『つまりオルコットの機体の損傷は思ったよりも酷いという事か・・・・』
「はい、ライフルは予備の物を使用し、右腕の損傷は軽微なので装甲と内部パーツの交換で済むのですが、右脚部の方が思ったより損傷が酷く、修理には少なくとも数時間はかかるとの事です。」
『となるとオルコットは織斑との試合は棄権となる訳だな。』
「申し訳ありません。」
『いや、オルコットが謝罪することではない。』
暫し沈黙した後に千冬は
『よし、1年1組クラス代表決定戦はこれにて終了とする。そしてこの後は月村と織斑の特別模擬戦に移行する。月村、済まないが準備をしてくれ。観客席の生徒達を退席させた後に試合を開始する。恐らく10分から15分殆どかかると思う。』
「わかりました。」
零也はそう返事をすると自分の待機室に向かう。
『それからオルコット、本来ならこの試合は関係者以外は見学禁止なのだが、今回はお前と篠ノ之には特別に見学を許可するから管制室に来い。』
「は、はい。わかりました。」
そう言ってセシリアも一旦着替える為に自分の待機室に向かう。
Aピット
「・・・・・という事で山田先生、すぐに観客席の生徒達を退席させるように。従わない場合は謹慎処分を申し渡すと伝えるように。」
『わかりました。』
そう言って真耶との通信が終わる。
「さて篠ノ之、今言った通りにお前にも特別に見学を許す。準備をして管制室に向かえ。」
「はい、わかりました織斑先生。」
そう言って箒は待機室に向かう。千冬はそれを見て千春の待機室に向かう。
「織斑、恐らく聞いていただろう。クラス代表決定戦は今の時点を持って終了する。お前には3組の月村との特別模擬戦に挑んでもらう、すぐに準備をしろ。」
「は、はい。」
「それから、先に言っておく。」
「な、何ですか?」
「今回お前は重大なレギュレーション違反を犯した。例えそれがクラス内での模擬戦であっても許されないものだ。そこでお前には反省文5枚と明日から1週間の間、奉仕作業を命ずる。」
千冬が告げた事に顔を青ざめる千春。
「本来なら懲罰委員会にかけて処罰を決めないといけないのだ。そしてもっと重い処罰が下されるのだが、今回はモニターとアリーナのカメラの接続が切れていないのを確りと確認していなかった此方のミスもある。しかし、事前に説明したレギュレーションをちゃんと聞いていなかったお前には問題がある。それを差し引きして今回は私の独断で処罰を決めさせて貰った。」
「は、はい・・・・」
千春は項垂れて返事をした。
そこまで言うと、千冬は待機室を出て管制室に向かうのだった。
それを見送り、千春は深く溜め息をつくのだった。そしてISスーツに着替えはじめた。
千春にとってはクラス代表決定戦の内容が自分の知る原作知識とは違っている上に、自分以外の男性操縦者との試合なんて思ってもいなかった出来事である。
そもそも、IS学園に入学してからというもの自分の知る原作知識とはかけ離れた出来事ばかり起こってしまい、千春はずっと混乱し続けていた。
何より自分の右腕に装着された白銀のガントレットに視線をやり
(・・・・・・そもそも、何で専用機が・・・・・)
千春の脳裏には、入学翌日に渡された専用機の姿が浮かんだ。
◆◆◆◆回想◆◆◆◆
入学して2日目の放課後。
第8アリーナのピットに千春と千冬の姿があった。
外部搬入口のゲートが開きコンテナを積んだターレットトラックが入ってくる。
側には白衣を纏った一組の男女がいた。
「初めまして。倉持技研IS開発研究室第1班所属の佐崎進主任研究員です。」
「同じく佐崎薫子研究員です。この度、織斑千春さんの専用機の専従担当者になりました。よろしくお願いします。」
「「此方こそ、よろしくお願いします」」
千冬と千春が二人に挨拶をかえす。
「それでは早速ですが、倉持技研が開発した織斑君の専用機がこちらになります。」
そう言って薫子がタブレットを捜査すると、コンテナが展開していき、内部に鎮座するグレーの機体が姿を洗わした。
「第3世代型IS【白鋼(しろがね)】です。」
進がそう言って機体を紹介する。 倉持技研から渡された白鋼は、箒の赤鋼と同じく完全装甲型のISは、武者を想わせる赤鋼とは違い、此方は甲冑姿の騎士を想わせる姿をしていた。
「完全装甲型か。何故、完全装甲型なのだ?」
この時点で赤鋼の事を知らない千春は兎も角、千冬はこの理由を知っているのだが、あえて質問するのだった。
「日本の主力ISメーカーでは絶対防御に依存しすぎている現行機に対して装着者の安全性に懸念を持っていました。そこでより装着者の安全性を高める手段として完全装甲型への移行を決定しました。その為に白鋼も完全装甲型となっているのです。」
「なるほど。」
千冬は答えを聞き頷く。それを聞いても唖然としている千春
(白式じゃないのか?! どうなっているんだ?)
千春の混乱を余所に進が
「早速ですが最適化をしますので白鋼に乗ってください。ある程度の情報は入力されているので時間はかからないとは思います。」
千春に進める。薫子がタブレットを操作すると白鋼の装甲が開いていき人が乗る部分が出来る。
「は、はい。」
千春はそのまま白鋼に乗ると、装甲が閉じていく。
「息苦しかったり、気分が悪かったりしますか?」
「いえ大丈夫です。」
「それでは最適化を開始します。そのまま待っていてください。」
そう言ってタブレットを操作する薫子。
それから15分ほどして白鋼が輝きはじめて姿を変えていく。
「これが白鋼の本当の姿か。」
千冬達の前には両肩に円形の盾を装着し、腰の左右に鞘付きの刀を装着した白銀の騎士が現れた。
「それでは織斑君、アリーナに出てください。これより機動テストに入ります。」
薫子に促されて千春はヨタヨタ歩きでアリーナに出ていくのだった
それを見送り千冬もアリーナに出ていこうとするのだが、ピットの入り口に涼子がいるのに気づくと
「紫堂。そう言えば、お前には特例として3年間の間、学園警備部隊が所持している予備のISを専用機として貸し与える事になった。幾つか機種があるから搭載する武装と一緒に選んでおいてくれ。あと多少のカスタマイズも許可されている。カスタマイズする場合は整備科に企画書を提出して依頼しろ。」
「わかりました。」
「それからもう1つ、今日だけでも構わないから織斑の訓練に付き合ってくれ。」
「今日だけですか?」
「そうだ、今日だけでいい。後は織斑がお前に頼み込んできたら、お前の都合で引き受けるか判断してくれ。お前の任務内容に織斑への訓練や指導は含まれていない。引き受けるのは任務以外の依頼になってしまうからな。」
「わかりました。それでは今日だけは織斑先生の頼みを聞いて織斑君と訓練します。そこのハンガーにあるラファールをお借りします。」
その後、千春は千冬の指導の元、涼子と一緒にみっちりとISの基本動作を繰り返し訓練することになった。
ちなみに千春は結局涼子に訓練の依頼をすることはなかった。
(確かに使いやすい機体かも知れない・・・でもこの機体には恐らく束さんが関わっていない・・・・白式じゃないのに、俺は本当に原作通りの活躍が出来るのか?)
原作乖離という耐え難い不安の中で千春は出撃準備を行う。
そこに真耶から
『織斑君、まもなく試合開始の準備が終わります アリーナへの出撃をお願いします。』
「わかりました。」
そう返事を返すと千春は待機室を出てピットのカタパルト前に立つ。
「出撃するぞ白鋼!」
白鋼を展開して装着した千春はカタパルト乗ってアリーナに出撃するのだった。
Bピット
ウェットスーツやドライスーツを想わせる藍色のISスーツに着替えた零也が出撃の合図を待っている。
零也は目を閉じて、両手を臍の上の辺りで法界定印を結んで精神統一をしており、紫とシュテルはそれを静かに見守っていた。
『月村君、まもなく試合開始しますのでアリーナに出撃してください。』
真耶からの呼び掛けに零也は目を開き、静かに息を吐くと
「わかりました。」
「兄さん頑張ってね。」
「どうかお気をつけて。」
紫とシュテルからエールを貰い零也は左手を挙げて答える。
そして
「いくぞ、【十六夜(いざよい)】」
左手首の藍色のチェーンブレスレットが輝く。
第3世代型IS【白鋼】(外見Rギャギャ)
倉持技研が開発した完全装甲型の第3世代型IS
『防御こそ最大の攻撃』という持論を持つ佐崎進&薫子兄妹により開発された機体で、性能の大半を防御に割り振った。 その為に第3世代型ISの現行機では初の防御型第3世代兵装【白鋼甲殻(びゃくこうこうがい)】を装備している。 完全装甲型の防御タイプだが機動性能は低い訳でもない。
武装
可動式円形盾【防守(さきもり)】
白鋼の両肩に装着されている1対の倉持技研が開発した可動式の円形盾。両肩のサブアームに接続されておりフレキシブルに可動し、また両肩から外して両腕に装着できる。またブレードが内蔵されており、展開して回転させてチェーンソーとしてや、フリスビーのように投げたり、2つを合体させてワイヤーと接続してヨーヨーのような武器としても使える。 そして白鋼の第3世代型兵装【白鋼甲殻】の発生装置でもある。
第3世代型兵装【白鋼甲殻(しろがねこうかく)】
倉持技研が開発した世界初の防御型の第3世代型兵装。 防守を両肩に装着した状態で防守が高速回転することで発動する。発動させると機体を覆うように球体状のバリアフィールドが展開される。この状態になると大半の攻撃(零落白夜は除く)を防ぐ事が出来る。
ただし、発動している間は防守を両肩から外すことが出来ず、武器として使う事が出来ない。 また60秒たつとバリアフィールドを発生させる装置を冷却しなければならず、自動的に停止する。冷却時間は180秒。
専用のエネルギーパックを使用して発動するのだが、現段階では3回しか発動出来ない。また本体のエネルギーを使用しても発動可能だが、その分エネルギーの消費量が莫大である。
高周波振動刀【夾竹刀(きょうちくとう)】
白鋼の腰の左右に鞘に収められて装着されている刀。
高周波振動により切れ味が増している。
大型機関砲【落火星(らっかせい)】
両肩の後部に装着されているバリアブルシールド内に装備されているガトリング砲。威力はある反面、反動も凄く扱いが難しい。
小型機関銃【火岸華】
赤鋼に装備してあるものと同型。