タイトルを少し変更しました
1週間後 学年別クラス対抗代表戦当日
改修工事の終わった第1アリーナで1年生のクラス対抗代表戦が行われる事になった。
第1アリーナのAピットの待合室、前回のクラス代表決定戦の時と違い室内が確りとした造りの壁で区切られていた。
アリーナに出る為のゲートやカタパルトの手前の待合室が壁で区切られ2部屋に分けられ、それぞれにモニターと更衣室等が設置されている。
そこにISスーツに着替えた千春と制服姿の涼子の姿があった。
クラス代表対抗戦には出場選手以外に1名、ピットへの同行が認められていた。そして涼子が警護の為に同行者に選ばれた。
千春にとって涼子はどうにも馴染みにくい人物だった。
別に涼子に社交性がないかと言われれば、そうではない。クラスメイトとは普通に談笑するし、食事もとっている。 千春とも雑談する事もある。
だが、千春は自分の警護役という立場の涼子に対して、どうしても身構えてしまっていた。 千春が涼子と馴染めないのは千春自身の問題なのだ。
さてこの1週間、千春にとっては予想外の1週間だった。 初日での鈴との短い再会以来、鈴とはまともに話す時間がなかった、というか出来なかったのである。
千春はこの1週間、ISの訓練に基礎トレーニングがびっしりと組まれていたのである。
というのも、当初は学園に在籍する代表候補生達に千春のコーチを依頼する予定だったのだが、進級して間もない事、そして1学期には学年別トーナメントが控えていることを考慮してトーナメント終了までは依頼しない事にしたのだ。
その代案として、GWまでの間の平日に日本支部からコーチを特別に派遣して貰ったのだ。期間限定という事もあり、その内容は量より質、最低限必要な技術の習得と基礎身体能力の向上を目的としたもので濃密な訓練となっていた。
その為、訓練を終えると千春はへとへとになっていた。
トレーニングを抜きにしても、千春にとっての誤算というか予想外の展開が、鈴からの千春への接触が全く無かったのだ。
(どうなってんだ? 鈴があれ以来何も言ってこないなんて?酢豚の件や一緒に訓練しようという誘いも無いし)
あまりにも自分が知っている原作とは違う展開が動揺させていた。幾つか起こる筈のイベントが全く起きないのが千春を不安にさせていた。更に
(しかも箒とのルームメイト生活が、何でこんなに早く終わるんだ?)
入学した当初からルームメイトだった箒が、先週末に部屋の調整がついたという事で、同室が解消されたのだった。
箒・セシリア・鈴と一夏がいない今、主人公の立場にいる自分が、3人と仲良く····いや、惚れられている筈なのに、全くその素振りが無い状況が千春を悩ませている。
『それでは只今より、学年別クラス対抗代表戦1年生の部の組合せを発表いたします。』
アナウンスと共に千春の待合室にあるモニターに組合せが表示された。
第1試合
1組代表 織斑千春 VS 2組代表 凰鈴音
第2試合
3組代表 月村紫 VS 5組代表 十条紫苑
第3試合
4組代表 更識簪 VS 第1試合の勝者
第4試合
6組代表 カルタ・イシュー VS 第2試合の勝者
『なお、5組代表の十条紫苑さんは体調不良により棄権する事になりました。これにより3組代表の月村紫さんの不戦勝となります。それに伴いまして、第3試合と第4試合の順番も入れ替えまして、第1試合の次に第4試合を実行いたします。 それでは第1試合を5分後に開始します。出場選手並びに関係者は準備をしてください。』
アナウンスの声に千春は
(原作通りに鈴との対戦なんだけど、これってやっばりゴーレムが来るのかな? そうなると少しセーブして戦わないと)
そう考えながら、千春は待合室を出るのだった。
Bピット待合室
Aピットと同じように区切られ待合室に鈴と同行者を努めるのティナ・ハミルトンの姿があった。
「ありゃ~、いきなり織斑君とか。注目されるよね。」
「別にかまわないわよ。それに勝つのが目に見えているし。」
「どうして?だって織斑君は、あの織斑先生の弟で専用機も持っているのよ!」
「いいティナ、弟だからといって織斑先生と同じように強いとは限らないのよ。それに専用機というけど、誰でも扱える訓練機ではなく、乗り手を選ぶ専用機を早々に使いこなせるとは思わないわ。」
「でも噂じゃ、国際IS委員会日本支部からコーチが派遣されて、この1週間すごい訓練をしていたって。」
「ゲームや漫画じゃあるまいし、いくら濃密な訓練をしたからと言って1週間位で、代表候補生に勝てるほど甘い世界じゃないのよ。」
「織斑君でも、その評価って事はもう1人の男性操縦者もたいした事ないのかな。」
ティナのその言葉を耳にして鈴の眉がピクリと動く。
「ティナ、悪いけどあいつと零也さんを一緒にしたら駄目よ。」
「どういうこと?」
「この1週間の間に零也さんと2度程、模擬戦というか手合わせをしたんだけど、手も足も出なかったの。」
「へっ?!」
「さっきティナに言った事を少し修正するわ。仮に戦闘のプロが訓練してISの基本動作をマスターしたら、おそらく代表候補生でも簡単に勝つ事はできないわ。」
鈴の脳裏には手合わせした時の記憶が甦る。2度の手合わせは僅か3分の短い時間で近接戦闘縛りの事だったが、なにも出来ずに終わった。
両手の双天牙月で攻め立てるものの尽く捌かれ、合間をつかれて小太刀で斬られた。 3分の手合わせが終わった時、鈴は息疲労困憊だったが零也は息も切らせておらず余裕だった。
無論、正式な試合となれば違う戦い方も出来て、違う展開もあったかも知れないが、それでも勝ち筋は見えて来ない気がした。
そして手合わせをしている中で鈴は零也が戦いに関して素人ではないのに気づいた。戦いのプロフェッショナルだと。
「そんなに凄いの?」
「えぇ。今の私では手も足も出ないわ。でもお陰で明確な目標が出来て燃えてるの。この学園には零也さんを含めて越えるべき目標が何人もいるわ。そして、このトーナメントにも。だからこそあいつに何てかまってられない。」
鈴は拳を握りしめてゲートに向かって行く。
「頑張ってね鈴!」
ティナの声援に応えるように右腕を高く上げる。
鈴のいる反対側の待合室の一室に零也・紫・シュテルの姿があった。 本来なら同行者は1人なのだが、零也が同行者という事で警護のシュテルも特別に同行が認められたのだった。
「いきなり不戦勝だなんて、拍子抜けしちゃった。」
「だが直ぐに次の試合だぞ、それに試合開始時間の変更が無いからか、そこまで影響は無いだろ?」
いきなり出鼻を挫かれた感じの紫に告げる零也。それを見ていたシュテルが零也に声をかける。
「ところで零也は次の試合はどちらが勝つと思いますか?」
「鈴の圧勝だな。」
鈴、千春と戦った事もある零也はそう断言する。
「確かに、私は直接戦ってないけど兄さんとの手合わせやセシリアと箒との模擬戦を見てそう思うわ。」
鈴とセシリア、箒の模擬戦はそれぞれ違う展開を見せていた。
セシリアとの一戦は長距離・中距離・近距離戦闘と色々な展開を見せた。 その一方で鈴と箒の一戦はガチガチの近接戦闘だった。
実力はそれぞれ拮抗しており一進一退の攻防を見せた。
2組のクラス代表になった鈴の戦いだけを見るのは不公平なので紫は零也や楯無との模擬戦を見せたのだった。
「2人がフィールドに出てきましたよ。」
モニターを見ればフィールドにISを纏った2人が姿を現した。
そしてフィールドに現れた千春を見て3人は気づいた。
「ISが少し改修されているな。脚部のブースターが増設されてるな。」
「両腕に小型の盾が装着されてるね。」
「肩の後部に装着されているガトリング砲が小型になっているわ。」
それぞれ変わった部分を指摘する。
「おそらく、零也との模擬戦のデータから姿勢制御や加速を安定させる為にブースターを増設したと思われます。そして両手に盾を追加して防御をより強固に、そして反動が大きかったガトリング砲を小型の物に変えて反動を減らし使い易くしたのでしょう。」
「でも、機体を改修したからといって鈴の勝ちは変わらないかな。」
シュテルが改修された理由を推測する。それを聞いても零也は鈴の勝ちを断言した。
『これより学年別クラス対抗代表戦、1年生の部を開催します。 第1試合は1年1組代表、織斑千春VS1年2組代表、凰鈴音。』
アナウンスと共にそれぞれのゲートから千春と鈴が飛び出してくる。
フィールドに現れた鈴の姿を見て千春は驚くのだった。鈴の纏った甲龍が自分の知っているものと少し違っていたのだ。
顔には口元まで覆い隠すスモークのかかったバイザー、胸部も装甲に覆われている。そして何より右手には矛・・・方天雷牙を持っていた。
「鈴なのか?」
思わず、そう口にする千春。
「そうよ、これが中国が誇る第3世代型IS甲龍よ! その力を得と見せてあげるわ。」
そう言って鈴は右半身を少し後ろに引き、腰を落とし左手を前に付きだして構えをとる。
それを見て千春も腰から夾竹刀を抜き両手で握り、中段に構える。
2人が構えを取ったところで
『これより、学年別クラス対抗代表戦、第1試合を開始します。』
アナウンスと同時を開始を告げるブザーが鳴り響く。
「いくぞ鈴! ウォォォォーーー グベッ?!」
基本的に待ちが苦手な千春は掛け声と共に鈴に向かっていこうとしたのだが、一歩踏み出した瞬間が顔面に衝撃を受けて仰け反るのだった。 だが、それだけでは終わらなかった。
「ウグッ!! ギャァァァァーーーー!!!」
そのまま腹部に凄まじい衝撃を受けたと同時に、衝撃を受けた腹部から全身に感電したかのような、途轍もない痺れる痛みが走る。
いや実際に感電したのだが、千春には何が起きたのか全く判らなかった。
鈴が試合開始の合図と共につき出した左手に内蔵されている小型衝撃砲〔龍咆・崩拳〕を千春の顔面目掛けて放ったのだ。 カウンター気味に無防備にそれを受けた千春はまともにそれを喰らい仰け反るのだった。
さらに鈴は瞬時加速を使い、一気に千春との間合いを詰め、その勢いを利用して方天雷牙で腹部を突くのだった。
瞬時加速の勢いも加わり、その衝撃はこれまた凄まじいものだった。それに加えて、方天雷牙に仕込まれた放電端子が作動し千春を感電させるのだった。
「ハァァァァーーー!!」
鈴の攻撃はこれに止まらず、方天雷牙を拡張領域に戻すと代わりに両手に大型のトンファー・・・黒龍を取り出して構えると、千春目掛けて振り下ろす。
「クソッ、 白鋼甲殻!」
だが間一髪で千春が白鋼甲殻を発動させて黒龍の一撃を防ぐのだった。 そして鈴から距離を取ると白鋼甲殻を解除する。
流石の千春も白鋼甲殻の使い方を少しは学んだ。発動しっぱなしではなく、必要無い時には止めるということを。
だが依然として千春が不利な状況には代わり無い。試合開始前のセーブして戦うというのが、不可能だという事にまだ気づいていない。
甲龍について
原作の物と違い中国を出る前にオーバーホールと同時に少し改修を受けてます。
外見の変更点としては、頭部にヘッドギア・顔に口元まで覆うスモークのかかったバイザー、胸部に装甲が装着されてます。
また以下の武装が装備されてます。
放電端子内蔵戟【方天雷牙】
先端部分に放電端子が内蔵された方天画戟。
超振動大型錐【剛撃錘】
相手に命中した際により衝撃を与える為に錘の部分が超振動している金瓜錘(ようはメイス)。これにより内部にダメージを与えるようになっている。
多機能型棍【黒龍】
マシンガンと流星錘が組み込まれた大型トンファー。先端部分が開き鉤爪のようになり刀剣を挟む事が出来る。