトリス)”!」

 

 

「“嫉妬ノ根源(フォーリングダウン・カノン)”――!」

 

 

 お互いに、避けられない。

 同時に放たれた一撃は、お互いの身体をえぐり。

 

 

 ――戦いは決着する。

 

 

 ◆

 

 

 僕の狙いは、相打ちだ。

 あの状況、多少の無茶は必要で、その上で、一番現実的だったのがこれである。相打ちならば、僕がエンフィーリアに殺されることもない。

 

 いや、エンフィーリアが先に戦闘不能から復帰すれば変わってくるが、戦闘経験に乏しい彼女にとって、それは酷な話だろう。

 

 だから、静まり返った遺跡で、僕はもぞもぞと復活液を取り出すと、それを叩き割った。

 

「ぐ、あー」

 

 ふらつきながらも、立ち上がる。

 ここまでの集中による疲れが、どっと押し寄せたような感じだ。急いで、エンフィーリアを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん、ぅ……」

 

 少し苦しげだが、少しもすれば目を覚ますだろう。

 彼女を抱きかかえながら、僕は見る。

 

 さて、問題はここからだ。

 はっきりいって、暴走する第二形態は先程のエンフィーリアより強い。

 

 ……どう戦ったものかなぁ、と思う。

 

 ああ、でもしかし。

 抱えた彼女を見下ろして、僕は少しだけ笑う。

 

 

「――僕の勝ちだ、エンフィーリア」

 

 

 そう宣言し、改めて変化していく第二形態を、僕は睨むのだった。

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