僕はまた、あの景色が見たかった   作:生き甲斐探す

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超電磁砲 始まりました。


面白かったです 


2話

夜分、それこそ殆どの人が寝静まった深夜。

約束通りミトリと落ち合った。

 

実は、この時の……ミトリの呼び出しに応じた時の俺は、若干期待していた。幼い頃から異性との交友に憧れていた俺は告白?なんて考えたりもした。

 

当たり前だ…………と思う。一般に男というものはそういうモノだ。可愛い、かつ年の近い女の子に告白されたいと思うのは、多分誰でもそうだ。

 

だが、俺の予想はまるで外れた。

 

「ドリーの件、覚えてるでしょ?」

 

出合って数分は沈黙が続いた。ミトリの様子からして何かをためらっているのが分かったから、静かに時を待った。

 

そしてようやく発せられた第一声がそれだ。告白と期待してドギマギとしていた俺が恥ずかしい。

その事について、思い当たる節がある。

 

以前二人でドリーの部屋を訪れたとき、俺たちは偶然見てしまった。たまたまノックを怠ったその日、俺たちはドリーの素肌を見た。普段服に隠れている腹部。そこには幾重にも成された縫合跡があった。そして紫に変色した部位も。

だが、研究所の先生が施術の跡と言っていたため酷くは言及しなかった。

 

 

「それで私……気になって調べてみたの。」

 

「!……調べたって……先生方の研究室を!?」

 

「シーー!!しずかに……そうだよ、調べてみた……そしたらさ……ドリーに関する研究データがわんさか出てきて……」

 

「……研究?……治療じゃなくて?」

 

ミトリの顔色から何となく、ただ事じゃないとは思っていた………けど。だいぶ雲行きが怪しくなった。…………研究?それこそここは、もともと研究所だ。能力開発の為の研究なら全くもって問題ない。だが……

 

「……うん。ある君もおかしいと思わなかった?あの傷。」

 

「?……確かに、普通じゃないと思ったけど……縫合跡は綺麗に消えるって先生が言ってたよ。」

 

「見て。」

 

 

「?」

 

 

ミトリはいきなりタブレット端末を押し付けてきた。そしてその画面には子供にでもわかるほど、無茶な投薬の情報だった。そして……クローン……?

 

「……なんだ……これ……?」

 

上手く言葉が出ない。舌は回るのに言葉にならない。

だが、学園都市で育てられた頭は皮肉な事に正常に回る。一般の小学生より遥かに賢いこの頭では、事態を容易に理解できた。

 

「…まだ……ある…。……次……」

 

だが、酷すぎる投薬だけでは済まなかった。

投薬以上の悲痛。それがまぶたに焼き付く。

 

「…………?………みさかみこと…………Sisters……?」

 

そこで知る悲劇のシナリオ。

その日はそれ以上話す事ができなかった。その日は特別にミトリと一緒に寝た。だが、何も感じなかった。正確には感じる余裕もなかった。気づけば朝になっていた。

 

 

そして数日はお互い何も出来なかった。実験も適当に済ませ必死に消化しようとした。

 

 

そして僕は彼女に告げた。何としても阻止しようと。その計画を止めることはできなくても、ドリーだけは助けようと。

 

 

「………統括理事会にこの事実を伝えれば……」

 

「なら……脅しにかかろう。ここの不正を知られたら……先生たちは困るはず。きっと……」

 

たが……俺たちには交渉材料が明らかに不足していた。少ないなら集めればいい。幸いにも時間はうんとある。

きっとここの組織は優しいはずだ。優秀な人には優しかった。でも彼女、ミトリはともかく、俺には才能がなかった。それでも優秀になるしかなかった。

 

「まだ情報が足りない……脅すにせよ交渉するにせよ、必要なものが全然……足りない。」

 

「……。……」

 

 

ミトリのきつく閉められた歯が見えた。震えている。そしてこの雰囲気、かなり怒っている。

当たり前だ、当時の俺の提案は正しいが残酷だった。と云うのも、ドリーの体が蝕まれる中、時が来るまで指を加えてみていましょう。そういうお話だ。ミトリの怒りはこの時の俺にも想像できた。

 

だが、それ以外に道が無いことも理解していたのだろう。聡明な彼女ならそれが分かっていたはずだ。

 

 

「どれくらい、情報がいるの……?」

 

こうして俺たちの計画は始動した。

 

 

 

 

 

 

 

そこから先はただひたすらに研究所を探しまくった。

必要なものは漁った。不必要なものでも何でも取り込んだ。それこそありとあらゆる方法用いて探った。

 

だが、子供の俺たちにはまだ正しく理解できるものは殆ど無かった。所詮できる事には限界がある。一つわかるとすれば、すべてを理解できる頃にはドリーは死んでしまっているという事。それだけは阻止したかった。

 

だが……だったら理解する必要はない。

 

抑制力のある情報を保有、更に交渉材料としておく事に効果がある。

 

呑気な事に、この研究室のセキュリティーは外側は圧巻の一言だが、内の警備は疎かの一言に尽きる。

 

再生の研究だか、増殖の研究だか知らないが……

 

「あら?アルト君。ここでどうしたの?」

 

「……あぁ。先生、こんにちは。」

 

悔戯眼(クヤギカ)先生。しっとりとした雰囲気の女の人。ここの研究員であまり利口そうでない人。当時の俺には、彼女が献身的で穏やかな性格に見えていた、そしてそのうちクビにされるだろうと予想していた。

 

「?どうかした?」

 

今までに得てきた情報の半分は彼女の口からこぼれたものだ。

 

この先生は少し抜けてるというか、おっちょこちょいというか………単にアホなのか。

 

僕らは彼女の献身的なスキにつけ込んだ。使えるものは何でも使う、そういうスタンスでやってきた。

 

「……今日は非番の先生……多いですね。」

 

「えぇ。今日は大切な会議なの。」

 

 

この人は大人の事情を何でも隠さずに話す。だから他の先生の空き日を用意に把握できた。そして利用もしやすかった。

 

………やはりアホだ。だが、彼女の言動はたまに癇に障る。

 

 

「…………私はまだ下っ端だから、気楽でいいわ。」

 

「気楽……?」

 

……気楽……?あれだけのことを知っておいて……?

 

「ここだけの話ね。私達のひとつ上の先輩、その会議で資料ミスしちゃって……まぁヘマする方が悪いんだけど……首になったらしいわ。」

 

「……クビ…それはなかなかに厳しいですね。」

 

「可愛そうよね。ヘマ一つで人生を終える。私はそうならないわ。絶対よ。頑張るんだから。」

 

……もしかしたらこの人は何も知らないかもしれない。

俺はそう思った。彼女の気合に満ちた笑みは、今までの研究員とはまるで違った。

 

だから俺たちは先生の研究にも積極的に取り組んだ。少しでも怪しまれないため、そして、この研究所と喧嘩するため。より強力な能力が必要だった。

 

だけどそれ以上に、この人に迷惑をかけたくはなかった。

 

 

だから、それと共に気づきさえしなかった。

 

彼女は計画について深く把握しスギているのだ。

 

 

 

 

「はい、ご苦労さま。今日もドリーの所へ?」

 

「はい、先生。ありがとうございました。」

 

 

俺もミトリも短期間のうちにlevel3まで上り詰めた。

 

力をつけていくと自然とわかったことも多かった。

 

一番の収穫は俺の能力。未だ不明な点は多々、それでもある程度容量を掴んできた。先生たちは別の線で考察していたが、少なくとも俺は空気を操る能力と考えている。

 

そうすると多くの点がつながった。最初に発現した風を起こす力は気体操作、効果が薄いのは、扱える範囲が狭いから。稀に一瞬生まれる流動性のある金属的なものは恐らく、気体を極限まで圧縮したモノ。そう考えると辻褄が合う。

 

そして金属を生み出す事ができる用になった事は、間違いなく前進。

 

ミトリほど自在、とまではいかなくともある程度のコントロールは出来るようになった。

 

「……ある君。どうだった?」

 

「…予定通りトラックは積荷を運ぶ、そしてAI運転じゃない……人が運転する。」

 

「……狙い目は今日……ドリーと一緒に逃げる。だよね?」

 

 

「あぁ、万が一のための情報、大切に行こう。」

 

ミトリの水銀を操る能力、と言うよりは液体を操る能力は便利だ。汎用性が高く遠隔操作型の能力。この短期間に研究所を隈なく調べられたのは間違いなく彼女の功績だ。

 

だが、なにもない所では無力なことが欠点。だから俺が、そこを補えばいい、そう思っていた。

 

 

 

「でも……急がなきゃダヨ……」

 

 

ミトリの仕入れた情報によると一ヶ月後に大きな実験が行われるらしい。その内容次第ではドリーの廃棄が決まる、報告書にはそう書かれてあった。

 

だから計画を変更した。

ドリー救出のため、それが最善だと思ったからだ。

 

 

この街はドリーをただの実験体にしか考えていない。

 

 

 

「……交渉は最終手段、だよね?」

 

 

「あぁ。今の僕たちの手の内にある物は、この街をひっくり返せる、可能性のあるナニカ。」

 

 

「ここらか逃げ出した先、きっと役に立つ。」

 

 

「長かったね。……でも、これからもずっとこんな感じな(戦わないといけない)のかな。」

 

 

「しばらく頑張ったら……きっと大丈夫だよ。」

 

「……そうだね……行こう。」

 

 

そうして僕らは扉を開いた。扉を開けた時……強く願ったことを覚えている。この先の未来に……笑える居場所がある事を。

 

 

「あ〜くん!!み~ちゃん!!」

 

「おっと、相変わらず凄いタックルだな。」

 

「あ〜ぁ。いっつも通りだね〜。なんか癒やされるなぁ〜。」

 

 

逃亡計画を練ったとき、ドリーの事を考えなかったことはない。

此処から先は俺たち3人で生きていく。

そう決めた。

 

 

「さて、ドリー。僕たちに………さらわれてくれ。」

 

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