内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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二章 ―アクセルの街―
episode 12 時は流れて


初めてのクエストを受けてから今日で2ヶ月が経ちました。

 

私は相変わらずアクセルの街でアークプリーストとして日々クエスト三昧の日々を送っています。

あれから私はテイラーさんのパーティに入れてもらい、アーチャーのキースさんと出会い、出会った当時はそこまでなかったのに慣れてきた途端の胸が小さいから揉んで大きくしてやるだの言うダストのセクハラにブチ切れてリーンと一緒にぶん殴ったり、服屋に行く度にリーンの着せ替え人形になったり…、セシリーお姉ちゃんに街中で出逢って突然襲われたり…。あれ?なんだろう、ロクなことがないような気がする。

 

そ、そんなこんなで、毎日が退屈しない日々を送ってはいるのですが…そうそう、私の環境も大分変わりましたよ。

 

まず運良く宿は安い個室を月単位で借りることができたので、借家ながら安定して寝泊まりできる場所ができました。冒険者ギルドから割と近くにあったので、たまにリーンが遊びにきたりしますし。

 

クエストは初のクエストがあんなのだったせいか、それ以降のクエストはとくに危険もなく無難にこなしています。

 

所詮ここは駆け出し冒険者の街なので、白虎狼のような高難易度クエストはそうそう起こらないのですよ。だから必然的にアークプリーストが必要になるほどのクエストがなかなか発生しないというか…固定パーティ以外でのパーティがなかなかできないんですよね。

そんな状態ですから固定パーティも5人もいれば、フル活動するようなクエストもなかなかなくて…無理に人数増やして活動しても報酬が減るという切実なところがあるのが難しいところです。

 

 

 

 

 

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冒険者ギルド。

 

提示板のパーティメンバー募集に書き込みをして、私は呑気に朝から酒場で朝食を食べてました。サンドイッチにミルクティー、至福の時間である。

飽きない理由はなんといっても毎日サンドイッチの具材が変わることに尽きる。

今日は定番のハムタマゴレタス。昨日は卵焼きとブルーベリージャムといった感じで毎日違う。基本好き嫌いのない私にとってそれはプラス要因でしかない、たまに知らない食材が挟まってくることもあるけどこの世界では普通に食べられている食材ばかりなので慣れるためにもちょうど良かったりするし値段もお手頃価格。

 

そんな私だけどクエストはそこそここなしてお金は少しずつ貯めていた。理由は買いたいものができたから。

 

町外れにウィズ魔法店というお店を見つけてはいってみたら、そこにある品々はとても他のアクセルの魔道具屋では手に入らないような高価なものばかり。あるいは…使い道がわからない謎のアイテムもありましたが、私の狙いは魔晶石でした。

ちょうど杖にぴったりはまるフレアタイトという魔晶石が売りにだされていたのです。炎の力を宿したそれは試しに杖にセットしてみたところ、綺麗にハマり、試しにとわざわざ店主のウィズさんにレンタル料を払ってまで着いてきてもらいジャイアントトードに試し打ちしたところ、放ったアローは見事にフレイムアローとなり、ジャイアントトードの丸焼きを作り出しました。

これは絶対欲しいと値段を聞いたところ。なんと値段は300万エリス。今はウィズさんに取り置きしてもらいつつ、頑張って節約生活です。

…となるとやはりこうやって外食するより自炊したほうがいいのかな?でも料理苦手なんですよね…なんて考えながら、私はサンドイッチにかぶりつく。うーん、この味から離れるのはつらい。いっそテイラーさんに言って王都でクエスト受けませんか?とか相談してみようかな?でも私のワガママで振り回す訳にもいかない。

 

そんな悩みを頭に抱えていたら、視線を感じた。

 

この2ヶ月で私のアクシズ教徒疑惑はほぼ完全に払拭されていた。ダスト達パーティメンバーには感謝の言葉しかない。だけどこの視線はそういう視線ではないこともなんとなくわかってた。決して悪意の感じる視線ではない。

 

私がそっとその方向に振り向くと、その人は柱の後ろに隠れてしまった。

これは対応が難しい。

この視線なんだけど…実は3日ほど前からほぼ毎日感じてたりする。

何か用事があるなら話しかけてくれたらてっとり早いのだけど、とくにこちらに何か言ってくる気配もない。

どうしたものか考えながらミルクティーを口に含んで何気なく視線を移動させたら柱から顔だけだしてこちらを見てる人と目があってしまった。

 

だけどあちらは慌てるようにまた隠れてしまった。とりあえず私はきっかけを作りたかったので近くでテーブルを拭いていたウェイトレスの女の子を呼んだ。

 

「はい?追加のご注文でしょうか?」

 

私はミルクティーを注文した。それを告げたらウェイトレスの女の子は少し困った表情をしつつ注文を受けてくれた。

 

確かに以前やったアクシズ教の布教活動で知らない人に話しかけるくらいはできるようにはなったけど…だけどあの手の人に話しかけるのはちょっと難しく思えた。だからきっかけなのである。お金はかかるけど仕方ない。

 

「お客様。」

 

「ひ、ひゃい!?」

 

柱の後ろにいる人にウェイトレスの女の子が話しかけた。予想外だったのか、柱の後ろの人は変な声をあげている。この声からして女の子っぽい。

 

「こちらのミルクティー、あちらのお客様からです、どうぞ。」

 

「…え、えぇ!?」

 

女の子はかなり驚いていた。しぶしぶミルクティのはいったティーカップを受け取ると、ゆっくりこちらに近付いてきた。

 

「あ、あの…こ、ここここれ…」

 

でてきた女の子は10代後半くらいで黒髪、赤い瞳、黒とピンクを基調とした服で変に胸元あたりを露出していた。…その瞬間、以前にもでてきた謎の感情が暴れそうになったけどなんとか抑える。私は座ってください、一緒に飲みましょう?と笑顔で言った。

 

「え?い、いいんですか!?私なんかと…お茶してくれるんですか…!?」

 

お茶に誘っただけなのに涙目で喜んでいるのを見て、私は若干引いた。今見ると本当に嬉しそうにいただきます、と笑顔でミルクティーを飲んでいる。

 

……なるほど。これは昔の私に似たシンパシーを感じたけど別にそんなことはなかった。というか昔の私より明らかにひどい。

この子はおそらく重度の恥ずかしがり屋さんなのだろう。引っ込み思案なのだろう。少なくとも悪い人ではなさそうなので私は自己紹介をした。すると女の子は突然立ち上がった。

 

 

「わ…我が名はゆんゆん!!アークウィザードにして、上級魔法を操る者!!やがて紅魔族の長となる者っ!!」

 

声をはりあげ昔のヒーローのようなポーズまでとったゆんゆんの名乗りに場の空気が死んだ気配がした。というか何も言えなかった。恥ずかしがり屋ってなんだっけ?引っ込み思案ってなんだっけ?

こんな思い切った挨拶ができるなら声をかけるくらい余裕ではないだろうか。なんか馬鹿にされてる気がしてきた。

 

「あ、あの…!ごめんなさいごめんなさい!今のは紅魔族のお決まりの名乗りのようなもので…お、お願いですから引かないでください……!」

 

私の考えを読んだかのように突然謝罪されてしまった。どうしよう?この人めんどくさいかもしれない。というか明らかに私の方が年下なのに何故あちらは敬語を使ってくるのだろうか。とりあえず私は、ずっとこちらを見ていたけど何か用事があったのです?と聞いてみた。

 

「…え、えっと…その…あれ……」

 

ゆんゆんはおそるおそる提示板を指さした。その方向にあるのは確か私がパーティメンバー募集の為に張り出した紙があるはずだ。彼女は私とパーティを組みたかったのだろうか。

 

「は、はい!…よ、良かったら一緒に…クエストにいきませんか?」

 

震えながらこちらに目を合わせず言うゆんゆんを見て私はよろしくお願いしますと笑顔で即答した。確かにその性格は気になるけど固定パーティ以外ではなかなかメンバーが揃わないし彼女はアークウィザードだという。私も攻撃魔法スキルは使えるし上級職2人ならアクセルでのクエスト程度なら余裕だろう。

 

「や、やっぱりダメですよね……え?……い、いいんですか!?」

 

めちゃくちゃ驚いてる様子のゆんゆんを見てやっぱりめんどくさいなこの子…と思うのは多分許されると割と本気で思った瞬間だった。

 

 

 

 

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