内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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幕間。大きな話になると中々思い付いた話が書けないのが困りもの。番外編とか挿入しても良いんですけどね。これまで書いた話の間に書きたい話は割とあったりします。今回の話題になったダストの話とか。




episode 106 転生者三人集まれば

 

――あの事件から一週間が経過した。

 

今回は特に色々と慌ただしく動いた気がする。あの悪魔はもう出てこないのかとバニルに問い詰めたり、アルダープがいなくなった後、領主は誰がやることになるのかと気になったり。

 

まず今回のアルダープの件はダクネスのお父さんに伝えられ、あくまで形式上はアルダープが悪魔に襲われ失踪したとなった。散々話し合われてその形式が一番落ち着くものとなったんだそうな。そうしなければ悪魔の使役などというものだけでも重罪だ、家族であるバルターさんにまで累の及ぶことになる可能性があった。

領主は一時的にダクネスのお父さんが引き継ぐことになり、バルターさんはいずれ父親であるアルダープの跡を継ぎ領主となる為に勉強をするのだという。簡単に言うとこのような形に落ち着いたが私から見ればダクネスのお父さんが領主でも、バルターさんが跡を継ごうと、どちらにせよ良い事だと思える。ダクネスのお父さんとは面識はないものの、ダクネスの人柄と話を聞く限り良識的な人なのだろうと思われる。ならば問題はないだろう。

 

バニルに問い詰める為にウィズ魔法店まで赴き話を聞けば今後マクスウェルがこちらの世界に来る事はないだろうということ。本来マクスウェルはずっと魔界にいたのをアルダープが神器を使い呼び起こしたことが発端、言ってしまえばマクスウェルも被害者なのだ。納得はできないけど。

 

そしてアルダープが何を思い、マクスウェルを使役してここまでの事を仕出かしたのか、その全貌を知る事ができた。

 

アルダープはあの時王都で出逢った頃から私に気があったらしい、とてもそうは見えなかったけど。

そして裁判でも出会い、その後に私を捕獲しようとした。悪魔を使って捕まえるつもりだったが私にはアクア様の加護があった為にそれができなかった。よって野盗のような連中を雇う事で強行しようとした、用意周到に沈黙の魔道具まで用意して。

それでも捕らえることができずにいたので最終手段としてバルターさんを使って身内にしてしまおうとした。元々バルターさんはダクネスを引き込む為だけに引き取った駒でしかなかったのだけどそこは後に私が想像したように第一夫人、第二夫人として迎えるつもりだったのだろう。

そこで疑問が生じるのだがダクネスは何故これまで悪魔に狙われる事なく無事だったのだろうか、と思うも、その疑問もバニルが答えてくれた。

ダクネスもまた、遠距離からの悪魔の力程度からなら身を守れる加護を持っているらしい、流石に以前のバニルのように本体が直接操るほどになればそうはならないらしいがそれでも抵抗力は生まれる。あの時ダクネスが操られながらも意識を取り戻したのはその加護の原因が大きいとのこと。そしてその加護はアクア様のものではないとまで。

そうなれば浮かぶのはエリス教徒であるダクネスだ、きっとその加護はエリス様のものなのだろう。一個人に加護を与えるのかという疑問は残るけど流石にバニルでもそこまでは分からないし知りたくもないらしい。悪魔であるバニルの前で宿敵である女神の話を続けるのも難しいのでその辺の話はそこで終わってしまった。

 

そして裁判でマクスウェルが動かなかった理由も聞かされた。バニルが直接気を逸らすことで抑えていたらしい。これも友人であるウィズさんが関与した為のバニルなりの手助けだったんだとか。意外と律儀である。

 

とまぁ、色々あった悪魔騒動はなんだかんだで完全に終わりを告げることとなった。しばらくはゆっくり過ごしたいものである、自分でも忘れかけていたけど本来私はのんびりが好きなのだ、もっとまったりしたいのだ。羽を伸ばせる時には存分に伸ばしたいのだ。

 

そういえば最近になってようやくカズマ君のパーティが王都デビューしました。

どうなる事かと思いきやクエストを選ぶ事でなんとかなっているのだとか。終わる度にカズマ君がズタボロの疲労しまくりで帰ってくるけど。

確かにかなりの数を討伐するクエストはきついがボスのような敵の数が少ないものならめぐみんの爆裂魔法がある。カズマ君の策略でうまくハマればそれだけでクリアが可能だ。理論上では。

 

そう、理論上ではそれで可能なのだけど問題はめぐみんにあったりする。

めぐみんの性格上カズマ君の指示を待たずに爆裂魔法を撃っちゃったりそれにより爆発で別のモンスターを呼び出すなど新たなトラブルが発生することもしばしばあるのだとか。相変わらずの脳内爆裂娘である。

 

ダクネスはダクネスで王都のクエストを心待ちにしていたらしい。何分アクセルとは比べ物にならない難易度だ。勿論強敵と戦いたい…もとい攻撃を喰らいたいので突貫する。猪突猛進する。猛進した上でボコボコにされて愉悦に浸る。

なんというイノシシプリンセス(ドM)だろうか。

 

アクア様はアクア様で実力は充分なのだけど盛大にやらかす。何をやらかすかはその時次第なのだけど最近聞いた話では炎属性のモンスター討伐で水が弱点だからと調子に乗ってセイクリッド・クリエイトウォーターを使い周囲を洪水の被害に合わせる。運悪く近場に村があって水没してしまい弁償するハメになってハンスの討伐報酬はほとんど残っていないのだとか。

 

「…提案がある…!」

 

今はカズマ君の屋敷。そこにはミツルギさんも加わりリビングに集まっていた。というよりカズマ君がミツルギさんを呼んだ。

 

「…提案、とは?」

 

「1回でいい、俺達のパーティとアリスのパーティでシャッフルしてクエストに行ってみないか?」

 

「ふぇ?」

 

予想外の提案に変な声が出てしまった。そもそもどうしてそんな発想に至ったのだろうか。思わず首を傾げてしまう。

 

「…俺達は王都でのクエストははっきり言うと初心者だ、だから長く王都で活躍するアリス達と混ざれば自然に学べると思うんだ、頼む!1回でいいから!」

 

パーティの入れ替え…、そういえば私がまだテイラーさんのパーティにいた頃に1度だけカズマ君とダストが入れ替わってやったことがあったなぁ、とふと思い出した。あの時にカズマ君の凄さに気付いたとも言える、そしてダストの疲労具合からカズマ君の苦労面も。

とりあえず私1人では決められないので私の目線は自然とゆんゆんやミツルギさんに向けられた。

 

「…私はどちらでも構いませんけど…、どうします?」

 

「…まぁ僕も一度くらいなら構わないが…」

 

「うん、私も大丈夫だけど…」

 

とりあえず2人とも異論はないらしい。まぁ考えてみれば面白そうだしやってみてもいいのではないか、とも思えてきていたのが本音だったりする。なんだかんだ他人ではない、一緒に住んでいるしハンスに至ってはここにいる皆とウィズさんとで討伐したりもしたし、準パーティメンバーのようなものだ。

 

同意が得られたことでカズマ君はアルカンレティアで見せたようなくじ引きを取り出した。実に用意周到である。

 

「…ただこちらは構わないのですがカズマ君以外のメンバーの了承は得ているのでしょうか?」

 

「まぁ…私も異論はない。ちゃんと私を壁として使ってくれるのならな」

 

「私も爆裂魔法さえ撃てれば問題はありません」

 

「別にどんな組み合わせになっても私達なら問題なくクエスト達成出来るでしょうし、私も構わないわよ」

 

「…まぁ念の為にアクアとアリスは別々のパーティの方がいいかもしれないけどな。その辺は実際クジを引いて考えようぜ」

 

私とアクア様はアークプリーストなので万が一があれば宜しくない。だからその話も理解はできた。全員納得したところでクジを引く。割り箸のような棒の先には、赤と青が塗られていて赤が4本、青が3本はいっているらしい。

 

 

 

そうして分けられたのは…。

 

 

 

 

「…これって…」

 

「カズマとゆんゆんが入れ替わっただけだな…」

 

結果、ゆんゆん、めぐみん、ダクネス、アクア様が赤、私とミツルギさん、カズマ君が青だった。私としては誰が一緒でもいいのだけどゆんゆんが心配すぎる。以前のダストのようにならなければいいのだけど。

 

「しかしこちらはカズマがいないとなるとリーダーが不在になるな、どうするんだ?」

 

「それなら私がリーダーを受け持ちましょう。何、カズマにできて私にできない道理はありません!」

 

「……だ、大丈夫かな…?」

 

「大丈夫に決まっているでしょう!それともゆんゆん、まさか貴女がリーダーをやるとでも?」

 

「…それは勘弁してほしいかも…」

 

「まぁなんとでもなるわよ、この私がいるのよ?大船に乗ったつもりでいなさいよ!」

 

ドンと胸を張るアクア様、不安そうなゆんゆん、思惑はそれぞれだけどまぁ何とでもなる気もする。

 

「こちらはバランスがいいですね、前衛はミツルギさん、中衛にカズマ君、後衛兼支援に私が行けばいいですし」

 

「俺……産まれて初めてまともにクエストを終わらせることができるかもしれないな…」

 

「大袈裟なことを言う男だな君は」

 

「そう思うなら入れ替わってみろよゆんゆんと、絶対後悔するから」

 

「あ、あはは…」

 

ミツルギさんはカズマ君達とまともに組んだのはハンスとの戦いのみなので知らないのは仕方ない。ハンスの時は誰もが大きなボロを出さなかったのもあるし。私もアクア様以外は組んだ事はあるけど一人だけでやばいのにあの3人が集まってのリーダーなどやれる気がしない。失礼な言い方になるがソロの方が気が楽かもしれない。口に出しては言えないけど。私に自殺願望は今はない。

 

こうして王都に赴き、それぞれのパーティでクエストを受けることとなった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

―王都より少し離れた平原―

 

あまりにあっさり終わったので割愛する。王都付近の村の近くに一撃熊の群れが住み着いたので討伐してほしいとの依頼だったがミツルギさんとカズマ君が引き付けて私がバーストするだけの簡単なお仕事だった。多分ゆんゆんがいればとっくに王都に帰ってると思われる。

 

「かなり時間が余りましたね…、そういえばミツルギさん、以前言ってた日本の服が売ってるお店に連れて行ってもらえません?♪」

 

「そうだな…ゆんゆん達がまだ戻っていなければそれもいいかもしれないな」

 

「……」

 

「……カズマ君も良ければ一緒に……カズマ君?」

 

「どうした佐藤和真?やけに静かじゃないか」

 

今は呑気に雑談に興じた帰り道。私とミツルギさんが話している中カズマ君は静かに項垂れていた。どうしたのだろう?

 

「……お前ら…」

 

「「?」」

 

「お前らふざけんなよ!?なんだよあれ!?一撃熊をまるでゴブリンでも相手するようにあっさり倒しやがって!!羨ましいチートばっか使いやがって!!お前らは少しでもいいから俺の苦労を知れ!!」

 

「えぇ……」

 

涙目で怒鳴りつけてくるカズマ君。言ってしまえば完全な逆恨みである。

 

「そうは言われましても…アクア様本人をチートとして望んだのはカズマ君なのですよね…?」

 

「ぐっ…」

 

「自業自得だ佐藤和真、それにアクア様とともに居れるのならそれほど羨ましいこともないじゃないか、可能ならば交換したいくらいだ」

 

「……お前…、それが出来ないのが分かってるから言ってるだろ?」

 

「……そ、そんなことは無いぞ…」

 

「俺の目を見てもう一度言ってみろ」

 

「ま、まぁまぁ…」

 

言うまでもなくミツルギさんの持つ魔剣グラムはミツルギさん以外が使っても少し強い程度の剣にしかならない、私の杖も同様で他の人が杖を使ったとしても私の魔法が使える訳でもないし、魔晶石を付けて魔法を使っても属性が付与される訳でもない。

 

「今ふと思いましたが私達って全員転生者ですね」

 

「…言われてみればそうだな、同じ日本出身の…」

 

「あぁ、チートの話やらが気兼ねなく出来ることに違和感があったけど確かにそうだな」

 

まさにカズマ君の言った通りである。私としても話しながら違和感を感じていた。何故ならチート云々の話など気軽に出来る訳がないのだから。そう言ってしまえばカズマ君は何やらうずうずしてミツルギさんに顔を向けた。

 

「…どうした佐藤和真…?」

 

「……やられたらやり返す」

 

「………倍返しだ…?」

 

その瞬間カズマ君はミツルギさんに向かいハイタッチを決める。やけに満足気だ。気持ちは分かるけど。そんなカズマ君は続いて私に顔を向けた。

 

「……その点トッピって凄いよな?」

 

「……そ、そうですね、最後までチョコたっぷりですからね」

 

続いて私とハイタッチ。少し慣れないノリで私は戸惑ったけどなんかめちゃくちゃ嬉しそうだ。やっぱり気持ちはよく分かるけど。なんだろうこの謎の達成感は。

 

「ふっ…ははっ…」

 

「…なんなんですかその謎のノリは…ふふっ」

 

「いいんだよ、言ってみたかっただけだし、それに…笑ってるってことは、なんとなく俺の気持ちもわかるだろ?」

 

「…まぁ、確かにな…、まだそんなに経っていないはずなんだが…やけに懐かしく感じたよ」

 

「ふふっ、そうですね。悪くないと思いますよ?」

 

こんな会話私達以外が聞いたところで首を傾げられるだけだろう。だけどこうして言ってみれば、なんだか懐かしさもあって心が穏やかになったような気がした。

そんなこんなで歩きながら日本の話題で盛り上がり、雑談すること一時間あまり、ようやく王都が見えてきたところでカズマ君が何かに気が付いた。

 

「……悪い、これの存在を忘れてた」

 

カズマ君が気まずそうに見せたのは王室からもらったテレポートの魔晶石だった。見せられて初めて思い出した。テレポート持ちのゆんゆんがあちらに行ったので魔晶石はカズマ君が持っていたことに。

確かにそれを使えば今頃はとっくに王都にたどり着いているだろう、だけど私もミツルギさんも、カズマ君を責めることなく穏やかに笑っていた。

 

「問題ありませんよ、ストレスフリーな有意義な時間を過ごせましたし」

 

「そうだな、僕としてもこんなに笑ったのは久しぶりだったよ、礼を言わせてくれ、佐藤和真」

 

「いや礼とかそーいうのいいから、ホントお前変わったよな!?」

 

この二人の仲が良いのは個人的には嬉しくもある。昔はアクア様絡みで最悪な出会いをしたらしいし繋ぎ止めた私としては尚更だ。やったねみんな!カズ×ミツきてるよ!…いや私にそんな趣味はないけど。腐女子ではないし。

 

そんなこんなで無事に王都まで帰り着き、私達は冒険者ギルドでクエスト報告を終わらせた。……のだけど。

 

「…めぐみん達…いませんね…」

 

「受けたクエストはそんなに難しいものではなかったはずだ、ゆんゆん一人でも達成できなくはないはずなんだが…」

 

「あめーよ、お前ら甘すぎ。マイナス要素しかない奴らが三人もいるんだぞ、プラス要因が一人いる程度でどうにかできるわけないだろ」

 

カズマ君のぼやきに私とミツルギさんはまさかそんなはずはと表情で表現する。もしかしたら既に終わって喫茶店にでもいるのではと探すもやっぱりいない。探しに行こうとも思ったがいくらなんでもそれは過保護すぎる気がするし間違いなくめぐみん辺りがいい顔をしない。とはいえそのクエストにトラブルが起きたなら話は変わってくる。時間は夕刻近いのもあり、それが心配に拍車をかけていた。

 

「…やっぱり探しに行きたいです…、もしあの合成モンスターのようなのに出逢ったとなれば…それも帰り際とかだったらめぐみんは爆裂魔法を撃ち終わって魔力切れでしょうし…」

 

考えれば考えるほど心配からマイナス思考になって行く。私の心配に賛同してくれたのはミツルギさんだった。

 

「…確かに…その可能性は無くはないな…」

 

「おいおいミッツさんまでどうしたんだよ?大体なんだよその合成モンスターって」

 

「少し前に王都付近に数体の合成モンスターが出現したんです、それは魔王軍の幹部シルビアの放ったものらしくて…」

 

「…それに出逢った僕達は無事に討伐したものの、他のパーティは壊滅してしまったらしい…、10名以上の王都の冒険者が…亡くなったそうだ」

 

「…っ!?」

 

カズマ君の顔が青ざめる。王都の冒険者と聞けばアクセルの冒険者とか比べようがない腕利きの者が多い。それが全滅したのだから恐れるのは当然の事だ。

 

「…ったく、そういう事は早く言えよな!確か俺達とは逆方向に向かったはずだな……と」

 

「…え?」

 

「……ふっ、どうやら、僕達の杞憂だったようだね」

 

いざ冒険者ギルドを出ようとすれば入口には4人が揃って入ってきた。これには安堵を通り越して力が抜けてしまった。

 

ただダクネスはボロボロの状態でめぐみんを背負っていて、アクア様はゆんゆんを背負っている。めぐみんはともかく何故ゆんゆんが背負われているのだろう。

 

…その結果を聞けばゆんゆんが頑張りすぎて魔力切れになり、テレポートも使えなくなり歩いて帰ってきたんだそうな。ボロボロなダクネスは見れば装備だけでそれで何があったのか察しもついた。大体いつも通りだったのだろう。

 

この後私のマナリチャージフィールドで復帰したゆんゆんが二度とパーティ交換はやらないと泣いて懇願したのは言うまでもなかった――。

 

 




カズ×ミツ……一体誰得なんだ…
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