主人公達が、ゴールデンウィークをすごしている間におきた出来事です。
注)かなりの原作剥離がありますので、ご注意を。
日本で零也達がGWを満喫している頃
ドイツ某所、IS配備特殊部隊[シュヴァルツェア・ハーゼ]の駐屯地のある軍事施設。
その基地の一室、椅子に座った男性が机を挟んで対面する少女に
「よく来てくれたラウラ・ボーデウィッヒ少佐。先ずは、ライン川流域で起きた洪水における被災者の救出活動並びに災害復旧活動の従事ご苦労だった。それによりIS学園への入学が延期になってしまった事、誠に申し訳ない。」
「いえ、国民を救う為に力の限りを尽くすのは軍人として、ドイツ代表候補生として当たり前の事ですブランシュタイン中将。」
そう言って目の前に座る男性、ドイツ陸軍の高官であるマイヤー・V・ブランシュタイン中将に返すラウラ。
「それともう1つ。先日、軍の開発部が起こした不祥事、誠に申し訳ない。」
実は洪水現場での災害復旧活動の最中にラウラの専用機[シュヴァルツェア・レーゲン]に突如異常が起き、暴走しかけたのだ。
幸いにも咄嗟にラウラが、機体を緊急停止してことなきを得た。その後機体を調査した結果、VTシステムのプログラムが組み込まれているのが判明したのだ。
そして禁断のプログラムが密かにインストールされていた事を重く見た軍部は調査チームを編成し、捜査を開始した。
その結果、ドイツ軍のIS技術開発室の数名の研究者が禁止されているVTシステムの研究を秘密裏に続行し、独断でレーゲンにインストールした事が判明したのだ。
IS学園への入学前にレーゲンの改修が決まっていたので、その事前チェックの際にプログラムをインストールしたそうだ。
ただ研究者達にとって誤算だったのは、ライン川流域で大洪水が発生し、ラウラが被災者救出と災害復旧に従事して入学が延期された事と、作業中にレーゲンが暴走しかけた事でVTシステムの事が露見した事だった。
関係した研究者達は既に全員拘束されて、厳しい取り調べを受けている。
実は表向きの発表としては、レーゲンにインストールされたVTシステムのプログラムが不完全なものであり、それによりシステムが異常を起こし暴走しかけたという事になっているが、真相は少し違っていた。
VTシステムは今まで確認されていたものとは違い、モデルとなった人物を更に成長させたデータを組み上げて再現していた。
更に再現したデータでも対応出来ない相手が現れた場合は、相手の動きを学習して組み込む学習進化プログラムもあった。
そして一番の問題点は外部からの遠隔操作発動プログラムも組み込まれていたのだ。
もっとも、あまりにもプログラムを詰め込み過ぎた結果としては不具合を起こし暴走しかけたのだが。 それにより、ラウラ本人も怪我もなく助かる事が出来たのだ。
「いえ、ブランシュタイン中将が謝罪する事ではなく、悪いのは秘密裏にVTシステムを研究し搭載した研究者達ですので。」
「そう言ってもらえると助かる。さて、色々あって延期になっていたIS学園への入学というか、編入になってしまったが、それに向けて日本に行ってもらう。君の専用機〔シュヴァルツェア・レーゲン・パンツァー〕も仕上がった。」
「わかりました。ラウラ・ボーデウィッヒ、IS学園に向かいます。」
そう言って敬礼し、部屋をあとにするラウラ。
(どうやら、あの様子だとブリュンヒルデの呪縛は解けたようだな。)
マイヤーは以前までのラウラの姿を思いだした。
ラウラ・ボーデウィッヒは遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)と呼ばれる生体兵器として人工的に産み出された。
もっとも、その計画は既に過去の物で今は一切行っておらず、研究施設はおろか関わった人間、研究データも全て処分されている。
というのも、この計画を行っていたのは古きドイツを復活させようと目論んでいた一部の政治家と活動家で構成された組織で、最強の兵士となる尖兵を作り出す為に非人道的な実験が繰り返されていたのだ。
秘密裏に行われていた行為は、長期間に渡り表に出る事はなかったのだが、それも遂に綻びが生まれ露見する事になったのだ。
この事を知った政府は余りの事の重大性に、事件は公にすること無く、秘密裏に処理した。
関係者と研究資料は全て施設ごと跡形も無く消し去った。
保護された被験者である、殆どの少年少女達には罪は無いものとして、戸籍を与え新たな居場所を提供した。
そんな中、ラウラをはじめとした一部の少女達に関しては、ISの適正とその身体能力の特異性故に軍部で引き取る事になった。
そして軍に入った当初のラウラは、あまりにも見ていられない状態だった。
というのも、ラウラは組織が作り出した遺伝子強化試験体の中でもトップクラスの身体能力を有しており将来を期待されていた。
そこで組織は、ラウラをはじめ一部の身体能力の優れた少女達に、ISとの適合性を上げる為に越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)と喚ばれる特殊なナノマシンを肉眼に移植したのだ。
だが、この手術はラウラに思わぬ結果をもたらした。 ラウラは完全適合出来ずに、優れた身体能力が著しく低下してしまったのだ。
これは研究者達にとって計算外の出来事だった。遺伝子強化試験体の中でもトップクラスの能力を持っていたラウラの落ちぶれように研究者達はラウラを廃棄する事に決定した。それはラウラに絶望をもたらした。
だが、その決定直後に組織は摘発されラウラは難を逃れる事になったのだ。
さて、保護されてドイツ軍預かりとなったラウラは、そこで千冬と出会い立ち直っていった。
だが立ち直っていく反面、千冬への依存というか盲信が強まり、更にかつての能力を取り戻した反動か他者、特に力を持たないもの達への差別が生まれていた。
特に千冬がドイツを去って以降は、よりその態度が顕著となった。 千冬はラウラの能力と自信は取り戻したものの、人として大事な心の部分を指導して、成長させる事が出来なかったのだ。
それを危惧したマイヤーはドイツのIS前国家代表夫妻の元に3ヶ月ホームステイさせる事にした。
命令に従い渋々ながら夫妻の元に行ったラウラ。 当初は夫妻に反発していたものの、日を追う毎に態度は軟化していった。
そしてホームステイを終える頃には夫妻を本当の両親のように慕っていた。
こうしてラウラは精神的に成長し、シュヴァルツェ・ハーゼの隊長に相応しい、思い遣りと使命感と責任感を持つ人物となった。
日本 成田国際空港、特別室。
ソファーに座り、コーヒーを飲む1人の女性。その姿はとても優雅で洗練されており、服も古きフランス貴族が着ていたような、細かい刺繍の入った青いコートに白のウエストコート、白の長ズボン。 それがまた一層、貴族のような雰囲気を出していた。
それもそのはず、この女性はノルマンディー公爵家の血を受け継ぐフランス貴族の末裔であり、フランスのIS国家代表のグリシーヌ・ブルーメールなのだから。
そしてもう1つ、フランスでも有数の企業ブルーメール社の会長なのだ。
真向いに座る紺色のスーツ姿の少年?は逆に落ち着かない様子でソワソワしている。
「少しは落ち着きなさいシャロン。今の君はわたしの従姉妹のシャロン・ブルーアイなのだから。」
「ですが、ブルーメール様。」
シャロンと呼ばれた少年······ではなく少女はそうグリシーヌの事を呼ぼうとしたが、
「シャロン、私の事はグリシーヌと呼ぶようにしなさいと言ったはずです。いくら今は私達2人しかいないとはいえ油断してはなりません。」
「わ、わかりましたブル、いえグリシーヌさん。」
そう言って自分もコーヒーを飲み始めるシャロン。
コン
ドアが1回ノックされると開かれ、1人のメイド服姿の女性が入ってきた。
「お嬢様、入国手続きが無事に終わりました。」
「ありがとうエリカ。」
「それと、もう1つ。」
そう言ってエリカはシャロンに視線をやる。
「シャロンさん、落ち着いて聞いてください。 先ほどニュースで速報が入ってました。フランス郊外でデュノア夫妻の乗った車が事故を起こして崖から転落。2人の死亡が確認されたと。」
そのニュースを聞き、シャロンの目は見開かれ、体が震え出す。唇を噛みしめ必死に涙を堪えている。
「夫妻の最悪の予測が当たってしまったか。すまないシャロン、私が事態を把握するのが遅くなった上に、対応が後手後手に回ってしまった為に、結果的にお前しか助ける事が出来なかった…。」
グリシーヌはそう言ってシャロンに頭を下げて謝罪する。
グリシーヌの謝罪にシャロンは、それでも涙を流さないように堪えている。ズボンの膝を手で握り絞め耐え続けている。
「この部屋に盗聴器や監視カメラはありません。それに今、この部屋は特殊な電磁波で囲ってあるので、外部からの干渉もありません。」
そう言ってエリカが窓の側に行き、カーテンを閉め、そして室内の照明を暗くする。更に何処から取り出したのか、鈍い鉛色の布を取り出すとカーテンに貼り付けていく。
それを確認したグリシーヌは立ち上がってシャロンの隣に座り抱き締める。
「シャロン······いやシャルロット・デュノア、今は泣いていいんだ。」
グリシーヌの言葉にシャロン·····シャルロットはタガが外れグリシーヌの胸に顔を埋めて泣き出す。
(ヴィオレ社、いや女権団体め。この借りは絶対に返してやる。)
シャロン・ブルーアイ·······シャルロット・デュノアを抱き締めながらグリシーヌは自分の不甲斐なさに怒りを感じていた。
事の発端は、デュノア社の経営不振から始まった。 設立当初から技術・情報力不足という問題点があったのだが、それでも量産第2世代型ISラファール・リヴァイヴが世界シェア第3位になった事で一躍大企業となった。
だが、それが後々デュノア社を苦しめる事になったのだ。
量産型ISとして人気が出れば出るほど、会社のリソースが其方の生産に回ってしまい、第3世代型ISの開発になかなか力を注ぐ事が出来なくなってしまったのだ。
そうしているうちに各国で第3世代型ISが発表され出してきた。
そうなると、第3世代型ISの開発が行き詰まっているデュノア社に対する評価は下がっていってしまった。
それは株価や銀行の融資、取引先にも影響していき、デュノア社の経営を圧迫してきた。
更に追い討ちをかけるように部品メーカーの倒産、技術者の引き抜き、工場機械の破損による生産停止、ハッキングによる顧客リストの流出、とトラブルが続いた。
そんなデュノア社にフランス有数のIT企業ヴィオレ社が手を差し伸べてきて、トラブルが起きた当初から様々な形で支援してくれた。
それでも焼け石に水という状態で経営危機に陥ったデュノア社。 遂にヴィオレ社に経営統合される事になった。
そんな中、当初からヴィオレ社の行動に不信感を抱いていたデュノア社の社長アルベール・デュノアと夫人のロゼンダ。
大多数の経営陣によりヴィオレ社の支援を受けざる終えなかったが、どうしても不信感が拭えず、密かにヴィオレ社の調査を始めたのだった。
それはグリシーヌも同じであった。国家代表、ブルーメル社の会長という立場からデュノア社の状況が耳に入っていた。
当初は、さほど気にしてはいなかったのだが、ヴィオレ社の行動とデュノア社のトラブルに違和感を覚え調査を始めた。
そしておなじようにデュノア夫妻が調査をしているのを知った。
互いに情報交換をしながら調査を進めるうちにヴィオレ社の裏には悪名高い女性権利団体がいるのが、わかったのだ。
しかし時既に遅く、既にヴィオレ社の魔の手はデュノア社の奥深くまで食い込んでおり、デュノア夫妻の力だけでは、どうすることも出来ない状態になっていた。
夫妻はヴィオレ社がデュノア社を手に入れた後、自分達の存在が不要となり消される可能に気づいた。
そこで万が一に備え、せめてシャルロットだけでも助けたいとグリシーヌに協力を頼み、シャルロット・デュノアが病死したことにして、グリシーヌの元に託した。
そしてグリシーヌはシャルロットを自分の従姉妹シャロン・ブルーアイに生まれ変わらせたのだった。 ノルマンディー公爵家の力があってこそなし得た力技だった。
(お父さん、お義母さん、ごめんなさい。私がもっと歩み寄る事が出来ていたら。)
一方こうして、グリシーヌに保護されたシャルロット。
実母アンナが亡くなった後、アンナの遺言によりデュノア夫妻に引き取られたが、夫妻の対応は冷たくシャルロットは、自分という存在が歓迎されていないと感じた。
それ故にシャルロットは2人に対して上手く接する事が出来ず、常に他人行儀の対応となっていた。
だが、実際には父であるアルベールも義母であるロゼンダも、本心ではシャルロットの事を大切に思っており、何より病により子供を産む事の出来ないロゼンダにとって、愛する夫アルベールの血を引くシャルロットは我が子同然の存在であった。 無論、シャルロットの存在を知らされた当初は蟠りもあったがシャルロットの写真を見るや否や、一目でシャルロットの事が気に入り、愛してしまったのだ。
しかし、既にデュノア社の状態が不安定だった為に、万が一の事態が起きた時にシャルロットの身に危険が及ぶと考えて、あえて冷たい対応をしていたのだ。
グリシーヌに引き取られたた直後に、この事を知らされたシャルロットは、アルベールとロゼンダに歓迎されていた、愛されていた事を知り、もっと仲良く出来なかったのかと後悔していた。
もし、また一緒にいられるようになったら、ちゃんと向き合って『お父さん、お義母さん』と呼んであげようと思っていたのだが、その願いを叶える事はもう出来ない。
彼女に残されたのは、夫妻からグリシーヌを通じて渡されたペンダントだけとなった。
ゴールデンウィーク明けに、波乱が近付いている。
シュヴァルツァ・レーゲン・パンツァー
ドイツ製第3世代型IS(外見:デュエルダガーフォルテストラ)
ドイツが作り上げた第3世代型ISシュヴァルツァ・レーゲンを完全装甲型に改修したもの。
ただ完全装甲型にしたのではなく、フォルテストラとよばれる着脱式の強化追加装甲ユニットを装着し、攻撃力・防御力・機動性をUPさせた。
武装は元から装備されていたワイヤーブレード、プラズマカッター、レールカノンに加えてミサイルポッド・小型レーザーガン・ヒートダガー・マシンガンがある。