内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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書き終わり後即投稿。修正する可能性しか見えない。





episode 105 望まぬ審判

 

―アレクセイ屋敷・内部―

 

私達は悲鳴が聞こえてきたと思われる場所を目指して屋敷の中に入る、すると流石にあの悲鳴は屋敷内部のほとんどの人が聞いたのだろう、薄暗い屋敷内はあちらこちらから足音が聞こえてくる。

 

その足音の中にはダクネスとめぐみんのものもあったようだ、屋敷に入ったこちらに気付くなり私達の元へと駆け寄った。

 

「カズマ!アリスにゆんゆんも!一体何があった!?」

 

「俺達もわからないんだ、いきなり領主のおっさんの声が聞こえてきたからこうやって駆けつけたところだ」

 

「あの声はアルダープのものでした、時間的にも自室と思われますが…」

 

「あぁ、場所なら把握してる、こっちだ!」

 

「あ、あの、ミツルギさんはどうしましょう?」

 

「この騒ぎだ、現場に駆けつけたらいるかもしれない、とにかく急ぐぞ!」

 

ダクネス、めぐみんも改めて合流したものの、2人は姿からして武器も装備もない、めぐみんなら素手でも爆裂魔法を撃てなくはないだろうけどまさか屋敷の中で撃つ訳にも行かない。カズマ君も今や武器はなく、現在フル装備なのは私とゆんゆんだけだ。

よって同じくフル装備で屋敷にいるミツルギさんの存在に期待した訳だけど今は見当たらない、もしかしたら現場にいるかもしれないという希望的観測を元に私達は再び走る。

 

 

ようやく大きな扉の前に差し当たり、それは既に開かれていた。

 

「父上!!」

 

「おぉ……バルター…はやくワシを助けろ…!!」

 

開かれた扉の中は広めの部屋だった。扉を開けてすぐバルターさんとミツルギさんの背中が見え、そして周囲には数人のメイドさんや執事の人が唯ならぬ様子で立ち尽くしていた。

 

私達が中に入るなり見えたのは部屋の隅にいるアルダープ…そして…。

 

「危険だ、あまり刺激しては…」

 

「で、ですが勇者殿、このままでは父上が…」

 

「ヒューヒュー…大好きなアルダープ…一緒に魔界に行こう…?」

 

「ふ、ふざけるな!!ワシはお前など知らん!!」

 

ようやく姿を見ることができた。アルダープを背中から抱きしめるようにしている黒い影、後頭部に口が見える異形な存在、あれがおそらくマクスウェルなのだろう。私はすぐにバルターさんの横に並ぶように飛び出し、杖を構えた。

 

「バルターさん!ミツルギさん!」

 

「…アリス様っ!父上が…父上が魔物に…!!」

 

「…だが…うかつに手は出せない…」

 

…おそらく…これがバニルのアドバイスの結果なのだろう。私は瞬時にそう思った。

なるほど、対価がどうとか言っていたけどようはマクスウェルをそそのかしてアルダープを襲うことにすれば悪魔の尊厳とやらは守られるのだろう。そして、これが私達にとってもアルダープが罰を受ける最適解であるとも言えた。

 

仮にこのまま救出が成功し、マクスウェルを消滅させたところで、バニルの言う通りアルダープは悪魔との関係に対してシラを切り通すだろう。状況から見てもこのままだと突然現れた悪魔にアルダープが襲われた、ただそれだけで終わってしまう。

 

少し呼吸を整えて周囲に視線を移せば…アルダープのことを本気で心配しているのはバルターさんだけだ。メイドや執事も心底ではアルダープのことが嫌いなのだろう、困惑めいた顔をしているが、者によっては口元に笑みを浮かべている者までいてしまっている。

 

特にそれを責めるつもりもない。だからこのまま傍観していれば私達の目的は呆気なく達成できるだろう。人間によってアルダープを裁くことが困難であるなら仕方ない、マクスウェルが攫うことでそれが罰になるだろう。その事象に同情はない、完全な自業自得なのだから。

 

「ヒュー…邪魔する人がいたら…ヒュー…アルダープを殺しちゃうからね…ヒューヒュー…」

 

「…くっ…父上…!」

 

これがすぐに救出できない理由。これによりミツルギさんも動けなかった。ようはアルダープを人質にとられている状態だ。だけどマクスウェルの声は弱々しい、アルカンレティアでハンスを乗っ取った時の声と比べたらそれがはっきりと分かる。

おそらくあの時の戦いが未だに尾を引いていると予測できる。あの時の私の魔法はアクシズ教徒の信仰によりパワーアップした水の女神アクア様の力が加わっていたのだから。そうなればフィナウではなくても少しの隙があれば私の魔法でマクスウェルだけを倒す事は難しくはないと思えた。

 

杖には対悪魔を想定して既に光属性の魔法が使えるようにコロナタイトの魔晶石がはめ込められている。後は詠唱すればいいだけ。

 

あくまでもアルダープを助けるのならそうする。助けるのなら。

 

「おい、マクスウェル!」

 

「…ヒュー…誰かな?」

 

思い悩んでいるとカズマ君が後方から叫ぶようにマクスウェルを呼ぶ。一応アルカンレティアでハンスを通して姿は見られているはずだけどバニルの言った通り物忘れが酷いようだ。なにやらキョトンとしているように見える。

 

「俺が誰かなんてどうでもいいんだよ、お前の欲しい対価ってのはなんだ!?」

 

「……ヒュー…僕の欲しい対価?もちろん…それは『絶望』だよ…!ヒューヒュー…」

 

絶望が欲しい。一瞬意味が分からないがマクスウェルがバニルと同じ悪魔だとすると辻褄は合う。バニルは怒りや羞恥の悪感情を好む。この様子からしてマクスウェルの好みの感情は絶望なのだろう。

 

「それで?そのおっさんをどうするつもりだ?」

 

「…ヒュー…、魔界に連れて行って、死ぬまで絶望をもらい続けるよ、ヒューヒュー…そうすれば『対価』になるって、と、友達が言ってたから…ヒュー…」

 

「…っ!?おいさっきから何を呑気に話しておる!!はやくワシを助けろ!!ワシを誰だと思っておる!!」

 

そしてマクスウェルが即時にアルダープを攫ってしまわない理由は単純。こうすることで絶望の感情をより集めようとしているのだろう。これもまたバニルの入れ知恵なのかもしれない。

 

そうだ、それでいい。

 

これでこのままアルダープが魔界に連れていかれれば長かったアルダープと悪魔との因縁も終止符を打てる。何度も、何度も私は自分にそう言い聞かせた。

 

 

だけどやっぱり……私には無理だった。

 

《バニシング・レイ》

 

声に出さないまま脳内で詠唱を終えた私は、決意したようにアルダープへ向けて光属性を宿したランサーを放った。空から飛来した光の槍がアルダープとマクスウェルごと串刺しにして突き刺さる。

 

「……ヒュー…っ!?!?」

 

「そんな…!?父上!?父上ー!!!?」

 

アルダープにまとわりついていたマクスウェルが文字通り雲散した。やはりかなり弱っていたようだ、次第に槍は消えて、そこには…驚愕の表情のまま硬直したアルダープだけがそこに存在していた。

 

「……父上っ!?…そうか、アリス様の魔法は確か魔物にしか当たらない…!」

 

状況に気付いたバルターさんが歓喜の声を上げ、アルダープの元へと駆け寄る。私は構えた杖をそのまま降ろして、ただその場に立ち尽くしていた。

本当にこれで良かったのだろうか、わからない。結果として、私はアルダープを助けてしまった。

はっきり言おう、私はアルダープが大嫌いだ。

だけどどんなに嫌いでも、嫌悪感しかなくても…、私は人間が目の前で死ぬところなんて見たくはなかった。例えそれがアルダープのような悪人であろうと。

 

「……よかったのですか?これでは流石に…」

 

「…いや、私個人としてはこれで良かったと思いたい、やはり悪魔などに頼った結末など、後味が悪すぎる…」

 

「…だけどどうするつもりだ?これであのおっさんの罪を立証することも…」

 

「アリス……」

 

「……」

 

私の傍に駆け寄った仲間達がそれぞれ周囲に聞こえぬ程度の小声で口を出すものの、私はそれに対して返答出来なかった。未だにこれで良かったのか、私にはわからない。だけど、後悔はしていないし、目的の為に最後まで足掻き続けるつもりではある。

 

そう思うと、重い足取りながらも、私の足はゆっくりと、だけど着実にアルダープの元へと歩を進めていた。

 

近付くとようやく状況が飲み込めたのか、アルダープは力なくその場に座り込んでいる。目には涙が見え、よほど恐怖したのだろう。それなら、もしかしたらと、私の中で身勝手な期待が募っていく。

 

「…ご無事ですか?領主様」

 

「…お、おぉ…そうか、君がワシを助けてくれたのだな、流石は蒼の賢者と讃えられた優秀な冒険者…感謝しよう」

 

震えた声ながらもアルダープは私に気付くと表情を緩ませた。今の状況に周囲も理解し始めたのか、困惑していた空気は、わずかなざわめきを呼んでいた。

 

勿論…私はこれで終わらせるつもりなど毛頭ない。

 

 

「領主様、お願いがあります」

 

「む?なんだね?褒美か?…いいだろう、ワシを助けてくれたのだからな、できる限りの報酬を約束させてもらうつもりだ」

 

「…いいえ、そういう類のものは結構です」

 

「……何?」

 

一呼吸置くとアルダープは私が言いたい事が理解できないのか、小首を傾げる。バルターさんもわからないようだ。予想もつかないだろう。

 

私が今からしようとしているのは、ある意味死刑宣告なのだから。

 

「…アルダープさん、過去の全ての罪を認めて、自首してください」

 

私がそう告げた瞬間、ざわめきが増した。バルターさんは困惑して固まっている。その横に立つミツルギさんは固唾を飲んで見守っている。ミツルギさんと同様に私の背後に立つカズマ君達も同様だった。

 

「……な……に…?」

 

「…私がここにいる目的を全てお話しましょう…、まずはバルターさんに謝らなければなりません。…私が今ここにいることはお見合いの為ではありません、あくまでそれを口実に…アルダープさんの飼う悪魔の討伐を行う為でした」

 

「……なっ、何を……!?」

 

「……父上が…悪魔を飼う…?」

 

やはり私の目的云々よりもそちらの方が重要だったのか、バルターさんは信じられない様子でいる。場はざわめきが強く増していた。

 

「馬鹿なっ…!!何を根拠にそのようなことを!例え恩人と言えど今のは聞き捨てならんぞ!!」

 

「根拠がなければ、そもそも私は今回この場にはいませんよ」

 

「…っ!」

 

当然ながら確信めいた事情があったからこそ私はこの場にいる。でなければ結婚などするつもりが全くない私がお見合いなど受ける理由がないのだから。

 

「私達は貴方のことを調べあげた上で今ここにいます、神器を使い悪魔を使役していたこと、その悪魔の力により過去何度も裁判を勝訴してきたこと、おそらく政治面でもかなり頼っていたのでしょう」

 

「…で、出任せだ!!ワシはあんな悪魔のことなど知らん!!さっきのあの悪魔は私を一方的に襲ってきただけだろう!」

 

「それはおかしいですね、では何故悪魔は『対価』を求めて貴方を襲ったのでしょうか?」

 

「…っ!?」

 

「…父上…?」

 

偶然の出来事だったけど、あのマクスウェルの襲撃もまた証拠にはなっていた。カズマ君が上手く情報を引き出してくれた成果だ。

実際に今この場にいた誰もがマクスウェルの言葉を聞いてしまっている。これに関して言い逃れができるはずない。

 

はずがない、のだけど。

 

「ワシは知らんと言っておるだろうが!!そんなものはあの悪魔の出任せにすぎん!」

 

「知らない、では済まされないのですよ。貴方があの悪魔を使って私を狙う事になったことで…どれだけの被害が出たと思っているのですか?私と共にいたアイリス王女まで危険に晒し、更に私が旅行に行った際にはアルカンレティアの街中で暴走し、結果として街の中心部は全壊状態…、そこまでの事をしておいて何時までシラを切り通すつもりですか?」

 

「……だ…黙れぇぇ!!」

 

「っ!?」

 

するとアルダープは予想外の行動に出た。私目掛けて襲いかかってきたのだ。もはや錯乱状態。ただ距離が近過ぎるのでウォールを唱えようにも間に合いそうにない。それ以前に私は動く事が出来なかったのだ。私が捕まればより面倒なことになると思ったその瞬間…私の左右からそれぞれ剣が飛び出し、アルダープの首元で止まることで結果的にアルダープの動きを止めた。

 

「……何のつもりだ…貴様らっ…!!」

 

「…父上、どうか落ち着いてください、これ以上の狼藉、いくら父上でも見逃す事はできません…!」

 

「…アリスの言った事を全て否定したいのなら否定すればいい、…もっとも、法廷で嘘を見抜く魔道具を前にしても、貴方が否定できるのならの話ではあるが…それ以前にアリスに手を出すのなら僕は容赦するつもりはない」

 

剣の持ち主はバルターさんとミツルギさんだった。唐突なことながら私は2人に助けられたようだ。バルターさんは懇願するようにアルダープを見つめ、ミツルギさんは冷たい視線でアルダープを睨みつけていた。

 

バルターさんは王都の現役騎士。剣の腕もかなりのものだとお見合いの時に聞いている。ミツルギさんに至っては魔剣の勇者と評されるソードマスター。どちらが相手でもただのおじさんでしかないアルダープが敵う道理はない。

 

「馬鹿なことを…!法廷だと?何故ワシがそんなところに行く必要がある!?ワシはただの被害者だと言っておるだろうが!!」

 

それでもまだアルダープは諦めない。どこまでも往生際の悪い。…とはいえアルダープが足掻くのも無理はないのだ。アルダープが罪を認めた瞬間、アルダープは国により処罰されるだろう。それも死刑になる可能性は充分にありえる。エリス教は国教である故に国そのものが悪魔に対する敵対視が強いのだ、使役しただけでも重罪になりそうだ。

 

だからアルダープが諦めることはまずない。絶対に諦める事はない。自分の地位を守る為、自分の身を守る為。全ては自分の為に、今ある財力と権力を行使して裁判など出るつもりもないだろう。考えたくもないのだけどそれで本気で罪から逃げられる、それがこの国の在り方。例え、身内がどれだけ訴えてもそれは変わりそうにない。

 

やはり私の選択は間違っていたのだろうか。もしかしたら恐怖することでアルダープが考えを改めてくれるかもしれない…、そんな淡い期待を抱いてしまったのだけどやはり私が甘かったのだろうか。

 

そう思った瞬間――。

 

 

 

 

「…なっ!?」

 

「っ!?」

 

それは突然やってきた。アルダープの足元に、アルダープ1人が収まる程度の黒い影、それはブラックホールのように渦を巻いてアルダープを飲み込もうとする。そしてそこから小さな黒い手が飛び出し、アルダープを引きづり込もうとする。さながらその光景は蟻地獄のように。

 

「…な、なんだ!?やめろ!!やめ……!?」

 

こちらが動く暇もなく、それは瞬時にアルダープを完全に飲み込んだ。そして何も無かったかのように黒い渦も消えてしまった。

 

「……えっ?」

 

「…父上…!父上っー!?!?

 

何も出来なかった、全く動けなかった。文字通り『あっ』という間の出来事だった。まさかまだ生きていたとは思わなかった、もといもしかしたら死んだものの復活したのかもしれない。

自身の心臓の鼓動とともにあらゆる可能性を熟考するも、既に何もかも終わってしまった後だと答えを出せば、私はただ呆然とするしかできなかった。

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

混沌とした状況ではあったけどそれは時間とともに落ち着きを見せる。それはバルターさんも同じだったようで剣を握りしめたまま立ち尽くしていたバルターさんは一呼吸するとともに私にその目線を向けた。

 

「…アリス様、お願いがあります。貴女が知っている父の事を全て…僕に教えてくれませんか?」

 

「…わかりました、貴方には聞く義務があると思いますし」

 

もはやお見合いどころの話でもないし私の真意を知ったバルターさんの私に対する在り方は、意外と何も変わらなかった。

心苦しさ、気まずさはあるものの、正直に話すしかない。

 

だから話した。

 

事の発端であるアイリスを含んだ襲撃の件、アルダープが裁判でふいに漏らした言葉、アルカンレティアでの出来事。

 

…もう一つの神器を使ってのことは流石に言えなかった。こればかりは確信はあるものの、間違いなくそうだと言える証拠がない。だから言わなかった、これはバルターさんの為であってアルダープの為ではない。

…きっと知らない方がいい事もあるのだろうから。

 

 

これからどうなるのか、それはバルターさんやダクネスなどのアクセルの街の貴族が決めることだろう。どうなるかは分からないがアルダープが領主を続けるよりはまともなことになりそうでもある。少なくとも私達のようなただの冒険者が首を突っ込むべき話ではないことだけは確かだ。

 

「…今回は、皆さんに多大な迷惑をおかけして…本当に申し訳ありませんでした」

 

全てを聞いたバルターさんは深々と頭を下げ、私達に謝罪した。もはやお見合いどころの話でもなくなったし、自然となくなったようになっているのだから私としては有難かった。…と、思ったのだけど。

 

「…特にアリス様には、本当に申し訳なく思っています」

 

「あの、ですね、バルターさん…」

 

「…はい?」

 

私は一歩前に出て、目を細めた。どこか思いやるような視線を向けられたと思う。バルターさんは本当に何も悪くない、私が相手になることだけはできないけど…せめて道を示せれば。そう思えた。

 

「…本当に大切に想う人は…意外と身近にいるものだと、私は思いますよ?♪」

 

「…っ!」

 

ふとバルターさんと隣に佇むメイドさんとの目が合い、お互いは顔を赤くして目線を逸らした。どうやらお互いに脈アリだったようだと私は内心笑っていた。これからは父を失ったバルターさんを頑張って支えていてほしい、そんな視線をメイドさんに向ければ、それに気が付いたメイドさんは嬉しそうに私に向かって頭を下げていた。

 

 

うーん、恋の手助けは気持ちがいい、自身の恋愛関連はうといしどうでもいいけど他人の恋愛話は大好物である。私は満足気にバルターさんに別れを告げると、まだ真夜中ながら皆に帰宅しようと進言しようとしていた、もはやここに留まる必要はないのだから。

 

ないの、だけど。

 

「へぇ、意外と身近にいる、ですか…」

 

「ふふっ、そうだな、その通りだと思うぞ」

 

「……」

 

私が皆に目を向けるとめぐみんはニヤニヤしていてダクネスは仄かに笑っていて、ゆんゆんに至っては顔を赤くして無言で俯いてしまっている。そんな中ふとミツルギさんが声をあげた。

 

「帰るのは構わない、だけどアリス、アクア様とクリスはどこにいるんだ?」

 

「あ、そういえば…」

 

結局悪魔対策として私の傍にいたはずなのにアクア様は今もここにいない。何処へ行ってしまったのだろうか。

 

「おーい!!」

 

タイミング良く声がかかってきた、この声はクリスだった。さっきのような変化はもう見られない、いつものクリスだと思えば私としても安堵する。そしてもう一人。アクア様もいるのだけど…あれ?

 

…なんか凄く気まずそうに見えるのだけどどうしたのだろう?

 

私がそんな疑問を抱きながらも、クリスとアクア様は扉を開けた先の通路からこちらへと向かってきていた。

 

「クリス、今まで何処へ行っていたのですか?」

 

「ごめんごめん、まずは謝らせてよ。私って昔から悪魔やアンデッドを見るとあーなっちゃうんだ、ホントにごめんね?そしていなくなってた理由は…」

 

「…あっ」

 

クリスは私とカズマ君にだけ見えるようにそっと懐からネックレスとボールのようなものを見せつけた。なるほど、本来のクリスの目的は神器の回収だ。おそらくその2つこそがそれなのだろう。ならば完全に目的は達成したとなる。

 

「…ところで…何故アクア様はそんなに気まずそうなのですか?」

 

最後に残ったのはその疑問だ。未だにこちらへと目を合わせようとはしない。クリスはその疑問に対して苦笑気味になり、そっと視線だけをアクア様に寄せた。そして私とカズマ君の傍で小声で話し始めた。

 

「…そうだね…君達だけに分かるように言うとね…そもそも神器って、異世界から来た人間が女神様から賜った物ってエリス様から言われてるんだけど…

 

「「…っ!?」」

 

それだけ聞いて理解してしまった。つまり元々この世界の神器の出処は全て…。

 

「結局元凶は全部お前じゃねーか駄女神!!ふざけんな!!!」

 

「待って!違うのよ!!違うのよぉぉ!?」

 

確かにアクア様が直接悪いとは言えないかもしれない。神器であれ結局使い手次第なところもあるし。それでも…、流石の私も憤りを抑えるのが難しかったかもしれない。そう思いながらも、これで終わったと思えば、大きな溜息が出るだけに留まっていた――。

 

 

 






元々神器の出処は全てアクアによるもの。つまり神器の回収は本来アクアの尻拭いでしかないとクリス(エリス)の主張に形勢逆転、アクアは何も返せず気まずい想いをする羽目に。


強引な気もしますがようやくアルダープとマクスウェル編は終了。長かった…。
次回は新章、いよいよあの場所かなぁ?
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