四季物語   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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鳥籠の島⑤

 昨夜のことを思い出した僕は一瞬にして二日酔いの頭痛を忘れた。

 

 時計は10時を過ぎたところ。つまり朝飯の時間はとっくに過ぎている。

多分誰かに見られたんだろうなぁ。だって、新しい浴衣が入ったが(かご)部屋の入口に置かれているもん。

 恐らくは女将さんか昨夜見かけた従業員の方だろうが、どう胡麻化したものか……。

 いや無理だろ。と妙に冴えてきた頭で言い訳を考えていると、布団の中がもぞもぞと動いた。

 

「んー……」

 

 眠そうに掛け布団を引っ張る彼女に笑いがこぼれる。

 

 随分と幸せそうな寝顔だ。

 

 僕は小鳥さんを起こさないようにそっと布団から抜けて、とりあえず汗とかでべた付いた身体を流しに浴場へ向かった。

 

 熱いシャワーで汗が流れていく感覚同時に残った眠気が覚めていく。

 

 髪を乾かして、脱衣所から出たところで、丁度よく従業員の方に出くわした。

 

「おはようございます」

「あ、はい。おはようございます」

「これからお部屋にお戻りですか?」

「そのつもりです」

「そうしましたら、お手数ですが、小鳥ちゃんに女将が呼んでいたとお伝えしていただけますでしょうか」

 

 僕の部屋に居ることが前提の言葉。もしかして新しい浴衣はこの人の仕業だろうか。

 

 反応に困るけれど、落ち着いて、

 

「……わかりました」

 

 と答えた。

 

 なんとなく、漠然(ばくぜん)と嫌な予感がするけれど、考えないようにする。

 

 ため息を漏らしながら部屋に戻ると、締め切られていた雨戸が開けられて曇っていてやや暗いながらも光が差し込んでいた。

 

 弱いながらも雨は降り、まだ風も強そうだが、それでも天気が回復に向かっているのがわかる。

 

「おはよう」

「おはよう」

 

 お互い照れることもなく、挨拶を交わす。

 

「女将さんが小鳥さんを呼んでるみたいだよ」

 

 あいさつの後に何か言おうかと思ったけれど、何も思いつかなかったので、頼まれた言伝を済ませる。

 

 小鳥さんは心底面倒そうに「あー」と声を漏らしてから「わかった。ありがとう」と言い残して部屋から渋々と言った様子で出ていった。

 

 急に広く感じる部屋で、とりあえず、飲み散らかされたゴミを片付けた。

 

 行きずりの男女が一晩寝たくらいで、と言ったら怒られてしまうかもしれないけれど、でも、小鳥さんがどう思ってるかはわからないけど、所詮は雰囲気に流されて1度ヤってしまっただけ。

 

 自分で言うと責任逃れ感がすごいけど、逆に言えば“性行為をした=好意がある”とは限らないのも確かなのだ。

 

 問題は、ほぼ間違いなく相手の親に知られてるということ。

 

酒の所為だと言い訳できれば楽なのかもしれないけれど、本人だけならともかく、流石にこれで言い訳するのは苦しいだろう。

 

 個人的に小鳥さんは悪い女じゃない。むしろ良い女だと思うし、なんなら好みでもある。

 

 綺麗な方だし、料理も上手い。しかもワイシャツもビシッとアイロンまでかけてくれた。後おっぱいも大きい。まあ、ワイシャツに関していうなら実はノンアイロンシャツだったんだけどね。

 

 僕としては付き合えたら嬉しいと思える相手ではあるけれど、小鳥さんがどう思っているかはわからない。

 

 どうしたものかと思いながらも、スマホでフェリーの運航状況を確認すると、明日以降に状況次第で復旧する予定らしい。

 

 天気予報を確認しても、台風は今日中には通り過ぎる予報になっている。

 

 帰る目途がつき始めたのが果たしていいのか悪いのか。なんにせよ。もうあまり島に居られる時間は長くない。

 

 行きずりの関係を持ったのが初めてという訳ではないけれど、以前は明らかに好意も何もないものだったから、こういう時にどうしたらいいのかわからない。

 しばらく考えて、思った。

 

 こういうのは悩んでも答えが出る物じゃないし、本人に聞くのが一番早い。

 

 最悪『1度ヤったくらいでなにマジになってんの』とか言われても、明日か明後日には帰れるんだしダメージは少なくて済む。

 

 ……まあ、どうせまた夜は飲むんだろうしその時にでも聞けばいいや。

 

 決して、怖気づいたわけではないぞ!と、誰に言い訳するでもなく、パソコンを開いて仕事をし始めた。

 

 別にいいけど一応、有休扱いなのになーんで僕に仕事を振ってくるのかなぁ……。

 

 

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