―王都ベルゼルグ―
翌日、私達パーティの面々とアンリの4人はゆんゆんのテレポートによって王都ベルゼルグに飛んだ。
魔王軍幹部であるシルビアの討伐、その後処理はまだ終わってはいない。
ギルドへの報告はあのアンリの冒険者登録の後にアクセルの冒険者ギルドで済ませた。予想通りの大盛り上がりで昨日は夜が明けるまで宴会状態だった。更にシルビアを討伐したことによる報酬は4億エリス、過去最大規模の金額である。
とはいえ討伐メンバーは全部で8人、私、ゆんゆん、ミツルギさん、カズマ君、アクア様、ダクネス、そしてあるえさんとめぐみん。分けてしまえばこれまでの報酬としては変化は少ない、充分すぎる金額なのだがそれでもあのベルディア討伐でもらったのは6000万エリス、今回は5000万と少なくなっている。ベルディア戦では前哨戦で死にかけているとは言っても苦労したのは間違いなくシルビア戦の方なのだけど。
今更お金に固執はしていないしいくらでも構わない感じはある、少なくともベルディア討伐の際に報酬を受け取った時のような驚きはもはやない、全くない。これはこの世界のお金をまだお金と認識しきれてないのかもしれないしこうも連続で億単位の金額を出されてはそれ以上に慣れてしまう。
と、言うのも単純に私がこのエリスという単位のお金を触れてからまだ一年弱という事もあり現実味があまりない。更に魔王軍の幹部の討伐を筆頭に王都での高難易度クエストなどで自身の持つお金は湯水のように増えていく。有難みをあまり感じないのが正直なところだ。
一般冒険者のようにお酒を飲む訳でもない、装備にお金を使うわけでもない、この世界には趣味としてお金を使うほどの娯楽がある訳でもない。ギャンブルとかはあるらしいがやろうとも思わない。小金があればギャンブルで散財してしまうダストを反面教師にしていたら嫌でもそうならざるを得ない。
強いて挙げるならウィズさんから買った魔晶石くらいだ。私の杖も服も神器である以上、今の私の装備より強力な装備はまず見当たらないのだからお金がかからないのだ。
それは置いておくとして、結局めぐみんは頑なに報酬を受け取ろうとはしなかった。報酬の分配は内々で話し、1人あたり5000万エリス。そして本来のめぐみんの分をカズマ君が、あるえさんの分となるのをゆんゆんが受け取った。後に渡すつもりなのだがあるえさんはともかく、カズマ君はどうやってめぐみんに支払うつもりなのだろうか。私としてはめぐみんに無理なく渡す方法を思い描いているのだがこれは結局パーティ内の問題、あくまでカズマ君とは別パーティの私が口出しするのも入り込みすぎている気もする。
個人的にはあまり金銭的な話をしたくないのが本音でもあるのでカズマ君に任せるしかないだろう。1人あたり5000万エリスと分ける事ができたのもカズマ君のパーティと私のパーティで2億エリスずつにすると決まったからなのだから。
さてさて、お金の話はこれくらいにしておくとして今のアンリを見れば少しだけ微笑ましく感じる。私やゆんゆんが初めて王都に来た時もカズマ君達が来た時も王都の壮大加減に圧巻していたがアンリの驚きはその比ではなかった、というのも無理はない。アンリが知ってる場所はかつての故郷である村と紅魔の里、そして最近になって住む事となったアクセルの街ですら人の多さと色とりどりの建物の数々に目を輝かせていた。今回いるのはそのアクセルですら小さく感じる王都ベルゼルグ。この国で一番栄えている場所なのだから。
『……すごい――、おおきな建物がいっぱい――、人もいっぱい――…』
私と手を繋いだ状態のままアンリは思わず声をあげた。ここ最近の王都は魔王軍の襲撃が全く無くなったこともあり、私達が来た当時よりも人が増えている気がする。ここまで人が多いとまるでお祭りでもしているのかと錯覚してしまうほど。そんな人が多い中をこうしてアンリと歩けることをつい最近まで思ってはいなかったのでその喜びも格別である。それもアンリに関する懸念を払拭出来たことが大きい、アンリの首にかけられた冒険者カードによって。
それは私達の持つ冒険者カードとほぼ同じもの。それがアンリの身分、安全を保証するもの。違いがあるとすれば万が一アンリが問題を起こした場合の責任は私にあるということくらいだろうか。これは形式的にテイマーという職業の仲間のモンスターの登録と似た形になっているので仕方ない、よってアンリに職業などはない。
職業などはないがこの冒険者カードを作ることでアンリのステータスやスキルを明らかにすることもできた。…とはいえ多くは予測していたものばかりで意外と思えるものはない。
パッシブスキル化された敵感知スキル、罠感知スキル、空間把握スキル、潜伏スキル。これは単純にスキルというよりも安楽少女が森で生きて行く上での必須固有スキルのようなものなのかもしれない。危機回避の為、外敵から逃れる為のスキルばかりで攻撃スキルはない。
正直に言えばこの危機回避系のスキルだけでも今の私達のパーティメンバーとして是が非でも欲しい人材ではある。実際に紅魔の里までの道中、アンリは様々な場面で私達を助けてくれた。今後アンリが一緒にいればクリスが加入するくらいの恩恵があるだろう。少なくともカズマ君の敵感知スキルよりも有能なことは実証できている。これはスキルとしてのレベルが違うからだと思われる。めぐみんが爆裂魔法に全振り、ダクネスが防御に全振りするように、アンリは生存本能から隠れる、逃げることに特化したスタイルなのだ。もっとも上記二名は自ら望んでスキルを振った。アンリは生きていく上で自然に身に付いた形なので一緒にしてはいけない。スキルというよりも固有のものなのだから。
確かにアンリは形式的に冒険者となったので今後私達とともにクエストを受けることも可能である。だけどこんな小さな女の子を連れて危険なダンジョンに潜ったりどうしてできるだろうか。当然答えは否である。
私の親バカな一面ととる人もいるかもしれないがそれとこれとは話が変わってくる、アンリにはこれからできる限り平和に生きて欲しい…それが私の願いだ。
これについてはゆんゆんやミツルギさんも私と同じ気持ちだったようで同意してくれた。アンリは心身ともに一桁年齢の少女でしかないのだから、安楽少女として過ごした時間の記憶はアンリにはないのだから。ずっと停まっていた時間が私と出逢うことでようやく動き出した。そこからの時間を…アンリにはすこやかに過ごしてもらいたいのだから――。
…
―王城前―
私達が到着したのは王都の中心に位置するベルゼルグの王城、王女アイリスが住んでいる場所。
先日聞いた限りではアイリスの外出禁止令は完全に解除されている、だからこそ久しぶりにアイリスを連れて遊びに行くことにしたのだ。アンリの事も紹介したかったし私達より年齢が近いアイリスならきっと良き友人となってくれる。私のその想いに迷いはなかった。
「お久しぶりです、アリスさん!ゆんゆんさん!ミツルギ様!」
こちらが城門をくぐり抜けるなり姿を現したアイリス、その顔は今か今かと私達の来る時を待ち望んでいたのだろう。とても嬉しそうなその笑顔はこちらにまで伝染してしまい、自然な笑顔を作ることが容易にできた。
「ようやくまた遊びに行く事ができますね、アイリス」
「はいっ!私、今日という日を凄く楽しみにしておりました!……それで、アリスさん、そちらの方は…?」
終始笑顔のアイリスだったが流石に気になったのか、視線を私と手を繋いでいるアンリに向けた。
「ほらアンリ、挨拶しましょう?」
一応、相手がこの国の王女であることはアンリには伝えている。伝えてはいるもののそれを聞いた時のアンリは意味がわからないのかキョトンとしていた、これはおそらく単純にそういった身分を理解していないからだろう。
それでも可能性は低いものの、アイリスはこの国の第一王女、明らかな不敬な態度を取らせる訳にもいかない。だから丁寧に接するように教えこんでおいた。自分自身は丁寧も何もない癖にとゆんゆんに微妙な視線で無言のツッコミを受けはしたがそれはそれ、これはこれ。
『……――はじめまして――、アンリです…、よろしくお願いします、アイリスお姉ちゃん――…』
「……っ!?」
その瞬間、アイリスはなにやら衝撃を受けたように固まってしまった。これには私も思わずゆんゆんやミツルギさんに目線を向けて確認してしまう、何か不敬な点があったのではないか、と。
しかし特にアイリスが悪く思うような事はないと思われる。強いてあげるならアイリスをお姉ちゃん呼びした事くらいだがアンリからすればアイリスはどう見ても年上なのでそこは仕方ない。
「あ、あの…アンリさん、すみませんがもう一度私の事を呼んでもらえますか?」
『…――アイリスお姉ちゃん――?』
「……っ!?!?」
……これは何が起こっているのだろうか。アイリスは顔を真っ赤にして小刻みに震えて俯いてしまった。だけど口元は緩んでいるし嬉しそうには見える。
「…なんかアリスを見てるみたい…」
「…僕もそう思った」
「えぇ!?」
私は普段アンリと接している時はこんな感じなのだろうか。別にそれが嫌な訳ではないけどなんとなく複雑な気持ちになる。
「ご、ごめんなさい、その…私、お姉ちゃんなんて呼ばれたのが初めてで…お兄様ももしかしたらこんな気持ちになれたのでしょうか…?」
「……お兄様?」
出逢った事はないものの、アイリスには兄がいる。確か父親であるこの国の国王様とともに遠征に出ていたはずだ。少なくともそう聞いている。
「あ、お兄様とはサトウカズマ様のことです、そう呼んで欲しいと言われましたので」
「……一国の王女に何を言わせてるのでしょうかカズマ君は」
「まったくあの男は……」
ため息とともに呆れてしまう。ゆんゆんは苦笑していてミツルギさんは頭を抱える始末。しかしいつの間にそこまでの仲になったのだろうか、これには驚くばかりである。思い出せば私の誕生日会の時には既に仲が良かったような気もする。
「よ、良ければアリスさんの事も、お姉様と呼んでもよろしいでしょうか?」
「ふぁ!?」
突然のアイリスの申し出に変な声が出てしまった。これには恥ずかしさ故に顔に熱を感じてしまう。しかし驚いているのは私だけのようだ。
「…いいんじゃないかな?アリスも金髪だし…」
「そうだね、街中を歩いてて良い誤魔化しになるかもしれない、まさか一国の王女が冒険者相手にそんな風に呼ぶなんて考えないだろうからね、アリスの事は冒険者として既に王都では有名だ」
一方二人はと言えばなんか合理的に考えてしまっていた。これでは無駄に動揺した私が馬鹿みたいではないかと思えば、私はそのまま恥ずかしげに俯いた。
「アイリスが呼びたいのでしたら…私は構いませんけど…」
「本当ですか?それでは、今日からまたよろしくお願いします♪お姉様♪」
こうして私とゆんゆん、ミツルギさんとアンリ、アイリスの5人で久しぶりに王都の街を回ることになった。…とはいえミツルギさんとアンリが一緒に来る事になるのはこれが初めてとなる。
余談ではあるがあのクレアさんが再びアイリスの外出を認めた理由は私達のパーティにミツルギさんがいることが大きな理由になっていると思う。いくら以前の盗賊達が捕まったとはいえ、今後あの時のような事がまったくないと断言はできない。
だからこそ、魔剣の勇者の異名を持つミツルギさんの存在は護衛としてこれ以上ない程の頼もしい存在だろう。
実際に前回襲われた時よりも安全率は高いと思われる。それは単純にダクネスよりもミツルギさんの方を上に見ているとかではなく、アンリの存在が大きい。アンリは常時敵感知スキルを使っているような状態、もはやスキルというよりも野性に等しいものだがもし街中でこちらに敵意を向ける者がいれば即座にアンリが反応してくれる。それをゆんゆんが知る事ができればすぐさまテレポートをして城へ飛ぶ事もできるし、迎撃も難しくはない。
―王都城下町―
さて、メンツは変わったもののやる事はいつもと変わらない。装飾品や服などのお店を見て回って試着してみたり、適当な食べ物を買って食べたりと、普通に楽しんでいた。それ自体はとても楽しいし、平和な時間を過ごせていて、誰もが笑っていて素晴らしいことだと思う。
……問題は配置である。
「…あ、あの…2人ともそんなにくっつかれると私が歩きにくいのですが…」
「そうは言いましても、お姉様は護衛でもあるのですよね?でしたらこれくらいは問題ないと思います」
『……イリスお姉ちゃん、もう少し離れてもいいと思う――…』
「それはそのままアンリちゃんにも言えることですよね?」
私の左にはアンリ、右にはアイリス。それぞれが私の腕をとって…何故かアンリもアイリスもお互いを牽制していた。よく見ればその互いの目線からは火花すら見えそうになるくらい睨み合っている。どうしてこうなった。
おかしい、お城で出逢った時の2人の第一印象は悪くないものと思っていたのだけど。私の後ろを歩くゆんゆんとミツルギさんは揃って苦笑しているし。てか苦笑してないで助けていただきたい、割と切実に。
「…2人ともどうしたのですか?出逢った時はそんな睨み合いする間柄ではありませんでしたよね…?」
2人にそう聞けば、それぞれの私の腕を握る力が増した気がした。一体何がいけなかったのだろうか、私にはわからない。
「きっとアリスから離れたくないのよ…」
「こうして見れば三姉妹のようにも見えるけどね」
なにを呑気なことをと私は内心溜息をつく。嫌ではないけれど流石にこれでは目立ちすぎである。とりあえず完全に客観視している2人を巻き込んでしまいたい。私にはそんな思いが強くなっていた。
「でしたらさしずめそんな私達を見守るおふたりはミツルギパパとゆんゆんママと言ったところになるのですかねぇ……?」
効果は抜群だ。私の呟きとして放たれた爆弾を前に2人とも苦笑したまま硬直してしまった。まるで動き出せばヒビ割れでも起こすのではないかと思われるくらいには見事な硬直っぷりである。
「ふ、ふたりとも、このままだと目立ってイリスちゃんの事が公になっちゃう可能性があるから、もう少し離れて歩こう?ね?」
次第に顔を赤くして慌て出す2人を見れば思わず面白くて吹き出しそうになってしまう。突発的な反撃ではあったがこうも効果がありすぎた。私が口を抑えて笑いを堪えている間にも迎撃は続く、2人の妹によって。
「そんな、多目に見てもらえませんか?お父様」
「いや、そのァ………イリス、流石にその呼び方は…」
『――ゆんゆんお母さん、私も、ダメ――…?』
「アンリちゃん!?お願いだからそれだけはやめて!今まで通りお姉ちゃんにして!?」
動揺からアイリスと呼びそうになるがぐっと堪えて呼び方を変えるミツルギさん。そして泣き顔で懇願するゆんゆんにもはや母親のような母性と余裕はまったくない。とはいえ14歳で母親扱いは些か厳しいものもあるだろう。結婚適齢期を考えればこの世界ではありえる話だとしても相手も産んだ覚えもないのだからそこは仕方ない。
更にこの2人の妹の全く悪意も裏もない純粋1000%の発言だからだろうか、ミツルギさんもゆんゆんも完全に否定しきれずどこか遠慮がちである、そこがまた面白くあるのだけど。
「もう!!アリスも笑っていないでちゃんと止めてよね!?」
「…ふふっ、まぁそう言わずに」
そう言いながらも私は笑う事をやめられなかった。アイリスとアンリはどこか不思議そうにしているものの、次第に私から和やかな雰囲気を感じ取ったかのように口元から綻んで、そして微笑んでいた。そんな天使のような笑みを持つ妹2人の反応に、ミツルギさんもゆんゆんもこれ以上何も言えずに釣られるように笑うしかできなかった。その心中はさぞ複雑かもしれないがそこはご愛嬌ということで笑って流していただきたい。アイリスとアンリが楽しそうならそれでよしなのだ。
―王都・喫茶店―
ある程度回って、今は休憩がてらにこの王都でも私達パーティメンバーがよく来る冒険者ギルドの喫茶店へと来ていた。時間的にもこのティータイムが終わればアイリスをお城へ送らないといけない。
それにしても楽しい時間というのはあっという間に流れてしまうものだ。喫茶店に入って数十分、今はそれぞれが美味しいケーキに舌鼓をうち、紅茶を堪能していた。――そんな中、話題は魔王軍幹部討伐の話からゆんゆんの武器の話になった。
「皆さんもお兄様のパーティも、本当に凄いです!シルビアと言えば名前が出る度にクレアが苦い表情になっていましたし、これで8人いるうちの幹部の半分を討伐した事になるのですね!」
ちなみに今回お城への報告は行っていない。幹部を討伐する度にお城に報告に行く義理は特にないのだ。何よりもあの雰囲気は何度味わっても慣れるものでは無い、下手をすれば貴族あがりの騎士達の視線を浴びての報告になってしまうし私達はただの冒険者であり王都お抱えの専属という訳でもないし特別な支援を受けている訳でもない、よって報告しなければいけない訳でもないのだ。報告の義務がないのであれば当然私達はしない事を選ぶ。お城から呼び出しがあれば話は別だが私達が貴族に苦手意識を持っている事はクレアさんも知っているので特にそのようなこともない。
「ゆんゆんさんの杖はその対価として壊れてしまったのですね…、あの、良ければお姉様のお誕生日プレゼントのように城の宝物庫から探してみましょうか?」
「…えっとお気持ちだけで大丈夫だから…お願いだからそんな事しないでね?」
当然の遠慮である。私でもそうする。国の宝物庫を自分の鞄の中を漁るみたいに言うのはやめて頂きたい。
「…イリス、あの時の魔晶石は本当に助かりましたが…まさかイリスの独断で宝物庫から無断で持ち出したりしてませんよね…?」
ゆんゆんの拒絶に残念そうにしているアイリスに私は不安げに尋ねた。これは確認しておきたいことでもあったのだから。あの時は一緒にレインさんがいたから大丈夫とは思うが念の為である。いくらアイリスでも城の宝物庫の中にあるものを許可なく讓渡していい訳がないのだから。
「勿論です、あれはちゃんとお父様に許可をとって戴いてきました♪お姉様の事を話したら是非持って行ってあげなさいと♪…あ、そのお父様ですが遠征から良く帰るようになっていますので近々お姉様達とお会いしたいと仰ってました♪」
「そ…そうなのですね…あ、ありがとうございます…」
内心頭を抱えてしまった。いやちゃんと許可をとっていた点は安心はした。以前アイリスが持っていた神器である『なんとかカリバー』もアイリスが王様におねだりして貰ったと聞いた事があるから多分娘にデレデレな王様なのだろう。それはいいのだが問題は何故その話の流れでアイリスのお父さんであるこの国の王様に会う事が決まってしまっているのだろうか。どちらも日時は定まっていないもののダクネスのお父さんである現アクセル領主代理のイグニスさんにも逢いたいと言われているしお願いだからそっとしておいて欲しいのだけど。もう貴族とか偉い大人の人と関わりたくないのが本音なのだけど。
王様に会う事、イグニスさんを地方の知事とすれば王様は言うまでもなく総理大臣とかだろう、日本にあてはめるとこうなるのだけど相変わらず実感は湧かない。湧かないが一つ言える事は面倒事でしかない。なので考え方を変えるしかない。
イグニスさんはダクネスの父親、そして王様はアイリスの父親。つまり友人の保護者だ。ただのお父さんだ。そう考えれば幾分か楽になる気がした。ただの現実逃避だと分かっていてもそう考えないとやってられないのだ。察していただきたい、じゃないと豆腐メンタルな私の精神が27回くらい死にます。
「なるほど…、それでしたら…エルロードへ行ってみてはどうでしょうか?」
閑話休題。ゆんゆんの武器を作ること、それに必要なものについてアイリスに話をしたところ、アイリスからこんな返事が帰ってきた。
エルロード――、王都ベルゼルグと同盟を結んでいる隣国で、カジノなどで大きく栄えた国。行った事はないのだが、あくまでこれまでこの世界にいて得た知識からすればその程度のものだ。
「エルロードには、オークションという珍しい物品を扱い競売する場所があります。ゆんゆんさんの欲しいものも、運が良ければ見つかるかもしれません」
オークション。そう聞くなりなるほどと私は静かに頷き聞いていた。
材料の1つである高純度マナタイト結晶、これは宝石としても価値があるらしいのでそういった場に出てくる可能性は充分にある。ミツルギさんやゆんゆんに目を向けても私と同じような反応だった。元より全く手がかりがないのだ、エルロードにそれがあると確定した訳ではないのだが行ってみてもいいかもしれない。
「で、でも…そんな貴族の集まる競売なんて…お金が足りるかな…」
「そこですよね、懸念するところは…、流石に何億もするとなれば安易に手が出せませんし…」
「だけど可能性があることを考えたら、候補に入れてみてもいいかもしれないね」
買う事も選択肢のひとつではある。その場合いくらになるか想像もつかないのだけど…思うところとしては私達は冒険者である、ならばダンジョンを潜って、苦労した上でそういった報酬を得たい、そんな浪漫はあったりもする。だがそれは理想でしかない、そのようなダンジョンが都合よくあればとっくに採掘されてしまっているだろう。ゲームの中に入り込んだような世界ではあるが、変なところで現実的である、実に世知辛い。
さて、どうするべきか。マナタイト結晶がありそうなダンジョンについて調べてみるか、アイリスが勧めるようにエルロードにいってみるべきか、まだ聞いていないので当初の予定通りウィズさんに相談してみるか。
喫茶店を出てアイリスをお城に送りながら、私は密かにそんな事を考えていた――。
行先アンケートに御協力ください。話に変化は当然ありますが選択肢によって失敗などはありません。
アンケートの期限は4/18までです。アンケート協力ありがとうございました。
迷いに迷ったアリスが出した結論は?
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ウィズさんに相談しよう!
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エルロードへ行こう!
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紅魔の里に行こう!
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冒険者ギルドへ行こう!