蒼穹のファフナー THE NEWTYPE   作:naomi

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第28話「その手に持つモノ」

目的地の見えない旅が続く一同。1人、また1人と色々な形で歩みを止めていく人々。

 

リカルドの言葉と想いも、絶望に打ちのめされた彼等には届かなかった。

 

「くそ…また止められなかった」

 

「無理もないよね。行き先もわからないのに、敵と人両方から襲われるんだから」

 

「ビリー。よせよ、エスペラントを信じよう」

 

「何事にも前向きでいられるミツヒロやリカルドみたいな人ばかりじゃないんだよ」

 

泣きじゃくりながらビリーはその場を立ち去った。

 

「ビリー。やけに荒れているな」

 

「…俺様子を見てきます」

 

「すまんミツヒロ。頼んだ」

 

「はい」

 

リカルドはその足でエメリーの元を訪れた。

 

「どうしましたか」

 

「…エスペラントも随分減ったな」

 

「はい。エスペラントだって万能ではありません。その時がくれば同化されますし、命を落とします」

 

「あとどれだけの距離かなんていいから、何処を目指しているのか皆に伝えられないのか」

 

「何故伝えられないのか。リカルドさんはわかっているでしょ」

 

「しかし…」

 

「万が一。私達の目的地が敵に知られることがあれば、これまでいなくなった人達全てが無意味になります」

 

「…この犠牲に意味があると」

 

「…はい」

 

「そんなの間違っている」

 

その場にいた少年が突然叫んだ。

 

「誰かを犠牲にして生き残るなんて。そんなの間違ってる。全ての人が助かる道を目指すべきだ」

 

「マリス。貴方の力も私の力も万能では無いの、私達の力にも限界がある。だからこそ出来る範囲内でやるしかないの」

 

「そういえば彼女は」

 

「美羽なら弓子と一緒に休んでいるわ。私より優れたエスペラントの美羽にも限界があるの」

 

「くそ…なんの為に僕達はここにいるんだ」

 

少年は悔しさを滲ませながら何処かへ行ってしまった。

 

「リカルドさん。美羽の様子を見てきてくれませんか、もうすぐ私達の力が必要な時が来るんです」

 

「…なにをするんだい」

 

「昔…人類がフェストゥムを封じ込める為に造った壁がこの先にあるはずなんです。そこで物資とエネルギーの補給をします。そこにあるミールの力を借りる為にも美羽の力が必要なんです」

 

「そうか、わかった」

 

Dアイランドの人々のもとを訪れたリカルド。ファフナーのコックピットの中でじっと座る真矢を見かけた。

 

「遠見さん。どうしたんですこんなところに」

 

「リカルドさん。偵察にいつでも出れるように待機してます」

 

「…ありがとう」

 

「どうしたんですか、急に」

 

「皆が君の覚悟に助けられた。あの時俺が気がついていれば…」

 

「だいぶ混乱してましたから、仕方がないですよ。ご自身を責めないでください…そういえば、リカルドさんどうされたんですか」

 

「うん。あぁ日野美羽へ伝言をと頼まれてな」

 

「美羽ちゃんとお姉ちゃんは客席で休んでますよ」

 

「そうか。ありがとう。遠見さんもほどほどにな」

 

「ありがとうございます」

 

人類軍が決行した『シャッター作戦』によって閉鎖されたエリアに入った一同。中心メンバーが『ミールの森』へエスペラントと共に向かう中、リカルドはキャンプの責任者を任された。

 

「どうした。そっちばかり見て」

 

ミライは『ミールの森』がある方角をじっと眺めていた。

 

「…お前か。ここのミールはここにずっといることを選んだそうだ。ここにいれば争いとは無縁の日々を過ごせるらしい」

 

「ここに残るか」

 

「いや。私も争いとは無縁の日々を過ごしたいとは思う。だが私の求めているモノとは違う」

 

「何が違うんだ」

 

「私は日々進化する道を選んだ。進化を止め刻の流れを止めて過ごすここのミールのやり方は私には合わない」

 

「そうか」

 

「何故笑う」

 

「いや、いいと思うぞ。人は日々成長する生き物だからな。その調子だ」

 

「そうか…これは」

 

「どうした…っつ」

 

キャンプ地に一瞬入り込んだ異物感を2人は見逃さなかった。

 

「外の者が紛れ込んだ」

 

「あぁ」

 

ちょうど『ミールの森』に向かったメンバーが帰ってきた。

 

「そうか。やはり君も感じたかリカルド」

 

「はい」

 

「我々が戻ったのも日野美羽が敵意を感じ取ったからだ」

 

「どうしますか」

 

「エスペラントによると彼等の狙いはザルヴァートル・モデルのパイロットの暗殺らしい」

 

「狙いは真壁と皆城」

 

「そうだ。彼等には身を隠してもらい、怪我をしたと偽の情報を流した。釣られてくれればいいが」

 

「俺が探します」

 

「あぁ、リカルドの感性頼りにしている」

 

「了解」

 

夜を迎える前に、スパイの人物達を把握したリカルドはすぐにナレインに報告。検討した結果泳がせ、実行すると確証を得た際に拘束することとなった。

 

「スパイは拘束しないのか」

 

「なにかをする気配はないからな、泳がせて情報を聞き取りたい。なにもしなければいいんだ…何も」

 

「そうか…どうした顔色が悪いぞ」

 

「いや…ちょっとな、判断を誤ったかもしれない」

 

「どうした」

 

「スパイ達が動き出したこれはマズイ」

 

急ぎ医療テントに向かうリカルド。

 

(人類軍のスパイか)

 

(俺達を殺しにきたんだ)

 

(殺っちまえ)

 

絶望に打ちのめされた人々の憎悪と憎しみがスパイ達を襲う。

 

 

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い殺せ殺せ憎い殺せ憎い殺せ憎い殺せ憎い殺せ憎い殺せ

 

 

 

「皆…ダメだやめるんだ…」

 

膨大な負の感情がリカルドの感受性を襲い、余りの力に精神的に参り医療テントに向かう途中で倒れたリカルド。

 

愛する者を守る覚悟の銃声が鳴り響いた時、リカルドの目の前がまっ暗となった。

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