IS 月華の剣士   作:雷狼輝刃

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第22話  編入生

 

 

 IS学園  職員室

 

 「「ハァ〜〜〜〜」」

 

 ゴールデンウィークも終わり、今日から授業が再開される。

 そんな中、職員会議が始まる前の職員室の一角にあるミーティング用のテーブルでスコールと千冬はため息をついた。

 先程まで、今日から編入してくる2名の生徒を、どのクラスに入れるのかをギリギリまで話し合っていたのだ。

 

 2名の編入生、ラウラとシャロン。

 

ラウラはドイツ代表候補生序列第2位であり。ドイツ軍に所属する現役軍人であり専用機持ち。今回はドイツで起きた洪水の救援復旧作業に従事し、入学が遅れてしまい編入という形でのIS学園入り。

 

 

 シャロンはISフランス国家代表グリシーヌ・ブルーメールの従妹であり、ブルーメール社が出資しているISメーカー、アナハイム社のテストパイロットでテスト用のISを与えられている。 今回はIS学園へ特別指導員として来日したグリシーヌが、自身が特別指導員の依頼を受ける引き換えとして、特別留学生という形で編入させてきたのだ。

 

 本来なら代表候補生やテストパイロットの在席数が少なく、専用機持ちのいない5組と6組に入れるのが妥当なのだが、5組担当教員と6組担当教員が2人をクラスに入れるのに難色を示したのだ。

 入学当初からなら兎も角、1か月近くたってからの編入となると色々とトラブルの元になるのでは、という懸念を2人が示してきたのだ。

 

 というのも、代表候補生とはいえ生粋の軍人であるラウラが、果たして学生達と交わって大人しく交流出来るのかという不安。

 

 

 

 IS学園の教員の殆どが元代表候補生(一部は元国家代表)である。だが、元に代表候補生といってピンキリ。

 序列に在席したものから序列に上がれなかった者もいる。 そして基本的に序列に在席した事のある教員は2・3年生を担当する。

 そして5組と6組の担当教員は元序列外の代表候補生だった。

 現役代表候補生とテストパイロット、しかも専用機持ち。となれば万が一の事態が起きた際、教員とはいえ元序列外の代表候補生では抑える事が出来ないという事を2人が訴えたのだ。

 結果として男性操縦者に対応する為に元国家代表がクラス担当教員を務める1組と3組に所属させる事が協議に協議を重ねた結果、ようやく昨夜決まったのだった。

 

 ラウラは過去に指導経験のある千冬が受け持つ1組に、そしてシャロンを3組に。

 

 無論、負担が増えるであろう2人にただ押し付けるだけでなく、それをサポートする為に1組と3組には副担当教員をもう1名追加することが決まった。

 

 1組には千冬の同期である、元日本代表候補生最終序列3位の藤枝かえで、3組には元ロシア代表候補生最終序列4位のマリア・タチバナ、がそれぞれ付いた。

 

 2人とも学園の治安維持部隊に所属、更に普段は2・3年生の担当教員の交代教員も努めている実力者なのだ。

 

 決まった事は仕方ないと千冬とスコールは顔を見合わせ、再びため息をつくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 1年1組

 

 ゴールデンウィークが倉持技研でのデータ収集で完全に潰れてしまった千春は、未だ疲労感が抜けきらないまま机にふしていた。

 

 (せ、せっかくのゴールデンウィークが、何も出来なかった……)

 

 自分がレポート提出を怠った結果で自業自得なのだが、それでも愚痴らずにはいれなかった。

 

 (そういや、ゴールデンウィークが終わったら何かあったと思ってたけど?)

 

 疲労感の抜けきらない中、千春は何かが起きるはずの出来事の事を考えていた。

 

 (·············誰かが来るような、えっと··········) 

 

 必死になって思い出そうとしていた。 ゴールデンウィーク前までは、そんな事を思いだすという事すら考えつかなかったのに。

 

 (えっと、確か、何処かの代表候補生が········)

 

 その瞬間、千春の脳裏に2人の少女の姿が浮かび上がってきた。

 

 (そうだ、シャルとラウラだ! あの2人が転入してくるだ。 そして·····あれっ?!)

 

 だが、2人の事を思い出したところで再び悩む。その後、何が起きるのかが全く思い出そうとしても、思い出せない。まるで、2人が転入してくる事しか思い出す事しか出来ないかのように。

 

 (何が起きるんだっけ? 2人が転入してきてから何が起きるはず何だけど、思い出せない。)

 

 そこから先は、霧がかって全く思い出すことが出来ないのだ。 

 千春が思い出そうと頭を撚るうちにSHRの時間がきた。

 

 教室の扉が開き千冬達が入ってきた。その瞬間、教室がざわめく。 何時もなら千冬と真那の2人だけのはずが、スーツ姿の女性がもう1人入ってきたからだ。

 千冬が教壇に立ったところで日直の生徒が号令をかけて挨拶する。

 

 「おはようございます。」

 

 「おはよう。さて早速だが今日は幾つかの連絡事項があるから確りと聞いてくれ。まず最初にこのクラスに新たに副担当教員がつくことになった。今まで2・3年生の実技の指導交代教員を務めていた藤枝かえで先生だ。」

 

 「今日からこのクラスの副担当教員になりました、藤枝かえでです。」

 

 そう言ってかえでは一礼する。 かえでの事を知り、かえでの経歴を知っていた何人かの生徒は驚いた顔をする。

 

 「次に、毎年の事なのだがIS学園には特別指導講師として短期間ではあるが、現役の国家代表が指導に来てくださる事になっている。そして今年はフランス国家代表のグリシーヌ・ブルーメール選手が今日から6月末まで担当してくださる。主に2・3年生の指導が主体となるが。1年にも僅かだが授業時間が割り振られている。心して指導を受けるように。」

 

 そこまで千冬は言うと、教壇を降りて真那と代わる。

 

 「それでは最後の連絡事項になります。本日より、このクラスに新たに生徒が加わる事になりました。」

 

 そう真那が言うと、千冬が扉を開けて、廊下で待っていた生徒を中に入れる。

 

 「自己紹介をお願いします。」

 

 「ドイツIS配備特殊部隊[シュヴァルツェア・ハーゼ]所属、ドイツ代表候補生序列第2位、ラウラ・ボーデウィッヒ少佐。本日付けを持ってIS学園に入学することになった。学校という場所には初めて入るのでわからない事が多数あるが、どうかよろしく頼む。」

 

 そう言ってラウラは敬礼する。

 

 「ボーデウィッヒ、ここは軍ではなく学校だ、敬礼は止めろ。」

 

 「わかりました織斑教官」

 

 「ボーデウィッヒ、ここは軍隊ではなく学校だ。教官ではなく先生だ。」

 

 「わかりました、織斑先生。」

 

 「それではボーディウィヒ、後ろの空いている席に座ってくれ。」

 

 千冬にそう言われて、ラウラは空いている席に向かう。

 SHRが始まってからラウラが席に向かう一連の流れに千秋は混乱していた。

 

 

 (な、何が起きてるんだ? 副担当教員がもう1人? 国家代表の指導? ラウラの自己紹介がまとも? 俺の存在をスルー?)

 

 ラウラの姿を見た瞬間に、本来なら起きるはずの出来事と、本来なら無いはずの出来事の事を唐突に思い出した千春は、混乱した。

 

 千春の混乱をよそにSHRは終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年3組

 

 和気あいあいとゴールデンウィーク期間中の事を会話していた生徒達も、SHRが始まると静かになる。

 

 「おはようございます。今日は幾つかの重要な連絡事項がありますので、しっかりと聞いてください。」

 

 スコールがそう告げると、扉の側にオータムと一緒にいた女性がスコールの側に進み

 

 「本日より、このクラスの副担当教員になりましたマリア・タチバナです。 元ロシア代表候補生で先日まで2・3年生の実技指導の交代教員をしておりました。」

 

 マリアはそう自己紹介をして一礼する。

 

 「次に、IS学園には特別指導講師を招いて短期間ですが、特別授業が行われています。本年はフランス国家代表のグリシーヌ・ブルーメール選手が今日から来月末まで指導してくださいます。2・3年生が中心となっての指導ですが1年にも授業時間が少しですが設けてありますので心しておいてください。そして最後に」

 

 スコールがそう告げると、オータムが扉を開けて廊下にもいた少女を招き入れる。

 

 「グリシーヌ選手の滞在にあわせて、今日からIS学園に特別留学してきたシャロン・ブルーアイさんです。アナハイム社のテストパイロットをしています。1学期だけの短期留学になりますが、仲良くしてやってください。」

 

 スコールの紹介にシャロンは一礼して

 

 「シャロン・ブルーアイです。特別留学生としてIS学園に編入しました。1学期だけの予定ですが、よろしくお願いいたします。」

 

 クラスの生徒達は拍手でシャロンを歓迎するのだった。

 

 「それではみなさん、SHRは終わります。午前中の授業は5組との合同実技授業です。準備して第2アリーナに集合してください。」

 

 スコールがそう締めくくる。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

  

 昼休み   生徒会室

 

 零也達は昼食を取るために生徒会室に集まっていた。

というのも、6月に行われるイベント[学年別トーナメント戦]の事で急遽話し合う必要が出来たからだ。

 しかし、話し合いを始めたいのだが

 

 「づ、づがれだ〜、グ、グリシーヌさん容赦ないんだよ〜」

 

 楯無が午前中の授業でグリシーヌとの模範試合をしたのだが、途中から楯無との試合で熱が入り、模範試合という事を忘れスイッチの入ったグリシーヌが本気を出してきて、予定時間を過ぎても試合を続けたのだ。

 

 もっともすぐに担当教員が止めに入ったので実害はなく、授業も滞ることなく終わったのだが、グリシーヌの相手をした楯無はそうはいかなかった。

 

 同じ国家代表とはいえ、繰り上げで暫定的に国家代表になり未だに国際試合の経験の無い楯無と、前回のモンド・グロッソを含めて国際試合を経験している百戦錬磨のグリシーヌでは、駆け引きという部分で差が出た。

 

 短い時間の模範試合とはいえ、グリシーヌの本気を引き出した楯無も凄いのだが、模範試合とはいえ楯無をここまで疲弊させ本人は笑顔で息一つ切らせていないグリシーヌも凄い。

 

 ヘトヘトになりながらも授業は乗り切った楯無。だが昼休みとなり生徒会室についた瞬間にダウンしたのだ。

 

 今の楯無はソファで横になっている、零也の膝枕付で。

 

 「軽い模範試合って言ってたのに〜、ハルバードは使わないって言ってたのに〜、いきなりハルバードを出して振り回しながら迫って来るんだよ〜、詐欺だよ〜!」

 

 カロリーチャージゼリーを飲んだ事で、少しは回復しグリシーヌに対しての愚痴を言う楯無。

 他の面々は苦笑しながら見ているのだった。

 

 「お嬢様の愚痴はさておきまして、そろそろ学年別トーナメント、の事を話し合いましょうか?」

 

 虚が、そう言ってモニターに昨年までの学年別トーナメント戦の流れやレギュレーションを表示する。

 

 「此方が昨年まで学年別トーナメント戦に関する資料です。これまでに上がってきた問題点に関してですが、ひとつは試合期間の長期化。」

 

 試合期間の長期化、それは1対1の試合を参加者全員で行う以上、試合数が多くなっていた。

 試合時間、入れ替え時間の短縮等を行なっていたのだが、焼け石に水といったところだった。

 

 また試合で機体が破損した場合の修理も逼迫し、学園の整備員では手が回らず、2・3年生の整備課の生徒、更に企業から整備員を派遣してもらい、何とか対応出来ていたが、修理が間に合わずに試合時間がずれ込む場合も少なからずあったのだ。

 

 「2つめは、訓練時間の不平等ですね。」

 

 一般生徒と代表候補生、そして専用機持ちでは、訓練時間の不平等が生じていた。

 訓練機の空き、アリーナの空きの両方が揃わないと訓練出来ない一般生徒、訓練機の空きさえあれば優先的にアリーナが使える代表候補生、更にアリーナの空きさえあれば何時でも訓練出来る専用機持ち、普段も然ることながら、こうしたイベントの時にはいっそう不満が上がるのだった。

 

 「3つめは、これは組み合わせの運が悪かったとして言いようがありませんが、1回戦で負けた一般生徒が代表候補生や専用機持ちは別枠にしてくれという物ですね。」

 

 これに関しては虚の言う通り、組み合わせの運が悪かったとしか言いようが無いのだが、負けた生徒からすれば、1回戦で負けたから見せ場がなかった、成績評価されないといった不満は出てくる。

 

 「今回、これらを踏まえた対応策を学園側から一緒になって考えて欲しいという要望がありました。更に今回の学年別トーナメント戦に関してタッグマッチ戦にしてはどうかという提案がなされています。」 

 

 「タッグマッチ戦ね。それなら一試合でニ試合分消化できますね。」

 

 零也の言葉に楯無が

 

 「ただ、代表候補生や専用機持ち同士でタッグを組まれると、それはそれで問題が起きるわよ。」

 

 「一般生徒はタッグマッチ、代表候補生と専用機持ちは個人戦として別々に開催する?」

 

 楯無の言葉に簪が提案する。

 

 「それだと、逆に代表候補生や、専用機持ちとの対戦の機会を奪うって批判が起きそうね。」

 

 簪の提案を楯無が斬り捨てる。

 

 「それなら代表候補生と専用機持ち同士でペアを組むことを原則禁止にしてみては?」

 

 「それが妥当なところかしら? あと問題があるとすれば。」

 

 零也の提案に楯無は同意しながら、零也の顔を見る。

 

 「兄さんと織斑の存在ね。ペア申し込みが殺到しそうだね。」

 

 「それなら男性操縦者に関しては、相手の指名権を与えて、相手からの申し込みを禁止すれば。」

 

 「それが1番かもね。」

 

 簪の提案に同意する楯無。

 

 ひとつめの問題に対しての案が出たところで昼休みが終わる時間が迫っていた。





 第2.5世代型IS パワードジムカーディガン 


 シャロンに渡されたデータ採取の為のテスト用の専用機。
 アナハイム社が開発中の第3世代型ISのデータを採取する為に第2世代型ISジムに様々な改良を加えたパワードジムに追加装甲にブースター増設、武装追加した機体。 
 この機体で採取されたデータは現在開発中の第3世代型ISジーラインにフィードバックされる。



 武装


 ガトリングガン:右腕部コンテナに内蔵されているガトリングガン。 連射性が高い反面精密射撃は行えないものの、近距離戦ではその手数の多さから重宝される。

 ジムマシンガン:プルパップ式のマシンガン。

 ジムライフル:アサルトライフル。

 パイルバンカー改:左腕部コンテナに内蔵されているパイルバンカー。使用する際にはコンテナ外装がパージされる。 6連装のリボルバー式弾倉を採用した事により連射が可能に。

 大型レーザーランチャー:バックパックに接続されている大型レーザーランチャー。接続したままでも外しても使用可能。

 シールド:バックパックから伸びたフレキシブルサブアームに接続されているシールド。内側にミサイルランチャーとガトリングガンが装備されている。

 コンバットナイフ:高周波刃のナイフ。

 バスターコンバットランス:先端部分が射出爆裂するランス。




  



 第2.5世代型IS パワードジムストライカー (外見:ジムストライカー)


 アナハイム社の第2世代型ISジムをベースとして改良されたパワードジムを更にグリシーヌの専用機としてカスタムした機体。
 グリシーヌの要望により強化装甲にブースター増設と、近接戦闘に重きをおいた機体になっている。
 
 


 武装

 ハルバード:刃の部分が高周波刃となっている大型斧。グリシーヌの代名詞とも言える武器の1つ。

 バトルアックス:刃の部分に放電端子が内蔵されている片手斧。此方もグリシーヌを代名詞とも言える武器。

 グラップシールド:先端部分がクローアームとなっているシールド。 

 ジムマシンガン:プルパップ式のマシンガン。

 ジムバズーカ:ロケットバズーカ。

 ジャイアント·ガトリング:大型ガトリングガン
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