管制室
「さて模擬戦は終了した。私はこれから織斑の元に向かう。オルコットと篠ノ之、試合結果は兎も角として試合内容に関してはあまり口外しないように。それからクラス代表に関してはこの後、私と山田先生で協議して判断する。」
「「わかりました。」」
「それでは解散と言いたいところだが、その前に篠ノ之、御神流について何か知っているようだな? よければ教えてくれないか。」
千冬は楯無と虚に視線をやりながら箒に問う。 視線を受けても無言を貫く二人の態度に、聞かれても問題の無い事なのだと千冬は判断した。
「父から聞いた話なのですが、父が若い頃に篠ノ之道場を訪れた【不破】と名乗る一組の父子がいたそうで。父親の方が、その時はまだ存命だった、亡くなった祖父の知り合いで旅の途中で立ち寄ったと。」
箒は父から聞いた話を思いだしながら話す。
「祖父と父親が親しく話をしている流れの中で父と男の子が手合わせをすることになったそうです。」
「先生が?」
「はい、父はその時二十歳で、対する男の子は小学生のようで10歳くらいに見えたそうです。」
「いくら何でも、体格差は勿論の事年齢差がありすぎでは?」
「話を聞いた時に私もそう思いましたし、父も話を持ち掛けられた時に同じ理由で断ろうとしたそうです。その当時の父は幾つかの大会を制覇しており全国でも屈指の剣士と自負していたそうです。ですが、祖父が問題無いと手合わせを始めさせたそうです。」
話を聞いていた千冬は有り得ないという顔をしており、側にいたセシリアと真耶も信じられないという顔をしていた。 だが、楯無と虚は話を聞いても平然としている。
「手合わせを始めて、父は愕然としたそうです。二十歳の父が小学生相手に手も足も出ずに負けたそうです。それも一度や二度ならず十番手合わせして、一度たりとも勝てなかったそうです。」
箒の話を聞き千冬のみならず、セシリアも真耶も驚きを隠せなかった。 二十歳の成年男子と十歳の子供の試合で成年男子が1度たりとも勝てなかったという事実に。
「手合わせを終えて祖父は父に『どれだけ自分が天狗になっていたか理解したか?確かにお前の同世代には今まで、お前勝てる者はあまりいなかった。だが、世間は広い。見ろ、お前より年若い者にお前は勝つことが出来なかった。』そう言って父を諫めたそうです。」
その話を聞いた時に箒は、まるで父が力に溺れないように教訓として、その話をしているかのように感じた。
「あとで父を諌める為にその父子に道場に寄るように頼んだと、祖父が教えてくれたそうです。」
「その子が使っていた流派が御神流だと?」
「はい、父からそう教わりました。祖父がその後、直ぐに死去したことで、不破父子との連絡手段を知らなかった父はそれから会えることはなかったそうです。祖父の遺品の中にも不破父子の連絡先を知らしめる物が何も無かったと。」
(・・・・・・・・その時の男の子というのが年齢から月村の父親の可能性が高いと思ったが・・・月村の父親とは姓が違う・・・・それにあのとき室内にいた祖父と紹介された男性は高町と名乗っていた・・・・となると親族ということか?)
千冬の脳裏には月村家で面会した恭也と士郎の姿が浮かんだ。 だが、姓が違うことで別人だと考えた。
「わかった。それでは解散。」
そう言って千冬は管制室を出て行った。
「それじゃあ私達も行きましょうか虚ちゃん。」
「かしこまりましたお嬢様。」
そう言って楯無と虚も管制室を出ていくのだった。
第1アリーナ 特別貴賓室
「さて、試合を観戦して頂きましたが、如何でしたか?」
IS学園理事長の轡木十蔵の問いかけに室内にいる人物達からは溜め息が一斉に漏れた。
「・・・・・・改めて聴きますが、彼は本当に織斑千冬の弟さんで間違い無いのですね?」
国際IS委員会日本支部委員の神崎すみれが十蔵に聞き返す。
「はい、彼は間違いなく織斑千冬の弟ですよ。」
「試合結果は予想通りだったが、試合内容は予想より遥かに悪かった。 確かに1週間という短い時間でISの操縦を完全にマスターするのは不可能だが、基本動作すら未だに危ういというのは・・・・・」
十蔵の答えを聞き、国際IS委員会日本支部長の大神一郎が述べる。
「確かに相手は御神流の継承者である月村零也、いくらISの試合とは言え勝負にならないのはわかってましたが・・・ そう言えば、織斑君は入学前に訓練や学習はしていないのですか?」
日本の防衛大臣を務める藤枝あやめが尋ねる。
「織斑君の場合は発覚後に起きたゴタゴタで所属先があやふやだったので、日本支部で訓練や学習が出来なかったのです。」
大神はそう答えて、国際IS委員会の委員長の小野寺徹也に視線を送る。
「それについては申し訳ない。織斑君は後ろ楯が後ろ楯だけに逆に揉めてしまってね。結局、自由国籍にして本人が所属国家を決める為の決断までは日本預かりというのを決定するのに時間が掛かり、それで彼を日本支部や企業に預けての訓練や学習が出来なかったのだ。」
「一応、参考書は送付していたのだが・・・・先程聞いたのだが彼はどういう訳か予習を行っていなかったようなんです。」
小野寺の話を引き継いで大神が答える。
「・・・・・・・・馬鹿なんですか彼は?」
すみれが飽きれながら言う。
「自分の置かれている立場をキチンと認識していないのもあるのでしょう。 まあまだ15歳、子供と言ってもいい歳ですし、いきなり環境が変わり自分の立場も周囲に流されてしまう状況下だったのですし、あまり責めるのも酷というものです。」
日本代表候補生管理官の相羽アキが一応、擁護する。
「さて、今後の事なんですが・・・・月村零也君に関しては入学前の取り決めもありますが、本人の実力も確かなものなので現状維持で良いと思いますが、問題は織斑千春君の方ですね。」
十蔵がそう言うと
「確かに今のままでは色々と不味いな。身の危険も去ることながら、色々と利用される可能性が高い。」
大神の言葉に
「既に女性権利団体の1つ【百合の会】が男性操縦者の排斥の為にIS学園からの追放の要望書を提出してきました。同じく女性権利団体の1つ【女神の使徒】が織斑君を団体の象徴の1つにしようと画策しているようです。そして幾つかの男性復権団体が月村君と織斑君を象徴にしようと画策しているのが判明してます。」
あやめの報告に全員が渋い表情になる。
「それで、月村君は兎も角として織斑君の方が急務ですわ。せめて代表候補訓練生になるための試験の受験資格が得られる程度の実力は身に付けて貰わないと。」
すみれの言葉に
「代表候補訓練生ですか・・・・・今の技量からそこに短期間で持っていくとなると、授業以外にも補習や訓練を詰め込んでいかないと無理ですね。ですが補習は兎も角として訓練は場所の確保が難しいですね。学園のアリーナを彼だけ特別に毎日使用させるわけにもいきませんし・・・・それに指導するコーチをどうするのかも問題です。」
アキがそう言って問題点を指摘する。
「確かに、IS学園教員にコーチをお願いした場合は教員の負担が増します、だからと言って代表候補生の生徒にお願いするのも、今の段階だと色々と問題が起きそうですね。」
そうあやめが述べると
「それについて私から提案があるのですが?」
小野寺がそう言う。 全員の視線が小野寺に集中する。
「織斑君、それに月村君もですが一旦二人を国際IS委員会代表候補生に任命し足場を固めて、その危うい立場をとりあえず保護します。月村君に関しては月村重工企業代表候補生との兼務になりますが、企業代表候補生の立場を優先してもらうことになります。」
「国際IS委員会代表候補生に任命するメリットは?」
すみれが質問する。
「まず国際IS委員会代表候補生にすることで、国際IS委員会の施設を利用しても何の問題も起きません。つまり日本支部のアリーナや合宿所を使っても規約上は文句は言われません。これで連休や日曜祭日の時の訓練場所が確保できます。 次に指導に関しては代表候補生を二人一組で指導に充てます。この時、別々の国の代表候補生をペアにすることにより互いに監視役を担ってもらいます。」
「なるほど、別々の国の代表候補生がペアになり、相互監視をすることで、下手にちょっかいはかけられないわね。」
小野寺の答えを聞き納得するあやめ。
「それに代表候補生達も男性操縦者への接触を大手をふって出来る。もっとも監視付きだけど、それでもデータを得る機会が得られるのだから文句は言えない。」
大神の答えを聞き小野寺が更に
「そしてもう1つ、月村君は兎も角として織斑君には訓練はもとより試合を多く経験させる必要があると思います。単なる模擬戦ではなく正式な試合を。その為に1年1組のクラス代表に就任させたいと思います。」
「いくらなんでも、それは! 今行われたクラス代表決定戦の内容評価をせずに一方的に上からの決定というのは、問題がおきます。」
すみれが反対する。
「既に国際IS委員会の代表者会議で採決されている事案だ。」
小野寺の言葉を肯定するように大神が頷く。
「・・・・・・もしかして、試合結果に関わらず織斑君のクラス代表就任は決定事項だったのですか?」
アキの質問に小野寺は
「・・・・・・実は織斑君の場合、織斑千冬という後ろ楯は大きい。だがその反面、その後ろ楯を利用しようと画策するもの達も少なからず存在する。正攻法のみならず搦め手で攻めてくる者もいるだろう。 姉弟という関係は切り離す事は出来ない以上は、織斑君には自立というか、織斑千冬という後ろ楯無しでもやっていけるように成長してもらわなければならないのだ。」
「この一件に関しての泥を全部貴方が被るおつもりですか?」
あやめが厳しく問いかける。
「それに、今回の決定は実情を知らないもの達からすれば、あまりにも織斑君贔と言われて月村君を冷遇していると取られ兼ねません。それこそ織斑千冬の弟故に優遇されていると。」
すみれも厳しく問いかける。
「それも覚悟の上での判断だ。それに織斑君を多少優遇したところで、こう言っては何だが月村君との実力の差は埋められないと考えているが。」
小野寺の言葉に全員返す言葉がなかった。 ここにいる全員が零也=御神流の力を少なからず理解しているからだ。
「それにこう言っては何だが、寧ろ織斑君への注目を集める事で月村君へ集める注目を少しでも反らしたい。そもそも月村君・・・御神流はあまり表で注目を集める存在ではないのだから。」
小野寺の説明に全員は納得せざるおえない。
「・・・・・それでは、来月までの施設の運用調整をして日曜祭日に訓練施設のアリーナで織斑君が使用できる時間帯をもうけます。」
すみれがそう言うと
「各国への協力要請は防衛省と外務省が行います。」
あやめも続いて言う。
「短期間集中養成の訓練内容を作成します。」
アキがそう言うと
「作成した内容を元にスケジュールを組んで織斑君には訓練してもらいます。日本代表候補生への通達は私が。」
」
大神がそう告げると
「理事長。各国からこの学園に通う代表候補生への連絡があると思うので、全員に通達されたところで集めてスケジュール調整をしたいと思うので、通達がきた際には連絡をお願いします。」
小野寺の要請に十蔵が
「わかりました。それでは本日のところはここでお開きといたしましょう。」
更識楯無について
原作では日本直轄の暗部組織の当主でありながら、自由国籍を取得してロシアの国家代表となっております。
しかし、今作品に置いては日本国籍のまま日本の国家代表に就任しております。
ただ、この国家代表就任も前任者の女性が結婚直後に妊娠が判明し急遽、現役引退した為で代表候補生序列1位にいた楯無が暫定的に繰り上げで国家代表に就任したものです。
正式な国家代表者を決める為の選抜試験を行う予定になっていますが、実力からいって楯無が選ばれる可能性が高い。
第3世代型IS【此花咲夜(このはなさくや】
外見:ゾーリンソール(※注 機体色は水色)
出典:ガイアギア
更識ISラボが作り上げた完全装甲型の第3世代型IS。
第2.5世代型IS【櫛灘(くしなだ)】の稼働データを元に開発された物。 楯無のトリッキーな戦術に対応出来るようになっている。 第3世代型兵装を使う為に思念増幅装置【サイコミュシステム】を搭載している。
(*注:サイコミュシステムの設定に関しては本作品独自の物ですので御注意ください)
武装
【蛟(みずち)】:細身の長剣で蛇腹剣に変型する。蛇腹状態では、拘束のみならず切断も可能で更に高速回転することで、抉ったり・鋭い刺突も可能となっている。また、放電機能もある。
【天沼矛(あめのぬぼこ)】:ガンブレードランス。刃の部分は高周波刃となっている。ビームガンも内蔵されている。柄の部分は伸縮するようになっており、短くすれば取り回し易い剣としても使える。
【九頭竜(くずりゅう)】:小型の盾が装着されたガトリングガン。
第3世代型兵装【天璽(あまつしるし)】:ナノマシンを利用した特殊兵装。ナノマシンに幾つかの属性変化の能力が付与されており操縦者の意思により変化していく。
例えば、水蒸気に変化させて水蒸気爆発や、スクリーンの代わりにして自分の姿を映したり、電気に変化させて雷を落としたりレールガンに利用したり出来る。
第3世代型兵装【天羽々斬(あめのはばきり】:思念誘導で遠隔操作出来るファンネルと呼ばれる種類のビーム兵器。
特に天羽々斬は攻防一体のフィンファンネルと言うボード状の物で、通常サイズの物が背中のバックパック上部に3機、下部に2機、両肘に各1機の合計7機と小型の物が腰の左右に各3機装備されている。
ビーム兵器以外にもビームシールドや、連結してビームソードやビームカッター、更に天璽を利用したの特殊攻撃が可能。