誤字脱字の指摘等、何時もありがとうございます。
この話をお借りして御礼申し上げます
ゴールデンウィーク
それは日本独自の大型連休であり、4月末から5月始めの間に祝日が集中する事で出来る休みの事である。
一応、日本に所在地があるIS学園も日本のカレンダーを基準に行事や休みを決めている。 その為、ゴールデンウィークも勿論ある。
今年は、最初の祝日の4月29日が金曜日という事で29日・30日・1日で3連休、2日の月曜日の平日を挟んで3日・4日・5日の3連休となっている。
しかし、海外からの留学生も在学しているIS学園では、連休の機会に帰国する生徒もいる事を考慮して、4月29日〜5月8日の10日間を特別休業として対応している。
殆どの生徒は帰省するが、反対にこの時期ならアリーナを使える時間は増えるといって、学園に残り訓練する生徒もいる。
零也達はといえば
「ようこそ、喫茶翠屋へ!」
「お待たせしました。シュークリームと紅茶セット3つです。」
「オーダー入ります。シュークリームとコーヒーセット6つ、シュークリームと紅茶セット4つ、パスタランチセット2つです。」
「シュー皮、焼き上がりました。」
「ショートケーキ完成しました。」
「シュークリーム出来上がりました。」
「お待たせしました。お持ち帰り用シュークリームです。」
喫茶翠屋。海鳴市の住宅地に立つケーキ屋を兼業する小さな喫茶店だが、大人気のシュークリームを筆頭に絶品のスイーツと香り高いコーヒーが楽しめるお店という事で地元はもとより、遠方から泊まりがけで通うお客ものいるという知る人ぞ知る有名店である。
店長桃子の方針で雑誌はもとよりテレビの取材は一切受けておらず、お客のクチコミで知名度が広がったのである。
普段は近くの学校の生徒や主婦、サラリーマンで賑わうお店なのだが、連休中は遠方からのお客で賑わうのである。
その為、連休中は親族のみならず、知り合いにバイトを頼み総動員で対応するのだった。
普段からお店に立つ、高町士郎・桃子夫妻に娘のなのはとクロエに加えて、零也と紫、零也の護衛任務中のシュテル。 更に零也が頼んでバイトにきた楯無・簪・虚・本音、また零也が翠屋の応援任務入っているという事で急遽駆けつけたすずかと雫の2人。
それ以外にも高町家の元居候が集まる予定となっていた。
ちなみに零也とシュテルは厨房に入って桃子となのはのサポートをしている。
他の面々はホールスタッフや裏方として駆け回っている。
GW前半三連休の3日目のランチタイム、翠屋には多くの客が詰めかけていた。
この事を見越して商品や材料を用意していたのだが、それを上回る勢いで客が詰めかけ、商品が出ていくので遂には
「おばあちゃん、仕込んでいたカスタードが切れました。」
零也の報告に驚く桃子。翠屋の看板商品のシュークリーム、それ故に大量に仕込んでいたのだが、それが底をつくとは思ってもいなかった。
「お母さん、仕込んでいたスポンジ生地も無くなっちゃった。」
なのはの報告に再び驚く桃子。この時点でシュークリームも元よりケーキ類も店に並べる事が出来ない。今からスポンジやカスタードを作っても少なくとも1時間以上はかかる。時計を見れば、ランチタイムは、もうすぐ終わる。
何より例年以上の忙しさに全員疲労がたまっており、まだGW後半もあるので桃子は直ぐに決断した。
「シュテル、士郎さんに伝えて。予定変更よ、今の時点でランチはオーダーストップ。ショーケースにある商品在庫で今日は品切れにして閉店。明日・明後日は予定を変更して臨時休業。」
「わかったわお母さん。」
そう言ってシュテルは表に向かう。
「という事で、今あるのを仕上げたら片付けて終わりよ。明日は1日休んで、明後日は連休後半に向けての買い出しと仕込み、いいわね?」
「「はい。」」
桃子の言葉に返事を返す2人。
余談だが、高町夫妻は既に50歳を越えているのだが外見はどう見ても30歳前半に見えてしまい、子供や孫達と並んでいると兄弟姉妹に間違われるのだった。
それから30分後、全てのケーキを売り切り閉店した翠屋。片付けや掃除も終わり店舗裏の自宅に零也達は引き上げていた。
「しかし今年は例年以上に客が多かったな。」
「そうですね、久々にお店を手伝いましたが以前より多かったですね。」
ソファーで寛ぐ零也にシュテルが答える。高町家のリビングにいるのは零也とシュテルと紫とクロエのすずかと雫の6人だ。
士郎と桃子となのはは、未だ店舗におり、今日の売り上げの集計と材料の在庫チェックをしていた。
楯無達4人は高町家自慢の檜造りの風呂に先に入ってもらった。4人とも体力には自信があったのだが、慣れない接客業は予想以上に疲れたらしくヘトヘトになっていた。
「ところで、桃子さんは予定通りにバイトは5日までって?」
すずかの問い掛けに紫が
「うん。少し予定は変わったけど、私達は、せっかくのゴールデンウィークを翠屋のバイトだけで潰すのはダメだって。学生なら少しは遊びなさいって言って。」
そう桃子は零也達のバイト期間は5日までとして、残りの3日間は学生らしく遊びなさいと決めていたのだ。 明日、明後日と急遽臨時休業にしたものの、零也達の予定は変えるつもりはないようだ。
「と言う事は予定通りに5日の夜から出掛けて6日、7日までの2泊3日の旅行は出来る訳ね。」
そう言って喜ぶ雫。 零也達( 楯無達も含む )はバイト明けから2泊3日の旅行に行く予定を立てていたのだ。行き先は海鳴市近郊に昨年オープンしたばかりの大型テーマパーク ❲ テクノスタジオジャパン・海鳴 ❳。
ここは映画やアニメを舞台にしたテーマパークで、それぞれのエリア毎にアニメや映画の世界を体感したり、登場するキャラと触れあったり、グルメを楽しんだり出来るのだ。
テーマパーク内にはホテルもあり、予約は常に埋まっているのだが、実はこのテーマパークには月村ホールディングも出資をしており、大株主優待として部屋を取る事が出来たのだった。
「でも、零也達は7日の日は夕方にはIS学園に戻るんでしょ?」
表情には出さないものの若干不満そうなすずか。 そう零也達IS学園組は7日の夕方にはIS学園に戻る予定にしているのだった。
すずかと雫からすれば最終日まで一緒に居たかったのだが、叶わなかった。ブラコン・甥コンの極み足る2人故にその心情を図る事は出来ない。
ちなみに2人は既に夏休みに向けて、零也達とすごす為の予定を組んでおり、ゴールデンウィーク明けから雫は授業を、すずかは仕事を詰め込んでいるのだった。
「そ、そう言えばおじいちゃんが今日は予定より早く店を閉めたし、夕食はみんなで外に食べに行こうだって。」
すずかの様子に気がついた零也は慌てて話題を変えるのだった。
それに気づいたすずかは、零也の話にのるのだった。
一方その頃、千春の姿は倉持技研にあった。
と言うのも、千春は白鋼の改修後にレポートの提出をしなければ成らなかったのだが、クラス代表戦前という事でISの訓練に集中するあまり、レポートを纏めて提出するのを怠ってしまったのだ。
その為にゴールデンウィーク返上で倉持でのデータ取りとレポートの提出、更に白鋼の調整をする事になったのだ。 予定はゴールデンウィーク最終日までびっしりと組まれている。
そして今、千春は倉持技研のテスト用のアリーナで射撃訓練を行っている。 休憩を挟みながらではあるが、既に始めてから2時間はたっている。
『それでは、再びドローンを射出しますので全機撃墜してください。制限時間は3分です。スタート!』
管制室の薫子からの指示が出され、アリーナに10機のドローンが射出される。
ドローンは不規則な軌道でアリーナを自由に飛び回る。 それに向かって千春は銃弾を撃つ。
だが、ドローンには掠りもしない。
既に幾度となく繰り返されている光景だ。この前には固定された的に向かって射撃訓練をしていたのだが、これまた成績は良くなかった。
「くそっ!何で当たらないんだよ!」
それを管制室から見ながら解析をしていた薫子に進が声をかける。
「どんな感じだ?」
「ぜんぜんダメね。織斑君には射撃の才能が皆無ね。仮に適正値で表すならE-(マイナス)と言うところかな。」
E- 即ち適正無しと言うところだ。
「こうなると、射撃補正システムのプログラムを強化して精度をかなり上げないと無理か。」
「あと、火岸華から反動が少なく扱い易いハンドガンタイプの物に変更した方が良いわね。それに落火星も外して、ホーミングミサイルポッドを搭載した方がいいかもね。」
「それに小月もミサイル機能外して、シールドブーメランのみにしよう。」
「他にも色々手を加えたいけど、今の段階ではこれ位にしとかないとね。」
白鋼をより強化したいものの、1度にしてしまうと作業がより複雑且つ時間がかかってしまう上に、何より操縦者である千春の技量が追い付かない事を考慮したのである。
一方その頃、同じ倉持技研の別のテスト用アリーナでは箒が赤鋼のテストをしていた。
千春とは違ってレポートを提出していた箒。それにより箒により適した赤鋼の調整がなされたのだ。予定では今日が最終日となっている。
『篠ノ之さん、赤鋼の調子はどうだい?』
管制室から箒に問いかけたのは、紺色のロングコートにゴーグルタイプのサングラスをつけた赤鋼の開発責任者である川口メイジンだ。
「今の段階では問題はありません。」
『それなら、今から天海の最終テストに入るよ。』
機体の調整だけでなく、赤鋼の主力武装である天海の改修もおこなわれたのである。
エネルギー消費の効率化により零落白夜の発動時間が延び、更に赤鋼に天海用の非常用エネルギーパックを装備して、専用ケーブルと天海を繋ぐ事で短時間ではあるが暮桜と同規模の零落白夜を発動する事が出来るようになったのだ。
「お願いします。」
箒の返答と同時にアリーナの各所からドローンが射出され不規則な軌道で飛び回る。
天海を構えた箒は、ドローンに向かっていく。
「疑似零落白夜、発動!」
天海の刀身を蒼白い光が覆う。そのままドローンを斬りつけていく。
真っ二つに断ち斬られるドローン、箒は零落白夜を発動させたまま、次々とドローンを斬り裂いていく。
本来なら直前に発動させて、斬ったらオフにするのだが、今回は零落白夜の発動限界時間の最終確認という事で、発動させ続ける。
やがてアリーナのタイマーが20秒に達した時、零落白夜の発動限界に達した。
『よし、続いて天海を赤鋼に内蔵されているエネルギーパックとケーブルを接続して。』
「はい!」
箒は力強く返答すると、赤鋼のスカートアーマー部分からケーブルを伸ばして天海の鵐目に接続する。
「疑似零落白夜、非常発動!」
再び刀身は蒼白い光に覆われる。そして箒はドローンを斬りつけていく。
そして発動して、アリーナのタイマーが5秒に達した時、零落白夜の光は消える。
『お疲れ様、篠ノ之さん。これで天海のテストは終わります。』
「はい!」
メイジンはモニターに表示されたデータをと手元のタブレットのデータと比較し
『今回の改修により天海の疑似零落白夜の発動時間は延びました。ただこれからも此方では引き続き改修を続けていくので、篠ノ之さんは学園でのデータ収集とレポートの制作をお願いします。』
「わかりました。」
『それから、今回新たに装備した試作型ビーム砲の事ですが、ビームの収束率がまだ甘いので威力は不十分な上に1度撃つと砲身が高温になるので、連続で撃つ事が出来ません。セットされているエネルギーパックで2発しか撃てません。』
そう倉持技研では、ビーム砲を開発していたのだ。 といっても試作段階であり、安全性は確認されているものの威力とエネルギー消費の部分ではまだまだ完全な実用化には至っていないのだ。
その為に倉持技研はメイジンを通じて、箒に実戦でのデータ収集を依頼したのだ。
メイジンとしては、箒と自分の手掛けた機体にそんな事をさせたくなかったのだが、倉持技研の上層部の命令とあっては、拒否する事も出来なかった。
精々、事前に入念にチェックして安全性を高める為の補修をする事しか出来なかった。
倉持技研がビーム兵器の開発に躍起になるのには訳があった。
既に月村重工と更識ISラボが世界に先駆けて、ビーム兵器の開発・実装に成功していた。
それに伴い日本いや、世界でも有数のIS開発先進企業として躍進したのだ。
もともと、第3世代型ISの開発でも遅れを取っていた倉持技研だが、ビーム兵器の開発・実装という実績により、日本でトップのISメーカーという立場であったはずの倉持技研が、いつの間にかトップという立場から落ちていたのだ。
長年にわたり日本のIS開発を引っ張ってきたというプライドを大きく傷つけられた倉持技研は躍起になってビーム兵器の開発を推し進めていたのだ。
果たして、それが吉となるのか凶となるかはわからない
ちなみに、この話に出てきたテクノスタジオというのは大阪のアレと千葉のアレと京都のアレを合わせた物のオリジナルテーマパークです。