内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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視点変更―アリス―


episode 125 見解の相違

 

 

 

―紅魔の里―

 

謎施設の探索が終わった私達は世界を滅ぼしかねない兵器が眠るという格納施設へと向かっていた。結局あの手記以外にめぼしいものはなく、他には何も無かった。

分かった事と言えば…、紅魔族の先祖が魔王軍に対抗する為の改造人間だったこと。魔術師殺しと呼ばれるものがあること、それをも破壊できるレールガンという兵器があること。

 

おそらくあの謎施設は、作られたという3種類のいずれか、あるいは全てを作る為の施設だったのだろう。今やかなりの年月が経っているようだけど、ひとつ気になることもある。

 

――それはそれらの開発者が、チートを持った日本人…つまりは転生者であったということ。

 

こうして見ると日本人がこの世界にもたらした影響はあまりに大きすぎる、身近なものなら生活水準、果ては機動要塞などの兵器や紅魔族という存在まで。

 

当たり前のように聞いていたギルドのアナウンス。今思えばあの街全域に声を届けるスピーカーでさえも本来のこの世界を想像した時に似つかわしくない。もっとも日本人が関与していなかったらと過程したところでどんな世界になっていたかは想像もつかないが。

 

そう考えたら私もまた、この世界に影響を与えている一人になる。

 

この世界に存在しないはずの魔法を使い、何百年と討伐されることのなかった魔王軍の幹部は既に3人も討伐してしまっている。勿論私だけの力ではないが、もしも日本人の関与が一切なかった場合、私やカズマ君、ミツルギさんは勿論この世界に存在せず、紅魔族もそのアークウィザードの素養を持っていることはない。一般的に紅魔族以外で多数の上級魔法を使いこなすような存在は私はウィズさんくらいしか知らない。つまりかなり希少な存在だと言える。

 

たらればの話をしても仕方ないがそう考えた時、この世界の神様が危惧して日本から転生者を募らせていなかったらこの国はとっくの昔に魔王軍によって滅ぼされているのかもしれない、これでは神様達も慌てるはずだ。

 

まぁ…だったら私が魔王を倒して世界に平和をもたらそう!……とまでは思わないのだけど。それの助けになること、自身の身近程度の事柄は対処するつもりではあるが、私は名声やらに興味はない。

 

ただのんびり自由気ままに生きること、それが私の望みなのだから。

 

 

 

さて、無駄に色々と思い悩むことになってしまったが私個人が考えたところで何もできないしどうにかしようとも思ってはいない。

冷静になって考えたら、この世界が多くの日本人による影響であらゆる技術や知識が加わり世界そのものの水準が大きく向上しようとも、それは別に悪い事ではないし、それの責任を問うなら私達転生者ではなく、私達をこの世界に送り出した神様達に言うべきこと。神様だってそうなることくらいは想定内だろうし、ずっと昔から転生者を送り続けているということはそういった世界の改変を黙認しているということになるのだし、私が考えるだけ意味の無いことだ。

 

『…アリスお姉ちゃん――、難しい顔してる――…悩み事――?』

 

「…いいえ、なんでもないですよ」

 

無駄に壮大なことを思っていたせいか、顔に出てしまっていたようだ。アンリに心配そうに見つめられていることに気が付けば、私はそっとその頭を撫でた。こうするとまるで猫のように心地良さそうな顔をするのでこちらまで心地よい気持ちになる、荒みきった私の心を癒してくれる。

 

「…なんだか騒がしくないか?」

 

「…言われてみれば…あ、あそこにぶっころりーさんとカズマさん達が!」

 

ゆんゆんが言うように、道の真ん中でカズマ君達とぶっころりーさんが何やら話をしているように見える。その様子はどこか慌てているようにも見える、主にカズマ君側が。

もしかしたら何かあったのかもしれない、そう思うと私達は自然に接触を試みるように近付いていった。

 

 

「……あ、アリス!今までどこに行ってたんだ?こっちは大変だったんだぜ、魔王軍の幹部が里の中まで入ってきてな」

 

「やぁ、ゆんゆんとその友人達。とはいえ彼らが追い払ってくれたみたいだけどね、いやぁ流石だね君達は」

 

「…魔王軍の幹部が…!?」

 

話を聞くなりゆんゆんは驚いているけどそこまで驚く事なのだろうかと私は首を傾げた。魔王軍の幹部が里を襲撃しているのは今に始まった話ではない、私達がこの里にいた時には既に攻められていたのだから。

とはいえ今までは攻められていたと言っても紅魔族の楽勝ムードで終わらせているパターンばかりだったので楽観視していた部分もあるが、里の人間全てが戦えるわけではないだろう、隠居した老人やまだ魔法を使えない子供だって里にはいる。内部に攻められたとなるとその辺の心配はある。

 

「…それで、被害はあったのですか?」

 

「ふふん、安心しなさいアリス、こめっこちゃんが人質にとられそうになったけどこの私が機転を効かせて助けてあげたわ!そしたら私の事を《蒼の賢者》と勘違いしてたみたいでねー、あの時の驚いたあいつの顔を思い出したら笑っちゃいそうだわ、ぷーくすくす」

 

「お、おい、あまり余計なことを…」

 

「……こめっこちゃんが無事なら私としては問題ないですが…蒼の賢者と勘違いされた…とは?」

 

確かに私の事を知らない人なら蒼の賢者としてアクア様を見た時に、当てはまる共通点は多い。青主体の服装、アークプリーストという職業が主な理由。変な異名の主と勘違いされて嫌ではないのだろうかも思ったけどアクア様はその辺は気にしていないようだ。

 

「私がこめっこちゃんを捕まえた変態下級悪魔に《セイクリッド・エクソシズム》を使ったのよ、後はわかるでしょ?」

 

「…なるほど、それなら確かにこめっこちゃんに影響はありませんね」

 

セイクリッド・エクソシズム。エクソシズムは対悪魔族への特攻魔法故に人間には効果はない。確かにそれなら人間に危害を加えることはない。ちなみに私はこの魔法を取っていない。そもそも攻撃魔法は自前で取得しているので必要ないのだ。私が使えるターンアンデッドは初級スキル並のスキルポイントしか使わないのでついでに取得した感じだしスキルレベルも低い。

 

「元々そう勘違いしたのはカズマのせいなんですけどね、私もゆんゆんなんかと間違えられたみたいですし」

 

「ゆんゆんなんかって何よ!?」

 

「ばっ…お前また余計な事を…!?」

 

「カズマ君のせいとは…?」

 

話をする度にカズマ君が慌てだしている、なんだか嫌な予感がしてくるけど。カズマ君はめぐみんの口を塞ぎだして、めぐみんはそれに必死に抵抗していた。

そしてめぐみんに気を取られているカズマ君を後目に、詳細を教えてくれたのはダクネスだった。

 

「…本当にすまない、実はカズマが魔王軍の幹部に向かってミツルギと名乗ってしまってな…」

 

「おいダクネス!?」

 

「何故…そのようなことを…?」

 

ミツルギさんは呆気にとられ、対するカズマ君はバツの悪そうな顔をしている。こちらと目線を合わせてくれないところを見ると気まずさが後になって出てきたという感じなのかもしれない。

 

少し間が空いて事情を話せるくらいに思考がまとまったのか、カズマ君は頭を掻きながら気まずそうに語り出した。

 

「いや、その点は素直に悪かったよ…、だけど街中で爆裂魔法は使えないし、俺も武器を持ってなかったからさ…、あの場で戦う訳にはいかなかったんだ、あそこで自分らの名前を名乗るよりも王都で名前が売れてるお前らの名前を借りた方があいつらを撤退させられる可能性が高いって思ってさ…」

 

「よく言いますよ、ただ自分の名前を魔王軍に周知されることに恐れただけでしょう?」

 

「ち、ちげーし!?そんなんじゃねーし!?」

 

「……」

 

なるほど、確かにこめっこちゃんを救出したとはいえ、そのまま戦う訳にはいかなった、その理由はよくわかる。仮に私達が出くわしたとしたらどうしていただろう。戦えないアンリがいる傍で下級悪魔程度ならともかく、魔王軍の幹部がいるとなると戦闘は避けたくなるかもしれない。

 

理屈はわかる。それでも多分、私にはカズマ君に対する嫌悪感が拭いきれていないのかもしれない。

 

だから……、私は少しだけイラついていたのもあって、こんなことを言ってしまう。

 

 

 

「……それはつまり…我が身可愛さに私達の名前を魔王軍に売った、と解釈したらよろしいですか?」

 

「…アリス?」

 

「えっ、いや待ってくれよ、俺はそこまで言ったつもりは……」

 

「結果的にそうなっていますよ?ミツルギさんの名を語ったようですがミツルギさんは私のパーティメンバーです。それを盾にしようとしたことは私達のパーティそのものをそうしたのと同じ事なんですよ」

 

「…アリス、僕もそこまでは思っていない。だから少し落ち着いてくれないか?」

 

またも私のせいで一気に険悪な空気になってしまっていた。本来そこまで思ってはいない。少しは思っているけど言うほどではない。

だけど口に出してしまえば、案外スラスラと言えてしまう。

 

「…行きましょう、魔王軍の幹部はそこにいるカズマ君(ミツルギさん)がなんとかしてくれるのでしょう?」

 

目線だけをカズマ君に向けてそう言い放つと、私はそのままカズマ君達に背中を向けた。そして迷うことなく歩いていく。ゆんゆんもミツルギさんも、私の態度に困惑しているようだ。何かを言いたそうだけど何も言ってくることはなく、ただ私に着いてきてくれた。

 

『…お姉ちゃん――…』

 

横を歩くアンリの悲しそうな表情が心に刺さる。だけどカズマ君には、一度色々な考えを改めて貰いたい、そんな想いがあったから、今私が言ったことに関して後悔はしていなかった。

 

カズマ君は武器を所持していなかったという。魔王軍が襲撃しているこの里でその有様は少し危機感がなさすぎではないだろうか、仮に自分の元へ攻めてきたら紅魔族に守ってもらうつもりだったのだろうか、それは冒険者としてあまりに情けなくはないだろうか。

 

色々自分なりの考えを出してみたけど、これは言ってしまえば私のカズマ君に対する八つ当たりなのかもしれない。カズマ君が私達を盾に逃げようとした訳ではないことくらいは私としても分かっていた、流石に悪意をもってそんなことをする人ではない。

 

きっとこれは私が心身共に未熟だから出てきた一種の文句に過ぎない。こんなことを言ってしまっても…、…後で後悔するだけなのに。

 

 

 

 

 

 

視点変更―無し―

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…そりゃ悪いのはこっちだけどあそこまで言うことないだろ!?」

 

「…だが否定はできない。結果的に私達はアリス達の名を魔王軍に売る事で、その危険を彼女らに向けてしまったことになる」

 

「ちょっとカズマさん、どーすんのよ?めちゃくちゃ怒ってたじゃない!?このままじゃ本当にアリスが屋敷から出ていっちゃうんじゃない!?謝って!私と私の大事な信徒の為に謝ってよ!!」

 

アリス達がいなくなってからカズマのパーティは荒れていた。もはや完全に空気となっていたぶっころりーはその様子を複雑な様子で眺めているだけだった。

 

「うーん…確かに仲間を売って助かろうとする行為は褒められた行為ではないかもしれないね。少なくとも俺達ではありえない行為だ」

 

「うぐっ…」

 

「それにあの子と完全に険悪な関係になってしまってるね、君はこのままでいいのか?」

 

「ぶっころりー、何か考えがあるのですか?」

 

不敵に笑うぶっころりーにめぐみんは問う。その問いにぶっころりーは黒いマントを派手に翻してポーズを決めた。

 

「ふっふっふ…このぶっころりーにお任せあれ!しっかりと二人の仲直りに務めさせてもらおうではないか!!」

 

「…おいめぐみん、この人本当に大丈夫か?不安しか感じねーんだけど」

 

「なんでもいいわ!このまま大事な信徒であるアリスとお別れなんて私は絶対に嫌だからね!!」

 

カズマとしては仲直りする為の案は何も浮かばない。だから渋々ながらもぶっころりーの提案を聞くしかなかった。それがとんでもない事になるとは知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視点変更―アリス―

 

―紅魔の里・族長の家―

 

時間は既に夜も深けて、私達はお世話になっているゆんゆんの実家へと帰ってきていた。

余計な事があったせいなのとそんな気持ちではなくなったのもあって、結局兵器の格納庫とやらに行く前に日が暮れてきていて、明日に回すことにしたのだ。

だけど私から生まれる険悪な空気は未だに収まっていなかった。

 

「…アリス君、ご飯は口に合わなかったかね?なにやら不機嫌そうに見えるが…」

 

「…い、いえ、そんなことはありませんよ。とても美味しいです」

 

「ふむ…ならいいのだが…」

 

族長さんが私に心配するように話しかけるがちっとも良くない。そう言いたそうなゆんゆんとミツルギさんの気持ちが視線で刺さっている感じがした。

一方私としてはカズマ君の件で怒ってこんな空気になっている訳ではない、むしろ逆。

 

カズマ君に言った事で激しく後悔しているからこそ、こうなっていた。

 

あの時も絶対後悔すると予感はしていたのに、私は何故あそこまで言ってしまったのだろうか。過去に戻れるならあの時の私をビンタしてでも止めてやりたい、そんな気分で俯いていた。

 

カズマ君に謝ればそれで済む話かもしれない、だけどあの言い方は流石にカズマ君としても怒っているかもしれない。もうアリスとはいられないから屋敷から出ていってくれとか言われたらどうしよう。このままずっとこんな険悪な関係が続くならそう言われる前に私が屋敷を出ていくことになりそうだけど。

 

許してくれなかったらどうしよう…、それが怖くて、私は何も動けずにいた。

 

「…ご馳走様でした、とても美味しかったです、」

 

「…アリス、ほとんど食べてないじゃない、本当に大丈夫なの…?」

 

「…すみません、今日は色々あって疲れたので…少し休ませてください」

 

「アリス…」

 

あーあ、またこの二人を心配させてしまっている。完全に自業自得なのだけどやるせない気持ちになってしまう。

多分今はそっとしておこうと思っているのかもしれない、私が逆の立場ならそうする。そうしてくれそうにしている。

 

本音を言えばさっさと解決して気持ちを切り替えたい、だけど昔から私は引きづってしまう性格故に、こればかりはどうにもならない。

 

二人や族長さんに見送られてゆんゆんの部屋に入ると、ベッドには既にアンリが気持ち良さそうに眠っていた。アンリは基本すごく早寝早起きだ、暗くなったと思えば眠そうにしている。今日の場合私がこんな感じだったので中々寝付いてくれなかったが私があやしつけることでなんとか眠ってくれた。

 

アンリにまで心配させている様はかなり情けないとも思えた、この子は私なんかの心配をしている心の余裕はないはずなのに。

 

「…はぁ……何をしてるんでしょうか私は」

 

誰も聞いていないと分かっていたので布団の上にペタリと座り込んで呟いた。心にモヤモヤが溜まっているこの感じはあまり好きではない。まるで大雨でも降っているかのような曇り模様の状態はどうすれば晴らすことができるだろう。

 

時間が解決してくれるのを待つしかない。結局はそんな考えに落ち着いてしまう、何も考えたくないので後回しにしているだけ。

 

少し時間が経てば、部屋に近付いてくる足音が聞こえてきた。そしてガチャっとドアノブを回す音とともに扉が開かれる。

 

「……アリス、起きてる?」

 

「…はい、一応……」

 

気まずそうに聞いてくる様子には罪悪感が募る。私が変にカズマ君にあれこれ言わなければこんなことになってないのに。

 

「…あのねアリス、良かったら温泉に行ってきたらどうかな…?」

 

「…温泉、ですか?」

 

「うん、この紅魔の里にも温泉はあるの。私はこれからお父さんに着いて行って会合の見学にいかないといけないから一緒に行くことはできないけど…このまま部屋に閉じこもるよりは気晴らしになるかなって」

 

…少し迷ったけど確かにこのままこの部屋で塞ぎ込んでいるのは精神的にもよくない。それだけは確かだ。夜風に当たることで頭も冷やせそうだしありかと思えてきた。

 

「…なんか気を遣わせてすみません…」

 

「ううん、私達、親友なんでしょ?だったらもっと頼ってよね?私はいつでもアリスの味方なんだから」

 

「…ありがとうございます…とはいえ、私はその温泉の場所を知らないのですが」

 

「ここからそんなに遠くないわよ、めぐみんの実家に向かう途中にあるし看板もあるからわかりやすいはずよ。…それじゃ私はお父さんに着いていくから…また後でね?」

 

そう告げるとゆんゆんは部屋を出ていった。会合とやらの内容は知らないけど多分お昼にカズマ君達が出逢った魔王軍幹部の話でもするのだろう。そして次期族長となるゆんゆんに良い機会だから一緒に来て見学していなさいとか族長さんが言ったのだろうと思われる。

 

それにしても温泉…、アルカンレティア以来入っていない。できたらアンリも誘いたいけど今は夢の中、起こすのもかわいそうだし独りでいくしかないだろう。

 

そうと決まれば切り替えよう。着替えなどは収納用の魔導具に入っているからこのまま持っていけばいい。魔王軍がまたやってくる可能性も考慮してフル装備で行かなければ。そんな想いで準備をすること数分、リビングに戻るとミツルギさんしかいなかったので声をかけるとゆんゆんから既に聞いていたらしく、普通に送り出してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔の里・温泉前―

 

めぐみんの実家の方向へと歩くこと5分ほどで、その温泉の場所はあっさりと明らかになった。何故なら日本でもお馴染みのあの温泉マーク♨︎が当然のように看板に描かれていたのだから。

特にお金がかかることもなく、里の人間が共用で利用しているらしい。

脱衣場に入ると、どうやら貸切状態のようで棚にある笊籠はどれも何も入ってはいなかった。これから気を遣わずにゆっくりできそうだ。

 

頭のリボンを外せばツインテールは崩れるように超ロングヘアへと変貌を遂げる。自分で言うのも変な話だが何時見ても人形のように綺麗な髪だ、今ではちょっとした自慢にもなっている。

 

衣服を脱いで籠に収めるとそのまま身体にタオルを巻いて浴場への扉を開く。そうすれば日本でも見かけるような石で囲まれた温泉が私を迎えてくれた。

 

「…まるで日本のような温泉ですね…」

 

思わず声に出してしまったけど誰もいないのだから問題はないだろう。掛け湯をしてから備え付けられていた石鹸やシャンプーで髪や身体を大雑把に洗うと、それらをお湯で流してから目当ての温泉に浸かる。

 

「ふう……」

 

独りで入る温泉、広くて落ち着かないかなと思ったけど入ってみればそうでもない。これは教えてくれたゆんゆんに感謝しなければと思えるほどに心落ち着ける時間を過ごせている気がした。

 

 

――そんな時だった。

 

 

「……んが……あ、あれ?つい眠っちゃってたか…」

 

「……え?」

 

岩陰から聞こえたのは男の人の声。突然のそれに私は放心状態に近い何かになっていた。

…というよりこの声…聞いた事があった。

 

「「…………」」

 

岩場から顔が出てきて、私と目が合う。多分私は信じられないものを見るような目をしていると思う。

 

私の目の前には、あのカズマ君が普通に同じ温泉に入っているのだから。次第に今の状況に気が付いたのか、カズマ君の表情は無言のままみるみる変わっていく。

 

 

「きゃぁぁぁぁ!?!?」

 

「はぁ!?ナンデ!?アリスナンデ!?」

 

 

この広い温泉に、私とカズマ君の絶叫が響き渡った。完全にデジャヴだった。これはモヤモヤを無くすどころかより深みにハマりそうなんだけど、トラウマ案件なのだけど。

 

誰か教えて欲しい、私が一体何をしたというのだろうと、そんな風に思わずにはいられなかった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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