第9話「拮抗的情勢」
「大尉。エリア69陥落しました」
「くっ、残存兵力を全てエリア0に回せ。司令部を…将軍をやらせるな」
あれから2年。リカルドは人類の数少ない生存圏にして太平洋圏最大の輸送基地であるハワイにいた。
再びファフナーに乗って。
「ついに、人類が生き延びる方法を学んだかフェストゥム」
『ドミニオンズ・モデル【ガブリエル】』で縦横無尽に空を駆けるリカルド。
「流石はクラウン大尉。あのヘブンズドア作戦から生き延びる歴戦のパイロットだな。フェストゥムの動きを先読みしているかのような身のこなしだ」
「あれでブランクがあるって言うんだから凄すぎるぜ、でもなんでブランクがあるんだ。大尉の実力なら常に最前線にいそうだけど」
「噂では任務中に上官を殺して、除隊処分となり軍を辞めていたらしい」
「まじかよ、あの温厚なクラウン大尉が」
「そんな大尉をナレイン将軍が見つけ出し、将軍の部下としてスカウトして復隊したんだってよ」
「お前達、無駄口を叩く暇があるなら、民間人の救助に向かえ」
「失礼しました。大尉」
「民間人の避難状況は」
「全民間人中70%の生存を確認。内60%が脱出挺にて待機しているのを確認しています」
「急いで残りの民間人を探して出来るだけ脱出させろ」
「了解」
(将軍はどう決断される防衛線の維持かそれともハワイの放棄か)
「こちらモーガン隊隊長ダスティン・モーガン。ハワイ基地守備軍へこれより増援として戦闘に参加する。状況を教えられたし」
「こちらはハワイ基地守備軍リカルド・クラウン大尉。増援に感謝する」
「リカルドお前…ここにいたのか」
「久しぶりだなダスティン。訳あってな」
「初の共同戦線か」
「一応。ヘブンズドアでも一緒に戦ってるだろ」
「こうして肩を並べるのは初めてだろ」
「そうだな。エリア55の海岸に向かってくれ彼処が落ちると、民間人の脱出が困難になる。ディアブロ型も確認している。気をつけてくれ」
「了解した。モーガン隊エリア55をメインに展開しろ」
「リカルド。生きてたんだね。良かった」
「ビリー。お前もいるのか」
「うん。俺もやるよ兄さんみたいに」
「あぁ、期待してるぞビリー」
「了解」
激しさを増す戦場。リカルドは空から地上を見渡すと1人の女性を見つける。
「おい…なんのつもりだ。なんでお前がここにいる」
(私は、お前に迫る危機を知らせにきた)
「危機だと」
(そうだ。お前達の無慈悲な炎がここを襲う)
「…無慈悲な炎だと」
突如入る広域通信。
「ハワイ守備軍。誰か誰か応答してくれ」
「その声…ウォルターさん。なんで貴方が」
「俺がここにいる意味。わかるだろ」
「交戦規定a…」
「早く逃げ…」
通信が途絶えた。
「ウォルターさん、ウォルターさん。こちらリカルド。司令部。参謀本部から交戦規定aが発令された可能性がある。至急確認を」
「リカルド。私だこちらでも確認し撤回要請を出しているが、撤回はおそらく不可能だ」
「将軍」
「君は残存する部隊を集め直ちにハワイから脱出するんだ」
「しかし将軍」
「私にはこのハワイに住む人々全てを救う義務がある。おそらくサジタリウス隊は既に発射体制に入っている急げ」
(放たれた)
「各部隊。ハワイ基地から離れろ。急げ」
燃え上がる大地。空へ昇るきのこ雲、ハワイの町並みは一瞬で灰色の瓦礫の山へと変貌を遂げた。
リカルドのガブリエルは各部に損傷を負いながら海に叩きつけられたが、辛うじて生き残った。
「俺はまた…誰も守れないのかよ」
悔しさを滲ませるリカルド。ふとモニターを見ると見たことない巨大なフェストゥムがゆっくりと瓦礫の山と化したハワイへ向かって進行していた。
「なんだ…あのフェストゥム」
その巨大なフェストゥムの首がこちらを向くとモニターに口が写る。
あ・な・た・は・そ・こ・に・い・ま・す・か
思わずモニターを殴るリカルド
「俺は…ここにいるぞフェストゥム」
その口はニヤリと笑うと巨大なフェストゥムは姿を消した。