お久しぶりですm(_ _)mようやくネタが浮かんたので書きました、大変お待たせしました。
今回はタイトルの通りアクア回になります。
―王都―
酒場での一件から数日が経ち、私は今王都にいる。いつもながらに街の人口は多く様々な人々で賑わいを見せているその城下町を見ていると、この場所が対魔王軍への最終防衛地点ということを忘れそうにすらなる。
…最終防衛地点……そうなのだ。元々王都という場所は迫り来る魔王軍から人類を守る為に募り、盾となった拠点でしかなかったらしい。そしてその場所が陥落してしまえば人類に未来はない、となれば当然この世界の全人類が無関係では済まされないので王都への世界からの支援は留まる事を知らない。そうして出来上がったのが現在の王都であり、全人類最強の矛にして最硬の盾なのである。この王都が存在しているからこそ、同じ大陸にあるアクセルやアルカンレティアは当然のこと、他の大陸にある国も比較的平和な日々を送れている。
とはいえあくまで比較的にである。私のような元々争いとは無縁の日本という国から来た者からすれば、街を出ただけで人間を襲うモンスターが存在するこの世界の在り方は、平和と言うには難しいかもしれないがそれはさておき。
そんな王都に来たのは私とゆんゆんとミツルギさん、そしてアクア様の4名である。
「アリスのパーティと一緒に来る王都ってのもなんだか新鮮ねー♪口煩いカズマはいないし」
「御安心くださいアクア様、サトウカズマなどいなくとも、女神様の御身はこの御剣響夜が御守り致します!」
「え?……あ、あぁ…よ、よろしくねマツラギさん」
「ミツルギです!!」
言われてみれば珍しい組み合わせかもしれない…というよりアクア様がカズマ君達と別行動をとるのが珍しいとも言えるのだが。
「…アクア様、遊びに来た訳ではないのですよ?」
「ふふっ、分かってるわよ!貰えるものは貰ってあるしね!お仕事はしっかりさせてもらうから安心しなさい!」
こうしてアクア様を王都まで連れて来たのは勿論理由がある。前々から頼んでいたアンリの新しい服の材料を買う為である。というのもどうもアクセルでは満足のいく材料が調達できそうになかったようでそれならアクセルとは比べ物にならないくらい豊富にお店が存在する王都なら買えるだろうとの目論見である。ただアクア様にお金を預けちゃうとまた悪気なく散財する可能性があるので今回は私と一緒にお店を回って必要なものを私がお金を出して買うという形になったのだ。これについてはカズマ君より決してアクア様にお金を渡してはいけないと5度ほど念押しされてしまった。
「でも……アンリちゃんは大丈夫かな…?」
「まぁエシリアなら大丈夫と思いますよ、リア達も一緒に面倒見てくれるみたいですし」
話の通り、今回アンリは私のパーティ以外で唯一アンリが懐いているエシリアに預けている。本当は距離を近付かせる為にも屋敷のメンバーに預けたかったのだがめぐみんに預けるのは少し怖さがあり、ダクネスは実家に呼ばれて帰っていて、カズマ君はいつものようにバニルとの商談があるようなのでエシリアへと白羽の矢が飛んだことになる。
連れて来れなかった理由は単純に今回王都に来た理由のひとつにクエストも兼ねているからである。以前言ったように私達のパーティの受けるクエストはモンスターの討伐クエストが主流なこともあり、危険なのでアンリを連れ回す訳にもいかないのだ。
「お買い物は後にするとして、ゆんゆんの用事を先に済ませるのよね?」
「そうですね、買い物が終わればそのままギルドで適当な討伐クエストを受けるつもりですし」
「そ、それって私も一緒に行ってもいいのよね!?」
「……え?」
今日の予定はゆんゆんの新杖を取りに行ってからアンリの為の服作りに必要な材料をアクア様と購入して、その後にクエストを受ける流れ。
そのクエストにアクア様が同行するというのは実は私の頭には全く無かったことである。てっきりそのままゆんゆんのテレポートでアクセルの屋敷に帰ってアンリの服の製作にとりかかるとばかり思っていたのだから。
そしてそんなアクア様の提案に驚いたのは私だけではなくミツルギさんも同じだった。大きく口を空けたまま固まっていた。なおゆんゆんは特に大きなリアクションはない。
「え、えっと…一緒にというのは…、クエストに、ですか?」
「もちろんよ♪せっかくこうして貴方達と王都まで来たんだし、たまにはそういうのもいいと思うのよね、ほら、アリス達とはあまりこんな風に過ごした事ないし」
まるで今思いついたから納得しているようにうんうんと頷きながら語るアクア様だが、私としては特に反対する理由はない。言われてみればアクア様と共にクエストというのは今回が初めてかもしれないからだ。過去に魔王軍の幹部を相手にした時などは共闘したこともあるがそれは成り行き上だったりするし改めて事前から一緒に行動するといったことがなかったのだ。
「……ですが…大丈夫なのです?カズマ君と離れてて」
懸念材料はそこにある。アクア様は名目上カズマ君の転生特典としてこの世界に現界しているのだから。私ならば今ある装備と能力と容姿、ミツルギさんなら魔剣グラムといった具合に。
「別にそんな制約はないわよ、むしろカズマは私が王都に行くことに喜んで賛同してくれてたわよ?」
それは単純にアクア様がいると安易にバニルとの商談など出来なくなってしまうからでは無いだろうかと思うも、それを言ってアクア様の機嫌を損ねるのもややこしくなるので言うつもりはない。なるほど、カズマ君にとってこれは体の良い厄介払いになってもいるのだろう。間違えても駆け出し冒険者の街で
「反対する理由はありませんよ、アクア様が来て下さるのなら私としても心強いですし」
「そうでしょそうでしょ♪こんな優秀なアークプリーストが着いていくのに不満なんてあるはずがないわよね!支援でも回復でも任せておきなさい!」
アクア様が支援してくれるのなら私は攻撃に回ればいいだけなのでそれもまた問題はない。まぁ大抵のクエストでは既にそうしているのだけど。
「まさかアクア様と共にクエストへ行く日が来るとは…、先程も言いましたが御安心ください、野蛮なモンスターなどにアクア様へは指一本触れさせはしません、この魔剣グラムに誓いましょう!!」
「…え、…え、えぇ、ありがとうカツラギさん、頼りにしてるわ」
「ミツルギです!!」
後いい加減にミツルギさんの名前くらいは覚えてあげてほしい。もはや一緒の屋敷に住んでるのだから。悪気がなさそうなのが余計にタチが悪いのだがそこが憎めないところもあるので言う事はないのだけども。ミツルギさんも名前間違えを指摘するのに完全に慣れちゃってるし。
…にしてもアクア様がここまでクエストに行く事に前向きなのも珍しい。カズマ君の話だと最初は魔王を討伐して天界に帰りたいが為にカズマ君のレベルアップに意欲的だったりしてたらしいのだが最近だと屋敷ではカズマ君に次いでクエストへの意欲が薄い存在となっている。一応冒険者なのにやってる事はお酒飲むことと土方のアルバイトばかりだったりする。まぁこれは単純にお酒によりお金がなくなりそのお金の為にアルバイトをしているの無限ループな訳なのだが。
となるとここまで意欲的なのは間違いなく…
「……アクア様、お金…困ってるのです?」
「……うっ…!?…そ、その…最近カズマさんにも借金しちゃって頭が上がらない状態なのよ…、王都のクエストなら…、アクセルのクエストやアルバイトよりもずっと実入りがいいじゃない?」
アクア様の事だから見栄を張って誤魔化すかと思いきや、小声ながらも割とあっさり自供してしまう。それだけ切羽詰まった状態だというのだろうか。…とはいえあくまで自分で働いてなんとかしようというスタンスには好感はもてる。仮にここで私にお金を貸してほしいなんて言ってきたら貸すのは貸すけど間違いなく幻滅する。そこは腐っても女神様ということなのだろうか。流石に腐ってもだなんて絶対口に出しては言えないがそこは本人の日頃の行いのせいなので思ってしまうのは仕方ない。まぁ人間味がありすぎて憎めなさもあるけど。
「…?2人ともどうしたの?」
「な、なんでもないわよ!?あはははは……」
真相はゆんゆんやミツルギさんには聞こえていなかったらしく、2人して首を傾げていた。特にミツルギさんには聞こえてなくて良かったのではないだろうか。魔剣グラムを受け取り転生してもらった恩義からアクア様への信仰心はそこらのアクシズ教徒にも劣らないほどはあったものの、私がきっかけで再会して同居したことでアクア様の本性を間近で垣間見たことによりその信仰心は昔ほどではなくなってる気もするし。これ以上信仰心が減るのも女神様としては良くないのではないだろうか…と思うも、なら名前くらいは覚えてやってくださいとは割と切実に思ったりもしたり。
まぁそれは私なんかよりもミツルギさん本人の方がよほど渇望していそうではあるけど。今ならアクア様がミツルギさんと呼ぶだけでかなり信仰心が上がりそうな気がする。
「そ、そんなことより!まずはゆんゆんの杖を取りに行くんでしょ?私もどんな出来なのか興味あるし、早く行きましょ!!」
誤魔化すように言うアクア様だがそこは本心なのかもしれない。忘れてはいけないのがこの世界に存在しているほとんどの神器は転生者により持ち込まれたものであり、その発端はアクア様である。つまり神器の作者でもあるのだ。
ならゆんゆんの杖を作るのはアクア様に任せたら良かったのではと一瞬思うものの、今のアクア様には天界に居た時ほどの力はないらしいので聞くまでもなく多分無理だろう。
……
―王都・ドワーフの店―
材料納入から丁度一週間。ようやくゆんゆんの苦労が形になる時が来たのである。そう思えば私としても感慨深いものがある。様々な幸運が重なって材料そのものは割と短期間で入手できたものの、どの材料をとっても楽に入手できたものは何一つ存在しないのだからそれも仕方ないだろう。
「ここがお店?本当に民家と変わらないのねー?」
お店の前につくなりアクア様は好奇心に満ちた目でその建物を見渡していた、同じ造り手として何か思うところがあるのだろうか、私にはよくわからない領域である。
私の存在の元となったゲームにも武器や防具を製作できるスミススキルというものはあったが、今やそのスキルを使う事はできないのだ、仮に使う事ができたのなら少しは興味が湧いたかもしれないが無い物ねだりをしても仕方ないし仮に新たにスキルを得られるのなら私はチャージング…一瞬で魔力を回復できるようになるスキルを選ぶと思われる。
とまぁどうでもいい事まで考えていたらアクア様はその好奇心の赴くままにお店の中へと入っていき、私達もそれに続く。
「おう来たか、注文の品はできてるぞ。久しぶりにいい仕事をさせてもらった、礼を言っておこう」
入るなり私達に気が付いた店主のドワーフさんはこちらを一瞥するなり物腰柔らかい様子でそう言ってくれた、どうやら仕事として満足のいくものだったらしい。少なくとも初対面の時のような威圧は感じられない。さぁはやく見てくれと言いたげな様子で白い布に包まれたものをカウンターの上に置いた。
ごくりと喉を鳴らすゆんゆん。そのままそれを手に取り、布を捲っていき、その杖はその姿を見せてくれた。
先端には赤紫色になったマナタイト結晶、それを細かく加工されたワイバーンの爪が掴むように装飾されていて、グリップ部分も持ちやすそうになっている。装飾は派手ではなくむしろシンプルなものではあるが、私から見る限りは悪くないように見受けられた。
「…凄い…!握っただけでも今まで使ってたのとは比べ物にならないのがわかる…!」
あくまで私には見た目でしか判断ができないが、ゆんゆんからしても好感触のようだ。その様子は多分私が前世で新しい最新のスマホを買った時と同じような顔をしているのかもしれない、その紅い瞳はキラキラと輝いていた。
そんなゆんゆんの様子に不器用ながらも口角を緩ませていたドワーフさん。やはり造り手なだけあって依頼人が満足している様子を見て悪い捉え方はしないようだ。
「手に持っただけでわかるか、後は使ってみて何かあれば言え、何分初めて扱った素材もあるんでな、不具合がないとは言いきれん」
「は、はい!ありがとうございました!」
大事そうに両手で杖を握るゆんゆんを見てこちらも笑顔と安堵の溜息がでる。ようやく入手できたのだ、ミツルギさんの口元も緩んでいた。
よし、これで此処での用事は終わりだ。後はアクア様とアンリの服の材料の買い出しをした後に冒険者ギルドでクエストを受ける、ゆんゆんの新杖の効果はその時にでも見る事ができるだろう。
そう思いアクア様に告げようと目を向けたが…
「ちょっと待って」
アクア様は難しそうにゆんゆんの杖を見つめたままそう言い放ったのだった――。