《マナリチャージフィールド》
マナポーションを飲んだ私はうつ伏せになったままだっためぐみんの横に座ると、魔力切れのお供であるこの魔法を使った。
戦闘中でないなら攻撃力半減はまったく関係はないので使ってみるとこの世界では割と便利に感じた。
……というのもそもそもゲームでは魔力切れなんてものはない。この世界では1発撃てばおしまいのフィナウも…爆裂魔法でさえもゲームのあのスキルらがあれば何発でも撃ち放題となったのは間違いないのだから。
そのスキルとは《チャージング》そして《マキシマイザー》というスキル。
チャージングは消費魔力無しでランサー1発分の魔力を回復できる。そしてマキシマイザーはチャージングの後に使うことでほぼ魔力を全快にすることができる。
これらのスキルをもってアークウィザードになっていれば爆裂魔法連発も夢ではなかったのだけど……冒険者カードに載ってる私の転生特典スキルの中にはいくら探してもそれらは見当たらなかった。おそらく女神様によりやりすぎだと判断されたのだろう。非常に残念である。
「あ、あの、この青白いのはなんですか?いきなり使われると少し怖いのですが。」
「あぁ、大丈夫よ。魔力を回復してくれるアリスのスキルだから。」
「ま、魔力を回復するスキル!?なんですかそれは!?聞いた事がありませんよ!?」
正しくは回復ではなく自然回復の促進なんだけど細かいことはいいのである。
それにしても今日はお休みの予定だったのに私は何をしてるんだろうかと若干自己嫌悪に陥っていた。
ちなみに魔力を回復ではなく吸収ならあるらしい。アンデッドのスキルらしいけど。
「私も前に使ってもらったことがあるんだけど…1時間くらいで魔力が全快するからかなり重宝するスキルよね。森林浴してるみたいで気持ちいいし。」
ちなみにこの間、ゆんゆんは残り3匹のジャイアントトードを討伐中だったりする。私とめぐみんは動けない、そしてリーンはそもそも見に来ただけだから普段着で杖すら持たずに来ててたまたまフル装備だったゆんゆんに白羽の矢がたったのである、哀れゆんゆん、後でケーキでも奢ってあげよう。
疲れて説明がめんどいのを察してくれたのかリーンが説明してくれると、めぐみんはわなわなと震えていた。
「つまり…つまりですよ!?私と貴女が組めば私は1日10回くらいは爆裂魔法が撃てるということですか!?なんですかそれは反則すぎます!チートですチート!」
一体何が言いたいのかわからないけど私は無視を決め込むことにした。それにしても元気ねめぐみん。同じ魔力切れ状態のはずなのに私はしゃべるのもめんどくさいのに。ちなみにチートは認めますごめんなさい、スキルどころか髪の毛1本残らず女神様によるチートです。
「それで!?どうでしょうか!?是非私と固定パーティを組んでもらえませんか!?貴女と私が組めば最強間違いなしですよ!いえ私だけでも最強なのは変わらないのですが。」
結局言いたかったのはそれですか、と私は小さく苦笑した。すると終わったのだろうか、ゆんゆんがこちらに向かって手を振っていた。
「ようやく終わりました…。駄目よめぐみん!アリスさんにまた迷惑かけるようなことを言ったんでしょ!」
「またってなんですか!?私はただ固定パーティのお願いをしているだけです!」
いや、またなのですよ。この勝負も元はと言えばめぐみんの言葉から始まったのだから。それにたまにパーティならまだしも固定パーティは流石に無理である。テイラーさんのパーティに入れたらいいけど定員オーバーらしいし、仮に入れられるならはいるのは先に言ったゆんゆんになるだろう。
私がテイラーさんのパーティを抜けるつもりは現状ないので完全に無理な話である。
「固定パーティなら、私と、リーンさん達のパーティにアリスさんは入ってるから無理だと思うわよ。」
「なっ!?ゆんゆんがパーティ!?」
「えっ、そんな驚くことなの?」
リーンに同意である。そういえばめぐみんとゆんゆんが鉢合わせた時もめぐみんは友達ということを信じてなかったのは何故だろう。ともあれ話が逸れそうなので助かる限りだったりする。
「当たり前じゃないですか!ゆんゆんですよ?一緒にいたならゆんゆんがどういう子かわかっているでしょう!?ゆんゆんには私くらいしか友達になれる人がいないんですから…あ。」
「め、めぐみん……い、今なんて…?」
見ればゆんゆんは顔を赤くしてもじもじしていた。それは凄く嬉しそうなのだけどその反応も謎だった。私としては2人は同郷の友人だとばかり思っていたのだから。
「なんでもないです、なんでも…ちょ、ちょっとやめてください!抱きつかないでください!私にそんな趣味はないのですよ!こら離れなさい!?」
ゆんゆんは勢いのまま私の隣にいためぐみんに抱きついた。とりあえず見た感じではめぐみんが素直じゃなくて、ゆんゆんが引っ込み思案であるからお互いに友達だと思ってはいるものの、なかなか歯車が噛み合わないのだろう。実際私やリーンと話してるよりも、めぐみんと話すゆんゆんはまったく遠慮のないとても自然体に感じていた。
「なんだかこの2人…変なコンビね。」
ふと私の隣にきて座り込むリーンに同意して、私達は2人に生暖かい視線をおくっていた。
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「まったくこちらが動けないのをいいことに、好き勝手やってくれますね!……それで?すっかり忘れてましたが結局今回はどちらの勝ちになるのですか?」
あぁ、そういえば勝負でした。と思ったのは私だけではなかった。リーンもゆんゆんですらも忘れていたらしい。
「いや…そうは言ってもさ、あれをどう優劣つけろと言うの?」
「結果的に、アリスさんもめぐみんも、ジャイアントトードを跡形もなく消滅させちゃいましたから…」
「なら引き分けでいいんじゃない?火力勝負でジャイアントトードの結末が同じなら、それしかないじゃない。」
まさにその通りである。めぐみんも判断に困るようで、もしかしたら勝っている要素を探そうとしているのか、ぐぬぬと唸っていた。
「わ、わかりました。引き分けなら仕方ありません。ですが覚えておいてください!我が爆裂魔法は最強の攻撃魔法!更なる磨きをかけて再びあなたに挑みましょう!」
…それだと私はまたフィナウを使わなければいけないってことになるのかな?…はい、却下です♪この時の私の笑顔は凄くいい笑顔である自信があった。
「何故ですか!?まさか貴女はあんな素晴らしい魔法を使わないとでも!?」
「いやアリスの場合…あれ以外にも攻撃スキルはいっぱいあるし…。」
「ねぇめぐみん…そもそもめぐみんが爆裂魔法の火力をあげてまたやったとしても…またどちらも消滅させたらまた引き分けになるだけと思うんだけど…」
「うぐっ」
ゆんゆんがいい事を言いました。私は内心ゆんゆんを褒めたたえていた。なんでもいいからこの魔力切れだけはなりたくない。とことんチャージングとマキシマイザーがないのが悔やまれる。
とりあえずもう少ししたらご飯にでも行きますか。なんて言いながら、私たちは魔力回復を待つことにした。
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冒険者ギルドの酒場。
ジャイアントトードの討伐報告をした私達は、その報酬をそのまま食事に使おうと4人で酒場にきていた。そして料理がくるなり、めぐみんはがっついた。
「ちょっとめぐみん、もっとゆっくり食べなさいよ。みっともないよ。」
「仕方ないではないですか、もぐもぐ…、ここ2日ほどまともに食べ物を食べてなかったのですから!もぐもぐ」
「なんでそんな状態になってるのよ!?ちゃんと食べなさいよ!?」
「仕方ないでしょう!?お金を稼ごうにも、パーティを組んでくれる人がいないのですから!」
聞いてて納得はした。めぐみんは爆裂魔法を愛するあまり、爆裂魔法とそれの強化をするスキルのみしかスキルをとってないらしい。流石にこれではなかなかパーティは組めないだろう。…なんか防御スキルしかとらないクルセイダーさんがいた気がしたけど彼女となら仲良くなれそうな気がする。
私はさっきの話の続きをした。固定パーティは無理だけど、たまに時間が合う時にパーティを組むのは構いませんよ?と。
「ほ、本当ですか!?いいんですか!?爆裂魔法しかできませんよ!?」
その時はまた回復してあげたらいいだけですし。きっとゆんゆんも参加してくれると思うし。
「も、勿論よめぐみん!」
「あ、ゆんゆんは結構です。」
「なんで!?どうしてそんなこと言うの!?」
「当たり前でしょう!?まずゆんゆんとは友人である前にライバルです!ライバルと一緒にクエストなどできるわけがありません!」
「えっ、めぐみん…今また友達って」
「言ってません。」
「えぇ!?言った!今言ったよ、友達って!」
「言ってません、というか近づかないでください気持ち悪い。」
「気持ち悪い!?」
そろそろ止めないの?というリーンの視線を感じた私はくすくすと笑ってうなづいた。本当に仲がいいなぁと思いながら。
めぐみん編おしまい!
次回『カズマ死す』(転生的な意味で)