内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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※今回紅魔族のモブとして特別ゲストがチラリと来てますがただのネタです、似た言動をする別人ですのであしからず。今後登場はしません。




episode 131 古代兵器への対抗手段

 

 

 

〇月×日――。

 

ヤバい。この施設のことがバレた。

 

だが幸いな事に俺が作っているものがなんなのかはわからなかったらしい。

 

国の研究資金でゲームやらおもちゃやら作っていると知られた日にはどんな目に遭わされることやら…

 

俺の楽園に踏み込んできたお偉いさんが俺の作ったゲームの用途を聞いてきた。

 

オモチャだなんて素直に言える訳がない、世界を滅ぼしかねない兵器ですよとか真面目ヅラでぶっこんでみたら完全に信じてた。

 

俺が作ったゲームガールを手に「こ、これが…」とか言いながら震える同僚の女研究員の反応は愉快だった。あんた普段気が強いくせに何ゲームの起動した時のピコーンって音だけでびびってんですか。笑いを堪えるのが大変だった。

 

「この既視感……やっぱりかよ」

 

「……?…続きを読みますよ?」

 

 

〇月△日――。

 

俺の研究所に多くの予算をつけてやると言われた。それはありがたいのだが代わりに魔王に対抗できる兵器を作れとのこと。

いや俺もうチート能力駆使して散々国に貢献したじゃん、まだ働かせるの?

 

「争いは何も生み出さない」と凄くイケメンぶって言ってみたら引っぱたかれた。仕方ないので何を作ろうか考えて、無難に変形可能な人型巨大ロボを作ろうと提案したら舐めんな!と怒られた。予算が足りないらしい。どうすりゃいいんだと半ばヤケクソになってバカでかくて魔法耐性ガチ盛りでつけときゃいんじゃないすか?って鼻くそほじりながら適当に言ってみたらすんなり通った。なんでだよ。

 

「…なぁ、とりあえず必要な情報だけ読まないか…?」

 

「…そうは言われましても…あ、この辺は『魔術師殺し』に関することのようですよ」

 

 

 

――〇月×日。

 

何をモデルにしようかと考えていたらちょうど野良犬が。こいつでいいやと考えた案は犬型兵器『魔術師殺し』と名付けることにした。

 

設計図を提出してみたら「なるほど蛇型か、これなら足を作る必要もない、考えたな」と賞賛してくれたがいやどう見ても細長い犬だろう、俺に絵心ないのは承知の上だけどもっとよく見ろよ、と思いながらあらためて見ると蛇にしか見えなかった。もうこれでいいや。

 

 

 

〇月×日――。

 

試作してみたらあっさり完成した。だけどバッテリーすぐに切れるし燃費が悪すぎる。

魔族相手にけしかけてみたらビビっていたのでこれは人類の手に余るとか言ってそのまま封印しておこう。

 

バッテリーがないから動かないけどそのうちキメラの材料にして生体兵器として使えないかな。それができたらバッテリーいらずだしカッコよさそうなのに。

 

 

 

 

「…デストロイヤーはもっとひどいぞ、設計図の上に止まった蜘蛛を潰してそのまま提出したら受理されたらしい」

 

「…えぇ…」

 

何処か投げやり気味にも聞こえるカズマ君の追記に呆れた声を上げながらも次のページをめくり…、私は何も言わずにページを飛ばして読むことにした。理由は単純、紅魔族について書かれていたから。

ゆんゆんは知られたくなかった様子だし今は特に関係ないこと、無理にカズマ君が知る必要もない。

しかし中を見ればこれはひどい。声に出さずに読んでみればあの紅い目は被検体となった紅魔族のワガママだとかあの独特な名前も適当にあだ名をつけたら気に入ったらしい。どうやら紅魔族が独特な感性を持っているのは元々だったようだ。

 

「アリスどうした?」

 

「…どうでもいい事柄でしたから飛ばしてます、次読みますね」

 

 

 

〇月△日――。

 

紅魔族のやつらが我らの天敵である『魔術師殺し』の対抗手段がほしいとごねだした。いや別にお前らの天敵として作った訳じゃないし、そもそも動かないから。

 

いくら言っても誰ひとり聞かないので適当に武器を作ってやった。

 

適当に作ったはずなのに凝りすぎて凄い代物になった。電磁加速要素なんてないけど便宜上『レールガン(仮)』とでも名付けておこう。

 

試しに魔力充填させて撃たせてみたけどレールガン(仮)すげぇ、マジすげぇ。これこそ世界を滅ぼしかねない兵器なんじゃね?

魔力を圧縮して撃ち出すだけのお手軽兵器だったのにあまりの威力にびっくりした。

 

とはいえありあわせの部品で作っただけだし数発撃てば使えなくなるだろう。悪用されても困るしいっそ生活用品の一部に擬態させておくとかどうだろうか、長さ的にも物干し竿とかにしたら丁度いいかもしれない。

 

だけどこれ万が一魔王軍に奪われちゃったりしたら詰みじゃね?まぁそりゃ魔術師殺しも同じなんだけどさ。まぁ流石にそんな最悪なことにはならないと思うけどね。あえて対処法考えるならいくら魔法耐性高くても所詮は金属だからね、激しい温度差を与えたら割と脆くなるんじゃないかな。知らんけど。

 

 

 

 

〇月×日――。

 

 

しかしまいったな、これらの事が高評価で気を良くしたお偉いさんが新たな魔王軍対抗手段として超大型の機動兵器を作るつもりらしい。

 

そんなもん簡単に作れるわけねーじゃん、バカじゃねーの?と思ってたら設計図を書けと俺に言ってきた。やっと休めると思ってたらこれだよ。

 

書いてたら蜘蛛が設計図の上に降りてきたのでバチンと叩き潰したら設計図にこびり付いてしまった。貴重な紙を無駄にはできないしとりあえずこれで出そう、どうせ案が浮かばないしヤケクソだ。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

「手記はここまでですね。それにしても…超大型の機動兵器…蜘蛛を潰して出した設計図…」

 

「やっぱりじゃねーか!?これらを作ったのデストロイヤー作ったやつと同じやつだろ!?なめんなっ!」

 

カズマ君の気持ちはよく分かる。この人も私達と同じ日本人の転生者としたら当然私らと同じ理由でこの世界に転生したことになる。

しかし実際やらかしているのは逆に世界を混沌に貶めているだけだ、デストロイヤー然り、魔術師殺し然り、レールガン(仮)然り。

 

…しかしわかってはいたけどやはりあのレールガン(仮)は『魔術師殺し』に対抗するものだったらしい。これを読んで私とカズマ君は2人して悩むように考えていた。

色々と思い返す。だけど温度差と言われても簡単には浮かばない。火属性魔法と氷属性魔法を同時に撃ち込めばいいのだろうか。

 

 

 

「やるにしてもかなりの火力がないと難しいかもしれないな…、アリス、火属性のバースト使って水属性のバースト使うとかできないのか?」

 

「…さっきまではできましたが今は不可能です。火属性にする為のフレアタイトの魔晶石が粉々になってしまったので」

 

「…マジか…それならアリスには水属性だけ使ってもらって火属性はめぐみんの爆裂魔法で対応してもらうしかないな…、里を破壊してしまうけどこのままじゃ…」

 

できれば里の中での爆裂魔法は避けたい。だけどそうも言ってはいられないのが現状だ。しかしそれだけでどうにかなるのだろうか、もっと確実性がほしい。そう考えを巡らせる。シルビアはグロウキメラ。シルビア自身も合成モンスター。

 

……合成モンスター……?

 

 

 

 

「…カズマ君、いっそ『魔術師殺し』対策と言うよりも…シルビア対策として考えてみませんか?」

 

「…具体的にはどうするつもりだよ?」

 

「…それはですね――」

 

私の思いついた作戦をカズマ君に告げれば、カズマ君は難しそうな顔をしていた。上手くいく確証も保証もない。だけど今の私たちに他の手が浮かばない。

 

「…それしかないな。じゃあアリスはミッツさん達のところへ援護に行ってくれるか?俺はアクア達を呼んでくる」

 

さりげなく危険な方を私に押し付けているような気がするけど多分気の所為だろう。

とりあえず作戦は整った。上手くいくかはわからない、完全な博打でしかない。だけどこのまま里が壊滅してシルビアが逃げるのを待つ訳には行かない、なんとしてもここで倒さなければならない。

 

一瞬…今起こっていることはシルビアを逃がした私のせいかもしれない、そんなことを考えてすぐに首を横に振る。こんな事を考えていたらまたゆんゆんに叱られてしまう。

 

カズマ君はすぐに施設から出ていった。この作戦はアクア様がいないと成立しない。それに現在シルビアと交戦中のミツルギさん達の傍にヒーラーがいない、すぐに私が行かなければ。

 

ずっとポニーテールだった髪型を解いて、ツインテールにし直す。そんな事をしている暇はないけど何故か手が動いていた。

自然な流れでツインテールを作り終えれば、自身の両頬を両手で挟むように叩いた。大きく息を吸い込んで吐いた。ヒリヒリする頬に気になりながらも、そのまま走り出した。

 

無意味な行動かもしれない。

 

だけど、たまにこうしたい気持ちになる。

 

こんなことしてる場合ではないかもしれない、恐怖もある、だけどこういった戦いの前はいつもそうだった。

 

気合を入れ直した感じで気持ちを切り替えれば、私はそのまま走り出す、仲間達が待つ場所へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―紅魔の里―

 

施設を出るなり見据えたのはシルビアの存在。変わらず元気に暴れ回っている。紅魔の里はシルビアの吐く炎のブレスによってどこもかしこも燃えていた。真夜中だというのにあちこちの燃え上がる炎により、周囲の景色は鮮明に私の瞳に映し出されていた。

アンリは大丈夫なのだろうかと一瞬頭によぎったけど、そこはめぐみん達を信じよう。それよりも私は私にできる事をしなければ。

 

「ゆんゆん!」

 

「…アリス!」

 

シルビアへと向かって走ればすぐにゆんゆんを見つけた。私と別れてからずっと戦っていたことは、ゆんゆんから見える疲労と傷から察することは容易だった。

確認をとるまでもなく《ハイネス・ヒール》を唱えれば、ゆんゆんの傷は塞がっていく。

 

「状況は?」

 

「今はミツルギさんとダクネスさんが引き付けてるの、あるえも手伝ってくれているけど魔法自体ほとんど効果がなくて…」

 

聞くと同時に動く。負傷しているのなら治療が必要だろうと走れば、ゆんゆんも後を着いてきた。そしてシルビアのいる場所に近付く事で安易に三人を見付ける事ができた。

 

「くっ…、まだだ!」

 

「ミツルギ殿、あまり無理はするな。私がこの場で盾の役割とすれば、貴殿は剣。だから防御は全て私が引き受ける!」

 

「しかし…!」

 

「ふふっ…やはりこういう展開は自身で体験してこそだね、お陰で帰ったら筆が止まりそうにない未来しか見えないよ、今から執筆が楽しみで仕方ない!」

 

「中々やるじゃない?だけど貴方達は明らかに疲弊していて、私はまだ全然元気よ、いい加減諦めたらどうかしら?」

 

 

 

奮闘している三人と余裕にしか聞こえないシルビアの声。その三人はその口調こそ大丈夫そうに見えるが前衛であるミツルギさんとダクネスはかなり疲れているように見える、その理由は簡単だ。

 

こう見ていてもミツルギさんの魔剣グラムはシルビアの下半身である魔術師殺しですら易々と切り刻んでいる。しかし斬ったその場で傷口から泡が吹き出し、その傷口はすぐに埋まっていた。とても有効打には見えない。

 

「アッハッハッ、貴方の魔剣で斬ったところで、私の超回復は越えられないようね?」

 

「回復できるのは貴方だけではありません…!《セイクリッド・ハイネス・ヒール》!!」

 

私はミツルギさんとダクネスの背後に回ると即座に回復魔法を唱える。周囲に広がるエメラルドグリーンの光が私の仲間達とあるえさんを癒していく。

 

「アリス!すまない、助かったよ」

 

「おぉ、仲間のピンチに颯爽と現れるタイミング、実に見事だ、やはりこの戦いに参加して良かった…!」

 

「来たわね忌々しい蒼の賢者!!それに族長の娘だったかしら?貴女達みたいな若くて可愛い子、大嫌いなのよ…!特に蒼の賢者には先程のお礼をたっぷりしてあげないとね…!」

 

ここにいる動機が不純なあるえさんはさておき、シルビアの目は確実に私に向いていた。同時に大きく息を吸い込むと、その口から炎が放射された。

 

「下がれアリス!!殿は私に任せろ!」

 

「ダクネス!」

 

迷うこと無く炎の前に立ち塞がるダクネス。その剣で振り払うように対処するがその程度で消えるような炎ではない。まずはあの炎を止めさせないと。

 

「《ロックジャベリン》!」

 

詠唱の短い《ジャベリン》で牽制するようにシルビアの頭部を狙う。それは見切られていたようでシルビアの左手が顔面への直撃を阻止した。

 

「……ちっ!」

 

しかし着弾した左手から鋭利な岩の塊が精製されてそれはシルビアの頭部や胸部に四散して襲いかかった。予想外の攻撃だったのか、シルビアは炎を吐く事をやめて飛んできた岩を振り払う。

 

「《ハイネス・ヒール》!」

 

すぐにダクネスに回復魔法を唱えた。いくらダクネスが頑丈でもずっと攻撃を受けていてなんともない訳がない。

 

「助かったアリス、これでなお盾として貢献できる…!」

 

「…少しは回避も覚えて欲しいのですが」

 

「私の辞書にそんなものはない!!」

 

少しカッコイイかなと思ってたらやっぱりダクネスは平常運転でした。まぁ無理をしてそうならこうしてヒールをしてあげればいいかとシルビアに向き直る。

 

「見せてあげるわ、この魔術師殺しの真骨頂を……!《エンシェント・ディスペル》!!」

 

「…っ!?」

 

シルビアの発声と同時に展開されたのは大きなドーム状の結界、それはみるみるうちに広がっていき…ついには里の全体を覆いきってしまった。

 

「……黒き雷よ、我が敵を撃ち貫け…!《カースド・ライトニング》!!」

 

あるえさんが唱えた上級雷魔法。だけど何も起こる様子はない。シルビアの唱えたスキル、そして魔術師殺しの真骨頂…。

 

「…参ったね、やはり使えないか。…どうやらあの結界は魔法封じの効果があるらしい」

 

「アッハッハッ、大して効かないからどちらでも構わないけど、こうしたほうが貴方達紅魔族には効果的でしょう?それは蒼の賢者、貴女も例外ではないわ!」

 

満足そうに高笑いするシルビアだけど、私個人としては何か変わったような感じはしなかった。ならとりあえず試してみようと詠唱を試みる。

 

普通に魔法陣が形成され、杖の魔晶石は光り輝く。ここまではいつも通りだ。思いのまま杖を掲げて、そして放つ。

 

「…《ターン・グラビティ》!!」

 

「…なっ!?」

 

地属性が付与された《バースト》は平常運転で放たれて大地を荒ぶらせる。岩の大津波はシルビアを襲い、飲み込むように流れるがシルビアのサイズが大きすぎて効果は薄く見える。それでも私が問題なく魔法を使えた事は証明できた。

 

「馬鹿な…何故魔法封じが効かない!?」

 

「《ライト・オブ・セイバー》!!」

 

「……ぐっ!?」

 

続いてゆんゆんの十八番である上級光魔法がシルビアに刺さる。魔術師殺しの魔法耐性でダメージはあまりなさそうだけどシルビアを驚かせるには充分だった。

 

「どうやらその魔法封じとやらは私達には効かないようですね」

 

「…ふん…それで優位に立ったつもりかしら?それに…貴女達が効かなくても…基地で私の部下と戦っている紅魔族の方はどうでしょうねぇ?」

 

「……っ」

 

私とゆんゆんに通じないのには勿論理由がある。以前王都でアイリスといて襲撃された日、私は自身とゆんゆん用に買った沈黙・魔法封じ対策の指輪を常時つけていたからだ。必ず対策できる訳では無いが今回は上手くどちらも効力を発揮してくれた。仮にこれがシルビアにバレて魔法封じのスキルを連発されたら詰んでいた。だから効かないとハッタリをきかせたのだけど上手く騙されてくれた。

 

しかしシルビアの言うように私達は問題ないとして今も魔王軍の前線基地で戦っている紅魔族の人達は確かに心配だ。このままシルビアに背を向けて救出に行くのは難しい。

 

「シルビア、紅魔族をあまり舐めてもらっては困ります」

 

「めぐみん!」

 

どうすべきか迷っていたら私達の背後から聞こえた声。それはめぐみんだった。後ろにはカズマ君とアクア様もいる。カズマ君が例の作戦を話して連れてきたのだろう。しかしこの人数なら何人か紅魔族の人達を救出に行った方がいいのではないだろうか。

 

「ですが魔法が使えないといくら紅魔族の人達でも…」

 

「確かに紅魔族のほぼ全てがアークウィザードです、ですが魔法を封じられた程度で好き勝手されるほど紅魔族は弱くはありませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――一方その頃

 

―魔王軍前線基地―

 

シルビアによる魔法封じのスキル《エンシェント・ディスペル》の範囲は非常に広く、激闘を繰り広げていた紅魔族にも影響を及ぼしていた。

 

「ヒャッハー!流石はシルビア様!!魔法が使えない紅魔族なんて何も怖くねーぜー!」

 

「…なるほど、急に魔法が使えなくなったと思えばそういう事か…」

 

「…まぁ、だからどうしたの?って感じだけどねー」

 

魔法が封じられた。それは魔法攻撃を主体とするアークウィザードにとって致命的である…はずだった。だからこそモンスター達の士気はあがっていた。だけど紅魔族の人達は誰もが狼狽えることはなく、平然としている。これにはモンスター達も気に入らない。一匹のゴブリンが棍棒片手に威勢よく族長の傍に詰め寄った。

 

「て、てめぇら何余裕ぶっこいて…「…ふんっ!」ぎゃぁぁ!?!?」

 

ガツンと思いのまま拳による一撃。それは痩せ型ながら筋肉質な族長により放たれた。騒いでいたゴブリンはその一撃により吹っ飛ばされて気絶してしまう。

 

「はっはっは、いつからだね?」

 

「な、何を……」

 

「…一体いつから魔法が使えない紅魔族は弱いと錯覚していたのかね?」

 

族長の赤い目が不気味に光る。これには下級悪魔やゴブリン達はゴクリと生唾を飲んで後退する。その背後には…既に違う者が忍び寄っていた。

 

「斬刑に処す、――その六銭――無用と思え」

 

音もなく忍び寄る人影が、下級悪魔達を切り刻む。その手にはナイフを持ち、紅い瞳を光らせて紅魔族の青年は次々とモンスター達を撃破していく。

 

(われ)は面影糸を巣と張る蜘蛛。 ───ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ」

 

「ふ、ふざけんな!?さっきより厄介になってんじゃねーか!?」

 

他にも魔導具による攻撃やら、武器として仕込み杖からの刃でモンスターを撃退する明るい性格の女性など、紅魔族の人達に衰えを見せる人は誰一人いない。

 

アークウィザードと一言で言っても色々な人がいる。覚えるスキルによって役割が違ったりするのはむしろ一般的である。

 

アークウィザードとして攻撃魔法に重点を置くのは基本的なものであるが、人によっては身体強化魔法をメインにしたりする人もいる。先程思いのまま殴った族長がその部類である。ゆんゆんのように短剣を常備して遠近どちらも戦えるスタイルの者もいる。

 

しかしそれはアークウィザードに限った話でもない。一般的に前衛にもなれるアークプリーストだが、アリスのように後衛主体の者もいる。

 

魔導具にしてもここは紅魔の里、特産品でもある魔導具はこういう時の為に戦闘時にはそれぞれが常備していた。

 

結果、めぐみんの言うようにシルビアの魔法封じによって紅魔族が劣勢に陥ることは全く無かった。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

―紅魔の里―

 

事情が分からないものの、今はめぐみんの言葉を信じるしかない。アクア様もめぐみんもいる、これで作戦の準備は整っていた。

 

しかしその作戦は上手くいくか分からない、博打要素しかないもの。これで駄目ならどうするべきか、考えるだけ億劫になる。

 

「アクア様、めぐみん、作戦は聞いてますね?」

 

「…その事なのですがアリス、私も先程のシルビアの魔法封じにかかったみたいなのですけどどうしましょう」

 

「…あー、アクア様…?」

 

一瞬まずいと思うけどそれは解除すれば済む話だ。私がセイクリッドブレイクスペルで解除を試みてもいいのだがベルディアの死の宣告と同じくこれは魔王軍幹部という強者によるデバフだ。解除できない可能性もあるので確実性を考えてすぐにアクア様に解除してもらおうと視線を移すも、アクア様は平然とした様子で首を横に振った。

 

「いくら私でも無理よ?これ状態異常ってよりも結界による妨害みたいだから、私はほら、女神だし問題なく魔法を使えるけど、解除するにはシルビアを倒すかシルビアが解除するしか手がないわよ」

 

…当然シルビアが解除するなんてことはありえない。そうなると早くも大きな温度差を実現する為の手段がなくなったことになる。爆裂魔法は使えない、私もフレアタイトの魔晶石がないので使えない。アクア様は水なら余裕だが火は起こせない。カズマ君、ミツルギさん、ダクネスも無理。

 

「よしアリス、仕方ないからプランBだ」

 

「ないですよ!?」

 

本当にどうしたらいいのだろう、これでは作戦が破綻してしまう。一応あれだけでも効果はあると思うけど少し物足りない、決定打がない。シルビアと激闘を続けるミツルギさんとダクネスを、ゆんゆんを見据えながらも考える。

 

しかし考えていても仕方ない、私もシルビアとの戦いに戻らなければ。不安しか過ぎらない状態ながらも、私は再び戦線に復帰したのだった――。

 

 

 






―キャラクター紹介―

『我が名はにゃにゃや!紅魔の里随一の肉屋のせがれ!』

氏名・にゃにゃや

備考・肉屋の息子。ぶっころりーの同期。一応アークウィザードだがステータスはギリギリアークウィザードになれる程度の魔力しかない。ナイフを使う戦いの方が好き。ゆんゆんにナイフの使い方を教えた事がある。

基本クール。その外見で女性から人気はあるが白黒に染めた熊の着ぐるみを着たりする謎の奇行に走ることがたまにある。なお彼女持ち。

という設定の今回のみ登場の完全オリジナルキャラクター(大嘘)









原神のアプデきたので次回遅れます()
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