内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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こちら修正版になります。混乱を招いてしまい申し訳ありませんm(*_ _)m
未熟な作者故に今後ももしかしたらこのような事があるかもしれませんが暖かい目で見ていただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。

この118話を初めて見る方は何も気にせずにお読みくださいm(*_ _)m


episode 118 どたばた騒ぎの決着は

 

 

―紅魔の里―

 

後に里の人達はこう語っていたらしい。里の入口の空気が険悪すぎてやばい、と。

 

「何を言ってるのですかカズマ君は、私は何も知りませんよ?何かあったのですか?」

 

「…いやその…アリス、まずは落ち着いて…」

 

「それ以上近付いたら攻撃魔法使いますね、アンリの教育上よろしくありませんので♪さっさと事情を説明してください」

 

「お、そ、そっか、アンリって名前になったのk「話を逸らさないでさっさと話しやがれくださいね♪」あ、はい…」

 

そんな膠着状態が続いていた。私はできる限り笑顔で明るく接してあげてるのに何故かカズマ君は萎縮してしまって低姿勢になっている。何故だろうか。解せぬ。

 

「あ、あの、アリス、まだ決まった訳じゃないってアリスが言ってたのよ、だから落ち着いて…」

 

『…アリスお姉ちゃん――、怒らないで――?』

 

ゆんゆんとアンリまでもが私を落ち着かせようとしてくるのだけど私は別に怒ってはいない。話を促してるだけなのだから。あととりあえずアンリは撫でておく。可愛いので。

 

「そ、そのだな…ここじゃあれだからめぐみんの実家で話してもいいか…?」

 

「そうですね、めぐみんのご両親にもまだお会いしていませんし、特にお母さんには是非ともお話を聞きたいですし」

 

「やっぱり聞いてるよな!?めぐみんから聞いてるよな!?」

 

少し落ち着けば確かに全ての当事者から話を聞かないと公平性がないとも思えた。今ある私の情報は全て被害者であるめぐみんによるもの。

 

はっきり言おう、今の私の状態は八つ当たりに近い。アンリの件で内心落ち込んでいたのに何故こんなくだらない話に付き合わなければならないのか、そんな想いでカズマ君にぶつかっている。

勿論くだらない話というのはカズマ君に対してだ、めぐみんについては素直に可哀想だと思うし守ってあげたいと思う。そうじゃなきゃ完全にスルーしている。

 

「アリス、お前の怒りはもっともだがこれだけは聞かせてくれ、めぐみんは今どこにいるか知っているのか?」

 

流石に耐えかねてなのかダクネスが声をかけてきた。その様子からして里中を探し回ったのだろう。その顔つきは疲れているようにも見える。こちらは悪くないのになんだか罪悪感がわいてくる。悪いのは余計な騒ぎを起こした元凶であるカズマ君なのだから。

 

「…あの、めぐみんなら安全な場所に寝かせてますので、心配しなくても大丈夫です」

 

その問いに答えたのはゆんゆんだった。それを聞いたカズマ君達もミツルギさんも僅かに安堵していたが思わず視線をゆんゆんに移してしまう。別に教える事自体は問題ないのだけどできたらカズマ君には教えたくなかった。

 

「ごめんねアリス、だけどみんな心配してると思うし…」

 

「…いいんですよ、とりあえずめぐみんの実家に行きましょうか」

 

とりあえず話はそこから。気まずそうにしているカズマ君をダクネスが強引に引っ張っていく。そんな気まずそうにしている様子すら私にはマイナスイメージしか湧いてこない。誤解であるならもっと堂々としていればいいのだ。間違いであるならさっさとその事情を話せばいいのだ。例え言い訳にしか聞こえなくても、己の無実を証明しようとすればいいだけなのだ。

 

それがないのだから私の中ではめぐみんの話の方が信憑性が強いと感じてしまうのはごく自然な流れだったのだから。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔の里・めぐみんの実家―

 

少し歩いて着いた建物は…、正直に言えばお世辞にも立派な家とは言いづらい。大きさこそ他に見かける家と大差ないのだけどあちこちが強引に補修したような後があったり、古い家故に壁の一部がひび割れていたりしている。めぐみんは報酬が入る度に仕送りをしているらしいけどそれでも補えなかったのだろうかと疑問に思うほどにはボロ具合が目立つ。

 

とまぁ特に関係の無い背景は気にする必要もない。今私にはそれ以上に気になって仕方ない事柄があるのだから。

 

どうやら自由に出入りできる程度には打ち解けているのか、ゆっくりとカズマ君が家の引き戸を開いた、その様子に戸惑いは見られない。

するとすぐ様中から小さな人影が見えてきて、こちらを伺うように顔を出した。

 

ちっちゃいめぐみん。それがピッタリ当てはまる。黒髪に星のブローチをつけた女の子が不思議そうな顔をして私達を見回していた。

なるほど、確かめぐみんには妹がいると聞いていたしこの子がそうなのだろう。そう思うと私は自然と中腰になって、話しかけてみた。

 

「こんにちわ、めぐみんの友人のアリスと申します」

 

「……」

 

と、挨拶はしてみたけど女の子は呆然としている。何か間違った言い方をしてしまっただろうかと考えるも、多分無難に挨拶できたと思う。そのまま硬直していると、女の子はそのまま踵を返して家の中に走っていった。

 

「お母さんーー!カズマが違う女を連れてきたー!!」

 

「…え?」

 

今度はこちらが呆然とする番だった。突然何を言い出すのかあの子供は。思わず唖然としてしまった。何か言い返そうにも既にその姿はない。

 

「ま、まぁ子供の言うことだ、いちいち気にしても仕方ないだろう」

 

「……」

 

普段の私なら今のにどんな反応をするのだろうか。慌てるのか、照れるのか、それとも気にしないのか。今はどれでもない、ほんの僅かの嫌悪感だろうか、それが私には確かにあった。全く勘弁して欲しい。一体このもやもやした感覚はなんなのか…それは多分、めぐみんの件の真相を知りたいもどかしさなのかもしれない。はたまた先程のアンリの件を引きづっているか。

 

これは主に私のせいかもしれないけど今の私達の空気はかなり重苦しい。めぐみんの妹の見た目はとても可愛らしく、普段の私ならもっと優しく接することができたかもしれない。では今いつも通りに接したかと聞かれたらおそらく答えはNOだと思う。

 

それにこの件に関しては私が聞いたところで本当の解決にはならないだろう。私がどんなに何を思っても、裁判などではないのだからカズマ君に判決を下せる者は被害者であるめぐみんなのだから。

 

だからそれについては……手を打っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家の中にあがれば和室のような一室があり、そこに通された。この世界で畳は初めて見る。その中央には丸い卓袱台。そしてそこには黒髪ロングの綺麗なお姉さんが座っていた。

 

「あらいらっしゃい、貴女がアリスさんですね。娘の手紙で貴女の事はある程度存じてます、日頃娘がお世話になっているようで…」

 

「…そ、そんな、ご丁寧にすみません、…改めまして、アリスと申します、こちらこそめぐみんにはお世話になってます」

 

めぐみんの言ってた存在と全く一致しない件について。正座のまま頭を下げられてしまった。反射的に同じような姿勢で返してしまう。

 

…というよりゆんゆんのお母さんもそうだけどめぐみんのお母さんも若すぎだ。25歳くらいに見えるんだけど。そして少し冷静になって考えるととんでもない事実が発覚する。めぐみんは現在14歳、この世界の結婚適齢期が14~17だと聞いているのでおそらくこの人は30歳前後なのだろう。

 

仮に、仮に常に14歳で結婚して15歳で子供を作っていくとしよう。そうなれば30歳で孫、45歳で曾孫がいてもおかしくないということになる。そう考えたらあまりにもな世界観のギャップに内心驚愕してしまう。ゆんゆんのお母さんや今目の前にいるめぐみんのお母さんを見ていたらそんな事を思わずにはいられなかった。

 

とまぁ肝心の要件も忘れて驚いてしまっていたけど我に返ればそんなことを思っている余裕もあまり無かった。さっさと本題を聞き出そう。

 

「…では昨日何が起こってめぐみんが逃げ出すことになったのか、話を聞かせて貰えますか?」

 

そうして聞いてみればめぐみんのお母さんは無言の笑顔のまま首を傾げて、カズマ君は言いにくそうに正座したまま固まっている。まるで時が止まったかのように何の音も聞こえなくなってしまった。

 

「あの…結局娘は見つかったのですか?」

 

「…家に帰れないと言っていたので今は安全な場所で休ませています」

 

「あらあら…それはご迷惑をかけてすみません…全くあの娘ったら…」

 

困ったような笑顔でいるめぐみんのお母さん…確か過去にめぐみんが「父はひょいざぶろー、母はゆいゆい」と言っていたのを思い出したのでこの人はゆいゆいさんと言うのだろう。

今こうして話す限りでは普通の若い母親にしか見えないのだけどどうしてそんな娘を売るような真似をしでかしたのだろうか。

 

「まずは私だな、私もカズマとめぐみんを2人きりで寝かせるなんて言われた時には全力で反対はしたのだ、『小動物の小屋に猛獣をいれるようなものだ』とな、…だが気が付いたら朝になっていた…おそらくスリープの魔法で眠らされたのだと…」

 

「ちなみに私はその時点で寝てたわ、旅の疲れもあったしそんな事になるなんて思わないじゃない?」

 

ダクネスとアクア様が説明を始めると、その内容に私は静かに驚いていた。あのダクネスがあっさり眠らされたというのか、クルセイダーとして異常耐性はしっかりしているダクネスが。実際過去もダクネスだけは大丈夫だった事例もある、油断もあったかもしれないがそれ込みでも驚ける。里の人全員がアークウィザードの適正を持つ…それは聞いていたが見た目一般人のゆいゆいさんですらそのような魔法まで使えてしまっている、改めて紅魔族の恐ろしさが垣間見えた気がした。

ちなみにアクア様は旅の疲れ云々がなくても普通にいつも早寝遅起きなので関係ないと思われる。

 

「…それで俺は成り行きでめぐみんの部屋に押し込まれて扉は魔法で閉じられて…夜で肌寒いしやむを得ずめぐみんの布団にはいって…」

 

「そこは紳士になって欲しかったのですが、布団に入らず寒さに耐えて欲しかったのですが」

 

「も、勿論だからと言って仲間に手を出すつもりなんかなかったぞ!あれは起きためぐみんが悪い!」

 

「……一応、聞きましょうか」

 

「…起きためぐみんは『なんでカズマが私の布団にはいっているのですか!?』と驚いたけど、そこは俺が何もしないって落ち着かせたんだ…そしたらめぐみんは…『何もしてくれないのですか?』とか意味深なことを言い出したんだ、そんな事を言われたら我慢できる訳ないだろ!?」

 

「いや我慢してください」

 

やれやれ、確かに100%カズマ君が悪いとは言えない状態ではあるけど聞いてみたらいつも通りな話でもあった訳だ。これには思わず溜息が出てしまう。

ある意味この世界に適応しているとも言えるのだろうか。14歳という年齢の少女に欲情したのだから。日本でそれをしたら中学二年生に襲いかかる高校生だ、襲いかかるを差し引いてもどう見ても犯罪である。

 

何よりも今の結果が全てだ。過程は同情の余地はなくはないかもしれない。だけど結果めぐみんは夜通しで家の外にいることになってしまった。私にはそれが許せなかった。

 

「……非常に残念です、カズマ君なら襲われる側の気持ちを理解していると思っていたのですが…理解出来てないのでしたら分かってもらうしかありませんね、すみませんミツルギさん、カズマ君を逃げないように捕まえておいてもらえますか?」

 

「……ど、どうするつもりだ?」

 

うーん、何気に私って演技派なのかもしれない。カズマ君どころかミツルギさんすら私を見て恐怖しているように見える。実際にそこまで怒ってはいないし今から言う事も冗談なのだけど今のカズマ君にはいい薬になるだろう。

 

「ですから分かってもらうのですよ、先日出逢ったオークの巣に半日くらい預けておけば良く分かるようになるのではないでしょうか?」

 

「……っ!?」

 

場が騒然としだした。それは流石にやりすぎでは?という皆の引き攣った視線がめちゃくちゃ刺さる。一部そうでもないけど、むしろ期待に満ちた目で見ているけど。

 

「待てアリス!!元はと言えば今回の件、私に止められなかったことが大きい、よって責任は私にある!!だからその役目、私が引き受けよう!!」

 

勿論ダクネスである。このドMお嬢様のことをすっかり忘れていた。とりあえず適当に対処しておこう。

 

「メスオークの巣に女性であるダクネスが入っても意味はないですので引っ込んでいてくださいね、ララティーナお嬢様」

 

「なっ、ならば他のモンスターの巣でもいい!出来るだけ強力なやつだ!あとララティーナと呼ぶな!!」

 

しぶとい。ララティーナ呼びで引き下がるかと思いきや欲望を優先させてきた。カズマ君は完全に意気消沈してしまってるけどちょっと脅かしすぎただろうか。

 

「アリスさん、ちょっと2人きりでお話がしたいのですがよろしいでしょうか?」

 

そう切り出したのはゆいゆいさんだ。変わらぬ笑顔のままこちらを見つめていて、正直何を考えているのか分からない。それが恐ろしくもあるけど断る理由もなかった。

 

「…それは構いませんけど…」

 

ゆいゆいさんはそれを確認するなり立ち上がり、移動を始めた。ここでは話しにくいことなのか、着いてこいってことらしい。私は皆を視線で追うように見るなり立ち上がるとそれに続いた。いつの間にか人は増えていたけど、それは想定通りなので気にしない。さてさて、何を話してくれるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣の部屋に移動するなり襖は閉じられて、立ったままの状態ではあるけどゆいゆいさんは私に笑顔のまま向き直った。

 

「突然ごめんなさいね、ですがどうしてもアリスさんに確認したい事があって…」

 

「…いえ、それは問題ないのですがそれは一体…」

 

「単刀直入に聞きましょうか、アリスさんはカズマさんの事が好きなのですか?」

 

「100%ないです」

 

多分今の私は物凄く冷静に即答したと思う。何をどう思ってそんな解釈に至ったのか理解はできないがそれだけはありえないと断言できる。

 

「そうですか、では後ろにいた青い鎧を着たイケメンさんが好きなのですか?」

 

「…彼は私のパーティメンバーです、というより質問の意図が分かりません」

 

思わずムッとしてしまう。それでもゆいゆいさんの顔は変わらず笑顔のままだ。どうにも苦手な部類の人かもしれない。私はふとそんな事を思っていた。

 

「ふふっ、踏み込んだ話をしてごめんなさいね、…だけどね、私の娘のめぐみんも、あのダクネスさんも、私の見立てではカズマさんの事が好きだと思うのよ」

 

「…否定はできないかもしれませんが…」

 

それを言われたら確かに否定はしにくい。恋愛にうとい私でも察せられるものがあるのは確かなのだから。なんだかんだ色々言い争いは絶えないパーティではあるけど、ちゃんと見てみればカズマ君のパーティはなんだかんだ上手く纏まったパーティだと思う。アクア様はともかく、ダクネスやめぐみんがカズマ君の事を好意的に見ているのは間違いない、でなければとっくに解散していると思われるし。

 

「そしてカズマさんはどうも優柔不断なところがありそうで…そうなると、親として娘のことを応援したくなるのは当然のことと思いません?」

 

「…だからめぐみんの部屋にカズマ君を誘導したと…?お金の話とかもしたと聞いてますけど」

 

「それは当然でしょう?大事な娘を預けることになるのですから、お金をどれくらい持っているかは私からして見れば大事なステータスです」

 

これには面食らってしまうけど冷静に考えたら話の筋は通っている。通ってるけどやりすぎ感は否めない。

 

「流石に強引すぎると思いますけど、人によってはトラウマになりますよ」

 

「私の娘はそんな気弱な子ではありませんよ、それにあーでもしないとあの子は父親に似て頑固で素直ではありませんから、何時までも進展のないまま…親としては、チャンスは逃して欲しくないの、もたもたしてたらダクネスさんに先を越されちゃうかもしれないでしょう?」

 

言われてみれば気弱なめぐみんなんて想像もつかない。聞けば聞くほど納得は出来てしまう。なんだかうまく乗せられているだけのような気もするけど今の私にめぐみんから聞いたばかりの時のような心のもやもやが和らいでいるのも確かだった。

 

「それに…私の夫も昔から頑固で素直ではなくて…私と結ばれたのも実は同じ方法だったりするのですよ、あの時は確かに母を恨みましたがあれが無かったら今こうして一緒にはいないかもしれないと思えば、母には感謝してますよ」

 

赤裸々に語ってきてこちらとしてはお腹いっぱいなんですけど、別のもやもやが生まれそうなんだけどどうしたらいいのだろうか。勿論完全に納得はしていない、めぐみんはまだ14歳、流石に早すぎると思いそれが喉まで出る寸前、思い起こすように抑えられた。何度も言うがこの世界での結婚適齢期は14~17歳、つまりめぐみんの年齢ならこの世界ではそこまで進む事も珍しいことではない。

 

やはり結果的にどうしても日本にいた頃の常識を当てはめてしまうのだけどそれは仕方ない、この世界に来てまだ1年も経っていないのだから慣れろというのが無理な話。とりあえずこれ以上話したところであまり意味はない気もした。既にゆいゆいさんの惚気話に変わってしまってるし。だけどゆいゆいさんの話は止まらなくなってしまっていた。

 

結果、私はこの惚気話にもう少し付き合うハメになってしまった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が落ち着いたところで元の居間に戻る。そうすれば、何やら騒がしく感じた。主にカズマ君の声が大きい気がする。私がゆいゆいさんと話しているうちに何かあったのだろうか?

 

部屋に入る前に襖を少し開けて様子を伺ってみればとんでもない会話が聞こえてきた。

 

「ふっざけんなよ!?なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ!?離せよミッツさん!」

 

「往生際が悪いぞ佐藤和真、大人しくしていろ!」

 

見れば暴れるカズマ君をミツルギさんが押さえつけていた。よく見ればめぐみんの妹さんはダクネスが、アンリはゆんゆんがそれぞれ耳を塞いでいる。暴走するあまり聞かせられない言葉でも吐いているのかもしれない。グッジョブゆんゆん、ダクネス。

 

「大人しくしてたらオークの餌になっちまうんだよ!!」

 

「…確かにそこは流石にやりすぎだとは思うが…その件は僕からも説得してみる、だから今は大人しく…」

 

「信用できるか!!」

 

聞いてて呆気に取られていた。流石に脅かしすぎたのかもしれないと後悔するが私って本気でそんなことをしてしまうように見られているのだろうか、割とショックなのだけど。

まぁ思い返せば私のイメージって下ネタやらの概念はかなり嫌っているように見られている傾向はあるかもしれない。実際に得意ではない、というよりそういう話に慣れていない、が正しい。正直どのように反応したらいいのかわからないから昔からそういった話は適当にあしらっている。結果私は周囲から下ネタ絶対許さない子認定されていると思われる。

 

…とりあえずこれ以上カズマ君を暴走させるのもなんだか可哀想に見えてきた。全ての成り行きを聞いてみればやっぱり一方的にカズマ君が悪いとするのも戸惑われる。これくらいでいいだろうと襖を開けてみた。

 

「……あ」

 

入るなりカズマ君にこの世の終わりのような顔をされる。あるいは死刑執行を言い渡された死刑囚だろうか?どちらでもいい、どちらにしろそこまでになっていると私としても気まずいものがある。

 

「……一応言っておきますけど…、先程のは冗談ですからね?まさか本気にとってはいませんよね?」

 

「「…えっ?」」

 

何故かカズマ君以外からも返答があった。これには流石に納得はいかない。

 

「…この際ですから皆さんに私の事をどのようなイメージを持っているのか聞いておきたいんですけど、いくらなんでもモンスターの巣に仲間を置いていくなんてことはできませんよ…」

 

「あ、あはは…」

 

「…ご、ごめん、その…アリスってこういう話は大嫌いなイメージがあったから…ほら、アルカンレティアでも一番拒絶してたし…」

 

「…そりゃ好きではありませんけど…」

 

ミツルギさんから力が抜けたような乾いた笑いが聞こえてくれば、それに続くようにゆんゆんが申し訳なさそうに答えた。

そして思い出されるアルカンレティアでの一件には私も何も言えないまである。確かに私が一番騒いでいたせいで他の面々は逆に落ち着いてしまっていた。あれは恥ずかしい思い出でしかない。とりあえずこんな話はさっさと切り上げてしまおうと投槍になりつつある私もいた。なんか飛び火しまくってる気がするし。

 

「…で、めぐみん。どうするのですか?聞く限りではカズマ君が一方的に悪いと言う訳ではなさそうなのですが」

 

「…え?」

 

私は視線をカズマ君の後ろの襖に移して話しかける。するとゆっくりと襖は開かれる。そこにはなんとも言えない顔をしためぐみんがいた。

 

種明かしをすると事前にゆんゆんに頼んで連れてきてもらっておいた。私がカズマ君に対して何を思おうが、結局被害者であるめぐみんがいないと話にならないのだから。私怨でカズマ君を断罪する訳にもいかないし元よりそんなつもりも無い。

だけど話を聞く限りでは状況は変わってきてしまっている。私はめぐみんからカズマ君に襲われた、としか聞いてはいない、だけどめぐみんからもそれを促すような言葉が出てしまっているとなれば話は変わってくるだろう。

 

「…いえ、私は元々別に怒ってはいませんでしたが。この程度のことは初めてではないので。むしろこの程度でいちいち怒るようでしたらとっくにパーティから逃げ出してます」

 

「…その言い方ですと私が独りで激怒して事を大きくしているように聞こえるのでやめてもらいたいのですが、割と切実に。と言うよりも結果的にめぐみんにも問題はあった訳ですがそれについて一言いただきたいのですが」

 

「すみません、私からも謝りますからオークの巣に投げ込むのだけは勘弁してやってください、この通りカズマも反省していますので」

 

「なんで保護者目線なんですか!?それに冗談だと言いましたよ!?」

 

疲れる。とりあえずめぐみんからカズマ君に言う事もないのなら私としてはこれ以上あれこれ言うつもりもない。そして今後このような事がカズマ君のパーティで起こったとしても私は絶対に首を突っ込まないことを強く思った瞬間でもあった。

 

何故ならロクなことにならない未来しか見えないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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