四季物語   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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仕事で離島へ来たサラリーマンの木梨は、運悪く近づいてきた台風によって島に閉じこめられてしまう。
島に唯一の民宿に泊まることにした木梨はそこで、1人の女性と出会う。
酒盛りを経て仲良くなった2人は………。


鳥籠の島
鳥籠の島①


 その日はとてもいい天気だった。台風が接近してきているなんて思えないくらい。

 

 仕事は順調、昼過ぎには島を出て夕方には会社に戻れる……はずだった。

 

 営業の仕事で(おだ)やかな海をフェリーで渡り、都内から3時間ほどの離島、初島(はつしま)にやってきたは良いものの、急激(きゅうげき)に発達した台風の影響で午後のフェリーが運航中止。どうしようもないので会社へ連絡して適当な宿を取ることになった。

 

 不運はそれだけに終わらない。2つ目の台風が続けざまに接近していることもありフェリーの再開の目途はまだ立っていない。

 

 台風の影響が出始めるのは早くても深夜から明け方にかけての間。本来であれば昼のフェリーは余裕で乘れるはずだった。

 

 現に今は台風が近づいてるとは思えないほど澄み渡った空に、穏やかな海が広がっている。

 

 フェリーの運航が見合わせになってしまったのは、最近国内で起こったフェリー事故の性で運行会社が過敏(かびん)になっているかららしい。

 

 本当に運が悪いというか間が悪いというか。

 

 港の人に宿の事を聞くと、1件だけあるという民宿の事を教えてくれた。そんなに小さい島じゃない気がするけど1件しかないなんてな。

事情を説明して飛び込みでチェックインを済ませ、荷物を置き、一息つく間もなく、同僚に電話して訪問予定だった中からいくつかのフォローを頼み。僕が直接行く予定だった場所には謝罪の電話を入れた。

 

 後はゆっくりしたいところではあるが、今の時代、ネット環境さえあれば仕事はできてしまうので仕方なく宿のWi-Fiをお借りして業務に勤しんだ。

 

 その日は夕刻、食事の準備ができたと呼ばれてようやく仕事の手を止めた。

 

「それじゃあ、木梨さんは色んなとこを旅してるんですか?いーなー」

「旅行って訳じゃないけどね。仕事であちこち行ってるだけだって」

「でもそのあちこちで美味しいものを食べたり観光したりしてるんじゃないんですか?」

「まあね。そこは営業の特権みないなものかな」

 

 若女将のお酌で程よく酔いの回った僕は、気づけば旅先の出来事をペラペラと話していた。

 

 普段はこんな酌をしたりはしていないそうだが、なんでも来るはずだった客がフェリー運休でこれなくなり、暇になったらしい。

 

 まあ理由は何でもいい。可愛い子にお酌をされて嫌な男はいない。おっぱいも大きいし役得だ。

 

木梨(きなし)さんは都内に住んでいるんですよね?」

「そうだよ」

「いいなぁ……」

平良(たいら)さんは東京に行きたいの?」

「小鳥でいいですよ」

「え?」

「平良だとお父さんかお母さんかわからないじゃないですか」

「ああ、なるほど?」

 

 いきなり名前呼びを求められてドキッとしたけれど、言われてみれば確かにそうだ。

 

「東京に行きたいというよりは、島を出たいんです。生まれてからずっとこの島で育って、もちろんこの島が嫌ってわけじゃないんですけど、やっぱ憧れると言いますか」

「気持ちはわかるなぁ。俺も似たような理由で都内の大学に進学したし」

 

 でも、いざ住んでみると良いことばかりじゃないって気づかされたけどね。それでも田舎よりは良いって思うけど。

 

「東京に行って何かしたいこととかあるの?」

「したいことですか?」

「そう、したいこと」

「んー……」

 

 悩む素振りを見せる彼女に「ないんかい」と突っ込みを入れる。

 

「お、お嫁さんとか?」

 

 何とか捻りだした感じで言うものだから思わず笑ってしまう。

 だって、いい歳した大人が東京に出て何がしたいか聞かれて「お嫁さん」だなんて、僕じゃなくても笑ってしまうだろう。

 

「笑わないでくださいよ!」

「ごめんごめん」

 

 頑張って笑いを収めようとしていると、彼女は急に「そうだ!」と声を上げた。どうやら何かを思いついたらしい。

 

「木梨さんどうですか?」

「どうですかって何が?」

「私ですよ!3食おっぱい付きですよ!」

「ぶっふぉ!?」

 

 何を言い出すかと思えば、とんでもないことを言い出しやがった。

 

 いや、でも確かにおっぱいは大きいし……。って違う違う。

 

 これ見よがしに胸を寄せて見せつけてくるものだから、ついまじまじと見てしまった。

 

「そ、そんなにがっつり見られたら流石に恥ずかしいんですけど」

「へ?あ、ごめん!」

 

 この時は思わず謝ってしまったけれど、よく考えたら見せつけてきたのは彼女だから僕は悪くなくない?

 

 何とも言えない微妙な空気が流れ、無くなったお酒を取りに行くと言って彼女が席を立とうとしたのを合図にお開きにした。

 

 これ以上は色々と危ない気もしたし。

 

 程よく酔いが回り多少ふらつきながらなんとか部屋に戻った所までは覚えているけど、どうやら飲みすぎたらしい。

 

 翌日、二日酔い特有の頭痛を感じながら顔を洗い、食堂へ向かう。朝食は白米に干物とみそ汁といったシンプルなものだったが、二日酔いの身体にはかなり沁みた。

 

 小鳥さんは昨日の事は気にもしてない様子で仕事に勤しんでいた。

外は昨日にも増して雨風が強まっており、雨戸越しに窓をカタカタと鳴らしている。

 

 ラジオ代わりにテレビでニュースを聞いていると、現在上空にいる台風とは別に接近している台風は規模が大きく、そして進みが遅いそうだ。

 

 予報通りでも台風が通り過ぎるのは5日後。しばらくは宿のお世話になるしかなさそうだ。

 

 こんな状況でも舞い込んでくる雑務をこなしているといつの間にかにお昼になっていたらしく、小鳥さんが食事を持ってきたので、一度手を止めることにした。

 

 その際に洗濯物があれば洗ってくれると言うので、適当なビニール袋に服を詰め込んで渡した。洗濯物については困っていたので宿側から言ってくれたのは非常に助かった。

 

 流石に台風の中、コインランドリーに行くのはキツイ。いや、そもそも島にあるのかもわからないけど。

 

 よく気の利いたいい人だな。そう思った。




今回から新しいお話です。


9割型書き終えてる作品なのでたまにはテンポよく投稿しようかなと思ってます。

……毎回年単位でかけてらんないからね。
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