クリスがエシリアに置き土産を残して窓から去り、私の部屋には私とエシリアだけが残った。エシリアは悩むような様子でいたが次第に落ち着きを取り戻していた。
「…まぁ…これだけお世話になったし信徒?になるのは別に良いけど…信徒って何したらいいの?」
「…さぁ?毎日エリス様に祈りを捧げるとかでいいんじゃないですか?」
エシリアの一言で冷静になって考えたらエリス教の信徒になる事自体は別に悪い事ではない。この国の国教でありこの国の通貨の単位にまでなって幅広く信仰されている女神様だしアクセルの街や王都でもその信者の数は多く一般的なものだ、どこかの宗教と違って悪い噂を聞く事もない。
強引に信徒にしようとして見えてしまって敬遠していたがもしかしたらエリス様としてはエシリアに身体を与えた責任とかがあるのかもしれない。今エシリアがつけているエリス様の女神像をモチーフにしたような片耳のイヤリングは流石にただのイヤリングという訳ではないと思うし。
「気になるのでしたらこの屋敷にもエリス信徒はいるので聞いてみてはどうです?」
「そ、そうなの?」
「はい、ダクネスがそうですね。金髪のポニーテールで、エシリアと同じクルセイダーでもあります」
「…もしかしてあの凄い美人の女騎士さん?なんか真面目そうで話しにくいなぁ…」
「……まぁ話せば気さくな人ですよ」
まぁダクネスがボロさえ出さなければそれが普通の感想だろうなと思える。
それにしても本当にエシリアは私の環境を知っていたり知らなかったりと曖昧だ。お金を持っていることとか悪魔を倒した事は知っているのに、私の仲間の事などは全然知らない。私にとって影響が大きいものほど知っているとばかり思っていたがゆんゆんの事すら知らなかったし。
「あ、そうそう、アクシズ教徒には気を付けてくださいね。エリス信徒だと分かり次第えらい目にあいますから」
「えっ…何それどういう事!?」
エリス信徒でなくてもえらい目に合うことは変わらないのだけど。無宗教なら無宗教で猛烈な勧誘が待ってるし。
「…それで、クリスの話は終わりましたが、エシリアからは何もないのです?」
「凄く気になるから変な所で話題変えないでよ!?……まぁ…あるけど。…さっきのクリスは此処に来る途中に出逢ってアリスのところに行く事を言ったら私も行くって言ってたから待ってたの」
まさか窓から来るとは思わなかったのだろうか。今思えばクリス登場時のエシリアは驚き固まってた気がする。
「…それならそれで一緒に来れば良かったのに何故わざわざ窓から入ってくるのでしょう…?」
「私に聞かれても…それで、話なんだけど…」
アクシズ教については私が話すまでもなくいずれ分かる事だろう、あえて言う必要はない。私がそんな感じで考えていたらずっと飲めてなかった紅茶を口に含んだエシリアは一呼吸おくなり真剣な顔つきをしていた。とはいえ話す内容は予想がついている。
「……今後なんだけど、私はリア達と固定パーティを組んでやることにしたの。きっかけはギルドに行った時にリアに誘われて」
「…いいんじゃないでしょうか?」
私もまた、初めてのクエストの為にパーティを組んだダストとリーンのいるテイラーさんのパーティに入る事になった。リアは基本しっかり者だし、頼りになるリーダーだと思う。エーリカやシエロも良い子に見えるし否定材料は見つからなかった。
「…うん、クリスの話を聞いて少し戸惑ってるけど…」
「…私が死んだらエシリアも死ぬ…ですか」
確かにそれを思えば私とエシリアは常に一緒に居た方がいいのかもしれない。お互いを守る事もできて安全ではある。なら私のパーティにエシリアが入ってもらう方法もある、レベル差が大きいがそれはこれから埋めていけばいいだろう。
だけどそれは…。
「……ですが私と常に一緒にいるとすれば…私とエシリアがひとつだった時とあまり変わりはない気もしますね…」
それではせっかく別離したのに意味がない。エシリアは既に私から独立した私とは違うひとりの人間の女の子なのだから。
「…うん、私はアリスと離れて、この世界をもっと見てみたい、色んな事をしてみたい…だから私は、…アリスとは別の道を歩いてみたい」
決意した表情のエシリアの顔はとても眩しく見えた。凛としてて美しくすらあった。それはエシリアの成長の兆しとも取れることを思えば、私としては自分の事のように嬉しく思えた。ある意味自分の事なんだけど。
「…反対はしませんよ。どうか自由に生きてください、それが私の望みでもありますからね。…何より、私にできたのですから、エシリアにだってできるはずです」
決して突き放す訳ではない、ただエシリアには私の事など考えないで自由に生きて欲しい、心からそう思った理由は…。
だって同じ『私』なのだから――。
私と離れた事で、私にエシリアを束縛する権利はないのだから。離れた上で私だからこそ、心底の考え方は同じなのかもしれない。
とは言え。
「まずは…《ウォークライ》に頼らずモンスターを倒せるようにならないとですね。流石に戦う度に使ってたら魔力の効率が悪すぎますし」
「…う、うん…がんばる…」
少し説教じみてしまったがこれが第一の目標だろう。それを告げればさっきの凛々しい様子は何処へやら、自信なさげに俯いてしまったがこれは仕方ない。
人は変われる、だけどそんなすぐに変われるほど簡単なものではない。時には荒療治だって必要だしワイバーンの件はまさにそれだったのかもしれない、そう思えば面倒見のいい女神様だと思えてしまう、エシリアは納得いかないかもしれないが。
だけど今回のエシリアの場合は予め言われていたしこれが本来の戦いならこうはならない。過去に私が白虎狼やベルディアと出くわした時のように冒険者としてやって行くのなら不測の事態はいつでも起こりうる、そう考えたらエシリアは恵まれているとすら思える、命の危険がなくそういったプレッシャーを経験できたのだから。
エシリアに言えばそんな経験いらないと言うだろう。確かに場合によってはそんな経験は必要ない。例えば冒険者ギルドの酒場でウェイトレスをしたり、例えば冒険者としてではなく、アイドルとしてリア達とともに歌って踊ってみたり、例えばウィズさんの店でアルバイトをしたり……と、ただ生活する上で働くのならいくらでも選択肢はある。最後のはオススメしないが。
だけどエシリアは選んだ職業は常に危険と隣り合わせな冒険者という職業、モンスターと関わる機会がもっとも多い職業なのだ。
「…まぁ、リア達はアクセルを拠点にしてるから、アリス達に会うことは多いと思うけどね」
「それこそ遊びに来てくださいよ、住むところはどうするのです?」
「アリスもやってたように、期間的に住める宿を探してみるつもり。見つかるまではリアの部屋に泊めてくれることになってるよ」
「……ここに住む選択肢は…」
「…ないかな、ありがたいけどそれじゃ結局アリスと一緒になるし…」
無意識に出てきた言葉に少し思い悩む。思う事と言ってる事が完全に矛盾している。
自由に生きて欲しいと願いながらも、やはり私はエシリアと離れるのが寂しいのだろうか。これではまるで子離れできない親みたいだな、と、私は自然と自嘲していた。
「アリスいる?夕ご飯ができたけど…」
そんな時閉じた扉の方から声が聞こえてきた。クリスの件と合わせて結構な時間話していたようだ。
扉が開くと、エプロン姿のままのゆんゆんはエシリアへと目をやり、少し目を逸らしながら恥ずかしそうにしていた。
「えっと…エシリアさん?エシリアさんの分も作ったから…その…良かったら食べていって…」
「…え、…あ、うん…、いただきます…」
どうでもいいけど何故ここまでお互いによそよそしいのだろうか、私には理解できない。どちらも人見知りではあるからなのか。
「…あ」
そこでふと気が付く、思わず焦りから声が出てしまった。仮にエシリアが今の私の交友関係を理解していないとなると引き合わせてはいけない人がひとりだけ存在するではないか。勿論私としては解決している問題ではあるがエシリアがそうとは限らない。
「…ゆんゆん、もう少ししたら向かいますので先に降りていてくれますか?」
「…アリス?…う、うん、わかった…冷めないうちに来てね…?」
私の様子を見たからか、ゆんゆんは不安そうにしていたが扉を開けた状態のままゆっくりと廊下に出て、やがて階段を下へと降りる音が聞こえてきた。
「…どうしたの?」
「…エシリア、ミツルギさんのことは覚えていますか?」
私が危惧したのはミツルギさんの存在だった。村でも一応出逢ってはいるが話した訳でもないし目立たなかったので気づかなかったのかもしれない。
仮にエシリアが私の梨花としての記憶を持っていて、なおかつ私がアリスとなってからのミツルギさんとの出会い、交流を知らないでいる場合、おそらく顔を見合わせただけでエシリアは感情が暴走する。かつての私がそうだったように。
「……それなら大丈夫」
短調ながらエシリアはそう答えた。落ち着いてるように見えるし嘘は言ってないようだ。そして私の質問で私の言いたい事を察したのだろうか。
「多分、私の精神的なコンディションは、別離する直前の、アリスが元となってるんだと思うから、アリスがこの世界に来て精神的に悩んで解決した案件は私の中でも整理ができてるんだと思う」
「…それならいいのですが…」
とりあえずは大丈夫そうである。これにはホッと胸を撫で下ろした。
「ご飯、食べに行きましょう?ゆんゆんは料理が上手ですから、きっと満足できると思いますよ」
「…なんか妻を自慢する夫みたいなこと言ってるんだけど、自覚してる?」
「…その発想はおかしいと思いますけど」
あくまで親友の料理を褒めただけであるし事実なのだから仕方ない。
「…それよりアクシズ教についてもっと詳しく」
「さぁご飯に行きましょうか♪」
「あ、ちょっとアリス!?」
早足で廊下へ向かう私と、慌ててそれを追うエシリア。アクシズ教だけではない。この世界にはエシリアの知らない私達から見た非常識がたくさんあるのだから、それを事前に教えるよりも自ら経験して知っていってもらいたい。
空飛ぶキャベツに畑で育つサンマ、収穫時に襲ってくる野菜など、それらを見てエシリアはどんな反応をするのか、今から楽しみである。
その後食事をするにあたり、改めてエシリアを皆に紹介することになった。半ば強制的に7人へと紹介したことで緊張させてしまったが、関係は良い方向へ向かったと思う。少なくとも初対面時のような険悪なことはもうない、あれは私がいなかったのが原因だしそれが解決すればそのようなことになる理由もない。それぞれが挨拶していたが、特に同じクルセイダーにしてエリス信徒であるダクネスが興味をもち、率先して話しかけていた。
「こうして同じ職業で同じエリス信徒に出逢えたこと、エリス様に感謝する。私はダクネス、カズマのパーティのクルセイダーだ、よろしく頼む」
「え、あ…はい、エシリアです…、よ、よろしく…私はまだ冒険者になりたてなので…色々教えてくれたら…」
同じクルセイダーの先輩、エシリアから見たダクネスの立ち位置はこんな感じだろう。普通に考えたらエシリアの判断は間違っていない。問題はダクネスが普通じゃないことだろうか。
「やめとけやめとけ、こいつのスキル振りは他から見たら何の参考にもならないから」
「何を言うんだカズマ!?仲間の盾となる騎士として、防御寄りになることは仕方ないだろう!?」
「お前のは極端すぎるだろうが!!」
ダクネスには悪いが私の考えはカズマ君寄りだ。防御極振りなんて少しでも多く攻撃を喰らいたいというダクネスの性癖があってこそ成立するものである、とても他人の参考になるとは思えない。
「確かに一般的には参考にはなりにくいかもしれないが…佐藤和真、僕達がその防御に助けられてきたことも事実だろう?」
「そりゃ…まぁそうではある…けど……」
ミツルギさんの弁護でカズマ君はなんとも言えない様子で歯噛みしている。納得できないのだろう。
確かにミツルギさんの言う通り今までダクネスの守りに助けられた事実はある。最近だとシルビアとの戦いが思い浮かぶがあれはダクネスの守りがなければ容易く後衛の私達が攻撃されてしまい、勝利を得る事は難しかっただろうとまで思える。
カズマ君としてそこはいいのだがその理由が性癖なことに納得いかないのだとも。後は両手剣スキルをとってないことと不器用なことが重なって攻撃が全く当たらない事だろうか。
「…そ、その…そんなに持ち上げないでくれ…あまり褒められ慣れてはいないのだ…」
一方ダクネスはミツルギさんの真剣な弁護を聞いて羞恥から蹲ってしまった。顔は真っ赤だしこうしていると可愛らしささえ感じてしまう。
「むしろカズマのように罵ってくれていいんだぞ」
前言撤回。ミツルギさんの手を握り興奮する様子のダクネスを見てそう思わずにはいられない。ミツルギさんも完全に引いてるし。
「…私としてはそんな事よりも気になることがあるのですが…」
「そうよね、これだけは納得できないわ」
めぐみんが促すと、アクア様も乗っかってきた。その視線は私とエシリアの間にいる存在である。
『…――?』
そう、アンリだ。普段人見知りをするアンリは初対面の相手にはすぐ私やゆんゆんの後ろに隠れてしまう、リア達に対してもそうだった。
だけど今やどうだろう、私とエシリアの間に何も抵抗もなくいて、警戒心は全くない。
「…可愛い…」
「わかります」
エシリアがアンリを撫でてあげれば、アンリは心地よさそうにしていた。もしかしたらアンリは本能的にエシリアの事を私と感じているのかもしれない。聞けばアンリは私とエシリアの事を似ていると表現していたらしいしそれを聞いた時は驚いた。
私とエシリアは見た目は全く似ていない。色合いもそうだし、身長もエシリアの方が高くアクア様くらいはある。パッと見ればもう少し活発そうな印象さえ与えられる見た目。
今現在アンリは、私のパーティ…私以外にはゆんゆんとミツルギさんにはよく懐いているものの、カズマ君のパーティの面々とはまだまだ完全に打ち解けてはいない。最初に比べると警戒心が緩んでいることは事実だが、初対面でこうもアンリと仲が良いとめぐみんやアクア様からすれば嫉妬してしまうのも仕方ないのかもしれない。
唯一私達以外でアンリが心を許している存在は…
「なー」
『…あっ――ちょむちゃん――…』
めぐみんの猫、ちょむすけである。どちらも基本的に屋敷でお留守番していることが多いので仲良くなるのは必然かもしれない。飛びついてきたちょむすけはアンリに抱えられてじゃれている。癒し×癒しである、もはや尊いまである。
「ぐぬぬ…ちょむすけ…飼い主の私を差し置いて随分と仲が良さそうではないですか…!」
「どうしてなの、どうして私には懐いてくれないの…!」
「なんで猫相手に嫉妬してんだよ!」
「…まぁ私達以上に避けられている人がいますから、私達にもまだ希望はありますよ、アクア」
「そうねめぐみん、カズマの避けられっぷりに比べたら私らは全然マシよね」
「俺が異常に避けられてんのはお前のせいだろうが!」
異常に避けている、それは紅魔の里でめぐみんがアンリにすりこんだ狼案件である。確かにすりこんだのはめぐみんではあるがその原因はカズマ君にあるのでそこは弁護できない。どうか頑張って信頼を勝ち取っていただきたい。
それはそれとして、食後の歓談の話題の中心はやはりエシリアだった。どこにいても興味を惹かれるのは仕方ないのだが、こんな風に話の中心になることはまずないのでエシリアとしてはタジタジである。
「……本当に防御関係しか振ってない…、これってどうやって攻撃するの…?」
「私は攻撃などする気はない」
「開き直んな!!」
今はダクネスの冒険者カードを見せてもらっていたが、ダクネスの言った通り見事に防御関係のスキルにしか振ってない。
「…えっと…確かに攻撃をしてくれる仲間がいたら問題ないと思うけど…これだと独りの時に戦う場面があったらまともに戦えないような…」
「私が独りの時に戦うか……むしろ望むところだ」
「なんで!?」
「そ、それよりエシリアのスキルはどんな風に振っているんだ?」
「む?言われてみれば確かに私は他のクルセイダーのスキル振りは見た事がないな、見せてもらってもいいだろうか?」
「え?…う、うん…」
エシリアは困った顔で私には目配せした、見せてもいいのか確認したかったのだろうか、私は目立たない程度に頷く。特に見せて困ることはないし状況的にもダクネスが見せたのにエシリアが見せないのは不自然だろう。
しかし見せるべきではなかったかもしれない。それを見たダクネスとカズマ君は驚き固まってしまった。
「クルセイダーの防御関連はほとんどとってないな…下位職の剣スキル…それはいいのだが……、読めないスキルが多いのだが…なんだこれは…?」
「…なんかかっこいい名前のが多いな…スパイラルエアー、ソード・テンペスト、トリガースラッシュ、バスターブレード、メテオブレイカー……ん?インパクト?」
「カズマには読めるのか!?」
「インパクト…確かアリスがよく使ってるスキルよね?カズマも最近覚えたみたいだけど…」
エシリアのスキル一覧。転生特典スキルは日本語で書かれているので転生者以外のこの世界の人には読むことができない。当たり前のように読んでたからすっかり忘れてしまっていた。
「なんかこの文字…どこかで見たような…」
「ゆんゆんもですか、私もそう思いました」
この文字に紅魔族の2人が反応を示した。というのも紅魔の里には日本人が遺したものが非常に多く、通称謎施設やら魔術師殺しの格納庫なんかにも日本語は多く残っていたのでそれが原因だろう。あえて教えるつもりもない、紅魔の里と日本人の繋がり、そしてその日本人は私達だと教えても何もメリットがないから。
「えっと…」
「エシリアと私は同じ国の人間ですから、エシリアがインパクトを覚えていることは何もおかしくはありませんよ」
そう言えばとくになにか言われることもなかった。とりあえずごまかせたかなと安堵するも余計な爆弾が投下された。
「…カズマが読む限りは攻撃スキルなのだろう?ならばエシリア、同じクルセイダーとして、是非私にそのスキルを使ってみてはくれないか?」
「……え?」
さぞ当たり前のように言うものだからエシリアは混乱することしかできなかった。ものすごくデジャヴを感じた瞬間である。
「…え、えっとその…、流石に人に向けて使うのはちょっと…」
当然のごとく後退するエシリア。しかしこのお嬢様の辞書に諦めるという言葉はないらしい。目を光らせてにじり寄る、まるで捕食者のように。
「遠慮はいらないのだぞ?さぁ、その強そうな剣でどんどん撃ち込んでみてくれ、さぁ、はやく!」
「あ、アリス…」
うん、これはエシリアじゃなくても怖い。それだけは言える。エシリアは涙目で私に助けを求めている。かわいそうだし止めるのが当然…なのだけど。
「いいじゃないですか、やってあげたらどうですか?」
「えぇ!?」
私の裏切りに全エシリアが泣いた瞬間である。これには意外だったのかカズマ君達も顔を揃えて驚いていた。
勿論目論見があってのこと、せっかくだからちょうどいいと思えたのだから仕方ない。
「まぁ落ち着いてください」
「…アリス?」
とりあえずエシリアに私の考えを伝えておこう。それを話してもエシリアは複雑そうな様子だったが、結局ダクネスの提案を受けることにしたのだった――。