負けイベントに勝ちたい   作:暁刀魚

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色々ありましたが主人公の最大技はルーザーズ・リアトリスになりました。
花言葉は燃える思い、向上心。


35.君の「助けて」が聞きたい。

 ――嫉妬ノ坩堝。

 その攻撃パターンは何パターンかに別れ、ダメージを受けるごとに変化していく。とはいえ、一番大きな変化はオートカウンター、“反骨”を使用するようになることだ。

 一定以上のダメージを与えると、そのダメージを与えた技をその場で使用してくる。ポイントとして、このカウンター攻撃中に大技を受けた場合、それにはオートカウンターを発動しないこと。

 

 ゲームでの戦い方は仲間が最上位技を繰り出すまでプレイヤーはコンボを溜めつつ削りに徹して、仲間が最上位を発動すると同時に自分も最上位を叩き込むようなプレイが求められた。

 今回の場合はフィーが常に自由に放つ事のできる大技――嫉妬ノ根源を有しているわけだが、アレは隙が大きく、乱発するとフィーにヘイトが行き過ぎる。基本的に前衛がヘイトを稼ぎつつ、タイミングを見計らってぶっ放すのがセオリーだ。

 

 とはいえ、好きなタイミングで撃てるメリットは大きいので、開幕にぶっぱしてもらって、しばらくは彼女にタンクを任せていたわけだが――

 ここからは、僕が彼女を守る番だ。

 

「あんまり無茶しないでほしいの! “C・C”!」

 

 とはいえ、それは結構な無茶なので、こうしてリリスはお怒りなわけだが――

 まぁ、ムリもない、僕は今コンボを叩き込みつつ、足を掠めたレーザーを無視して、踏み込んでいるわけだから。

 更には周囲に広がる風車のような回転レーザー。上空には雨のように降り注ぐ機関銃のような連撃。僕は回転レーザーを受けつつ、機関銃をSSで透かして回避した。

 ――ここまで、ほとんど動いていない。弾幕が激しすぎて、避けるよりも受けた方が早いのだ。

 

「……思ったより削れてないな」

 

 ときにはSBSを絡めつつコンボを稼いで、そしてこぼす。原因はデバフ、嫉妬ノ坩堝もフィーの系譜であるため、例外なくデバフを押し付けてくる。

 ただ、フィー本人に比べるとその倍率は低く、通常形態のフィーよりもさらに低い。どれも一割程度の倍率で、僕はそれをこちらのデバフ、バフの多さから無視して割り切ることにしたのだが――

 

「言ってる暇はないか……! フィー! 準備はいいか!」

 

「……ちょ、っと、まって!」

 

 反対側から、苦しげなフィーの声が聞こえる。リリスの言葉はフィーに対しても向いていたのだろうか、あちらもかなり厳しそうだ。ヘイトはほとんどこちらに向いているものの、嫉妬ノ坩堝の攻撃のほとんどは広範囲に影響を及ぼす。

 それを回避するだけでも至難の業ということか。

 

「そういうことなら……リリス、フィーに防御強化を! 僕には速度強化へのブーストを!」

 

「あい!」

 

 リリスが防御強化の概念技を使ったことを確認した後、DDで飛び上がる。一気に蛇の上を取ると、コンボを繋ぎつつ、向こう側にいるフィーへと視線を向けた。

 両腕でガードしながら、降り注ぐ機関銃をまともに受けてしまっている、アレを使われるってことは、ヘイト管理をミスってたか!?

 

「フィー!」

 

 叫び、DDで着地、彼女を弾き飛ばすと、SSで機関銃をやり過ごす。

 そのまま振り返り、

 

「あ、ちょっと!」

 

「このままだ! 叩き込め!」

 

「――うん!」

 

 思わず呆けていたフィーが、即座に視線を鋭くすると、僕は先行して飛び出す。さて、これでどこまで削れるか――

 

「“L・L(ルーザーズ・リアトリス)”!」

 

「“嫉妬ノ根源(フォーリングダウン・カノン)”!」

 

 ――炸裂は一瞬だった。

 

“SIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!”

 

 嫉妬ノ坩堝は悶え苦しむようにのたうち回り、その周囲には僕の刃が所狭しと浮き上がる。ダメージを受けたことで反骨の範囲が増えたわけだが――ちょっと多すぎないか!?

 

「……回避に集中して!」

 

「わかってる、あんなもん当たって無事でいられないっての!」

 

 僕は自分の概念技。フィーは身を以て三度味わった攻撃。お互いに警戒は最大限だ。しかし、驚異は刃だけではなく、ゲームではのたうち回る嫉妬ノ坩堝にも、当たり判定があった。

 そりゃアレだけの巨体が凄まじい勢いで暴れまわるのだから当然で、何にしても言えることはこの反骨中は攻撃なんてろくにできないということだ。

 

「リリス、下がって!」

 

「はいなの!」

 

 ――まずはリリスを範囲外へと逃がす。回復も届かなくなってしまうが、そもそも回復してる余裕もない火力が襲ってくるわけで、必要なものといえば速度強化くらいで、それは僕もフィーも問題なく受け取っている。

 

「ああああもう! 癇癪起こしてんじゃないわよ!」

 

 地面を跳ね回り、常にギリギリの状態でなんとか回避を続けるフィー。癇癪、というのは言い得て妙で、嫉妬ノ坩堝はフィーの一部。アレも気性の荒い彼女の癇癪と思えば、納得のいける行動だった。

 

「っていうか、そっちはかなり余裕で回避してるわね!」

 

「まぁね!」

 

 対する僕は危なげがない、というか回避に専念すればいいというのは非常に楽な話なのだ。これは単純な話だが、フィーに()()()()()()()。元はエネミーであったフィー最大の弱点で、無敵時間で攻撃をやり過ごすことが前提の概念戦闘において、それはかなり致命的な弱点と言えた。

 大技を自由に放つことができる代わりに、回避が苦手といったところか。

 

 その時だった。

 

「あ、まずっ――」

 

 フィーの声。視線をやる。――彼女が大剣に呑まれかけていた。

 

「っく!」

 

 思わず、手をのばす。しかし、どう考えても間に合う距離ではない。――直後、フィーに最上位技が叩き込まれ、彼女は大きく吹き飛んだ。

 

「フィー!」

 

 僕であれば最大HPでも一発で持っていかれる火力だ。叫ぶ、彼女は――いや、フィーは大罪龍だ。回避は致命的だが、その分体力は人のそれとは違う。

 

「ず、あああ! だい、じょうぶ!!」

 

「なんとか無事なのー!」

 

 遠くから、声。

 

 かなり後方へと飛ばされたようだ。同じくらいの距離からリリスが叫ぶ。あちらはリリスにまかせて、僕は目の前のことに集中するべきだ。

 いやしかし、

 

 ――少し、怖かった。

 

「意識を切り替えていかないと……な!」

 

 大剣の群れは収まりつつある、跳ね回る蛇も、少しはおとなしくなったようだ。しかし、このオートカウンターが終わるということはつまり、攻撃パターンに次の技が追加される。

 

 這い回るレーザー。

 回転し切り裂いてくるレーザー。

 空からの機関銃。

 

 それらはか細い糸のような攻撃、しかし、それは――

 

 

 一瞬、煌きの後。僕と、その周囲が閃光に呑まれた。

 

 

 大技、ごんぶとレーザーだ。火力に関して言えば、僕のHPを六割は持っていく。

 ――慌てて、モーションに合わせて回避した僕は、その圧倒的な範囲をちらりと横目で流し見る。大きさで言えば、先の戦闘時における強化された後悔ノ重複程度。だが、直後にそれが、僕めがけて無数に連打されることを思い出し、

 

「まっず!」

 

 僕は即座に移動を始める。

 

 更に加えて、レーザー各種が加わるわけで、跳ね回りながら、僕はそれでも蛇に食らいつくことしかできなかった。

 ――STが足りない。どこを切っても蛇に当たるので、回収には困らないが、回避のための移動技と無敵技でそれを吐き出されてしまう。

 少しずつ取り戻してはいるものの、ジリ貧だ。

 

 どうしたものか――考えながら飛び回っていると――

 

「――“塊根ノ展開(アンダーグラウンド・スタンプ)”!」

 

 蛇に、強烈な足蹴りが叩きつけられた。

 僕の前方――と言っても、かなり走り回って今はリリスたちの方へ向かっていたのだけど――そこに、蛇に一発を叩き込みながら、それを見下ろすフィーの姿があった。

 

「フィー!」

 

「アタシを、無視するんじゃないわよ! アタシのくせに!!」

 

 そのまま、フィーは連続で攻撃を叩き込んでいく。ヘイトを分散させるつもりか! 危険だけど、いやでもありがたい。

 

「ちょっと! まだ回復終わってないの!」

 

 と思っていた矢先、リリスから小言が飛んできた。フィーのHPは膨大だから、回復しきれなかったのだろう。焦れたフィーが飛び出してきたってことか。

 大丈夫なのか?

 

「さっきのもう一発くらっても大丈夫なようにはしてきたわよ! それに、こいつには色々と言いたいことがあるんだから!」

 

 …………まぁ、そこまで言うなら、何も言うまい。

 彼女が攻撃に加わったことで、一部がフィーへと狙いを定める。これがあるだけでもだいぶ違う。

 

「こっちは大丈夫だから、リリスはフィーの回復を優先してくれ!」

 

「ほんとにだいじょーぶなの!?」

 

 とはいえリリスに回復を頼みつつ、こちらはST補充に専念だ。言うまでもなく、大丈夫ではないが、僕は最悪復活液で復帰できるのだ。概念崩壊時の痛みは耐えればいいしな。その点、フィーはそれができない。一度やられればそれでおしまいなのだ。

 安定度でいえば、優先は間違いなくフィーである。

 

 死にかけで戦わせられるか!

 

「フィー!」

 

「……わかってる! でもね! こいつが気に入らないから、黙ってるわけにはいかないのよ!」

 

 リリスの回復を当てにしてか、巨大レーザー以外は、ほとんど回避を捨てて攻撃に専念している。有効ではあるが、危険だ。

 とはいえ、それで彼女は止まりそうにないし――僕も準備が整ったところだ。

 

 つまるところ、回避を捨てる無茶をするバカがもうひとり増える。

 

「ちょっと!? 貴方はもっと冷静に動いてなの!?」

 

「冷静に動いたら勝てないんだよこれ!」

 

 リリスは真面目だな、と思いながら、僕も踏み込んで斬りかかる。ここからやることは決まっている。回避は捨てるといったが、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 つまるところ、

 

「“S・S”! “B・B”! ――ォォ! “S・S”ッ!!」

 

 やろうと思えばできたが、けれどもここまで一度としてやる機会のなかった、SBSによるコンボ稼ぎだ。やらなかったのは単純にSBSをしている最中はほぼ動けないため、動き回る敵には使えないこと、成功率が低く、実用性に難があったことが原因だ。

 特に前者は厳しい。コンボの中にSBSを混ぜるくらいが、本来なら正解なのだ。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。逆に言えば、まだ半分を過ぎた程度。そして、四割を切ると――

 

 こいつは発狂を始めるのだ。

 

「ねぇ、アンタがアタシから引き剥がされなければ、アタシはどうなってたのかしらね――」

 

 僕が一気にコンボをつなぐ中、フィーが言葉を紡いでく。

 

「プライドレムたちと一緒に人類を滅ぼそうとしたかしら、エクスタシアみたいに人類の味方をしたかしら。わからないわ、どっちもありえない想像だもの」

 

“SIAAAAAAAAAAAAA!!”

 

「言ってしまえば、アンタがアタシから削がれなければ、アタシはここに生まれてこなかった。こうしてアンタに別れを告げることもなかった」

 

 嫉妬ノ坩堝は咆哮する。それは、嫉妬とそれから、どこか寂しげなものが混ざった、不思議な咆哮だった。

 

「――でも、それすらも本当なら、ありえないほどの奇跡と、幸運に恵まれているってことも、アタシはわかってる」

 

 見れば、フィーはほとんど攻撃を躱していなかった。それほどまでにフィーの攻撃は苛烈で、優しげな声音とは正反対な程に、執拗だ。

 後方でリリスが慌てているのがわかる。ああでも、今だけは――今だけはそうやってやらせてやってほしい。

 

「だから――! アンタにも感謝してるのよ! アンタがここで眠ってて、アタシと同じ思いを抱いてくれていたから! アタシはそれを信念にできた! 譲らずにすんだ!」

 

 きっと、これが最後の別れになるだろうから。

 

「悪いけど、アンタとは一緒にはいけない。アンタがそうなることも、アタシの選んだ道だから。――その上で、アンタの思いは連れて行く」

 

 ――そこで、僕の準備が整った。

 

「絶対に、置いてなんか、いかないんだから! ――行くわよ!」

 

「ああ!」

 

 

「――“嫉妬ノ根源”!」

 

「“L・L”――!」

 

 

 これで、三回目。

 フィーに叩き込んだ数と同数を打ち込んで、蛇は天高く、雄叫びを上げた。

 

“AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!”

 

 ――直後。

 

「来るぞ!」

 

 

 ――僕の最上位技と、フィーの嫉妬ノ根源が、()()()()()()()()()()()()

 

 

 オートカウンター“反骨”、最後の形態。これまで受けてきた“反骨”対象技の常時使用。やたらめったらにそれを周囲へばらまいて、地をえぐり、破壊し、塵に返していく。

 

 僕の最上位技は大きく地形を変形させはしないが、フィーの嫉妬ノ根源はもはや連打されれば災厄の一言だ。

 

 あちこちがむき出しに、そして最後には倒壊していく状況で、僕たちは即座に動き出す。この常時使用が入ることで、嫉妬ノ坩堝は他の技を使わなくなるが、弾幕の密度は変わらない。正直、これまでの攻撃が全部致死クラスのダメージになったようなものだ。

 

「う、ああああああっ!!」

 

 フィーの叫びが聞こえてくる。

 当たれば死、もはやまともに戦闘などできやしない。だが、この状況はすでにわかっていたことだ。戦闘開始前に、いくつか彼女たちに戦い方は告げてある。

 

「フィーちゃん! こっち! はやくこっちなの!」

 

「アンタにフィーって呼ばれることを許したつもりはないわよ!」

 

「いいから!」

 

 ――なんて、何れなし崩しにフィーと呼ばれることを許すだろうな、という会話を二人がしながらも、リリスとフィーが距離を取る。その間に僕は致死の群れを飛び越えて、嫉妬ノ坩堝へと飛びかかる。

 

「――よう、フィーの抜け殻」

 

 そして、その顔面に、僕は着地した。

 

“SIAAAAAAAAAAAAA!!”

 

 怒りに満ちた嫉妬ノ坩堝の叫び、正面からその咆哮を受けると、思わず身がすくみそうになる。ああ、これは――なんて悲しくて、寂しい嫉妬だ。

 

“――――ドウシテ”

 

 声が、聞こえてくる。

 

 

“ドウシテ、(アタシ)ダケ、オイテクノ――”

 

 

「――違うよ。フィーも言っただろ、君は置いていかれるんじゃない。一緒に思いを連れて行くんだ」

 

 ――フィーの抜け殻。嫉妬ノ坩堝はまさしく脱皮を果たした彼女の痕跡だろう。ゲームではそれが叶わずに、嫉妬龍は呑まれてしまったけれど、今は違う。

 この力は彼女には必要がないもので、だから彼女は置いていくと決めた。

 だって、これがあったら彼女は嫉妬龍だから。

 

 違うのだ、今の彼女は嫉妬龍ではない。

 ()()()()()()()()()()だ。嫉妬もフィーも芯へと変えて、それを受け入れ前に進むことを選んだ一人の少女だ。

 

 嫉妬龍も捨てない、エンフィーリアも捨てない。どちらもともに歩んでいくから、彼女は力に呑まれることを拒んだ。

 

 だって、フィーは今のフィーが一番可憐で、似合っているんだから。

 

「だからどうか、君も言って欲しい。フィーは強情で、素直じゃないから、言葉にはしてくれなかったけれど」

 

 僕は――

 

 そうだ、僕は、

 

 

「僕は、君の助けてが聞きたい」

 

 

 ――直後、閃光がほとばしった。

 

「“嫉妬ノ根源(フォーリングダウン・カノン)”!!」

 

 最後の攻防が始まる。

 ――残り四割、この地獄のような状況で、如何にそれを削るか。答えは一つだった。フィーの()()()()()()()()()()。ここまでくれば、ヘイトも反撃も関係ない。

 残ったHPを最大火力でゴリ押しすること。

 

 そのための僕の役割は、少しでも攻撃で嫉妬ノ坩堝を削って決着を早めつつ、気を引くことだ。

 

 ――乱舞する死。最上位技と嫉妬ノ坩堝のコンビネーションは、僕から生存領域を極端に奪った。無敵時間を可能な限り利用して、それを強引にこじ開けて、

 

「行ったぞ、フィー!」

 

 ――飛び出した嫉妬ノ坩堝の警戒をフィーたちに呼びかける。

 

「――まだまだぁ! “嫉妬ノ根源”!」

 

 二発目、遠くからの閃光が、嫉妬ノ坩堝の身体を焼いた。まだ距離はある。だが、構わず嫉妬ノ坩堝は前身する。だめだ、止まらない。

 

「“嫉妬ノ根源”!!」

 

 三発。坩堝は限界のはずだ、叫びながら、嘆きながら、嫉みながら、ただがむしゃらにフィーを目指す。間に合うか!?

 

「――これでっ!」

 

 四発、これで倒れなければ、嫉妬ノ坩堝はフィーたちに届く、そうなればフィーは倒れる。ここが最後だ、なにか、僕に撃てる手はあるか――!?

 嫉妬ノ坩堝に追いすがりながら、なにかないかと考える。

 

 単なる攻撃では意味がない、この距離、この位置で、撃てる技はなにかあるか? それをして意味のある行動はできるか?

 

 この状況、万が一負けイベントだとしたら、僕はどうすればひっくり返せる!?

 ――嫉妬ノ坩堝を見る。泣き出しそうな顔で、嫉妬にまみれた顔で、前へ、前へと突き進む。それを止められるものは誰もいない。

 止められない、止まれなくなった。

 

 昔、ゲーム画面越しに、そんな嫉妬龍の最期を見た。

 

 あのときから、僕はかわれただろうか、フィーはこれから変わるだろうか。ふと、止まれなくなった嫉妬ノ坩堝が一瞬。追いかける僕を見た、気がした。

 そして僕に語りかけるのだ。

 

 

“――タスケテ”

 

 

 ――と。

 そして、一つ。

 

 思いついて、ああしかし。

 

 ――君に対しては、これは陳腐になってしまうかもしれないな。

 

 

「――“C・C(クロウ・クラッシュ)”!」

 

 

 爆風。

 嫉妬ノ坩堝の視界を奪う。効果なんて期待してない、意味があるかもわからない。けれど、これで二回もやりあった君ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――()()()()()()!」

 

「……わかってるわよ、これで全部、終わらせる!」

 

 それは、あの死地で、僕がフィーに掛けた言葉と同じ。

 けれど、帰ってきた答えは、あのときとは全く違うものだった。

 

 

「――“嫉妬ノ根源”ッッ!」

 

 

 叫びは、そして高らかに。

 とびだした嫉妬ノ坩堝は、ギリギリのタイミングで閃光へと呑まれる。

 

 それから、僕はなんとかリリスのもとへとたどり着いた。

 決着は、どうか。もしこのまま動き出すなら、かなりの危機で、正直半分詰みである。僕もリリスも、そしてフィーもそれは理解している。

 

 だから、僕たちは――閃光が収まった後に現れる、嫉妬ノ坩堝を見つめていた。




少し改定しました。
合わせて27も改定しています。

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