内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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遅くなりました、ちょっとリアルが忙しくなってきました( ´・ω・`)


episode 119 紅魔族随一の作家

 

 

―紅魔の里―

 

紅魔の里に滞在するようになって既に2日が経った。つまり今は3日目の朝である。

本来この里に来たのは魔王軍の襲撃に遭っていると族長さんから手紙が届いた為に救出、援護、支援、そんな名目で来た事になる。

だが実際に来てみれば紅魔族が強すぎて完全勝利状態、里への被害もほとんど出ておらず、里の朝は今日も長閑で平和な様子だ。

 

空は今日も快晴で、朝日とそよ風が心地良い。聞こえてくる小鳥の囀りは、より平和な里を演出している。

 

…そんな平和でしかない里の族長の家、ゆんゆんの部屋を間借りさせてもらっている訳なのだけど、流石に何時までもこの里にいる訳にもいかない。だけど魔王軍の襲撃は今のところない、全くない。それだけ優勢ならばいっそ攻め込んでしまえばいいと思うのだけどそれをして魔王軍が逃げてしまっても里としては退屈になるので宜しくないのだと言うのは族長の談である、完全に魔王軍が遊び相手程度の認識でしかない、恐るべし紅魔族。

 

そんな訳なので私達が攻め入ることもできずにいる。よって私達もやることがあまりない。

 

「どうせなら観光しましょう」

 

「…なんだか結局アルカンレティアでの旅行の続きみたいになってしまっているね…悪くはないのだけど僕としては少し落ち着かないな…」

 

「観光…うーん…、確かに里には結構見て回れる場所はあるけど…」

 

「どうせならゆんゆん達が通っていた学校とかも見てみたいですね、後は服屋さんでアンリに新しい服を買いたいですし」

 

今は今後のことを私とゆんゆん、ミツルギさんとゆんゆんの実家のリビングで話している。せっかく来たのだからどうせなら中途半端な形で強制送還することとなったアルカンレティアの旅行の続きをこの紅魔の里で満喫してしまおう。それが私達のパーティの結論だった。それに何も遊ぶ為だけの理由で滞在する訳ではない、今近くにいるのは魔王軍の幹部なのだ。それだけは警戒する必要がある。

 

「そのアンリちゃんは…結局アリスが引き取る形になるのか?」

 

「…そのつもりです。私にどこまで出来るのかわかりませんが…別に同情だけではありませんよ、私としてもなんだか妹ができたみたいで、一緒にいて楽しいですし」

 

決意は昨日のあの場所で既に終えている。金銭的には養う子が一人くらいできても全く問題ないくらいは稼いでいる。ちなみに今現在アンリはまだゆんゆんのベッドでお休み中。昨日は故郷を見つけてから更にめぐみんの実家へ行き、めぐみんの妹であるこめっこちゃんと仲良くなって一緒に遊んだりしててかなり体力的にも精神的にも疲れていると思われる、ゆっくり休ませてあげよう。

 

「いいなぁ、アリスばっかり…」

 

「でしたら一緒に姉役をお願いしますよ、なんならお母さん役でも構いませんけど」

 

「姉役で!!絶対姉役で!!」

 

めちゃくちゃ必死にせがまれてしまった。そこまで母親ポジションは嫌なのだろうか。ゆんゆんならとても良いお母さん役ができそうなのに実に残念である。

 

「…それなら今日は図書館に行かない?結局アンリちゃんのこと、あれから調べられてないし…」

 

「確か前に私の魔法についても調べたって言ってましたね」

 

「図書館か…3人で文献を探せばすぐに見つかるだろう」

 

「あ、ミツルギさんはアンリとお留守番しておいてくださいね♪」

 

「えっ」

 

私の提案にミツルギさんは顔を引き攣らせていた。それは嫌とかそういうことではない、どことなく見えるのは自信の無さだ。その表情だけでそれは察することができた。

昨日のめぐみんの教えにより男は狼と信じてしまったアンリ。昨日まででなんとか女性陣相手ならなんとか話す程度ならできるようになったけどカズマ君とミツルギさんに対しては怯えてしまって私の後ろに隠れてしまう始末、そんな様子も可愛らしいのでありと言われればありなのだけどできたらミツルギさんとも普通に話せるくらいになって欲しい。これから顔を合わせる機会は増えると思うし。…カズマ君?そっちは別にいいや。

 

後は一昨日、昨日とアンリは色々な事があって疲れていると思われる。その証拠に昨日は早起きだったのに今日は未だにぐっすりと眠っている。なら今日は休ませてあげたい。そんな想いがあった。

 

 

 

 

 

 

半ば強引にミツルギさんに寝ているアンリを任せて私とゆんゆんは2人きりで紅魔の里を歩く。山と森に囲まれたこの里は、アクセルとは違った風の匂いを感じる。

それはより自然を感じさせてくれて、気持ちを落ち着かせてくれる。

この緑に囲まれた紅魔の里、郊外の草原の風の届くアクセル、そして水に恵まれたアルカンレティアでさえ、どこも形は違えど、見事に自然と人が共存できているともいうのだろうか。これは実際にこういう場所に来ない限り実感はできないだろう。

 

ふと元いた世界、日本を思い出せば自然と溜息がでる。住んでいる時は全く気にしなかったけど…、多くのビルに車の排気ガスなどと、人間の都合で申し訳程度に存在する植えられた樹木。比べてみれば一目瞭然。この世界では生きている植物は野菜を始めとして珍しいものではない。

仮にこの世界の生きている野菜が、私の元いた日本に行った場合…多分生きては行けないだろうなぁ、なんてそんな無意味なことまで考えてしまった。

 

色々考えたけど今回の目的は紅魔の里の図書館、それは学校にあるらしく結果的に学校見学も兼ねたような形になってしまった。とりあえずお昼までには戻って午後から改めてミツルギさんやアンリと合流して里の観光をしようと思っている。一応いつ魔王軍が攻めてきても問題ないように常時フル装備は忘れてはいない。とはいえ私達にはもはや普段着に等しいのでフル装備と言ってもそこまで気を張り巡らせたものでもない。つまりはいつも通りだ。

 

「それにしてもゆんゆんの格好はいつもと違いますけど…」

 

「あ、これはね…学校の制服なの、せっかく学校にも行くんだし、久しぶりに着てみようかなって……ちょっと胸の辺りがきついけど…」

 

「なるほど、つまり私への当てつけですねわかります」

 

「違うよ!?」

 

今のゆんゆんの服装は色合いこそ似ているものの、いつものものではない。薄いピンク色のカッターシャツのような服に赤色のネクタイ、その上からは黒いローブのようなものを纏っている。世界観が変われば服装も変わる、それは分かっているのだけど今のゆんゆんの服装を見て学校の制服と連想はしにくい。とはいえ学校がそもそも魔法学校だ。その制服とファンタジーなノリで考えたらなんとなく頷ける。まるでゲームの中に入り込んだようなこの世界、そんな空想的に見るととても可愛らしい。

 

「そんなこと言うならアルカンレティアに行った時のアリスの服も凄く可愛かったわよ、私から見ればあっちの方が羨ましいんだけど…」

 

「ふむ……人は常に隣の芝生は青く見えるものなのですかね…」

 

「…なにそれ?」

 

「どんなものであれ、自分にないものは羨ましく思えるってことですよ」

 

ニュアンスが少し違う気がするけど今の私的にはそういう解釈なのでそれでよし。何気に年寄りみたいなことを言ってるなぁと自覚しながらも、私はふわふわした感覚で喋っていた。つまりあまりよく考えて喋っていない。例えるなら朝起こされた時の「後5分……」程度のレベルで考えていない。

だけどそれでもゆんゆんは納得したように頷いていた。

 

「……なるほど…アリスの長い綺麗な髪とか羨ましいし、あんな凄い魔法使えるのも羨ましい…」

 

「ゆんゆんの可愛らしさが羨ましい…ゆんゆんのスタイルが妬ましい…」

 

「妬ましい!?」

 

妬ましいに決まっている。14歳でこのプロポーションは反則である。20歳くらいになったらウィズさんレベルになるのではないだろうか。それに比べて私は酷い、もう少しでこの身体になって1年になりそうなのに特に成長の兆しが見られる事はない。髪が伸びてはいるから成長していない訳ではないとは思うけどこのまま身長も伸びずにいたらと思うと震えが止まらない。

 

「…と、とにかく学校はもうすぐ……あれ?」

 

「……おや?」

 

ふと別の道から学校へと向かっているのだろうか、長い黒髪の片目にどこかで見たような眼帯をした女の人とばたりと出くわした。服装は言うまでもなく漆黒とも見えるローブは紅魔族故にもはやお約束。若干大人びて見えるけど学校の先生なのだろうか?どこか落ち着きのある様子からそんなことを思っていた。

 

「おぉ、ゆんゆんじゃないか、久しぶりだね、帰っていたのなら是非声をかけてもらいたかったが…そうだ、ちょうどこの前送った小説の続きが……」

 

「…あーーるーーえーー!!」

 

「うわぁ!?どうしたんだいゆんゆん!?」

 

ゆんゆんはその女の人を見るなり顔を真っ赤にして掴みかかった。そしてその呼んだ名前を聞いて静かに察した。

なるほど、この人があの小説を書いたゆんゆんの友達のあるえさんなのだろう。

ゆんゆんはあの小説を思い出してあるえさんに物申したい気持ちなのだろうけど私の見解では別にあるえさんは悪くない。勝手にゆんゆんが勘違いしただけである。

 

なので私はすぐにゆんゆんを背中から両腕を回して引き剥がすことにした。

 

「ゆんゆん、落ち着いてください、この人は『お友達』であるゆんゆんに自分の書いた小説を読んでもらいたかっただけですよ」

 

「……っ!?」

 

今も尚、『お友達』というワードはゆんゆんにとって非常に重要なワードである。それに反応したゆんゆんはピタリと動きを止めてしまった。これならもう一押しで大人しくなりそうだ。

 

「…あるえさん…でしたね?そうですよね?」

 

「…君は…?いや、うん、そうだよゆんゆん、その通りだ!大事な友人であるゆんゆんに是非とも私の書いた小説を読んで欲しかったんだ!」

 

「……」

 

ゴクリと自身の喉を鳴らす音が聞こえた。それはあるえさんも同じのようで緊迫めいた様子でゆんゆんを見守っている。…やがてゆんゆんの抵抗する力が抜けたことを確認できると、私は自然とゆんゆんから絡めた腕を離した。

 

 

「そ、そうよね…お友達同士なんだから…それくらい仕方ないよね…」

 

どこかウットリしながら頬を染めるゆんゆんを見て、私とあるえさんは同時に肩の力を抜いて大きく息を吐いた。このチョロさ具合はゆんゆんらしいのだけど同時にどこか危なかしさも見えてしまう。言うならば地雷ワードだろう。今後はあまり使わない方がいいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

―紅魔の里・図書館―

 

 

 

「我が名はあるえ!紅魔族英雄伝の著者にして、やがてその名を世に知らしめる者!!」

 

とりあえず一悶着あったものの、なんとか落ち着くことのできた私達はゆんゆんの通っていた学校…『魔法学園レッドプリズン』に併設された図書館に入り、あるえさんから改めて自己紹介されていた。学校の名前については突っ込むだけ野暮だろう、ここは異世界で、おまけにそんな異世界でも独特な感性を持った紅魔族の里の学校なのだから。

 

「私はアリス、ゆんゆんの親友です、よろしくお願いしますね」

 

とりあえず最低限返しておくけどこの紅魔族の名乗りはもうやるつもりはない、恥ずかしいし。だけどこうやって紅魔族の人と接する度にこの挨拶はしてくるが基本的にこちらが返さなくても引いたりしない限りは嬉しそうにしてる。引かれる自覚があるのならしなければいいと思うのだけど。今のあるえさんも普通に返したところで悪くはとっていないようだ。

 

「なるほど…君が今王都の話題を独占してる有名な蒼の賢者さんだね」

 

「…え?」

 

すると予想外の反応が返ってきた。この里に来て私は何度か蒼の賢者を名乗りはしたけど誰もがまずゆんゆんの親友の下りを最優先に反応していて蒼の賢者についてはあまり言われる事はなかった。…これは単純に蒼の賢者の部分を話す時の私の声量が小さめなのも原因なのだけど自分で名乗るには恥ずかしすぎるので仕方ない。ただ疑問なのは今の私はあるえさんに対して蒼の賢者とは名乗っていない。

 

「…おや?もしかして違ったかな?ゆんゆんと一緒にいるとなれば間違いないと思っていたのだが」

 

「…いえ、この里で蒼の賢者のワードを知っている人はいませんでしたから…」

 

「…なるほど、それは土地に原因があるね。この紅魔の里は外から見れば気軽にやって来れる場所ではない、だから情報が遅いのだよ。だけどこの私は違う、時事ネタは作家にとって良い作品を作る大切なものだ、故に王都にいる紅魔族と文通をすることでたまに新聞などを送って貰っているんだ、だから私はこの里でもっとも情報が進んでいる紅魔族と言えよう!」

 

…確かにここまで来るのは苦労した。実際この里に来て3日目になるが私達やカズマ君達のパーティ以外に今のところ観光客などは見かけない。…一応現在進行形で魔王軍が攻めてきているのだからそんな場所に観光するような人はまずいないだろうけど。魔王軍ですら辺境と言っていた場所、確かに王都の情報など通常ここまで来るには時間がかかりそうだ。ミツルギさんは私が王都に来る前から有名人だったし最近その名がこの辺りまで届いた感じなのだろうか、少なくとも族長さんは魔剣の勇者の異名を知っていたし。

 

「…あるえも私やめぐみんと同じように学校は卒業しているんだから…外に出てみればいいのに…」

 

「確かにネタ集めとしてたまには出てみてもいいかとは思えるが…私は冒険者になるつもりはない。この類稀な文才を活かして紅魔族随一の…いや、この国一番の作家となる、それが私の夢だ!」

 

「…だからって私達を登場人物にするのはやめてほしいんだけど!?」

 

言われて思い出せば確かにゆんゆんどころか私とミツルギさんまで間接的に登場していた。しかも結婚して子供作って亡きものにされていた。ぶっちゃけどうでもいいのだけど思い出してしまえば呆れ返ってしまう。

 

「…そういえば私やミツルギさんも出てきてましたね…」

 

「おぉ!アリス君も読んでくれたんだね!あれは個人的にも筆が乗って良い感じだと思うんだけどどうだったかな?是非感想を聞きたい!」

 

身を乗り出して私に近付く様は言ってしまえば少し怖い。それだけあの作品に情熱を注いでいるということなのだろうか。これは答えに困る、凄く困る。

正直に言えば自分が出てきた時点で微妙でしかないのだけど客観視してみても様々なラノベを読んできた私に言わせればありきたりな気もする、いわゆる王道ファンタジー。両親の無念を二人の子供が晴らすような感じになるのだろう。だがこの世界の本は数多く読んだけどこのような創作の話は日本ほど多くはない。日本に例えれば童話のジャンルの数程度かもしれないが、これは逆に日本が多すぎるのかもしれない。

 

「…そうですね、結構前衛的な作品だったかと…」

 

「そうだろう!!いやぁ、分かる人に読んでもらえたのは嬉しいね!」

 

どこかの漫画で、感想はこれを言えば大体大丈夫とあったので言ってみたけどあるえさんは満足したようだ。凄く嬉しそうに私の手を取って強引に握手してきた。

 

「こうして巡り会えたのも何かの縁だ、良かったら君達の冒険譚でも聞かせてくれたら凄く嬉しいのだがどうだろう?」

 

…ただこの状況は宜しくない。本来私の目的はアンリの為に安楽少女について調べる為にこの図書館に来たのだ。午後からゆんゆんの実家で待つ二人と合流して里を歩いて回る予定ではあるしあまり時間を無駄にしたくはないのが本音だ。

 

「…すみませんあるえさん、私達も予定がありまして…」

 

「…ねぇアリス、別にあるえの事は呼び捨てでいいのよ?私と同い年だし」

 

「…え?」

 

ふとあるえさんを見ると不思議そうに首を傾げている。その容姿はとても大人びているしローブで分かりにくかったけど座っている今はボディラインが少し分かりやすくはなっていた。明らかにゆんゆんと同等、もしかしたらそれ以上にスタイルがいい。ゆんゆんを女子高生で例えたらあるえさんは女子大生でも通りそうな見た目をしている。そんなあるえさんが14歳…?それは流石に絶句せざるを得ない。

 

「ゆんゆん、どうしたんだいこの子は?何やら固まってしまったけど…」

 

「…あのね、あるえ…、一応アリスは16歳だから私達より歳上なの、だからこの子呼ばわりは流石に…」

 

「……え?」

 

私に倣うようにあるえさんは固まってしまった。そりゃ客観的に自分を見ても13歳とかに見えるもの、それは仕方ない。身長はめぐみんとほぼ一緒で胸もないしちんちくりんだし。そもそも私は望んでアクア様に今の姿にしてもらったのだからそこに後悔はない。できたらもう少し胸が欲しかったとか思っては……いない。

だけどこの二人が14歳は絶対に無理があると思う。紅魔族はみんなこんな感じなのか!?と思うもめぐみんの顔を思い浮かべたら落ち着くことができた。

 

ありがとう、めぐみん。貴女のおかげで自分を見失わずにすみました。

 

 

 

その頃、めぐみんは実家で予兆もなくクシャミを2回したとかしなかったとか――。

 

 

「どうしためぐみん?風邪か?」

 

「これは誰かが私の噂をしているようですね、2回ですから悪口のはずです、おそらくアクセルの街の冒険者でしょう、帰ったらすぐに撃ちに行かなくては」

 

「やめろ」

 

 

そんな話がされていたことは、私は全く知らなかった。

 

 

 

 






めぐみんの早とちりでアクセルの冒険者に悪寒が走る()
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