幕間その2。
数日が経った――。
今日はミツルギさんもゆんゆんも用事があるとかで暇な一日になりそうだ。最近ゆんゆんに起こされると寝顔が見られてしまう罰ゲームが起こると発覚してからはできる限り自力で起きるようにしている。今日も罰ゲームを受けることはなさそうだ、ゆんゆんは残念そうにするけど罪悪感はない。むしろノックもせず部屋に入るゆんゆんに罪悪感を持って欲しい、割と切実に。いくら親友と言っても限度はあるのだ、嫌ではないから怒りはしないけど私が恥ずかしい。
さて、カズマ君達も今日は王都へクエストを受けに行くらしいから誰かと一緒に居ることもできない。昨日私も同行しようか尋ねたら断られてしまったし。カズマ君あたりは喜んで迎えてくれると思ってたのにまさかの拒否である、割と寂しかった。
ただ暇というのは困りもの。お仕事してると休みたいと思うもののいざ休むと特にやる事がない虚無感がある。そんな感じ。暇つぶしにウィズさんのところに顔を出しに行こうかな、あるいは冒険者ギルドに行ってテイラーさん達のパーティと久々にクエストに行くのもありかもしれない。
とりあえず私は髪を整え着替えを済ませ、朝食に降りることにした。
……
「おはようございます、ゆんゆん」
「……っ!?…お、おはようアリス、き、今日もはやいのね!」
「…どうしました?」
「な、なんでもないよ!朝ごはん食べるなら顔を洗ってきてね!」
「…あ、はい」
1階に降りてキッチンに向かうなりゆんゆんの姿が見えたので声をかけたら謎の挙動不審。これには訳がわからない。まぁ割といつもの事のような気もするけど。…とりあえず朝ご飯のトーストをパクつく。この世界に来てからお米食べなくなったなぁとか思いつつ元々パン党だったとも思う。ようは特に意味の無い脳内会話。
「そういえばゆんゆんの今日の用事ってなんなのです?」
「えっ……えっとその…えっと…」
別に興味がある訳ではないのだけど傍にゆんゆんがいるのだからと何気なく聞いてみたらまたも挙動不審。こうも落ち着きがないと気にならない方がおかしい。
「…というより先程から様子がおかしいですよ?何かありましたか?」
「うぅ……」
目線を合わせようとしないゆんゆんには若干心配になる。本当に何かあったのなら気兼ねなく話して欲しいものだ。
「…ゆんゆん、あの時私に言いましたよね?私とはどんな悩みでも気軽に話し合える関係でいたいと、…あれは嘘だったのですか?」
溜息がてらに告げるも、ゆんゆんの様子は変わらない。というより余計に落ち着きがなくなっているように見える始末。
「…そーいうのじゃなくて…ごめん!本当になんでもないから!!」
「……ゆんゆん!?」
言うだけ言うとゆんゆんはキッチンから出て行ってしまった。もしかしたら知らない内に私が何かゆんゆんに悪い事をしてしまったのだろうか。それならすぐにでもどうにかしたいのだけど現状思い当たる節はない。
これでは追いかけて無理に問い詰めても無意味と思えた。とりあえず時間をおいてまた聞いてみよう。少なくとも私が嫌われているとかではないと思う。ゆんゆんの様子は怒っているとか嫌っているよりは恥ずかしがっている感じだったし。そもそもそんな状態ならわざわざ私の朝ご飯を用意してくれるはずもないし。
冷静に分析したところで紅茶を飲み終わる。…とりあえず冒険者ギルドにでも行ってみようかな、と、そのまま屋敷を後にした。
―冒険者ギルド―
いつもは王都の冒険者ギルドに行くようになったので何気に冒険者ギルドに入るのは久しぶり…という訳では無い。ここの酒場のサンドイッチとミルクティーはお気に入りなのでアクセルにいるとたまに昼食の為にここに来ることは多い。以前は新地開拓に失敗したし無理に新しい味を探すよりも口に慣れたお馴染みの味が無難ではある。お値段もリーズナブルだし私以外にも食事の為だけにこの場所に来る人は割といたりする。
「おう、嬢ちゃん!調子はどうだ?」
「ぼちぼちですかね、…また昼前からお酒ですか?」
「はっはっは、当たり前だろう?ここは酒場だぞ、酒を飲まないでどうする?」
ギルドに入るなり話しかけてきたのは名前も知らないおじさん。筋肉質な身体には肩当とサスペンダー、顔を見ればモヒカンにヒゲの強面なので初めて声をかけられた時は恐怖しかなかったのだけど話してみたら見た目と違って良い人だった。なお凄い熟練の冒険者の風格を見せるのだが本人はただの機織り職人らしく冒険者ですらないらしい。今では気軽に挨拶するくらいの関係にはなってる。
「ふふっ、知りませんよ、奥さんにバレても」
「おっとそいつはいけねぇな、まぁほどほどにしておくか」
そんな軽口を言い合ってから改めてギルド内を見渡す。今回は別に食事に来た訳ではない。食事ならさっき食べたばかりだし。…見つけた。
奥のテーブルに私の見知る三人が食事をしていたので近付いてみる。それに気付いたのか、手を振って声をかけてくれた。
「アリスー!久しぶりー!」
声をかけてくれたのは私の元パーティメンバーでもあるリーン。横に座っている面子も気が付いたのか笑顔を見せてくれた。私もそれに釣られるように笑顔になって小さく手を振り返した。
「久しぶりだなアリス、また魔王軍の幹部を倒したって聞いたぞ?おまけにあの魔剣の勇者とパーティを組んだともな」
「なんかどんどん出世しちゃって、アリスが遠くに感じるわ…」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ、私は何も変わっていませんよ」
「で、今日は一人なのか?」
残りの2人はテイラーさんとキース。そんなに時間が経った訳では無いから当たり前だけど代わり映えもなくこちらとしても安心である。
「はい、今日はミツルギさんもゆんゆんも用事があるようで……って、ダストはどうしたのです?」
久しぶりにダストの顔も見たかったのだけどいないようだ。まぁアクセルに住んでいるのだから全く会えないこともないのだろうけど。
「あいつはまぁ…安定のあの場所だな」
「……またですか…」
安定の場所。これで分かってしまうのがなんとも言えない。ちなみにこういう表現をする理由は酒場のような公で言えるような場所ではないからだ。場所はおそらく留置所。また食い逃げか何か仕出かしたのだろう。出逢った頃に聞いた時はかなり慌てたのだけど私がパーティにいる間もかなり頻繁にお世話になっていたので慣れてしまった。私やリーンが迎えに行くパターンまでお決まりだったし。
「皆さんはこれからクエストですか?もし良ければ私も一緒に行きたいのですが…?」
単純に暇潰ししたいとは言える訳もなく、だけど久しぶりにこのパーティで一緒にクエストへ行ってみたかったという気持ちが大きくあった。だからこその提案なのだけど、私の提案には三人揃って苦笑いを浮べていた。
「…一緒にって…アリスって今のレベルいくつなの…?」
「…えっと…47ですけど…」
「47!?」
とうとう私のレベルはミツルギさんに並ぶ47になってしまっていた。というのもあの時のマクスウェルを攻撃した際、やはり弱っていたようであのランサーがトドメになってしまっていたようだ。実際に冒険者カードの討伐欄にもマクスウェルの名前があったことから間違いないだろう。もっともその後バニルのように復活してはいたけど。今頃はアルダープと仲良くやっているのだろうかと思えば少し気持ち悪くもある、終わったことなのだから忘れよう、うん。
「……本当に驚いたな…」
「アリス…以前のレベルでも厳しかったのに流石に47だとアクセルで受けられるクエストはほぼないと思うわよ…?」
「…ですよね…な、なんなら報酬も結構ですので着いて行ってお手伝いだけでも…」
「…久しぶりに出逢って一緒に行きたい気持ちはわかるし有難くもあるが…流石にそれはできない、こちらとしても申し訳ないしクエストは遊びではないんだ、軽率な気持ちで着いてきてもらっても困る。何より高レベルのアリスがそんなことを言えば人によっては嫌味に聞こえる可能性すらある、あまり不用意にそんな事を言うものではない」
「す、すみません…私はそんなつもりは…」
「あぁ、わかっているさ、だから気持ちだけ受け取っておこう」
叱咤からの穏やかな優しい顔つきになるテイラーさんには本当に頭が上がらない。本当に素晴らしいリーダーだと未だに思う。大人だし今や形式には私も1パーティのリーダーでもあるのでこの落ち着いた姿勢は見習いたいと思う。
と、なればこれは困った。余計にやる事がない。これ以上冒険者ギルドにいても仕方ないと、三人と軽く雑談をしてから私は冒険者ギルドを出ることにした――。
―ウィズ魔法店―
「へいらっしゃい!!おおっとこれはお得意様ではないか、よくぞいらっしゃった!!今回はどのようなポンコツ魔導具を買っていってもらえるのかな?」
「なんでポンコツ魔導具を買うことが確定してるのですか!?買いませんよ!?」
お店の扉を開いたらいつも通りカウベルの音が響くと思いきやそれをかき消してのバニルのこの接客である、思わずつっこんでしまった。
「あ、あのー…一応私としては厳選した品揃えのつもりですので…あまりポンコツと言われるのはちょっと…」
「あ、ご、ごめんなさい、そんなつもりでは…」
控えめな口調でウィズさんがお店のカウンターからそう言えば、反射的に謝ってしまう。というよりさっきから謝ってばかりだね私。
「フハハハッ、何を言っている?ポンコツ店主が厳選した品揃えなのだからポンコツしかないに決まっておるだろうが……ちっとも面白くないわ!!下らんポンコツばかり仕入れおって!!」
「えぇ!?馬鹿にされた上に怒られてるんですか私!?そこで怒るのは私ではないんですか!?」
「知ったことか!!」
やれやれ、何か始まってしまった。とはいえ何となく見に来ただけなのだけどどうしたものか。まさか冷やかしに来たとは言えないし。まぁ適当にマナポーション辺りを買えば冷やかしにはならないだろう。
「ふん、まぁ良い。ではではお得意様にオススメしたい魔導具がこちらの腕輪だ」
「いや買わないと言っているのですが……まぁ一応聞くだけ聞きますけど」
バニルが私に見せ付けるのは古ぼけた装飾の腕輪だ。魔法使いの人がつけてても違和感のないような見た目ではある。魔力を上げるとかなら純粋に欲しいかもしれないし実際にこのお店の品物は本当にポンコツな商品かまともだけど高すぎて駆け出し冒険者では手も足も出ないような品の2択だ。マナポーションですら3万エリスもするので駆け出し冒険者が安易に買えるものではない、私は割とお世話になってたけど。だからとりあえず単純に後者を期待してみよう。
「えっとそちらはですね…胸を大きくすることができる魔導具です」
「…っ!?」
「ふむ、予想通りの反応であるな」
何その夢のような魔導具、めちゃくちゃ欲しいんですけど。思わず即買いますと言ってしまうところだった、危ない危ない。話はちゃんと最後まで聞かなければならない。ちなみにデメリットがないのなら1億エリス出しても惜しくはない。
「…デメリットは…?」
「脂肪をひたすら引き寄せる魔導具なのでな、胸どころか腹も顔も二の腕も大きくなる、これで800万エリスだ、買うか?」
「絶対買いません!!それただ太ってるだけではないですか!?」
「フハハハッ、中々の悪感情、ご馳走様である♪まぁそうとも言う、ようは捉え方次第ではあるし胸も大きくはなるのだから嘘は言ってはおらん」
「……」
断言できる、絶対この悪魔は最初から悪感情目当てで売りつけようとしたと。とりあえず適当にマナポーションを買ってから今日は家に帰ろう。そう思えば諦めたようにポーション棚に向かい、マナポーションを3本ほど手に取り、カウンターに持っていった。
「おや?もう帰るのかお得意様よ。ならば悪い事は言わん、後2時間くらい此処に居ることを勧めるぞ?」
ウィズさんがポーション瓶が割れないように丁寧に梱包してくれていると横でバニルから謎の忠告がはいる。何か見通したのだろうか?と思うと浮かんだのは朝のゆんゆんの顔だった。そういえば結局朝のゆんゆんはどうしたのだろうか。 もしかしてバニルの言う事と何か関係があるのだろうか。
「ふふっ、アリスさんは私にとってもお友達ですから、どうかゆっくりして行ってください、今お茶をいれてきますね♪」
「…まぁ帰るには少し早いと思ってましたし…それは構わないのですが…」
今の時刻は午後の三時半。昼食は冒険者ギルドを出た後に屋台で適当に買って食べたのでお腹も空いてはいない。
「…ですが今帰ったらまずくて、何故2時間後なら大丈夫なのです?」
「それは2時間後になって家に帰ればわかる、それまでは別の魔導具の紹介をしてやろう」
「いや買いませんからね!?」
――そんなこんなで2時間半。たっぷりとポンコツ魔導具の説明を受けてツッコミに疲れた私はフラフラしながら帰路についていた。まぁ時間潰しにはなったと思う、有意義な休日かと聞かれれば首を傾げる結果だったかもしれないけど…主にバニルのせいで。まぁ冒険者ギルドでは久しぶりにテイラーさんやリーン、キースとも出逢えたし悪くはなかったかなと思える。
屋敷はアクセルの街の離れにあるので割と歩く。これだけで運動にはなる。夕闇が夜へと変わるこの時間、民家の灯りが窓から見えてきて、それはとても綺麗で、イルミネーションのように見えてしまう。日本の家ほど明るくはないけれど、どこか暖かみを感じるこの光が、私は好きだった。
その光は私の住む屋敷も例外ではない。どうやらみんな帰ってきているようだ。ゆんゆんは少しは落ち着けただろうかと思いながらも、私は屋敷の扉を開けた。
パーン!パーン!
「…っ!?」
扉を開けるなり聞こえてきたのはあまり馴染みのないクラッカーの音。予想外のそれに私は思わず目をパチクリさせることしかできなかった。
『アリス、誕生日おめでとう!!』
複数の声が確かにそう言ったのを耳で確認すれば、私は再び驚いていた。声の主達に目を向ければ、みんな私に向かって拍手してくれている。
カズマ君、アクア様、めぐみん、ダクネス、クリス、ミツルギさん、ゆんゆん……、それにテイラーさん、キース、ダストにリーンまで!?
「あ、あの…これは一体…」
確かに言われてみれば今日は私の誕生日ではあるのだけどそれを誰かに言った覚えはない、というより私が忘れていたのだから言えるわけも無い。
「アリスが私の誕生日をしてくれた時に私が聞いたでしょ?そして言ったよね?アリスの誕生日の時には絶対お祝いするねって」
「私達なんて聞いたのは昨日だったのよ?おかげで準備するのが大変だったんだから」
「ゆんゆん…リーン…そ、その…あ、ありがとうございます…」
やばい。なんていうかやばい。経験したことのない感情が静かに私を襲っていた。これはどう受け取ったらいいんだろう?泣きたい気持ちが強いかもしれない、ガチ泣きしていたゆんゆんの気持ちが今は凄くよくわかる。だけど笑いたい気持ちもあって、なんだかどんな顔をしたらいいのか全然わからなくて、私はただ困惑していた。なんだか幸せな困惑を。
「ほらほら、主役は来ないと始まらないだろ?アリスはこっちに座って」
「え、あ、はい…」
戸惑いしかない状態の私をカズマ君がエスコートしてくれる。そして席につけばテーブルの上には大きなケーキや料理の数々。未だに気が動転している。
「ようアリス、久しぶりだな。このダスト様がお祝いに駆けつけてやったぜ」
「…ダスト…その…留置所にいたのでは…?」
「あぁ、ついさっき戻ってきた!やっぱり俺がいないとパーティは盛り上がらないからな!」
「お帰りはあちらになります」
「ちょ!?!?」
「ふふっ、冗談ですよ、ありがとうございます」
てっきり留置所にいたのは嘘でパーティの準備を手伝ってたとか思っていたのだけどやはりダストはダストだった。まぁこうして駆けつけてくれただけでも素直に嬉しい気持ちは強い。
「…って、テイラーさん達はクエストに行ったのでは?」
「あぁ、その通りだ。うちの大事な元パーティメンバーの誕生日を祝うというクエストだ。あの後ここに来てみんなで飾り付けや料理を作るのを手伝っていたんだ」
「…うぅ…そうだったのですか…ありがとうございます…」
これはバニルの言う通りにして正解だったと思える。もしあのままバニルの忠告を無視して帰宅していたらパーティの準備をするみんなと鉢合わせて気まずいことになっていた可能性もあるのだから。
「ウィズさんに引き止められたんじゃないかい?あれは僕達が頼んでおいたからね。アリスなら多分あそこにも寄るだろうってね」
「ふふん、アリスの行動パターンは全てお見通しですよ」
「ミツルギさん…めぐみんも…」
筒抜けすぎてなんとも言えないけどそれ以上に今は嬉しい。まぁ正しくはウィズさんではなくバニルに引き止められたのだけどその辺はウィズさんと口裏を合わせていたのだろうか。自然にお茶を淹れてくれてたし。
「アリス、改めておめでとう、父上もアリスによろしく言っておいてくれと言っていた、いずれ是非会いたいともな」
「おめでとうアリス!アリスにエリス様の加護があることを祈ってるよ!」
「ダクネス…クリス…ありがとうございます」
さらっとダクネスがとんでもない事を言っている気がする。最近アルダープとの決着がついたのにまた貴族様と会うとか勘弁していただきたいのが本音なのだけど相手がダクネスのお父さんなら悪い事にはならないだろうか。
「エリスの加護なんて必要ないわよ!安心しなさいアリス、あんたにはしっかりとこの女神である私の加護がついてるんだから!」
「…あ、はい、ありがとうございます」
威圧するようなアクア様に思わずたじろぐ。確かに実際にアクア様の加護にはかなり助けられたから文句はないのだけど。
「アリス、今回はね、もう一人来るのよ?」
「…ゆんゆん?」
ゆんゆんがそう告げれば部屋の一部を空けるように全員が移動していた。何故かざわめき始める。これ以上誰が来るのだろう?ウィズさんだろうか?
そんな想いを持ちながらも見ていると、部屋の一角に二つの人影が見えた。テレポートで飛んできたかと思われる。
「アリスさん!!お誕生日おめでとうございます!!」
「…っ!?あ、アイリス!?」
アイリスはこちらに走り、すぐに私に飛び付いて抱きしめてくれた。予想外の客人に私は驚くことしかできなかった。周囲からはマジで王女様が来たのか!?とか驚愕の声が聞こえてくる。多分キースやダストあたりだ。
「テレポートですみません、賢者殿。この方がサプライズになるとカズマ様が仰ったので…」
「い、いえいえこちらこそすみません!?なんか本当にすみません!?」
アイリスを抱きしめたまま後ろからレインさんが申し訳なさそうに声をかけてくれた。だけど流石にこれはこちらの方が申し訳ない。私が慌てるように謝ると、アイリスはその様子を見てクスクスと笑っている、やがて私から離れると、アイリスは周囲を見渡していた。
「…えっと皆様、私はベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスと申します。アリスさんの友人です、どうか今だけは、王女の身分を気にせず接して頂けたら、私は凄く嬉しいです」
ざわめきは増す。主にテイラーさんのパーティからのみだけど。リーンは驚きのあまり口を抑えたまま固まってるし。
「…とまぁ、サプライズビッグゲストが無事到着したところで、そろそろ乾杯にしようか、みんな、グラスは持ったか!?」
「「「おー!!」」」
それぞれがグラスを持ち、中身はシュワシュワからジュースまで様々だ。
『乾杯っ!!』
グラスがぶつかる爽快な音が部屋中に響き渡る。私の為に、私なんかの為にこれだけの人が集まってくれたことが嬉しくて、我慢していたけど自然と私の瞳には涙が溢れていた。誕生日を祝ってくれる、ただそれだけのことなのに、これがこんなにも幸せなこととは思ってもみなかった。
だから私は、涙声ではあるけれど、精一杯の気持ちを乗せて…
「皆さん…本当に……ありがとうございます…!」
シンプルに感謝の気持ちを、皆に聞こえるように告げたのだった――。
ウィズとバニル不参加の理由→聖戦勃発不可避の為。
セシリー不参加の理由→アイリスが来るので教育上よろしくない為。
ゼスタ不参加の理由→そもそも呼ぶ訳がない。何故呼ばれると思ったのか。
バルター不参加の理由→父上がいなくなって多忙な日々でそれどころではない為。
クレア不参加の理由→お城に指揮不在となる為今回はアイリスのお付にレインが同行した。
アルダープ不参加の理由→今頃はマクスウェルとにゃんにゃんしてます()
次回はまた幕間なのか、新章なのか。答えは誰にも分からない。
アンケート御協力ありがとうございます。参考にさせていただきます…が、ゆんゆんいないとほぼ横並びなのは流石に草