内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 14 そして生まれた友情

それから少し探索して初心者殺しを見つけては同じようにウォールからのゆんゆんの攻撃魔法するだけな簡単なお仕事を繰り返して無事3匹目の初心者殺しを討伐することに成功した。

 

「…ぜ、前衛もいないのにこんなにあっさり終わるなんて…」

 

ゆんゆんが半ば放心めいた台詞を言うが他の人も似た感想だったりする。ちなみにダストやテイラーと組んだ場合は私は支援に回り正攻法で倒してしまう。

 

ぶっちゃけてしまえば私がウォールとアローを繰り返すだけでも討伐はできるのでソロで依頼を受けても何も問題はなかったりもする。以前の白虎狼のようなイレギュラーでもでてこない限りは。ただそれをテイラーさんに聞いてみたところ微妙な顔をされたのを覚えている。どうやら一部から依頼荒らしのような扱いをされて評判を落とす可能性があるとのこと。

ソロで討伐すれば全ての報酬を丸儲けなのでそれを繰り返すことが良い顔をされるかと聞かれたら確かにと思える部分もある。むしろこの街での平均推薦レベルより高めの依頼をソロでやってしまえるならさっさと王都とかに行けと思われそうだ。私がずっとソロでやるのなら問題はないけど私はテイラーさんのパーティに半固定といった形でお邪魔している立場である。つまり私の評判が落ちればテイラーさんのパーティの評判を落とすことになる、それだけはしたくない。

だから私は基本的にソロでの討伐はいかないようにしていた。確かにお金は貯めたいと思ってるけど何かを犠牲にはしたくないしペアで受けたとしても充分な報酬が期待できるのだから。なによりもこうやってメンバーを募集してクエストを受けることで新しい出会いがあるのもまた楽しみの一つでもある。

 

ちなみに初心者殺しの依頼の推薦レベル15以上で3人以上のパーティ推薦とのこと。

 

討伐も終わったことで、私とゆんゆんはアクセルの街へと歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

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冒険者ギルドの酒場。

 

依頼報告をすませて報酬をもらい、私とゆんゆんは少し遅めの昼食をとっていた。

 

「まさか…ご飯まで一緒してくれるなんて…」

 

2人でカエル肉のシチューを食べる。初めて見た時は食べたくなかったけどあの後食べてみたら鶏肉に近い味で普通においしかったので今では何も抵抗もなく食べれている。慣れとはこわい。

さて、このまま解散でもいいのだけどまだ夕方まで時間はある。今回の初心者殺しのクエストは捜索で夕方までかかると思っていたのだけど割とあっさり見つかったので予定より大分はやく終わることができた。ゆんゆんさえ問題ないならもう1つくらいクエストを受けてもいいのだけど。夕方までに終わらなくても明日やればいいだけだし。

 

「ま、また私なんかとパーティを組んでくれるんですか……!?それって、まるで固定パーティみたい…」

 

いちいち感動してるけどとりあえず問題なさそうである。うっとりしてるゆんゆんはさておき、私の手元には予めキープしていた依頼書があった。

 

 

 

 

薬の材料の調達。

 

アクセルから少し離れた湿地帯に群生しているコケ植物【マダラゴケ】の採集。こちらの用意する籠いっぱいになるまでお願いします。なお付近にはジャイアントトードなどが生息しています。

 

報酬金2万エリス

 

推薦レベル15。※最近グリーンアリゲーターの目撃情報がある為このレベルでの推薦になる。

 

なお、グリーンアリゲーターは生態系を乱す危険が高いので別途討伐依頼あり。報酬金10万エリス。

 

 

 

 

 

「それって、提示板でホコリ被ってた依頼書ですよね…それを受けるんですか…?」

 

シチューを頬張りつつも聞いてくるゆんゆんに、私は頷いた。本来採集クエストなどは1桁レベルのまんま駆け出し冒険者の受けるレベルのクエストである。採集だけなら報酬も安い。ただグリーンアリゲーターというイレギュラーのせいで初心者が受けられるものではなくなり、中級者向けになっているものの、グリーンアリゲーターが見つからない場合人数によっては赤字にすらなりかねない。だけど私が気にしたのはそんなことではなかった。

 

マダラゴケは薬の材料になるらしい。それが埃をかぶった状態ということは、おそらく未だに薬は完成していないのだろう。人体に関する薬なのか、農薬などの生活に関わる薬なのかは依頼書を見る限りでは定かではないが、これを受けることでその薬を作れるようになるのなら損得勘定なしで受けてもいいのではないかと思えたからだ。勿論何の薬なのか、ギルド側に確認をとるつもりではある。

 

「……言われてみれば、そう、ですよね……す、すごく、立派な考えだと思います!その依頼、私も手伝わせてください!」

 

先程の兎を助けていたゆんゆんならそう言ってくれると思っていたけど思った通りで私も一安心だった。ありがとうございます、またよろしくお願いしますねと笑顔で告げると、ゆんゆんはやる気満々な笑顔で返事をした。

 

 

 

 

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ギルドに確認したところ、マダラゴケは漢方の1種のようで腹痛などに効果があるらしい。ずっと誰も受けなかったことから、受けると決めた時にはギルド職員は丁寧に頭をさげてお礼を言ってきた。私もゆんゆんもこれによりやる気が増すことになる。湿地帯に着いた私達はサンプルのマダラゴケを手に持ち、グリーンアリゲーターを警戒する為にあまり離れすぎないように周囲を散策していた。

 

ただこの場所には問題があった。ウォールが使いにくいのである。

地面が一部沼地でぼこぼこしており、足場が安定しない場所では、地面を軸に描く魔法陣を構築しにくい。使えないわけではないのだけど、地面によっては不可視の壁が貼られない可能性がある。これもまた初期魔法故のひとつの穴である。

 

「あ、アリスさん、ここにいっぱいありますよ!」

 

ゆんゆんがマダラゴケを見つけたらしい。近付いてみると、岩場にはびっしりとマダラゴケが群生していた。同じような場所がもう1箇所くらいあれば、予め借りてきた籠がいっぱいになりそうである。ただグリーンアリゲーターがいる可能性があるので警戒は怠れない。ゆんゆんが採集している間に、私は周囲を見渡し警戒を強める。

 

今のところグリーンアリゲーターどころか、ジャイアントトードも出てきていない。静けさが逆に不気味に感じた。

 

ゆんゆんの採集が終わるのを確認するなりそのまま捜索を再開する。その時だった。突如沼地が膨れ上がる。

 

「きゃあああ!?」

 

泥水の飛沫がこちらまでかかる。出てきたのはジャイアントトードだ。だけど様子がおかしかった。普段ならこちらを見るなりその大きな口を開けてこちらを丸呑みしようとしてくるはずなのだが、こちらに目線が向いているにも関わらず、それをせず、そのまま大きくジャンプしようとする。

 

「ああぁぁ!?ら、ライトニング!!」

 

驚いた拍子にゆんゆんが中級雷魔法を放つ。雷に弱いジャイアントトードは痙攣してその場に倒れ込んだ。…だけどそれは間違いだった。そのジャイアントトードの下から大きな飛沫が飛んでくる。

 

「え!?」

 

出てきたのはジャイアントトードほどの大きさではないものの、それでも人1人程度なら飲み込めそうな大きさの大きなワニ。緑色の怪物はまさにグリーンアリゲーターだった。どうやらジャイアントトードを追いかけていたようで、獲物を横取りされそうになっていると勘違いされたのか、グリーンアリゲーターはまっすぐゆんゆんに向かいその大きな口を開けた。

 

ゆんゆんはジャイアントトードにライトニングを放ったばかりだ、次のスキルを打とうにも間に合いそうにない。だけど魔法を準備していたのは、ゆんゆんだけではない。

 

《ジャベリン》

 

転生特典スキルその5。いくつあるのかは秘密である。中級魔法スキルのそれは、威力的にアローとランサーの間に位置する。縦描きの魔法陣から出現した大人1人くらいの大きさの半透明の槍がグリーンアリゲーターの大きく開けた口の中へと刺さり串刺しにする。後はゆんゆんを援護するだけ。

 

《クイックアップフィールド》

転生特典スキルその6。自身と周囲の味方の攻撃速度、詠唱速度をアップする魔法陣を形成。その場は赤白い霧のような光に包まれる。ウォールと同じく地面に影響はするものの、私とゆんゆんの距離は近かったので問題なくそれは作用する。

 

「えっ…ラ、ライトオブセイバー!!」

 

突然の速度のあがりに一瞬戸惑ったゆんゆんだったがその詠唱速度は中級魔法スキルのライトニングと変わらなかった。神速の光の剣は、グリーンアリゲーターの頭に直撃を許すと、グリーンアリゲーターはそのまま沼地に倒れた。

 

 

 

 

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グリーンアリゲーターを倒した後、残るマダラゴケを発見し採集した時には既に夕方になっていた。ギリギリ依頼を達成できた私とゆんゆんは、交代で籠を持ちながらアクセルへの帰路へと向かっていた。

 

 

「あ、あの。」

 

今は私が籠を背負っていた。筋力が見た目通りしかない私には地味に重労働である。そんな中ゆんゆんの声に、私は振り向いた。

 

「きょ、今日は、ありがとうございました。色々ありましたけど、こんなに充実した日は、初めてかもしれなかったので。」

 

もじもじとしながらゆんゆんは言葉を続ける。

 

「えっと…えっと…それで…それで…お、お願いします!私とお友達になってください!」

 

ゆんゆんは私の前にでるなり、顔を赤くして私に頭をさげた。私はただ目を細めた。この言葉に勇気がいることなのは、私は理解していた。

 

この世界に来て、友達という存在は私にとって何よりもかけがえのない存在なのだから。友達がいなかったら、あの日苦悩に悩んだ日、自分の死んでいたことを意識した日に、私はどうなっていたのかわからない。

 

セシリーお姉ちゃんに出会えたから、アクシズ教の布教活動をした。

 

アクシズ教の布教活動をしていなかったら、おそらく私はダストとリーンに声をかける勇気がなかったと思う。

 

私がテイラーの前で絆を大切にしたい、ダストやリーンともっと仲良くなりたいと言ったことを2人が受け入れてくれたから、今の私がある。

 

布教活動は一見マイナス要素だったかもしれないけど、結果的には私のプラスになっていた。……犠牲者には申し訳ないけど。

 

そんな私にとって大切なお友達が増える、これほど幸せなことはない。

 

だから私は、これからもよろしくお願いします。と。笑顔で告げた。

 

「うっ……ぐすっ…」

 

そう告げたら、ゆんゆんは泣き出した。両手で弱々しく涙を拭っていた。

 

「ご、ごめんなさい…だって、断られたらどうしようとか思ってたらこわくて……でも、受け入れてくれたのが嬉しくて…ぐすっ…」

 

もしかしたら私もあの時テイラーとダストとリーンの前ではこんな感じだったのだろうかと考えたら、なんだか恥ずかしくなってきた。ゆんゆんの気持ちが痛いくらい共感できた私はゆんゆんの横に立つと、慰めるように背中をぽんぽんと優しく叩いた。

 

「ぐすっ…ありがとうございます……こちらこそ、これからもよろしくお願いします…」

 

そういえばこの子は13歳だったんだ、歳下だったんだと思い出すと、なんだか優しい気持ちになりながらも、私たちはそのまま並んで歩き出した。新しい友達を大切に思いながら。

 

 

 

 




《ジャベリン》中級魔法スキル。アローとランサーの間の魔法。それくらいしか説明しようがない。

《クイックアップフィールド》
範囲内の自身と味方の攻撃速度、詠唱速度をあげるフィールドを形成する。代償として、そのスキルを使っている間、自分の使用するスキルの消費魔力が2倍になる。更に効果持続時間は10秒でクールタイムがあるので連発できない。


とりあえずゆんゆん編終了。
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