※今回の話はガールズラブ要素満載でおまけにボーイズラブ要素まであります、苦手な方はご注意ください。一種のネタなのでタグは追加してません。
―ゆんゆん視点―
私の新しい杖を作る為に半ば強制的に行く事となったバニルのダンジョン。そこは以前来た時と全く違う、真っ直ぐな一本道だった。
アリスも疑問視していたけど、いくらなんでもダンジョンの内部構造が変化するなんてことは有り得るわけがない、きっと前回来た時とは別の入口なんだと思っていた。
そして先に進めばようやくフロアが見えてきた。だけどそこは行き止まり。
ならばこのフロアに何かないだろうかと探すも、盗賊職がいない私達では難航するかと思っていたら意外にあっさりとリアさんが怪しい箇所を見つけた、岩壁が不自然に一部盛り上がっていたのだ。
それをリアさんが外して見れば中には怪しげな赤くて丸いもの。アリスはスイッチだと言っていたけど魔道具とかにあるあのスイッチなのだろうか、そう思ってみれば見えなくはないけど、流石に何が起こるかわからないし押すのには勇気がいる。
そう思っていたら、他に道はないとリアさんが押すことになった。そしてそれが押された瞬間――。
「きゃあああ!?」
突然床がなくなって…重力に引き込まれるように私達は下へと落ちていった――。
どれくらい意識を失っていたのだろうか?わからないけど私はどうやら生きているようだ。暖かな何かに包まれた感覚…まるでお布団の中のようだ。
…と思ったら、やはり私はお布団の中にいた。そっと目を開ければ見慣れたいつもの場所。
ここはカズマさんの屋敷に間借りしている私の部屋だ。どうしてここに?もしかしてあの後誰かが運んでくれたのだろうか?
「……んん…」
「…え?」
布団をどけようとしたら抵抗を感じた。何かが私の布団を引っ張っている。…というか誰かが私の布団の中にいる?
私はそっと目を向ける。するとそこには金髪の長い髪と可愛らしい寝顔のアリスが心地よさそうに眠っていた。その横にはアンリちゃんもいる。
「……おはようございます、ゆんゆん」
「…え、あ…お、おはよう……え?え?」
どうして!?どうしてアリスとアンリちゃんが私のベッドに寝てるの!?私のベッドそんなに大きくないはずなんだけどと思ったのも束の間、よく見れば私のシングルベッドがツインサイズに変わっていた。勿論私は変えたつもりはない。
「…どうかしましたか?」
「…え、えっとその……こっちの台詞なんだけど…」
「…?」
アリスは私の言いたいことがわからないのか首を傾げていた。おかしな事だらけなのだけどどうしてアリスは当然のように私と同じベッドにアンリちゃんまで連れて寝ていたのだろう。
「…ど、どうしてアリスは私と一緒に寝てたの…?」
「……えっ?そんなの…」
私が尋ねればアリスは顔を赤くして俯いたと思えばそのまま布団を被ってしまった。その仕草は可愛らしいのだけど今の私の質問のどこにそうなってしまう要素があったのだろう?
「…私とゆんゆんが、付き合ってるからに決まってるではないですか」
「……え?えぇ!?」
何を言ってるのだろう、アリスは何を言い出したのだろう。頭が混乱してしまって大分間を空けて驚いた声を出してしまった。
私とアリスが付き合ってる!?なんで!?確かに私にとってアリスはとても大切な存在で常に一緒にいれることはすごく幸せだし、何よりも逃げてばかりだった私を変えてくれた私にとっての目標でもあった人。
自分の気持ちに嘘をつかずに言えば私はアリスのことが大好き。正直に言えばこの気持ちが親友としてなのか、恋愛感情からのものかはわからない、だけどアリスに想う好きは過去の誰とも当てはまらない新しい好きだったから、私にとってこれは恋なのではないかと勝手に解釈してる。
だけど一般視した時に、それはあまり良いものではない。性別の壁が立ち塞がる。
私もアリスも女の子なのだ。それはこの世界で一般的なものではない。だから葛藤する、こんな気持ちは初めてでどうしたらいいのか分からなかったのもあるけど、それでも一度はアリスに私の想いを伝えてしまおうと考えたことだってある。
だけどそれは結果的にできなくて、でも最近は言わなくて良かったとも思えていた。何故なら怖いから。
仮に私がアリスに私の想いを告げて、受け入れてくれたら凄く嬉しいし、それ以上に幸せなことはないと言えるくらいある。だけどそれがもし拒絶されたらどうなってしまうか。間違いなく今の親友という関係は音もなく崩れてしまう、もとい今まで通りの私達ではいられなくなる。そうなるのが怖かった。
「……何をそんなに驚いているのです?大体……そう言ってくれたのはゆんゆんの方ではないですか」
「……え?わ、私?」
「そうですよ、ゆんゆんがあの日、紅魔の里の魔神の丘で私の事が好きって言ってくれたのですよ?だから今こうしているんじゃないですか」
「……え?え?」
一体どうなってるのだろう。確かに私は魔神の丘で告白しようとしたけど、それは未遂に終わっているはず。なのに今のアリスは私の本来あの場所でしていただろう告白を聞いていて、なおかつ受け入れてくれているらしい。
『……ん――?』
「あ、起こしてしまいましたか、ごめんなさいねアンリ、おはようございます』
『…おはよーございます、アリスお姉ちゃん、ゆんゆんお姉ちゃん――』
話をしていた事で私とアリスの間に寝ていたアンリちゃんが目を覚ましたようだ。眠そうな眼をこすりながら上体をあげて起き上がった。そんなアンリちゃんの頭をアリスは優しく撫でてあげていた。
「…それにしても、朝ご飯作りは大丈夫です?なんなら私も手伝いましょうか」
「…え?朝ご飯…?……って、こんな時間!?」
時計を見ると時刻は7時。いつもなら6時には起きて朝食の支度をしている。そう思えば自然と身体が動いて布団から出た。そのままクローゼットの中から服を取り出して着替え始めていると、アリスもベッドから降りてきた。
「やはり私も手伝いましょう、料理は苦手ですから大したことはできませんが、お茶とかいれるのなら私でもできますからね。…アンリはまだ寝てていいですよ?後で起こしに来ますからね」
『――うん――…』
アンリちゃんは再び布団にはいると、そのまま気持ちよさそうに眠りにつく。そしてアリスは当たり前のように私の部屋のクローゼットからアリスのいつものプリーストドレスを取り出して、私と同じように着替え出した。
そして着替え終わりにアリスが近付いてきた。
「そうそう、忘れてました」
「……え?……っ!!??」
――私がアリスに振り向いた瞬間、アリスの唇と私の唇が触れ合った。
「おはようございます、のキスです。それじゃ頑張って朝ご飯を作りましょうか」
「………………」
「……ゆんゆん?」
「ひゃ、ひゃい!?!?」
頭が真っ白になった。今もまだ唇に増えた感触が残っていて、自分でも自身の顔が真っ赤になっていると自覚するのは簡単なことだった。
「……何故初めてしたみたいな顔をしているのですか?もう何度もしているではないですか…」
「……え、え?」
「…変なゆんゆんですね、先に行ってますからね?」
そう言うとアリスは何気ない様子で扉を空けて下の階へと降りていった。一方私の放心状態は終わりを迎えてくれない。
今のこの状態は、私にとってどうなのだろうか。告白が受け入れられて、当たり前のようにキスまでしちゃう仲になっている。何度もしているとは言うけど、当然私にそんな記憶はない。
大体ファーストキスなんて人生でも大事な事を忘れるはずないじゃない!?好きな人とそんなことした日には恥ずかしすぎて夜も眠れなくなるくらいの自信があるよ!?…そう考えたらやっぱりおかしい。
問題はおかしいのはどちらなのか。アリスがおかしいのか、私がおかしいのか。ただアリスだけがおかしいのなら私のこの部屋の変わりようはなんなのだろう?
今改めて見渡して見れば私の部屋だった場所はアリスと同じ部屋になったことでアリスの私物もあちらこちらに置かれている。それもどれも自然な形で。自然な形である事が、私には逆に違和感を覚えさせる。
「……いたっ…」
手が動いて、自然と自身の頬を強く抓ってみた。だけど感じた痛みにリアリティはあった。つまり夢ではないのだろうか。
夢じゃないとすれば私にはまだ気になる事もある。アリスとの関係もそうだけど、それより私はバニルのダンジョンでどうなって今ここにいるのだろう?落ちたことで気絶して屋敷まで運ばれたのかな?でもそんな状態ならそれはそれでおかしい。今の通常の日常の朝のような場面が。
「ゆんゆんー?まさか二度寝してませんよねー?」
「…っ!?寝てないよ!すぐ行くね!」
ずっと考えたら扉を開けてアリスが顔を出したので私は慌てて返事をした。…とりあえずこのままじゃ分からない事が多すぎる、バニルのダンジョンの件については、料理しながらアリスに聞いてみよう。そう思うと急いで着替えを終わらせて私は部屋を出ることにした――。
……
「おやゆんゆん、今日は随分遅い起床ですね、眠れなくなるようなことをしていたのでしょうか?」
「こらこら、そんな事を言うもんじゃないぞめぐみん。…おはようゆんゆん、朝食なら今日は私とめぐみんで作っておいたから気にする必要はないぞ」
「……え…ええ…?………あ、はい、すみません…」
それが私の頑張って絞り出せた言葉だった。
キッチンに向かってみればめぐみんとダクネスさんがいて既に朝食が並んでいた。それについては申し訳なく思う、何故なら家賃も払わないでいいのなら朝食くらいは毎日作りますと言って私はこの屋敷に住んでるのだから。
と言っても私が一方的に申し出ただけでみんなはそんなに気にする必要はないって言ってはくれてるけど。
だけど私がそんな風になってしまった要因はそれではない、その程度ならいくら私でもそこまで気にはしない。
「ほらめぐみん、頬に米粒がついているぞ」
「あ……、す、すみませんダクネス…」
……なんかこの2人、距離感が近過ぎない…?
これが私の挙動不審にさせた理由。あからさまにダクネスさんとめぐみんの距離が近い。それは位置的な問題だけではなく、なんというか心の距離が。
ダクネスに見つめられためぐみんは顔を赤くして目を逸らしてるけど満更ではなさそうで。
「……え?…あ、あの…2人ってもしかして…そんな関係だったの…?」
「…?どうしたんだゆんゆん」
「相変わらずのゆんゆんっぷりですね、それとも寝ぼけているのですか?私とダクネスが付き合ってるのは今に始まったことではないでしょう?」
「えっ?…えぇぇぇ!?」
当然のようにめぐみんから爆弾発言が飛び込んできた。一体いつの間にそんな関係になったの!?私の推測だと2人とも確かカズマさんの事を想っていたはずだよね!?何よりも
「だ、だって……そ、その……女の子同士で付き合うなんて…」
これに尽きる。だけど私はその言葉が盛大なブーメランであると気付いたのはそれを言ってしまってすぐだった。
「……ゆんゆん、やはり寝ぼけてますか?同性同士で付き合うことは当たり前のことではないですか。いくら里ではみ出しものだった貴女でも、そんな感性まではみだしていませんよね?」
「……え?……は?」
「おかしな事を言うな、それならゆんゆんとアリスも付き合ってるだろう?」
「…そ、それは…」
もはや驚愕で言葉が出てこない。この2人は同性同士で付き合うことが当たり前のように言ってるのだから。
仮に2人が言うようにそれがこの世界での正しい在り方であったなら、そもそも私はアリスと一緒にいて悩む必要性は全くなかったのだから。
ならこの世界の在り方は私にとって望むべき姿なのだろうか、と聞かれると、即答はできない。できる訳がない、私の14年間培った常識のひとつが破綻してしまうことになるのだから。
そこまで考えてふと疑問が湧いた。私とアリス。ダクネスさんとめぐみん。…このように付き合ってる人がいて、それが常識だというのなら他にも私の知らないカップリングがあるのだろうか?…いやいやそうじゃなくて。
時を戻そう。そもそもだ、そもそも私はバニルのダンジョンに入ってからの記憶がない。気が付いたらこうしてアリスとカップルになった状態で朝を迎えている、これは異常でしかない。
「ゆんゆんでもたまにはそういう時もありますよ、おはようございます、朝ご飯助かりました」
「おはようアリス」「おはようございます」
そうこう考えていたら顔を洗ったアリスがキッチンに顔を出した。あれ?私はいつ顔を洗ったかな?だけど妙にスッキリしてるしいつの間にか洗っていたのだろうか。…いやそれよりも。
「あの、アリス?昨日バニルさんのダンジョンに行った後……どうなったの??」
「……バニルのダンジョン……ですか?」
私の質問にアリスは考え悩む素振りを見せる。もしかして覚えてないのだろうか?…それともアリスはバニルさんに何かされてしまったのだろうかと疑うも、それならダクネスさんとめぐみんもおかしくなってるのはおかしく思える、この2人は昨日一緒にはいなかったのだから。
「…ゆんゆん、やはりまだ寝ぼけてますか?昨日はウィズさんのお店に行ってからそのまま帰ってきたではないですか。その後夜に明日は紅魔の里に行ってあるえさんに会いに行ったり、杖の材料である魔術師殺しの欠片の採集と……その…ゆんゆんのご両親に私達の報告もしなきゃですし…」
「……え…そ、そっかぁ……そうだったね……」
勿論そんな記憶はない。だけどアリスが嘘を言ってるようには見えない。ならその聞いた事のない予定を実行してしまおうとまで開き直った。
そうすれば、私がおかしいのかアリス達がおかしいのかわかる気がする。思考はいとも容易くそのように答えを導き出した。…まるで何かに引きづられるように。
……
アリスと私、アンリちゃんの3人は準備を終えて屋敷の外に出る。これから私のテレポートで紅魔の里へと飛ぶつもりだ。
一応テレポートで移動する際には巻き込みなどの考慮をして飛ぶ場所はある程度決めている。家の中だと何かの拍子にちょむすけがはいってきたりする場合もあるし基本的に飛ぶのは屋敷の庭。
「お?おはよう、今から出かけるのか?」
「お、おはようございますカズマさん」
「おはようございますカズマ君、また朝帰りですか?」
そんな時に屋敷に向かってきたのはこの屋敷の主であるカズマさん。それにしてもまた朝帰りとはどういう事だろう。私はそのままアリスとカズマさんの話を聞くことにした。
「仕方ないだろ?ダストやキースが中々返してくれないんだから」
「…あ、あの、それってどういう…?」
「あれ?ゆんゆんは聞いてないのか?最近ミッツさんが家に来ただろ、それを何か勘違いしたみたいであいつらがヤキモチを焼いてるんだよ、おかげで宥めるのも楽じゃないんだよ」
「ふふっ、モテる方はお辛いですね」
…和やかに言ってるけど…これってようはカズマさんとあのダストさんやキースさんがアレな関係ってこと!?と思うと同時に理解した。理解したくないけどしてしまった。
同性でのカップルが一般的ということは、それは当然女性だけでなく男性にもあてはまることになる。
でもそれだと結婚したら子供とかはどうやって作るのだろう?考えたら寒気すらしてきた。
やっぱりおかしい。最初からおかしいとは思っているけど再認識した。紅魔族がおかしいとかそんな次元の話じゃない。世界そのものがおかしい。
待ってよ。
それなら私のお父さんとお母さんはどうなってるの?めぐみんの両親は?そもそもそんな世界観で私はどうやって産まれたの?
考えていたら身震いを起こしてしまった。怖い、紅魔の里に帰ってそれを確認するのが怖い。
「おいゆんゆん、大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「…ゆんゆん?」
『…ゆんゆんお姉ちゃん――?』
「……え?」
気付けば心配そうに私を見ている3人。流石にこうまで考えてしまったら誤魔化すことも難しい。どう言おうか悩んでたら…
屋敷の外から人影が見えた。
「ここにいたのか、ゆんゆん」
「……え?」
突如現れたのは…、あのバニルのダンジョンで一緒にいたリアさん。ここまで走って来たのか疲れているようにも見える。
「いい加減に目を覚ませーー!!」
リアさんがその場で思いのまま叫ぶ。すると私の周囲は真っ白になって…
そのまま私の意識は途絶えることになった。