オリ主が警策看取ちゃんの幼馴染設定です。ドリーも出てきます。最後まで読んで頂けると幸いです。
この物語に優しさなんてモノは存在しない。
似通ったものが在るとすれば、それはきっと同情だ。あるいは女々しさ。
所詮この世はその程度。だが、そんな世の中にも多少マシだと思える事がある。
「んで?例の資料、手に入ったか?」
「すいません。第2、3学区共に手掛かり無し。研究所自体が閉鎖、または」
「ムチャクチャにぶっ壊されてた?」
「…はい。」
「わざわざすまなかった。また折り入って連絡する。解散。」
グチャグチャに壊された研究所。これで何件目になるか分からない。まぁ、手間は省けるのだが。
白髪交じりの苦労の目立つ髪、左右非対称なオッドアイの瞳、中性的な顔立ち、取れずこびり着く目のシワ。
素材を活かせていない、残念な少年の名は
先の通り、落ちて朽ちた者の1人。
今は暗部に属す身。人口の8割を学生が占める科学の街、学園都市。この世のどの場所よりも先端を走るこの街は表向きはきれい潔白。だが、裏はそうじゃない。闇に呑まれた敗者の血が塗りたくられた場所がある。
暗部。学園都市を裏から牛耳る統括理事会、その指示に従い、不要因子あるいはイレギュラーを排除する組織。
だが、そんな彼にも純粋な時期があった。
この物語の序章はその過去から始まる。
「今日もだめだった…………なんで……なんでっ……」
幼き頃、少年はとある能力開発施設、もとい研究所にいた。この研究所には基本、将来有望な高スペックな子供を研究所対象にしている。のだが、少年には何も無かった。才覚の片鱗すら見えない、正確な能力の本質は未だ未明。できる事とすれば風を吹かす程度。稀に人肌で溶ける金属が少量取り出せる……ときもあるけど…すぐ消えてしまう。
要は落ちこぼれだ。
「はぁ…もういいや。甘いモノ食べよ。」
この町で生き抜くにはまず強力な能力がいる。みんなに認められるような。このままじゃいけない。その使命感が少年を押し潰さんとする。
だが、幸か不幸か、少年には心地よい間柄の少女がいた。
「あ、あるくん。お疲れ様〜。」
「!……うん。そっちも」
少女の名前は警策看取。小学校高学年、見た目はそれくらいだろう。幼さがいい味を出す、柔らかい笑み…綺麗なきめ細やかな肌。細く綺麗なうなじ。
正直、俺とは釣り合わない。横に並べば間違いなく馬鹿にされる。だが、彼女はそんな理屈聞いちゃくれない。
……彼女とは数ヶ月前にとある事情で知り合い、多くの時間を一緒に過ごした。親と別に暮らす子供にとって、寂しさの緩和剤……当初は本気でそう考えていた。だけど、そんなはずが無い。
「元気ないね。駄目だったの?」
「………痛いとこつくなぁ……また能力使えなかった……最悪……」
「もぅ、そんな言葉遣い駄目だよ。ここの先生に聞かれたら評価下がっちゃう。」
「……」
「そればっかり……だな。」
「仕方ないよ、分かるでしょ?今頑張るかが人生を変えるんだから。」
そう。この街じゃ、所属した研究所の成果次第で人生が大きく左右れてしまう。
今結果を出さなきゃいけない。これからを楽しく生きるには。勝ち組にならなきゃいけない。……Level4。
「そうだね。そっちはどうだった?うまくいけた…?」
「ううん、駄目だった。もう少しって感じなんだけど。」
「お互い頑張んなきゃな。」
「うん、一緒に頑張ろ!」
それとは代わって、ガッツポーズで笑うミトリ。
かわいい………ホント、顔は綺麗だよ。笑顔も良くてさ。けどさ、その笑い方はズルいよ……
俺は彼女に振り回されていた。本来は心根の優しいコロコロ笑う子だ。そのはずだ。見た目もいい。この娘はすごく可愛い。
けど、いつも愛想笑いだ。俺の前でもその笑い方をするもんだから、意地でも笑わせてあげようと思ったこと、懐かしい気もして…我ながら恥ずかしい。
けど、以前よりは心をひらいてくれてると思う……以前は君呼ばわりだった。少しずつ変わっていく。
「…え…ある…ん……ね……ねぇって。」
「!?……どうしたの?」
「さっきからずっと呼んでた……。私の話……聞いてた?」
あれ、全然聞いてなかったわ。何話してたんだろ。確か……
上目遣い。……なんか見えちゃいけないところが見えてる。
この年頃に、その角度の胸元はキツい。小学生にしては発育のいい胸が………
「あのさ……その……胸元、かくして。」
「!……………あはは〜…なるほど〜……て、何見てんの!!!」
バチーンッ
痛い、本気で殴られた。でもさ、男なんだから……その……胸が見えたら見たゃうじゃん。年頃なんだし。
「最低ー。」
「……んの事言われても……仕方ないじゃんか。」
ほっぺた、じんじんする。
そもそも、多少言い方は悪いが……見せて来たのはソッチ。こちらも見たくてみた訳じゃない。……眼福だけど…
この女は姑息だ。ずる賢い。性悪だ。
「まあ、いいわ……これでも私、優しいから。あるくん。今回は特別ね。」
「……」
「あ〜〜赤くなってる〜。」
「!……うるさいッ。何恥ずかしいこと言うなよ。」
「あはは~………………でもさ、普通そんな目で見てくる男の子とは、関わらないよ。」
「そんな事されても許しちゃうのは……たぶん……あるくんだからだよ?」
訂正する、この女はそれでいて……すごく可愛い。
「……何それ……」
「私もよく分かんない。」
「なおさら意味わかんねぇょ。」
「……あるくんってさ、時々言葉遣いあらくなるよね。」
「うるさいっ。」
「ほら、拗ねないで。それより……今日も暇でしょ?一緒に行こ?」
「……うん。」
こんな感じに僕らの生活は過ぎてゆく。些細なことで笑い繊細な心に触れきれいに煌めく。そんなとびきりの時間。
そんな時間を共に過ごした俺たちには、もう一人、かけがえのない友人がいた。
─────ドリー
「それと、今日の夜開けといて?」
おお?まさか…………小学生ですが……?
学園都市の知能レベル、あるいは一般常識……それらは他と比べると飛躍的に進んでいると言う。中にはイカれてると罵る輩もいるそうだが。
要するに、ここ学園都市の学生は既に幼い頃からある程度の知識、性的知識を知っているのだ。
つまり………
「…僕ら…小学生だよ?………?」
「そんなんじゃないよ、ただね、話があるんだ。」
そんなんじゃないよ………?あら……?
そしてそんな事をする気はないと?……残念……学びでした。
「…………いいよ。時間作るね。」
「ありがと。」
一瞬、辛そうな顔に見えた。笑顔で笑ったのにだ。
大人びて見える、そんな笑顔だった。
何だろうな。この時、何ら疑問に思わなかったことを後悔した。なぜそんな辛そうな顔をするのかを知れたら、どんなに良かっただろうか。
でも、それが悲劇の訪れとも知らずに。
場面は変わり、研究所の一室の門前。
パタリ、丁寧にドアを開けるとそこには色とりどりの玩具が散らばっていた。
そして……
「み〜〜ちゃん!!」
ガバッ、と言う音が似合うだろう。すごい勢いでミトリの胸に飛び込んでいった。ホントにすごい勢いだ。
ホントにすごい。何が凄いって……その……とにかく凄い。
「来てくれてありがと!!へへ〜」
「もうッ、そんな引っ付かないでよ……元気……?」
「うん!バッチリ。ん?……み〜ちゃん…温かい。いい匂いする。」
「ちょっ…そこっくすぐったい。」
凄いの一言。突進したドリーは俺には目もくれずミトリのことを押し倒しハグやらスリスリやらナニラヤ。
あ…また始まった……女の子の同士のやつ。いいよな…
へ〜……ミトリっていい匂いするんだ……
学びです。
「……あるくん。何その顔。」
「ん……コホンっ……」
「あ〜、カズくん!!来てくれたんだ〜。」
どうやら鼻の下が伸びていたみたい。
あと、ミトリさん。その、変な目で見るな、って表情……辞めてもらえませんかね。無性に傷つくんで。
それに比べ、ドリーは無邪気だな。さっき完全に俺の存在忘れてたけど。
このメンツは俺に厳しい。
「一応、最初からいた。ドリーが気づいてくれなかっただけで。」
「なぁ〜んだぁ〜。やっぱり優しいね…」
「へ?」
いきなりでビックリした。そんな事、普段あまり言われ慣れてないからむず痒い。
「嫌がらずに来てくれるもん。あるくん。」
「フフッ……それじゃ、ドリー?今日は何する?」
「ボードゲームしよ〜。あるくんとみ〜ちゃんと3人で。」
「よろこんで。」
こうして、俺たち3人は同じ時間を過ごした。それは決して長いものではなかった。だが、この時間は間違いなく掛け替えのないものだ。
幼き俺は願った。ここから先、3人が健康で笑っていられます様に。