ハワイ陥落から数ヶ月後。生き残ったリカルドは自分の生まれた地に足を運んでいた。
あの高台はまだ健在だった。
「探したぞ、リカルド」
振り向くとウォルターが追ってきていた。
「ウォルターさん。ご無沙汰してます」
「あの後、お前さんの行方を必死に追ったが全然辿り着けなくて焦ったよ。話しがあるんだが…」
「どうしましたか」
「いや、すまんお邪魔したな。恋人か」
「えぇ、まぁ」
「ミライです。よろしく」
軽く会釈する彼女にウォルターはときめいた。
「ウォルター・バーゲストです。リカルド君とは昔よく戦場を共に戦い抜いた同志であります」
「ウォルターさん。いいですよ、そういうの」
「邪魔したなリカルド。伝えたい用件はこれに書いてある。良い返事を待っているよ」
ウォルターは足早に去って行った。
「悪いな、変なことさせて」
「いや、人間があのようなコミュニケーションを必要なことは理解している。問題無い」
「そうかなら良かった」
「何故ここに来た。ここにはもう何もない」
「俺にとっては思い出のある場所だ」
「思い出だと」
「そうだ。俺が生まれ育ったこと、両親と暮らした日々、仲間と目一杯遊んだこと。そして」
「彼女と出会った場所」
「そういうことだ」
「その思い出という概念に当てはめると私も思い出のある場所ということか」
「お前の思い出だと」
「そうだ。彼女と出会った場所であり、お前と出会った場所でもある」
「…思い出は自分がこれまで歩んできた道のり結晶だ。自分がどう考えどのような想いで生きてきたか、何を大切にしていたか。その答えが詰まっている」
「私にはそれがわからない」
「お前はまだ思い出を作っている途中なんだよ、きっと」
「思い出を作る」
「そう。嬉しい想い、悲しい想い、楽しい想い、辛い想い…それらが積み重なって思い出が出来る。焦ることはない」
「この場所はお前にとってどんな思い出が多い」
「そうだな…悔しい思い出かな」
「そうか…。なんだこの白いモノは」
「雪だな」
「雪…」
「そう。気温が零度以下の大気の上層で水蒸気が結晶して地上に降るモノだ。どうかしたか」
「なぜだ。この落ちてくるモノが気になっている」
「興味があるんだきっと」
「興味…」
「行くぞ、あまり長時間外にいると風邪をひく」
「そうか。わかった」
寒空の中二人は再び歩み始め、思い出の地から姿を消した。
「おっ、リカルドこっちだこっち」
その後ウォルターと合流するリカルド。
「さっきは悪かったな邪魔をして」
「邪魔だなんて」
「恋人いたんだな、いつからだ」
「もう1年くらい前ですかね」
(そうあれは1年前。俺が世界をさ迷ってた時だ)
刻は1年前。リカルドはとある海を眺めていた。花束を持って…