ガケっぷちじいさんのところで古文書を解読してもらい、さあ早速あの遺跡に行こう!!ーーって展開だったのに、結局ボクらが遺跡に向かうことになったのは夜遅くのことだった。
「ごめんなみんな、こんな時間になっちゃって」
たはは、と頭を掻きながら笑うのはキーファ。彼曰く、グランエスタードで城の兵士に見つかって城に戻された後、バーンズ王にみっちり説教されて、部屋に閉じ込められたのだとか。
「いや~!まいったまいった、はっはっは!」
「キーファオマエ、笑ってる場合か?」
「城抜け出して本当に大丈夫だったのかい?ほらあの兵士さんたち、キーファを城に連れ戻さないと『給料カットされてしまう』んじゃなかったか?」
「大丈夫さ。親父は『城に連れ戻さないと』って言ったんだ。それから抜け出そうが何しようが、……まあ俺には怒るだろうけど、あの兵士たちに罰は与えない」
そういう親父さ、と呟くように言ったキーファは、目を伏せた。その横顔が月明かりに照らされている。
「親父もトシだよな。ちょっと指輪を借りたくらいであんなに怒らなくてもいいのにさ。……でもまあ、それだけあの指輪を大事にしてたってことなんだろうけど……」
少しだけ目を閉じたキーファは、暫くしてからパッと顔を上げた。よし、と決意を改めているようだ。
「まあいいや。夜が明けないうちに遺跡に行こうぜ!アルス!みんな!」
「うん、キーファ!」
先導するキーファに頷いて、アルスが続く。それにボクも続こうとして、足を止めて振り返った。
「シドー?どうしたんだい?」
最後尾にいたシドーは黙って立ち止まっていた。耳がぴくりと動いているのは、夜風に吹かれたから?
「……いや?何でもない」
「そうかい?」
「ああ。行こうぜ、クリエ」
シドーは何も言わずにボクの背を押して促したので、ボクも何も言わずに歩き出した。フィッシュベルの門が遠く離れていく。
島の中央に行くにつれて鬱蒼とした森が広がっているため、歩みを進めるたび、木々が月明かりを遮って視界がどんどん暗くなっていく。ざわざわと風で葉がざわめく音。時々鳴く鳥と虫の声。昼の姿とはまったく違う、まるで異世界へと身を投じているような、そんな気持ちになる。
みんなも同じ気持ちだったのだろうか。それとも、遺跡に待ち受ける何らかに期待しているのだろうか。緊張しているのだろうか。恐れているのだろうか。ーー何も喋らず、黙々と歩き続けた。
そうして辿り着いた謎の遺跡。キーファは賢者の像の前に立ち、その顔を振り仰いだ。
「さて、いよいよだな……。心の準備はいいか、みんな!」
うん、ああ、とそれぞれに応えたのに頷いて、キーファはキッと賢者の像を強く見据えた。
「この遺跡には、絶対になにかある!!それはずっと感じてた。たとえこの先にどんな苦難が待ち受けていても、オレは必ず乗りこえる!!」
キーファは隣に視線をやった。その青い目に相棒の姿を映して、ニカッと笑った。嬉しそうに。隣にいることを、疑いもしないような表情で。
「アルス、お前も一緒だ。とことんオレにつきあってくれるよな?」
「……うん、僕も行くよキーファ。一緒に!」
互いが一緒にいることを、疑いもしないほどの、信頼。それらがキーファとアルスという2人を繋いでいるのがわかった。……でもそれ、キミたちだけじゃないんだよなあ!
「ボクとシドーも忘れないでほしいなあ!」
くるりと振り返る。赤い目と目が合う。ボクはにんまりと笑ってシドーの手を取り、引き寄せた。
「ボクらも一緒だ、どこまでも行こう!な、シドー!」
「ハッハッハ!オマエはこんな時も変わらないな」
面白そうに笑い声を上げて、シドーはボクを見た。そっと、やわらかに、双眸を細めて。
「……ああ、そうだな、クリエ」
そう言ってボクの手を握り返すその力は、なんというか、壊れ物を扱うような優しさだったけれど、それでも握り返してくれたことには違いない。
嬉しくなって笑ったボクらを見て、気合い十分と受け取ったのか、キーファは気合いを入れ直して像を見上げた。
「じいさんが言ったように、本当に心の輝きで、道が開けるなら……俺たちに、その資格があるならば……」
すう、と、緊張とともに息を吸い込む。
「ーーどうか俺たちを受け入れてくれ!!俺たちに、新たな道を開いてくれ!!」
そうして夜空にキーファの願いが響き渡った。アルスは祈りを捧げるように指を組んでいる。ボクとシドーは、手を繋いで前を見据えていた。
そんなボクらの熱意が、灯ったのかもしれない。
「な、なんだっ!?いったい何が起こるんだっ!?」
杖の先に光が煌めいたかと思えば、その賢者の像がズズズと回転し始めた。遺跡の壁を見ていたその視線は反転し、何をやっても開かなかった扉の方に向く。そして、ーー杖の光が夜闇を切り裂き進み、扉にぶち当たり、ーー開かずの扉が、ゆっくりと、開かれる。
「すごい!すごいぞ!!どうやっても開かなかった扉はこんな仕掛けになっていたんだ! 」
「すごい、本当に……!あの古文書の通りだ!」
歓声を上げて、アルスとキーファは扉の方へ駆けて行った。ボクも駆け出したいのはやまやまなんだけれど!……気になることが、あった。
「……本当に、“気持ち”で仕掛けが動いた……?」
「クリエ?」
「ボクが見てきた……ボクが作れる仕掛けは、“仕掛け”だ。マグネ鉱石や魔力の水晶みたいに……魔法の力を使っていても、ちゃんと仕組みがある。それなのに、……」
賢者の像をなぞる。ボクの疑問などどこ吹く風とばかりに、相変わらずの静かな表情で佇むばかりだ。役目を終えたらしい杖の光も、今は掻き消えている。
……起動するのが“気持ち”、だなんて……。
「……こんなもの、どうやったら作れるんだ」
ーー
「おーいクリエ、シドー!何やってんだよ!!お前らも早く来いよ!! 」
大声で我に返る。顔を上げれば、遺跡の入り口でキーファがボクらに向かって大きく手を振っている。
「とりあえず、行こうぜ、クリエ」
「……そうだな!」
シドーと共に扉へと向かう。キーファは興奮冷めやらずといった様子で、グッと拳を握っていた。
「アルス!俺たちついにやったんだよな!! く~~っ!!この奥に何があるのか楽しみだぜ!! 」
「本当だね……!一体何が待ってるんだろう!」
「それを今から解き明かしに行くんだ!さあ行こうぜ、新しい冒険のはじまりだ!!」
「……その前に、少しいいか?」
今にも駆け出しそうな2人に「待った」を掛けたのはシドーだった。なんだよ、と不満を隠しもしないキーファから、視線をちらり、他所に移す。
「ここからは未知の遺跡だからな。何があるかわからん以上、ひとりで行動するのは危険だ」
「う、うん……?」
「?一体何を言ってるんだよ」
「シドー?」
どうしたんだい、と問い掛けたボクらに視線を合わさず、彼は後方の遺跡の壁を見ている。
「オマエたちにはわからなくても、
まあ……遺跡で何が起きても自己責任というなら、止めはしないが」
「!遺跡といえばアレだな!2つ並んだ宝箱、その前に転がるしかばね、蓋を開けた途端襲いかかってくるひとくい箱、ぼろぼろに朽ち果てた床を踏み抜いて落っこちた先で襲いかかってくるガイコツの群れ、動くうごかない石像、何故か宝箱に入っていたカツレツ、それにそれに、」
「あああもう!もうっ!わかったわよ!!!」
遺跡あるあるを口にしていたら、聞き覚えのある声が夜気を震わせた。シドーが見つめていた遺跡の壁から、ひょこりと橙色がのぞく。癖のある長いオレンジブロンドに、小さな形のいい頭をすっぽり覆う頭巾。それに何より、こちらをキッと睨むつり目が可愛いーー
「わあ、マリベルだ!どうしてこんなところにいるんだい?」
「あんたがワケわかんないけど怖いことばっか言うからでしょ!?」
現れたのはマリベルだった。マリベルは怒ってそんなこと言うけど、単なる遺跡あるある……あるかな?を言っていただけなのになぁ。
それに、マリベルの発言には矛盾がある。それはボクだけじゃなくみんな思っていたらしい。アルスがおずおずと、それを口にした。
「でもマリベル、クリエのそれは、君がここにいる理由にはならないよ?……本当に、どうしてこんな夜に、君がここにいるの?」
「なによ、アルスのくせに生意気ね」
マリベルは肩に掛かった髪を片手で払う。ふわりとオレンジブロンドが靡いた。
「べつにどうということはないわ。近頃ずっとあんたたちが走り回って何かをしていたことなんて、あたしにはお見通しだったってだけよ!」
ふん、と鼻を鳴らしてそう言ってのけたマリベルは、次いでアルスに視線を合わせた。その目がじろりと半眼になる。
「ねえ?ひどいじゃないのアルス!こんな面白そうなことをあたしに教えてくれないなんて!!」
「ひ、ひどいって、そんなつもりは、」
「とにかくあたしも一緒に行くわ!いいでしょ、アルス?」
「急にそんなこと言われても……」
「……なによ、なんでよ、どうしてポッと出のクリエはよくて、あたしはダメなのよ!」
「……ははあ、なるほどなあ」
なんでマリベルがボクに対して塩対応だったのかわかった。そりゃあ、自分を差し置いて出会ったばかりのボクがずっと傍にいたのだから、ツンケンするのも無理はない。わかるわかる。……わかるのだけど、アルスはそうではなかった。きょとんと目を瞬かせている。
「え?どうしてそこでクリエが出てくるの?」
おっとその発言はいただけないぞアルス。ほらマリベルがもどかしそうに唇を噛んじゃったじゃないか!仕方ないなあとひとりごちて、ボクはみんなを見渡した。
「なあアルス、キーファ。おまけのボクだって着いて来てるんだ、そこにマリベルがいたって何の問題もないだろう?」
「問題は、そりゃないけど」
「なら決まりだな!」
有無を言わせる前に、マリベルに向かって手を差し伸べる。
「一緒に行こう、マリベル!一緒ならきっと楽しいよ!」
「……っ、あんたってやつは、もう……っ」
マリベルの白い頬に赤みが差した。眉はつり上がっている。まあボクに庇われるようなのはお気に召さないだろうなあとわかっていたから、この反応は当然のこととして受け止めた。
だけどマリベルは、ボクの隣を通りすぎる時、小声で言ったのだ。
「“ありがとう”、なんて、言わないからね!」
「……ふふ、ほんっと、かーわいいなあ!」
「あんまり下手に構いすぎるとよくないんじゃないか?」
「シドーはやっぱり、マリベルのこと野生のネコかなんかだと思ってるよな」
まあ気まぐれで気高くて毛を逆立てて威嚇してそうなところはネコそのものだけれど、とボクも笑って。
「さあ気を取り直して、遺跡の中を探検してみようぜ! 」
そんなキーファの言葉に、ボクらは揃って遺跡へ足を踏み入れた。石を削って組まれた遺跡。その床には、なんらかの古代文字が刻まれていた。
「なんか書いてあるけど……読めないよなあ」
「なあにこれ、ラクガキ?」
「ラクガキじゃなくて、古代文字だって!」
やんややんや言い合うキーファとマリベル。その隣でアルスがしゃがみこむのが見えた。黒い目が、じっとその文字を追う。その右手の甲がーー青く、光を放った。
「「……え?」」
ボクの疑問の声と、アルスの声が重なった。思わず顔を見合わせる。
「今、アルスのその右手の甲、光ってなかったかい?」
「光っ……!?え、そんなことになってたの!?」
「うん、……うん?気づいてなかったのか?じゃあアルスは何に驚いていたんだ?」
「それは……」
戸惑ったようにアルスが言うには、なんと、アルスには床に刻まれた古代文字が読み取れたらしい。曰くーー
“遺跡がひらかれし時 伝説は ふたたび語られん。”
“並び立つ聖者たちは 遺跡を守り また 復活への道を示すであろう。”
“心の目を研ぎ澄まし 示された言葉の真実を 解き明かすべし。”
“ただ闇雲に進もうとも ゆく道はひらけない。”
ーーということらしい。
「アルスお前、古代文字が読めるのか!?王子の俺だって読めないのに、不思議なやつだなあ」
「キーファに王子としての教養なんて皆無でしょ。でも……あんたのその手の甲のアザ、不思議よね。生まれた時からあったんでしょ?」
「う、うん……」
頷くアルスの手の甲には、確かに不思議な形のアザがあった。……なんだろう、何かの模様を半分にしたような、そんな……。
「まあ、読めるのは便利だよな!これからも頼むぜ、アルス!」
「……うん!任せてよ、キーファ!」
わからないことをあれこれ考えても仕方ないと、明るく笑ったキーファとアルスに続いて、ボクらは地下へ通じる長い梯子を降りていった。
ごつごつとした岩肌が剥き出しになった洞窟や、人工であろう遺跡の廊下を抜けると、開けた場所に出た。あの地下にこんな大きな空洞が空いていたなんて、夢にも思わなかった。それほどに広く、深く、底知れない闇が広がっている。奈落に掛かる吊り橋を渡った先にある石碑には、こんな言葉が記されていた。
“我、炎の番人なり。炎消えるとも、我再びこれを灯さん。我が守りしは兜なりき。”
「なんだあ?これ」
「これは……」
「クリエ?なにか思い当たることがあるの?」
「うん、……うーむ、」
「なによ、煮え切らないわね」
「まだ確証がないから、先に進もう」
マリベルらにそう答えて、ボクは先へ進んだ。そこは十字架の形になった部屋で、中央には大きな燭台が煌々と燃えている。そしてそれを囲むように、燭台を抱えた像が4体佇んでいた。
「“我、炎の番人なり。炎消えるとも、我再びこれを灯さん。”……か」
あの言葉が、これらのことを指し示しているのならば、試してみなければ。そう思いボクは乾きの壷を喚び出して、中央の炎に向かって水を注いだ。ざぱっ、と流れ出る水によって、炎が一瞬にして掻き消える。
「ちょ……っ!?あんたなにしてんのよ!」
「クリエ!?」
ボクの行動にびっくりしたらしいマリベルたちだったけれど、その驚きはすぐに別のものにすり変わった。中央の燭台が消えた途端、ボクと反対方向にあった像が動き、中央の燭台に火を灯したのだ。その像はゆっくりと時間を掛けながら、元の場所へ戻っていく。
「やっぱり、石碑の言葉は“ヒント”なんだ」
「“ヒント”?……何のために?」
「……この遺跡の謎を解くため、だろうね」
ボクの思い浮かべる遺跡というのには、謎解きがつきものだ。それは遺跡に奉じた大切なものを外敵から守るためでもあるし、遺跡に挑む者たちを試す意味合いもある。
「……この遺跡をつくったものは、“相応しい者”に道を示すだけでなく、謎が解けるか試しているってことか?」
「うん、シドー。ボクはそう思う」
来るもの全てを拒むならば、もっとどうしようもない仕掛けを施しているだろう。ヒントなんてわざわざ用意しないだろう。この遺跡をつくったものは、ボクらの頭のひらめきを、謎に頭を悩ませる根気を、いろいろ試してみる気概を、未知を拓く勇気を、試しているのだろう。
事実、この部屋の他にもさまざまな仕掛けと謎解きがあった。ボクらの重さと天秤の傾きを利用した仕掛けに、真実を見極めるというライオンを模した彫像。無限かと思われる暗闇の中の迷路。水を操る水晶を動かし、水路を変化させるーーそうした謎を突破していく中で、ボクらは地下深くにある部屋で、とある壁画を見た。
「うわ、なんだか不気味だな」
「薄気味悪いわね……」
そんな呟きを耳が拾う。それもそのはずだ、ボクらが辿り着いた地下深くのこの小部屋。壁一面に描かれていたのは、ーー魔物と人の戦いの様子だったから。
マーマンやかまいたち、フレイムやゴーレムといった魔物たちに、墓場。武器を持つ人に、……物言わぬしかばね。人々が魔物に襲われ、抵抗むなしく倒れていく。そんな様が描かれていた。
「ーー、」
「?シドー、どうし、……」
ある一点を見つめて固まったシドーに、ボクは彼の視線を追った。そうして、同じように言葉を失くす。
壁画に、ある魔物が描かれていた。その身体は鱗に覆われ、蛇腹が覗き、ドラゴンのようでいてそうではなかった。背中に生えた羽根は蝙蝠、……ひいては悪魔の羽根のように見える。ぐわっと剥き出しにされた歯は、鋭さと獰猛さを感じさせた。その名も知らぬ魔物が、人を、建物を、すべてを壊してくーー
(……どうして?)
なぜ、こんなにも胸がざわめくのだろう?
「……、シドー」
「?ああ、クリエ。なんだ?」
「“なんだ”はこちらの台詞だよ!……本当に、どうしたんだい?」
シドーはつ、と目を細めた。まるで微笑むかのように、目を細めてみせた。
「何でもない、気にするな、クリエ」
「……そうか。じゃあ、なにかあったら言ってくれ!」
「ああ、わかった。そうする」
シドーが頷いて、そこで、その話は終わりだった。
それからボクらは変化した水路を抜け、魔物の石板を動かし、筏に乗って、さまざまな武具を見つけ出した。はじめの炎の間で手に入れた兜と合わせて、これで4つとなる。
「これで、全部集まったかな」
滝が流れ落ちる広間で、ボクらは集めた武具と情報を重ね合わせていた。目の前には“第一の聖者”、“第二の聖者”、“第三の聖者”、“第四の聖者”と銘打たれた像が並んでいる。
“聖者の兜”に、“聖者の剣”。“聖者の盾”、“聖者の鎧”ーー遺跡内で見つけた4つの武具を、4人の聖者に正しく捧げよと、石碑には記されていた。
“第1の聖者は大地を司る者。それは遥かなる時であり、生きとし生けるものであり、大地そのものである。
またその身を覆い尽くす鎧こそがまた大いなる大地とならん。”
“第2の聖者は風を司る者。風は時として真空の刃。己自身を傷つけることもあろう。その身を守るべくその手に掲げる物は何ぞや?”
“第3の聖者は炎を司る者。炎の聖者が怒りに燃えるとき、湧き上がる魂の炎は何者にも抑えることはできぬ。神たる理性で怒りを抑えよ。その頭上を飾るべきは聖なる勇気の守りなり。”
“第4の聖者は水を司る者。水は全ての命の源、険しい滝は我らの力となり邪悪な魂をなぎ払う。真に強きは怒りか?愛か?その答えはおそらく聖なる剣が示すその先にある。”
「第1の聖者は大地、“鎧”っていってるし、これだろうな」
キーファが聖者の鎧を第一の聖者に纏わせた。
「第2の聖者は、風、か」
「身を守るために手に掲げるといったら、盾だね」
ボクとシドーが聖者の左手に盾を添えた。
「第3の聖者は炎……頭上を飾るものといえば、これかしら」
よいしょ、とマリベルが重そうにしながらも、聖者の頭に兜を乗せた。
「第4の聖者は、水ーー聖なる剣を、ここに」
アルスが、聖者の右手に剣を握らせた。
すべての武具がすべての聖者に行き渡ったその瞬間、ガゴン、と重い錠が外れる音が響いた。ボクらは目を見合わせて、頷き、共に音の方へと向かう。今まで固く閉ざされていた扉は、アルスの手によってゆっくりと開かれた。
暗く狭い廊下を進むと、開けた場所に出た。その広場には九つの大きな燭台があり、赤と青、それぞれの色の炎を灯す松明に、巨大な2対の像。それに守られるように佇む遺跡の扉があった。2対の像が指し示すビジョンには、正しい火の在処が示されている。それに従って赤と青の炎を燭台に灯していくにつれて、不思議な力が満ちていくのを感じていた。
(……ただの、炎じゃない)
それは暗闇を照らすような、まだ見ぬ未知を拓くような、世界の境を、繋げるようなーーそんな炎。
それがすべての正しき燭台に灯った瞬間、見計らったかのように夜の闇が晴れていった。新しい朝日に洗われて、古びた遺跡の扉が、軋みながらも、開かれていく。
「おお!また新しい遺跡に入れるぞ!行くぞアルス!」
「わわっ、待ってよキーファ!」
「ちょっと、置いてかないでよね!」
遺跡内部に入ると、そこは今までとは違うーー今まで以上に整えられた、荘厳な雰囲気があった。緋絨毯を歩んだ先にはあった大きな石碑には、このような言葉が記されていた。
“失われし世界の姿を求めし者よ。
世界は四つの源に分かれ、その姿を今に残す。
あるべきものはあるべきところへ。
世界は真の姿をあらわす。”
「……失われし、世界?どういうことだ?」
「“世界は真の姿を表す”……意味深だな」
「……この石碑の言葉をそのまま信じるのならば、」
今の
「おおい、シドー、クリエ!こっちに来てくれ!!」
揃って頭を悩ませていたボクらは、キーファの呼び声に足を進めた。石碑に向かって右側の部屋には、青い台座が4つ置かれていた。なんだろう、と思うも、キーファたちの姿はここにはない。ボクらが先へ進むと、そこは先ほどと似ているけれど、色が違うーー黄色の台座が5つ置かれた部屋だった。
「こっちだ、こっち!」
「クリエ、シドー、これを見てくれるかな?」
「これ?……って……」
アルスたちが指し示したのは、ある台座だった。そこには黄色の石板がひとつ嵌め込まれている。石板にはうっすらと影が……なにかの模様が描かれているのがわかった。そして、その石板と同じものを、アルスとキーファが1つずつ持っていた。
「この石板、この遺跡で見つけたんだ」
「大きさとか、模様とか、この台座のものに合ってそうだから、試しに嵌め込んでみようと思って」
「そうなんだ!なにが起こるのかなあ」
わくわくしながら2人が石板を嵌め込んでいくのを見守る。けれども今持ってた石板を全部嵌めても、なにかが欠けているような気がした。ちょうどあと1枚、足りない、ようなーー
「ーーあっ!!」
「!?ちょっ……うるさいわね、なんなのよ!」
いきなり大声を上げたボクに、マリベルが片眉を吊り上げる。いや苛立つのも仕方ないよねわかるよ!でも今は声が上擦って止められない!
「忘れてた!!なあシドー、ボクら、この島に流れ着いた時に砂浜で黄色っぽい石板拾ったよな!?」
「!確かに……!」
ハッと目を見開いたシドーに確信を得て、ボクは袋を漁った。溜め込んだ木材や石材、砂浜ブロックの底に、それはあった。ーー少し薄汚れた、黄色の石板。
「……まさか、こんな展開で全部揃うなんて……運命なんじゃないか!?」
キーファが興奮を隠しきれない様子で声を弾ませる。その隣でアルスも、マリベルも、好奇心で目を輝かせている。今まで固く閉ざされていた遺跡の扉。数々の謎を解き明かして辿り着いた、意味深な台座の間ーーそこに対応した石板を嵌め込む。そこになんらかの意味や展開を期待してしまうのは、仕方ないだろう。
「じゃあ、……嵌めるよ」
“あるべきものは、あるべきところへ。”
“世界は真の姿をあらわす。”
先ほどの石碑の言葉が頭によぎったのと、カコン、と石板が綺麗に収まるのと、
「っ!?」
「な、なんだあ、この光は!!?」
揃った石板から光が溢れた。青、蒼、碧ーーさまざまな“あお”が渦を巻いて、ボクたちを呑み込む。
「う、わああああ!!?」
ぶわりと身を包む浮遊感と同時に、ボクらの意識は闇に途絶えたのだった。
第6話 「遺跡の謎解きはワクワクしちゃうな!」
切りどころがわからなくてこんなに長くなってしまった……!読みづらくて大変申し訳ないです。こんなところまで読んでいただいた方に感謝の念が絶えません。
次回からはいよいよ!ウッドパルナ編です!ドラクエ7のあの何ともいえない鬱くしい世界観をプレイヤーに叩きつけたあの世界で、クリエとシドーは何を思い、どう行動するのか。筆者も書くのが楽しみです。もしまた読んでいただければ幸いです。