IS 月華の剣士   作:雷狼輝刃

11 / 24
 
 
 感想と誤字の報告、ありがとうございます。

 この場をお借りしてお礼申し上げます。




第10話  十六夜VS白鋼 後編

  

 

 

 

 「いくぞ! 白鋼甲殻、発動!!」

 

 

 千春の掛け声と同時に両肩の防守が高速回転をはじめ、白鋼を被うように白い球体のバリアフィールドを形成した。 

 突然形成された白鋼甲殻に驚く零也。しかし

 

 (機体全体を被う球体状のフィールド・・・恐らく防御系の機能だろう。とりあえず確かめてみるか。)

 

 零也はカレトヴルッフをツインブレードモードからネイルガンモードに変型させてニードルを連射する。

 ニードルは全て白鋼甲殻に弾かれていく。 

 

 (ニードルは弾くか・・・やはりある程度で強度・・・レーザー迄は耐えれるようにしてあるだろう。)

 

 背後で白鋼甲殻がニードルを弾くのに気づいた千春は

 

  「そこか! 喰らえ落火星!」

 

 この時になって漸く背後にいる敵に対しての攻撃手段があったことを思い出した千春は両肩後部ヴァリアブルシールド内に装備されているガトリング砲【落火星】を使用した。 だが、千春は失念していた… 落火星は威力がある反面扱いが難しく反動も大きい事に。

 

 落火星を零也に向かって放ったものの、背後に向かって撃つなんて事をまともにしたことが無い上に、反動もあって撃った瞬間に砲身の向きはズレてあらぬ方向に弾丸が飛んでいく。 

 

 「何処を狙っているんだ?」

 

 「へっ?! うわっ!! 」

 

 千春は落火星を正面に向かって射った事はあった、しかしそれは地面に着地した状態であった。 その時でさえ射撃の反動で射撃補正システムの補助があっても狙いがまともに定められなかった上に、射撃反動に耐えきれずに後ろ向きに倒れてしまったのだった。

 

 そんな千春が背後にいる零也に向かって落火星を射ったところでまともに当たる筈もなかったのだ。

 それどころか反動で体勢を崩して、そのまま地面に向かって飛ばされて激突した。

 

 「ぐべっ!!」

 

 

 

 余談だが、その姿を見て管制室の千冬が手で顔を覆い盛大なため息をついていた。 その場にいた者達は同情の視線を送っていた。

 

 

   

 何とか起き上がった千春は飛び立つ事をせずにアリーナの壁まで移動し、そして壁に背を向けて零也の方を見るのだった。

 

 (これで背後から襲われる事はない、後は白鋼甲殻が切れる前に奴を倒せばいいんだ)

 

 千春は右手に火岸華を構えて零也に向けて射った。 しかし、 零也はそれを簡単にかわしていくのだった。

 

 (さて、どうする? あれをどうにかしないとな・・・・あれを使えば、破れるかも)

 

 零也は火岸華の射程外まで距離をとると、右手の万雷を起動させる。 右手から光が溢れ出してくる。

 それを見ていた千春は

 

 (な、何だ?! 何を始めるんだ? で、でも大丈夫さ。この白鋼甲殻を破れるはずは無いからな。それに今なら無防備だ、落火星で狙える!)

 

 千春は両肩の落火星を零也に向けて狙いをつける。それだけでなく体を壁に預けて反動に備えた。

 

 一方、零也は

 

 (よし、万雷のビーム砲モードのチャージ完了だ。 あと、なのは姉がビーム砲モードを射つ時にはトリガーキーが必要だって言っていたな。確か・・・・)

 

 零也はなのはに言われたトリガーキーを思いだし、右手を突き出して

 

 「いくぞ!ディバイン・・・・バスターーーーッ!!」

 

 「いけ、落火星!!」

 

 同時に射たれた攻撃は、二人の中間点でぶつかる。

 

        そして 

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁーーー?!」

 

 白鋼の落火星の銃弾は十六夜のビーム砲の光に飲み込まれ蒸発し、そのまま白鋼甲殻に命中する。

 白鋼甲殻とビーム砲の光がせめぎあう。だが、徐々に白鋼甲殻の白いバリアフィールドが赤くなっていく。そして

 

 『ビー、ビー、白鋼甲殻、耐久値限界。間も無く消失します。』

 

 「えっ? う、嘘だろ! まだ発動限界まで20秒はあるのに!」

 

 まさか白鋼甲殻が制限時間前に消えるとは思っていなかった千春は慌てる。 そして白鋼甲殻が消失する寸前で横へとジャンプして万雷の直撃を避けるのだった。

 直撃こそしなかったものの万雷に触れた右肩の防守が1/3程融解していた。 

 

    そしてSEも減っていた。

 

 (何なんだよ!何なんだよ!俺はオリ主なんだ!何で負けそうになってんだよ! こんな筈じゃ無い! ここから俺が逆転勝ちするんだ! 俺はオリ主なんだよ!見せ場はこれからだ!)

 

 自分が追い詰められている現状を何処かで認識しながらも、その事実を認められない千春。

 千春は右肩の防守を取り外すと零也に向かって投げつける。 そして夾竹刀を抜いて零也に向かっていく。

 

 ガタガタに揺れながらも零也に向かっていく防守、それを零也は腰に装着されている紅月を抜いて断ち斬る。

 そして、向かってくる千春に対して

 

     御神流 虎乱

 

  両手に持つ二刀一対の小太刀【紅月】で流れるような連撃を浴びせる。 それこそ目にも留まらぬ斬撃は夾竹刀を寸断した。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 突然、目の前で夾竹刀が寸断された事に驚き声も出せない千春。 何が起きたか理解出来ていなかった。 ただ気がつけば夾竹刀が寸断されて跡形もなかったのだ。

 

 その時になって初めて小太刀を構える零也の姿をまともに目にした千春は何とも言い表せないものを感じた。

 

 (な、何なんだ・・・これ? 体の芯から、全身が冷めていくような感覚・・・・・手が・・・・・足が・・・・・・・震える。)

 

 零也の剣気を正面から浴びる千春。初めて剣気を浴びた千春は、今まで感じた事の無い感情・・・・恐怖を理解する事が出来ない千春は戸惑う。

 

 二刀の小太刀を構えたことで、御神の剣士としてのスイッチが無意識の内にはいり、剣気を出したのだ。その辺りは、恭也や士郎から、まだ零也が未熟と言われても仕方の無い部分でもあった。

 

 零也の目の前で無防備な姿をさらけ出している千春。 零也は躊躇う事なく、勝負を決める為に動く。

 

   両手の小太刀を鞘に納め、瞬時加速を使い一気に千春に向かって突進していく。 

  そこから繰り出されるのは

 父であり師匠でもある恭也が最も得意とする技であり

 

 零也が今の段階で最も信頼の置ける技であり

 

 ISの技である瞬時加速との融合が最も成功している技

 

 

   御神流奥義  薙旋

 

 瞬時加速の突進、抜刀からの斬りつけ2つ、更に瞬時加速の威力をそのまま利用した高速旋回・・・楯無命名【瞬旋】で背後に回って2つ、同時かと見まごうばかりの一瞬で刃は4度閃く。

 

  「グハッ!!」

 

 高速の四連撃は千春の体・・・白鋼を斬り裂く。

 

       

 そして

 

 『白鋼、SEエンプティー。 特別模擬戦、試合試合終了。 勝者、月村零也。』

 

 

 千春には何が起きたか理解出来なかった。突然、凄まじい衝撃を受け激しい痛みを感じた。絶対防御が働き、怪我はしていないものの一瞬だけ意識を失っていたのか、気がつけば試合は終了しており自分が負けた事を知らされた。

 

 (お、俺は負けたのか? オリ主の俺が・・・・嘘だろ・・・何でだよ・・オリ主の俺が活躍しないなんて可笑しいだろ!)

 

 未だに自分が負けた事に納得出来ない千春。 

 

 (アイツが・・・・アイツがいるから・・・・・原作にはいないアイツがいるから・・・・・俺が・・・俺が・・・活躍出来ないんだ!)

 

 千春の視線はピットに戻る為に自分に背を向けている零也の姿があった。

 

 

  しかし千春は忘れている。そもそも自分という存在こそ原作には登場しないイレギュラーな存在だということを。

 

 

 そして千春はこの世界が自分の為に用意された物であり、この世界では、全ての物事はオリ主である自分の都合の良いように進むと思い込んでいる。

 

 

 自分という存在がこの世界では唯一無二の絶対的存在だと考えている。

 

 

 その全てが過ちだと気づいて・・・・いや知ろうとしない。 

 

 

 自分の都合の悪い事は、見たくない、聞きたくない、知りたくない、考えたくない。

 

 

 我が儘な子供のような存在・・・・それが織斑千春である。

 

 

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 (ここでアイツを・・・アイツを始末すれば・・・俺が・・・)

 

 千春は無意識の内に刃の無い夾竹刀を強く握りしめ、零也の姿を睨んだ瞬間だった。 

 

       ゾクッ!!!

 

 (な?! 何でだよ・・・・・か、体が震える?!)

 

 先程までの異常な興奮が一転して冷めて、今度は凍えるような寒気と震えを感じた。

 

 御神の剣士である零也にとって、自分や他者に向かって放たれる気配・・・それが負の感情が籠められた物なら察知するのは容易な事だった。

 

 試合終了後に千春の異常で異質な殺気を感じた零也から、警告の意味を込めた剣気が千春に向けて放たれたのだ。

 零也は、過去にストーカーから狙われていた女性のボディーガードをしていた時にも同じような歪んだ異質な殺気を感じた事があった。

 

 (何なんだ?アイツから発せられたストーカーみたいな異質な殺気は? 模擬戦に負けたくらいで、あんな殺気を出すか? それとも他に理由があるのか? 一応、警告の意味を込めて剣気を飛ばしたけど、何か起きてからじゃ遅いし紫達にも注意するように言っておくか)

 

 零也は、背後を振り向く事なくピットに戻るのだった。

 

 

 

  一方、未だにアリーナにとどまる千春。

 

 『何をしている織斑? 試合は終了した、早くピットに戻れ!』

 

 そんな千春に千冬からの連絡が入る

 

 「ち、千冬姉『織斑先生だ。』あっ!」

 

 『色々と想うところ、考える事があると思うが、まずはピットに戻ってこい。』

 

 「・・・・・・・・わかりました。」

 

 そう言って千春はピットに戻るのだった。

 

 

 




 
 
 パワードスーツについて

 この作品において、IS以外にも完全装甲型の人型強化装甲【パワードスーツ】が登場します(名前のみの時もあり)
 パワードスーツはISが登場する前から日本で開発されて、防衛・警備・災害救助・建築のそれぞれの分野で活躍を始めていました。そして海外でも、その有効性に着目されて研究・開発が始まるところでしたが、その矢先にISが登場しました。
 IS登場後は日本では建築・災害救助以外の分野での活躍や開発が衰退していき、海外でも研究・開発は中断されました。
 しかし、ISコアの絶対数というデメリットを埋める為にパワードスーツの存在が着目され、日本では再び研究・開発・配備が活発化していき、それに追従する形で海外でも研究・開発が再開されました。

 性能についてはISには及ばないものの、原作に登場したEOSを上回る性能である。 SE・絶対防御・拡張領域は無いものの、パワーシリンダー・パワーアシストにより操縦者への負荷はかなり軽減されている。
 また、機種によっては短時間・短距離の飛行能力や潜水能力を持つ。
 

 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。