予約投稿の設定を間違ってまして、1年後の11月1日になってました。 ごめんなさい。
という事で1日遅れで投稿します。
IS学園 学園長室
そこに集まったのはアリーナで対応した零也達4人。
観客席で生徒達を避難させていた簪・箒・セシリアの3人。
アリーナ外部でロボット相手に戦った2、3年生の専用機持ち······楯無にアメリカ代表候補生の3年生レイン・ミューゼル、ギリシャ代表候補生の2年生フォルテ・サファイア、イギリス代表候補生の2年生サラ・ウェルキンの4人。
更に管制室にいた千冬・麻耶・スコールの3人、そして学園長席に並んで座る初老夫婦がいる。
「さて、よく集まっていただきました。初めて顔を合わせる人達が多いので、自己紹介させていただきます。私がIS学園の理事長を務める轡木十蔵と言います。隣に座るのが妻でIS学園の学園長を務める百合です。このご時勢、男性である私が出ると色々と面倒がおきるので、普段は百合が面に立ち、学園の行事や国際会議等に出席したりしてもらっております。」
そう言って十蔵は集まった面々に自分の事を紹介した。
そして零也達を見て
「さて、先ずは月村君、月村さん、高町さん、凰さん、良くぞ被害を最小限に止め、侵入者を制圧してくださいました。」
十蔵と百合は零也達に頭を下げる。次に簪達を見て
「次に更識簪さん、篠ノ之さん、オルコットさん、生徒達ので避難誘導、お疲れ様でした。怪我人を1人として出すことなくすみました。」
今度は簪達に頭を下げる。 そして次は楯無達に
「更識生徒会長、ミューゼルさん、サファイアさん、ウェルキンさん、アリーナ外部の外敵を教員達と協力し制圧した事、大変お見事でした。皆さんの協力により短時間で制圧出来、その後の対応が迅速に進みました。」
そう言って楯無達に頭を下げる。
「さて今更状況説明は不要と考えますので、今後の対応等に関して説明させていただきます。先ず今回の事件については学園外部に情報を漏らす事は一切禁止させていただきます。これに関しては生徒全員に誓約書を書いてもらい、厳守してもらいます。これは国際IS委員会の決定です。」
十蔵は苦虫を噛み潰したよう顔で全員に告げる。
本来なら特殊独立機関であるIS学園は、あらゆる国家・組織といった権力の干渉を受けないという国際規約があるのだが、国際IS委員会は今回それを無視して事件の情報隠蔽を要請、いや強制してきたのだ。
国際規約をたてに拒否してもよかったのだが、国際IS委員会は搦め手を使いIS学園に情報隠蔽を認めさせたのだ。
事件の事を公にすれば、安全の為に2人の男性操縦者を入学させたのに、その方針そのものが揺らぐと。
今回の事件でIS学園には、今のところは何の落ち度も無い。
だが、事件を公表する事でIS学園側の落ち度を粗探しして、難癖を付け、零也と千春をIS学園から引き離し、研究機関や大国に取り込む輩が出てくると言ってきたのだ。
零也と千春の安全の為にと言われてしまえば、十蔵達も無下には出来ない。 もっとも、タダで受け入れた訳でもなく、それ相応の対価を引き出したのは、他者には秘密なのだが。
今回の事件を受けて、さらなる安全性の向上と警備体制の強化を構築する時間を作る為にも。
そこにシュテルが質問してくる。
「申し訳ありませんが、私は任務の関係上、報告の義務が生じているのですが?」
「そちらに関しては私が直接説明いたしますので安心してください。」
十蔵はシュテルにそう告げる。
「それから、学年別クラス代表対抗戦ですが残念ながら中止とさせていただきます。」
これだけの事件が起きた以上は続けるのは不可能というのは、この場にいる全員が理解した。
「そして優勝した際の副賞の方なのですが、今回は特例として全生徒に対して、デザートフリーパス3回分として配布することにします。更に今回の事件解決に助力してくださった皆さんには追加で7回分のフリーパスをお渡しします。」
更に十蔵は懐から11枚の茶封筒を机に広げた。
「そしてこれは事件解決に助力してくださった対価となる特別報奨金となります。」
十蔵の話に零也達生徒だけでなく、千冬達教員も言葉を失う。
「IS学園が創設して以来、事件という事件が起きなかったので殆どの教員も知らない事なのですが、事件や事故が起きた際に助力してくださった生徒には、その対価として特別報奨金を渡す決まりがあるのです。」
十蔵の後をつぎ百合が説明する。千冬達教員も知らなかった制度に驚きを隠せない。
決して薄くは無い茶封筒。 そんな中、先陣をきるように楯無が
「そういう事なら遠慮なく。」
そう言って机の上の茶封筒を受け取るとついでとばかりに他のも取って、全員に手渡していく。
楯無に手渡された事で、踏ん切りがついたのか全員が十蔵達に一礼してポケットにしまっていく。
「さて、これで必要事項は終わりです。皆さんお疲れ様でした。後片付けは教員や保安部隊がします。それから明日は臨時休校となりますので今日、明日とゆっくり休んでください。」
十蔵がそう言って、その場は解散となった。
医務室
試合後、気を失った千春は医務室に運ばれていた。
そして、学園長室での説明が終わって暫くした頃に意識を取り戻した。
「えっと、ここは?」
意識が取り戻した千春は、医務室のベッドの上で上半身を起こして周囲を見回す。
室内の独特の雰囲気から医務室だろうと予測した千春。 そこで自分が何故、医務室のベッドで寝ていたのかを必死に思いだそうとする。
「確か、鈴と戦っていて、それから鈴がトンファーみたいなので攻撃してきて、それから········もしかして、俺·····負けたのか?」
「そうだ、お前は凰に負けた。それも完封負けだ。」
仕切りのカーテンを開けながら千冬が千春にそう言うのだった。
「お、俺が負けた?! しかも完封負け?!」
千冬の言葉に俄然とする千春。
(原作通りの展開なら、鈴との試合中にゴーレムが乱入してきて中断。そして俺と鈴でゴーレムを倒すはずなのに?)
千春は原作との展開の違いに驚きながらも、千冬に尋ねる。
「俺が負けた後の試合は? 誰が優勝したの?」
千冬は千春の問いかけに
「学年別クラス代表対抗戦は、諸事情により中止となった。」
「えっ?! な、何で中止に? 何があったの!」
「今から話す事は、他言無用。学園外に漏らす事は絶対に許されない。後で誓約書にもサインをしてもらう、いいな!」
千冬の有無を言わせぬ圧力に千春は頷くしか無かった。
「お前が凰の最後の一撃で気絶して試合終了となり、お前が医務室に運ばれた直後のことだ。アリーナのシールドを破壊して女性権利団体のテロリストが乱入してきた。」
そう言って千冬は千春が気を失ってからの出来事を説明した。テロリストの目的、その後の展開、そして鈴と零也達の活躍を。
それを聞いた千春は、またしても愕然とした。
(ゴ、ゴーレムじゃない?! 何で女性権利団体のテロリストが? それにロボット?)
「凰、月村兄妹、高町によりテロリストは鎮圧され、アリーナ外部での襲撃は教員と2、3年生の専用機持ちにより鎮圧された。ただ、IS学園への襲撃という重大な事案であることから国際IS委員会は事件の秘匿を決め、更に生徒全員に対して情報漏洩を防ぐ為に誓約書へのサインを義務づけた。」
千冬は一旦言葉をきり、千春の顔を見て
「色々起き過ぎてパニックになっているだろうが、現実と受け止めてくれ。今日は念の為にこのまま医務室で安静にしてるように。夕食は後で届ける。それから明日は臨時休校となったので、ゆっくりと休むように。」
そう言って千冬は医務室を出るのだった。
千冬としては、千春の側について居たかったのだが、事件の事後処理がある為に出来ないのであった。
それに本来なら千春への報告も麻耶がする予定だったのだが、その麻耶が気をきかせて千冬に譲ったのだった。
千冬が医務室で出ていった後も、千春は混乱していた。
「何で原作通りに進まないんだ? 本当なら鈴と戦っている最中にゴーレムが来て、俺と鈴で倒すはずなのに?」
IS学園に入学してからというもの、千春が記憶している原作通りに物事は進まず、混乱するばかりだ。
(こんなに俺の見せ場が無いなんて、どうなっているんだ!)
千春はなんとか自分の見せ場を作らなければと考え、この後の展開を思いだそうとするのだが
(クラス代表対抗戦の後は、確か········あれっ? 何があるんだっけ?)
どういう訳か、原作の内容が思い出す事が出来ない。
(えっと、GWが終わってから·····何かあったはずなのに?)
どうしても思い出す事が出来ない千春。だがそこで
(そうか、時期が近づかないと思い出さないのか。まだGW前だしな。変に早く原作の内容を思い出して、先回りしすぎるのも不味いな。)
千春の思考が変な方向に向っていった。 まるで、そう考えるように決められていたかのように。
某所
全面ガラス張りドーム型の温室。 色とりどり様々な草花が咲き誇っている。
その室内にいる3人の女性はそれぞれの場所でくつろいでいる。
野点傘の下、着物姿の女性が毛氈が敷かれた畳の上で優雅にお茶を嗜む。
その女性の近くでは天然石の椅子に座り、ウイスキーをボトルごとラッパ飲みする赤いジャケット姿の女性がいる。
2人から少し離れた場所ではロッキングチェアーに座り紅茶を優雅に飲む純白のドレスを着た女性。
着物姿の女性が
「あの愚か者は勝手に出撃した挙句に負けて捕まったようですわ。」
そう告げると赤いジャケットの女性が
「あれだけ大口叩いて、しかも勝手に奴らと取引して、妙な兵器を持たされた挙句にか、笑えるね。」
可笑しそうに笑みを浮かべ、ウイスキーを煽る。
「クピードー、そう言わないで上げてください。彼女は追い詰められていたのですから。」
赤いジャケットの女性···クピードーにそう言うドレス姿の女性。 着物姿の女性がドレス姿の女性に
「ですがイオス、貴女が彼女を追い詰めたのでは?」
「あら失礼ね雅、私は事実を教えたまでよ。」
そう言ってドレス姿の女性···イオスは紅茶を飲むのだった。
「幾ら足掻いても、ISに乗れる程度の才能だけでは、私達の地位には辿り着け無いと、事実を親切丁寧に教えて差し上げたのよ。身の程を知ってもらう為に。」
そうイオスが言うのだが、どう考えても親切というより追い詰めたというのが間違いないといえるのだが。
「ところでよ雅、アイツが捕まるのは構わねえんだがよ、アイツが知っている拠点や連絡網は大丈夫なのか?」
「そちらは既に手を打っていますわ。拠点は殆どの物は撤去して撹乱の為のダミーを設置してます。連絡網も同様に。私達に繋がる痕跡は一切ありませんわ。」
「ところで雅、あの兵器は使えそうですか??」
「見た目はともかく、性能はまぁまぁのようですわ。数さえ揃えればIS相手でも十分に戦えるかと。」
イオスの問いかけに雅は答えた。
「確かに、あの不格好な姿は駄目だな。何て言うか、不細工というか無骨というか、ともかく、もっとスマートな外見がいいな。」
クピードーもそれに同意する。
「外見に関しては、装甲を変更すれば問題無いですわ。 ところで、ここ暫く姿を見せてませんが、ウラヌスば何処に行っているのですか? お茶会にも顔を出さないなんて。」
雅の視線の先にはアンティークソファとテーブルがあった。
「彼女なら、例の会社の買収が最終段階に入っていて忙しいみたいですよ。」
「買収? どう見ても乗っ取りゃじゃねえか、しかも悪どい手法を使って、買い叩いた。」
イオスの言葉に茶々をいれるクピードー。 クピードーの茶々に苦笑する雅とイオス。 どうやら同じ事を思ったようだ。
「幾ら斜陽の一途を辿っていたとはいえ、ヨーロッパでも屈指のISメーカーが格安で手に入るのですから、良いでは無いですか。」
イオスがそう言って擁護するが
「相手は知らないとはいえ、その斜陽のきっかけを作ったのもウラヌス、加速させたのもウラヌス、追い込んだのもウラヌス、出来レースだな。」
クピードーが揶揄する。
「ですがクピードー、そのおかげで念願の専用機の開発が進むのですよ。量産機カスタムは飽きたと散々ごねていたではありませんか?」
イオスがそう言うとクピードーは罰の悪そうな顔になる。
「だってよ、量産第2世代型のカスタムだぜ。今や第3世代型に移行しようとしているのによ。」
「ですから、あの会社が必要なのです。技術や設計図があっても、うちの施設の機材では修理や改修が関の山です。あの会社が手に入れば機材はもとより資材もあります。これまで以上に自由に機体の開発・改修が可能になるですよ。」
クピードーに言い聞かせる雅。
「雅、クピードーはその技量故に量産機では、本気を出せば直に機体がついて行かずにオーバーヒートを起してしまいます。カスタム化しても同じ事、多少マシになるだけです。となれば早々に専用機を開発するのが得策というもの。」
イオスがクピードーを擁護する。
「知ってますわよ。ですが、機体状態を把握してながらも無茶な使い方をして壊すのです、愚痴の1つくらいは言いたいですわ。」
罰の悪い表情で顔を逸らすクピードー。
「さて、そろそろお茶会の時間も終わりですね。次のお茶会にはウラヌスが参加出来ると良いですね。」