第5話「変調」
『ヘヴンズドア作戦』から2年。フェストゥムは群体活動をやめ、個体としての活動を開始していた。引き続き人類に敵対するもの、共生を選択したもの、様々な個体が様々な「状況」を起こしたことで、世界は混迷の時代を迎えていた。
「バーンズ将軍。納得出来ません。害意が無いのなら放っておけばいいではないですか、何故攻撃する必要があるのですか」
「クラウン中尉。前にも言っただろう。奴等はいつ人類の敵となるかわからん得体の知れない敵だ、例え今敵で無くとも、明日敵になっていたらどうする」
「我々が余計な手を下さなければ、彼等は何も害悪ではない。それはこの2年で良くわかったではありませんか」
「あれだけの群が敵になってみろ、それこそ再び人類は絶滅の危機だ。それを事前に防げる好機だと、何故わからん」
「だから干渉しなければ良いだけなんですよ彼等に」
「しつこいぞ中尉。それにこれも前言ったな。そのような思想は捨て去れと」
「…将軍」
「この作戦中、中尉には謹慎を命ずる。今の貴様がいては部隊の指揮に関わる」
部屋の外で待機していた見張りの兵士が中に入る。
「…自分で行きますよ。それくらい」
「結構だ。連れて行け」
独房へと進むリカルド。
「また将軍に楯突いたってリカルド中尉」
「カークス。出撃か」
「そうだ。全く黙って作戦に加わればいいのによ」
「敵意の無い者に銃を向ける。これは虐殺に等しい行為だとは思わないか、カークス」
「俺は正しいと思うぜ。脅威は未然に防げるのならこれに越したことはない」
「カークス…」
「俺がしっかりと撃ち込んで消滅させるよ。じゃあな」
リカルドが独房に入った頃。ちょうど作戦の開始を合図する指令がバーンズから発せられた。
(フェストゥムは個体であることを選んだ。つまり命を持った生命ってことだ。どんな命であれ無闇に奪っていい命なんてないんだ。どうして皆わからないんだ)
(ねぇ、空って綺麗だと思う)
「なんだ」
「どうしました。中尉」
「いや…なんでもない」
(君は空って綺麗だと思う)
(また聞こえた…。俺も空は好きだよ)
(やった。他にもいた。空が綺麗だと思う人)
(他にも…)
(あっ…)
(どうした)
(争いの炎だ)
それは俺達の部隊だと、リカルドは直感した。
(残念だ。君達は僕達に消えて欲しいんだね)
(待て、お前は)
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛助けて痛い助けて痛い助けて痛い助けて痛い助けて
「なんだ。なんなんだこの感覚は…やめろやめてくれ」
「中尉。どうしましたか中尉。しっかりしてください中尉。司令部。医療班をリカルド中尉が突然発作を起こし倒れました」
その時作戦はフェストゥムの群に核ミサイルを放ち、見事に消滅させていた。