内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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お久しぶりですm(_ _)mリアルで色々あって大分投稿が遅れました、申し訳ないです。






episode 178 魔石の効果とサキュバスちゃんと女レンジャーさん

 

 

 

 

 

 

―アクセルの街・郊外―

 

アクセルの街の防壁の外は見渡す限り草原が広がっていて、何かが接近すれば見張り台から見れば一目瞭然、それが馬車であれ、人であれ、モンスターであれ、望遠鏡などを用いれば兎などの小動物すら視認する事が可能だろう。

 

そんな見晴らしの良い場所だからこそ、私の放ったバーストの効果は鮮明に私の視界に映されていた。

 

「……なるほど、エリス様が警告するのも分かりますね……」

 

誰もいないその場所で、私は思わず独り呟く。こうして口に出さずにはいられなかった。

 

今私が使った魔法はバースト……もとい《ヘル・インフェルノ》。以前ウィズさんのお店で購入したお値段3500万エリスという新たなフレアタイトを装着した上で放った魔法だ。

 

それは軽い気持ちだった。以前の300万エリスしたフレアタイトと今回購入した3500万エリスという暴額なフレアタイト、どれくらい違いがあるのだろうか、ちょうどいいので試してみよう…そんな短絡的なノリである。

 

そうして放った新たなフレアタイトでの魔法は、全てにおいて進化していた。それはまるで今までストローを通っていたのが消防士が扱うようなホースになったような魔力の伝導率、属性付与した上での火力、燃焼効果。範囲こそ変化はないが元々広範囲に展開できるバーストだ、そこは気にならなかった。

しかしながらこの結果には呆気に取られてしまうのも無理はない、アクセルの街付近のモンスターということでそこまで強いモンスターはいなかった、だから余裕で倒せる事は想定内ではあったのだが、それでもここまで酷い結果は予想外だったのだ。

 

――草原にいた全てのモンスターが――……、骨どころか灰も残さず焼き尽くされてしまった事実。これが私を驚愕させた結果である。

 

以前ならここまでではない、倒したとしても丸焦げにして倒す程度でモンスターの原型は留めてあったのだから。

しかし以前のヘル・インフェルノでも怯えてたアンリの前では使う訳にはいかないな、と思える程度には酷い有様だ、これを見たらアンリはその場で卒倒してしまうかもしれない。

 

そんな考察をしていた私であったが、単純に火力の向上は喜ばしいことだと無理矢理納得しておいた。これが味方にも地形にも影響を与えてしまうのなら爆裂魔法と並ぶ産廃魔法になってしまうが私の魔法故にそのような事はない…なんてめぐみんの前では絶対に口に出せないことまで考えてしまう始末。

 

また無駄に色々考えてしまったものの、モンスターの侵入は阻止できた。キャベツもぼちぼち落ち着く頃合だろう。そう思えば自然と大きめの溜息が出てしまう。

 

やる事はやったので本来の目的に戻ろう、そう思った瞬間だった。

 

「アリスーー!!」

 

遠巻きから私を呼ぶ声が聞こえてきたのは――。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

声の主はカズマ君だとすぐに把握できた。しかし周囲を見渡してみるも、その姿を見る事はできない。

 

「アリスー!!そこにいるんだろうー!?」

 

「っ!」

 

再び私を呼ぶ声。それは私の背後からはっきりと聞こえてきた。そのまま振り返れば視界にはいるのは街の防壁。…どうやら壁の向こう側からカズマ君が呼んでいるのだろう。

 

「カズマ君?どうしました……か……?」

 

壁の方向へと近づきながら返事をするも、声が聞こえてきたと思われる位置を見るなり私の返事の声は段々と小さくなっていく事を自覚できた。同時にその足を止めてしまい、冷や汗ダラダラ状態になってしまう。

 

今声が聞こえてきた壁、それはつい先程キャベツが群がっていた場所だ。そして私がストームを放ち、キャベツを撃退した箇所。更に言えばストームにより舞い上がったキャベツがかなりの数放り込まれた箇所である。

 

同時に思うのは何故キャベツはこんな何も無い壁に群がっていたのだろうか。キャベツは本来この街は通り道でしかないはず。食べられまいと必死に逃げるだけのはずである。

それがあのように群がっていたということはキャベツにとっての目的の何かがこの壁…あるいはこの壁の向こう側にあるということになる。

その目的が何かはわからないが今分かっている事はその壁の向こう側にカズマ君がいるということ。もしかしたら私が舞い上げたキャベツが誰かにぶつかってしまったのかもしれない…そうなれば冷や汗が出てしまうのは当然である。私の行動によって怪我をさせた可能性があるのだから。

 

失念していた。確かに私の魔法そのものはターゲット以外には当たらないので気にする必要はない。だからこそ私も遠慮なく魔法を放った。だがそれによって飛ばされたキャベツ自体が物理的に被害を出す可能性は充分にありうるのだ。人にぶつかってしまっても大問題だし、人じゃなくても街の中なら民家などがあるだろう。屋根や窓を破壊してしまう可能性まである。

 

これは覚悟をしなければならない。カズマ君がいたのだとしたらまさかぶつかった人がいてそれは私の知っている人物かもしれない。家が壊れたなどなら弁償と謝罪で済むのだが人ならそうはいかない、治療が必要ならすぐに向かわなくては。

 

「カズマ君!そちらの状況はどうなってますか!?」

 

だからこそ安否の確認だ。怪我人がいるのなら壁の向こう側に行く為に遠回りする余裕はない、最悪その怪我人が急を要する場合は壁を破壊してでも助けに向かわなければ。

 

そう思えば私の中で状況は切迫していたが、私なりに冷静な判断ができてると思う。しかし――。

 

 

 

「…あー…とりあえずこっちに来い?説明するから」

 

どう判断したらいいのか困る返事が帰ってきた。聞いた限りでは私が危惧するような状況ではないとは思うのだが、どこか呆れているような、怒気を隠し含ませているような、カズマ君らしく呑気っぽさをも感じさせるような微妙な返答である。これにはどう反応したらいいのだろうかと思うも、とりあえず壁を壊して向かうほど切迫はしていないようなので私は急ぎ足でカズマ君の声が聞こえる場所へとむかうことにしたのだった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

―アクセルの街・サキュバスの店の前―

 

軽く息を切らせて到着したその場所は私としては二度と来ないと思っていたあの場所…。以前ダストやキースと出くわしたあのサキュバスの喫茶店である。なんとなく近づきがたいのだが真っ先にカズマ君を見つけるとカズマ君は立ったまま腕組みしてこちらをジト目で見ている。

 

「ようやく来たか、お前はうちのパーティメンバーみたいなポカはやらかさないと思っていたんだけどな」

 

「…あ、あの、それはどういう…?」

 

そうカズマ君に聞くと同時に、私はカズマ君の背後にいる複数の人達に気が付く。向こうも私に気が付いたようで、その反応は様々である。

 

そしてそんな中に…

 

『――アリスお姉ちゃん――!』

 

「アンリ!?」

 

私に気が付くなりアンリは傍にいた人から離れる、そして私に向かって駆け寄ってきた。自然と両手を広げて飛び込んできたアンリを抱きしめた。

 

「もう……どうして屋敷を出たりしたんですか?本当に……本当に心配したんですよ…?」

 

『……ごめんなさい、アリスお姉ちゃん――…』

 

疑問に思う点はあるものの、そんな事よりもアンリが無事で本当に良かった。そんな想いだけが私に残れば、聞いてみたものの事情なんてどうでも良くなっていた。娘を持つ母親の気持ちはこんな感じなのかもしれない、そんな風にまで考えてしまうけどそれは別に嫌でもなかった。結果私は周囲など全く気にもとめず涙ぐみながらアンリを抱きしめていた。

 

 

「お取り込み中悪いけど……貴女が保護者かしら?思ってたより随分若いけど…」

 

「…………あ、貴女は?」

 

声をかけられてようやく他の存在を意識した。目つきのきつい長身で黒髪の女性。黒髪から連想するのは紅魔族ではあるが彼女の瞳は紅くない、濃いめのコバルトブルーといった感じだ。その髪もよく見れば黒というより若干ながら濃い青を感じさせる。

 

そんな女性の私を見る目は…私の気の所為ではなければきついままだ。

 

「貴女ねぇ……こっちがどういう状況だったか分かっているの?そこの男に聞いた限りじゃ、キャベツが降ってきたのはあんたの魔法のせいらしいじゃないの。下手したらあのキャベツ達は私やそのアンリって子にぶつかっていたのよ?」

 

「……え…?」

 

困惑しながらも私は周囲を見渡す。…確かにかなりの数のキャベツが周辺に転がっている。

 

それ以前に。

 

「ア…アンリに……?」

 

どうやら事態は最悪の展開になりつつあったようだ。私は慌ててアンリの安否を確認する。頭を撫でながらもコブなどがないが調べてみる。そんな様子を見て女性は腕組みしたまま呆れたように溜息を吐く。

 

「心配しないでもその子には傷一つついてないわよ、何故かキャベツから避けていったみたいだしね」

 

再びキャベツに視線を移せば、確かにそれは異様にも見えた。キャベツは女性やアンリがいたであろう場所を囲むように綺麗に落ちていて目を回してその場でひっくり返っている。キャベツが目を回しているという表現に違和感しかわいてこないが実際にそうなのだからそうとしか言えない。

 

「……つまり…貴女が?」

 

何故かという言い回しが気になるものの、そう聞けば女性は即座に頷く。

私の言いたい事を付け足すのなら貴女がアンリを守ってくれたのですか?なのだが予想されたように反応された。

 

……というよりこの人は一体誰なのだろうか。今更ながらそんな事を考えてしまう。だが私の落ち度でアンリを含むこの人達を危険にさらしたのは事実らしい。

 

「……本当にごめんなさい…、ギルドからアナウンスによる避難指示は出てましたし、まさか外に人がいたとは思わなかったので…魔法でキャベツが舞い上がったのも想定外でしたし…」

 

後悔に支配されながらも自然とそれは口に出ていた。とはいえこれは言い訳のつもりはない。自身の無罪を主張するつもりもない。

実際にギルドからの避難を促すアナウンスは流れていたし、ストームによるキャベツへの攻撃もイメージとしては壁を越えようとするキャベツ達を巻き込んで引き戻すつもりで放ったのだ。想定外だったのはストームを喰らってもなおキャベツ達は必死に進もうとした結果、壁を越えるような形になってしまったことだろうか。

 

「…それくらいにしてやってくれ。結果的に怪我人はいなかったんだ、これ以上アリスを責めても仕方ないだろ?」

 

それでも下手すれば被害が出ていた、そんな罪悪感が私を襲い、私は俯いた状態でいて小声で言った事もあり、私の心情はカズマ君達に伝わったようだ。カズマ君が私を庇うように言えば、女性もバツが悪そうに目を逸らしていた。

 

「……そんな風に言われたらまるで私が悪者みたいじゃない、もういいわよ」

 

「…すみません…、その、アンリを守ってくれて、ありがとうございました…」

 

「…もういいって言ったでしょ」

 

女性はそれだけ告げるとふいとそっぽを向いてしまった。やはりかなり怒らせてしまったのかと不安になるも、実際危険な目に合わせたのは私なのでそれは仕方ないとも思えた。

 

 

 

……

 

 

 

 

「……それで、その…」

 

「ん?」

 

到着した際にはアンリしか目に入らなかったものの、見えてくれば気になる事象が複数見えてくる。例えもういいと言われたところで私の場合めいいっぱい引きづるのだがそんな感情を押し殺すようにしながらも、その疑問を口にした。

 

「まず貴女はどちら様でしょうか…?」

 

「…まぁ名乗ってないのだから当然よね。私はメリッサ、職業はレンジャーよ」

 

「あ、はい…私は…」

 

メリッサさんが名乗ったのでこちらも自己紹介をしようと顔をあげるも、それはすぐにメリッサさんの手で待ったをかけられた。

 

「わかってるわよ、貴女があの有名な【蒼の賢者】なんでしょ。正直こんな小さな子だとは思ってもいなかったけどあんな魔法を見せられたら納得するしかないわよね」

 

「…間違ってはいませんが、私の名前はアリスです。そんな2つ名を名乗るほどの者ではありませんよ」

 

「謙遜も過ぎれば嫌味にしか聞こえないわよ、魔王軍の幹部を討伐したような大物冒険者が大した事ない訳ないでしょうに」

 

少し呆れたように返されてしまった。謙遜ではなく単純に2つ名で呼ばれるのが恥ずかしくて嫌なだけなのだが。そして何故かカズマ君が納得いかないような顔でメリッサさんを見ていたけど、今の私にはそれ以上に気になる事がある。

 

「……それでその……そこの子は何故あんなに震えながら隠れてこちらを見ているのでしょうか?」

 

私が目を向けた先は喫茶店の庭先にある植木の影に隠れて震えてる桃色髪の女の子だ、よく見ると見た事がある、それは以前この喫茶店に来た時に入口で出逢った子のはずだ。

 

「……あー、あいつはここの従業員なんだよ、この店の事はダスト辺りから聞いてるんだろ?」

 

何処か遠くを見るような仕草でカズマ君が説明してくれた。気まずそうにも見えるが多分カズマ君もこのお店の常連なんだろうと思ってしまうのは自然の流れである。よって私の視線が軽蔑じみたものになってしまうのも自然の流れなのである。そんな視線を送ればカズマ君の表情はより気まずそうになっていた。

 

そして怯えられている理由も何となく理解できてしまった。このお店の従業員ということはだ、あの子の正体は人間ではなくサキュバスなのだろう。なるほどそれなら怯えられるのも無理はない。

なぜなら私の職業はアークプリースト、それだけではなく私は少し前にこのお店では無駄に騒ぎを起こしてしまった張本人なのだから。

 

…とはいえ私は別にサキュバスを敵視しているつもりはない。思えば初対面の時から怯えられていたのだがそれは私としては不本意でしかない。

 

「……あの」

 

「は、はい!!??」

 

控えめに声をかけてみれば緊張しきった返事が帰ってきた。副音声があればごめんなさい殺さないでください私は悪いサキュバスではありません!!とか聞こえてきそうである。

 

「…貴女の種族上、私の職業を考えた場合怖がるのは仕方ないのかもしれませんがどうか落ち着いてください、私は貴女を敵視しているつもりはありません」

 

「……」

 

それでも桃色髪の女の子の様子にあまり変化は見られない。どうも根本から怖がられているようだ。これは地味に傷付く。

 

どうしようかと思っていると私の傍にいたアンリがてくてくと歩いて桃色髪の女の子の傍へと移動を始めた。

 

『…――お姉ちゃん、アリスお姉ちゃん、優しいよ?――怖くないよ――?』

 

「…そ、それは貴女は一緒に住んでるからじゃ…」

 

未だ怯えている様子の女の子にアンリはゆっくりと首を横に振る。そしてアンリは私の方へと振り返った。

 

『……アリスお姉ちゃん――、このお姉ちゃん、私を助けてくれてたの――』

 

いつもと違い行動的なアンリ、少し驚くが顔には出さないように努めた。それはアンリの心理が理解できたから。アンリはアンリなりにどうにかこのサキュバスちゃんと私の仲を取り持ちたいのだろう。

 

…なら私はそれに倣うだけだ。

 

「…そうだったのですね、アンリがお世話になったようで、ありがとうございました」

 

「い、いえ、あの、そんな大した事では…!」

 

まだ怯えられているようではあるものの、その警戒は少しだけ緩んだようにも見える。そんな私達の様子を、カズマ君は不思議そうに眺めていた。

 

「なぁロリーサ、そもそもなんでそんなにアリスに対して怖がるんだ?」

 

「え、えっとそれは…」

 

「アリスは俺の仲間でもあるんだ、こいつはお前らに危害を加えるような子じゃないぞ?」

 

「…人に危害をもたらさないのでしたら、種族がなんであれ私は敵対するつもりはありませんよ」

 

「で、ですがプリーストですよね?アクシズ教かエリス教かはわかりませんけどっ…!」

 

…その言葉を聞いてようやく理解できた。

 

基本的にプリーストやアークプリーストはエリス教かアクシズ教、どちらかに所属している事が多い。そしてその2つの宗教に共通する概念が存在する、それは…悪魔やアンデッドを忌み嫌う性質。ふたつの宗教の筆頭であるアクア様やエリス様があれだけ毛嫌いするのだからその信者もまた同等の嫌いようであろう。

それにより一般的なプリーストは悪魔を忌み嫌い、それに対抗するスキルを多く所有している。対悪魔魔法や対アンデット魔法が筆頭に上がるが、私はそれらのスキルをとっていないに等しい。ターンアンデッドは一応取りはしたがスキルレベルも1のままだし今後上げるつもりもない。

 

話は逸れたが、これで彼女が私…もといプリーストを嫌う理由が完全に理解できた。

 

「……私は宗教に属してはいません。付き合いでこのようなネックレスをつけたりはしてますが、エリス教徒というわけでもないですし。なんなら友人にアンデッドの方もいますし」

 

「え、えぇ!?」

 

出逢って一番の驚愕の表情を見せるサキュバスの女の子。まぁ冷静に考えたら確かにアンデッドの友人がいるというのはプリーストではなく普通の人間であったとしてもおかしな話かもしれない。ちなみにそのアンデッドとは当然ウィズさんのことである。

 

「あ、あの…すみません。私、その…何もされていないのに怖がっちゃって…」

 

「分かっていただければいいのですよ、どうか今後もアンリと……できたら私とも仲良くして頂けたら嬉しいのですが」

 

「……っ!は、はい!」

 

ようやく恐怖からの緊張が解れてきたようだ。少し手間取ったがこうして握手できるようになるまでにはなった。これで他のサキュバスからも警戒心が解けたらいいのだが。まぁお店に行くことはまずないのでそっちはどうでもいいのだが。

 

 

なんやかんやあったものの、アンリは無事に見つかり、サキュバスの子と近しい仲にはなれそうだ。その結果に私は完全に気が緩んでいた。

 

 

「そっちの話は終わったかしら?そろそろこっちも話をしたいのだけど」

 

話をするタイミングを待っていたのか、話が落ち着いた途端にメリッサさんから声をかけられたのだった――。

 

 

 

 

 

 

 

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