内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 24 覚悟と決意

やってしまった。

 

最後のウォールはいけなかった。

 

でもそこまでゲーム内の仕様引き継がないでいいと思うの。

 

ウォールは、ボスには効かない。

 

カズマ君にちゃんと言っておかないと…。

 

あ、あれ?そういえばどうなったんでしょう?

 

ふと意識するとここは…見たことがある、あの場所だ。そう感じた。

 

真っ暗で、白と紺色のタイルで、椅子だけがあって。真っ暗の中には星々のような微かな光が瞬いている。

 

そうだ、ここは確か私が女神アクア様と初めて出逢った場所に凄く似ている。

 

だけどその椅子には誰も座っていなかった。

 

この場所にいるということは…まさか私は…

 

「すみません、ちょっと取り込んでました。」

 

銀のとても長い髪の露出の少ない白いローブのようなドレスのような衣装の美しい女の人。突然の出現に私は目をパチクリさせていた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

あ、はい。と予備動作のように告げた。若干心配そうに見つめる女の人は、それを見るなりわざとらしく咳払いした。

 

「こほん、先に言っておきます。これは夢です。」

 

 

夢なんだ…。単調にそう思った。てっきりあのまま死んだと思ってはいたものの、私はまだ生きているらしい。…なんとなくデジャブを感じた。何故なら以前は死んだのが夢と思い、今は夢なのに死んだと思おうとしていたのだから。

 

「はい、夢の中に私がお邪魔しています。本来なら私は死なないと会うことのない存在ですから。ですから、今はまだ名乗りません。」

 

名乗らない、そう言った女の人の台詞にふと思う。

 

…何処かで聞いた事のあるような声な気がする…

 

「気の所為です。…気の所為ですよ?」

 

なんとなくごまかされてるようにも見えないけどそんな台詞を言う女の人はなんだか可愛らしくてホッコリしたのはここだけの話だ。

…それで、何の用ですか…?と私は問う。

 

「貴女が死んでいない事を伝える為です。今ここで貴女が死んだと意識すると、それが現実となる可能性がありましたから。事実今の貴女はそれだけ危ういです。ですから…」

 

ふうと息を吐いて、女の人はこちらを見据える。

 

「意志を強く持ってください。そうすれば、先輩がどうにかしてくれるはずです。」

 

…先輩…?そう聞き返したところで、女の人は消えていた。とりあえず意識を強く持てと言われてもどうしたらいいのか。私は死んでないとひたすら思えばいいのか。そんなことを考えて、そしてこうなってしまった経緯を思い出すと、私の頭には1人のアークウィザードの少女の顔が浮かんだ。

 

 

……

 

 

そうだ、めぐみんは…!?

 

めぐみんは無事なの…!?

 

 

そう考え出したら、背景が段々と真っ白になっていった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「セイクリッドハイネスヒール!」

 

眩く淡いエメラルド色の光が目を開けて初めて視界にはいったものだった。

 

「アリス!!良かったです!本当に良かったです…!」

 

「めぐみん落ち着け、まだ完治したわけじゃないだろ。」

 

次々と聞き慣れた声が聞こえてきた。虚ろだけどそこは見慣れない場所だった。…なんだか臭かった。

 

「変な場所で悪い、ここは俺らが寝泊まりしてた馬小屋だよ。」

 

声の主はカズマ君だった。その横でめぐみんが泣きじゃくっていた。

 

「とりあえずこれで大丈夫よ。すぐ動けるようになると思うわ。」

 

そしていつも通りな調子のアクア様。

 

……とりあえず何がなんだか…?そう思っていたら私を見て察したのか、カズマ君がめぐみんに目を向けた。

 

「めぐみん、話せるか?」

 

「…はい。」

 

めぐみんは涙を両手で拭うと、そのままその赤い瞳を私に向けてきた。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

「くっ…アリスに何をしたのですか!?」

 

「…今言っただろう。それは死の宣告だ。一週間以内にその小娘は死ぬ。これを解いて欲しければ…今ここでお前が俺を倒すか、街にそいつを連れて帰って仲間でもなんでも呼べばいい。俺は逃げも隠れもせずにここで待っておこう。」

 

ベルディアはそう言うなりめぐみんに背を向けると、ゆっくりと最奥の玉座へと向けて歩き出す。

 

「もっとも前者はオススメしないがな。後者にしてもさっさとすることを薦める。治療をしなければその深傷ではその小娘はそんなに長くはもたないだろうからな。」

 

「!?」

 

めぐみんは考えるよりはやく私を持ち上げ、肩で抱えて移動を始めた。もはやベルディアなんて眼中になかった。ただ一刻も早く治療する為に。

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「そして私はアクセルの街に入り…守衛の人に手伝ってもらいこの馬小屋までアリスを運びました。…アリス、私は貴女になんと謝ればいいか…んっ」

 

私はめぐみんの口を手で優しく抑えた。それ以上言って欲しくない。ただ、私の方こそありがとう。それだけをこめて。改めて話を聞いたカズマ君は、軽く考えるようなそぶりを見せていた。

 

「…それで死の宣告だったか?思った以上に厄介なやつだな。アクア、治せないか?」

 

「多分できるわ。」

 

「やっぱお前でもきついよなぁ……え?」

 

「だからできると思うわ。行くわよー。」

 

淡々とした口調のままアクア様はどこからか花のような大きな杖を取り出した。

 

「セイクリッドブレイクスペル!!」

 

アクア様の杖から私へと流れる光弾は、パリンと何かを割ったような音だけを残して消えていった。同時に拭えなかった虚無感が、まるでなかったかのように薄れていった。

 

「本当にあっさり治しやがった。」

 

「当たり前でしょ、私を誰と思っているのよ。」

 

女神様ですよね、と私は続け、涙目でありがとうございますと告げた。そしてグッタリする。体力は戻っても、魔力切れはまだ続いているようだった。

 

「ふふっ、とりあえず今は休みなさい。ここだと嫌だろうから、少ししたら貴女の宿まで運んでおくわ。」

 

「あ、アクア、私も…」

 

「めぐみんももう休め?気持ちはわかるけどアリス抱えてきてずっと付きっきりだっただろ?」

 

「……わかりました。」

 

力なくそう告げるとめぐみんはその場から立ち上がった。その三角帽子で表情は見えない。だけど手に持つマナタイトの杖は強く握りしめられていて、それは悔しいという感情を表していたことは誰の目にも明らかだった。そして震えが止まったかと思えば、何かを決意したように馬小屋を後にした。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

それからの私は魔力が回復してもクエストに行くこともなく、それどころか自分の部屋から出ていなかった。

 

私には確かに存在した。散々クエストをこなしてきた中で、みんなから賞賛されて、敵を倒してきて。

 

自信というか、私ならやれる。そんなことを無意識に考えるようになっていた。

 

だけど結果はあの様。魔王軍幹部が相手では仕方ない。相手が悪すぎた。

 

でも、今私が生きているのは、ベルディアの気まぐれにすぎない。

 

死の宣告をしたとしても、あの男はめぐみんには何も危害を加えていなかった。

 

ベルディアの考えによっては私もめぐみんもとっくに殺されていたのだ。

 

そう思うと、やりきれなくなる。

 

今の私は…結局転生特典であるステータスとスキルでしか戦えてはいない。

 

それらがなければ、私はただの人。その辺のゴブリンにすらあっさり殺されてしまうだろう。

 

だから強くなりたいと願うようになった。力もだけど、心を強くしたい。

 

となるとやっぱり…私はアクセルの街を出るべきなのだろう。

 

ここにいると、嫌でも甘えてしまえる仲間が多くいるから…。

 

もちろんすぐにではない。ベルディアの件はまだ終わっていないのだから。

 

 

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あれから6日が経った。私は相変わらず自分の部屋にいて、たまに宿の主人に頼んだ食事を食べるためだけにでていくくらい。今までクエストは散々やってきていたのでしばらく働かなくても問題ないくらいの蓄えはあったから生活に関しては困ることはなかった。

たまにダスト達やカズマ君達がお見舞いにきたりしたが、めぐみんが来る事はなかった。ゆんゆんも来なかったが、彼女は少し前に一旦里帰りするようなことを言っていたのでまずゆんゆんは今回の件を知らないと思うしそこはいいのだけどめぐみんに関しては心配だった。

 

 

『魔王軍幹部急襲警報!!魔王軍幹部急襲警報!!』

 

突如街中にルナさんのアナウンスが響き渡った。ベッドで寝ていた私は、ハッと飛び起きる。僅かながらに自身から震えを感じた。

行きたくなかった、怖かった。身体が震えるだけでまったく動く気がしなかった。

 

『魔王軍の幹部、デュラハンのベルディアがアクセルの門前に出没しました!!冒険者の皆さんは、至急アクセルの正門前に!戦えない方はすぐに避難してください!!』

 

アナウンスは繰り返される。同時にあの時の記憶が蘇る。

 

そんな中、宿の外が騒がしくなってきた。それに混じった足音、そして鍵をしてなかったのでそのまま開かれる扉。

 

「アリス!いますか!?」

 

その声はあの日以来会ってなかっためぐみんだった。だけどあの時の弱々しい様子はまったくなく、少し慌ててる様子ではあるものの、何時ものめぐみんだった。

 

「いましたか。さぁ行きましょう。」

 

当たり前のように告げるめぐみんだけど私は中々返事ができないでいた。そんな私の気持ちを察してかはわからない、だけど私を見ためぐみんはぐっと言葉に力を入れた感じがした。

 

「私はもう、貴女を1人にはしません!貴女1人を戦わせません!」

 

…おそらくめぐみんはずっとこれを気にしていたのだろう。私が思い悩むように、めぐみんもこの6日間、思い悩んできたのだろうか。…そう思ったら、自然と私の身体は動き出していた。

 

私はゆっくりとベッドから立ち上がる。流れるように手慣れたいつもの服を着る。

あの時に破れていた私のゴシックプリーストの服はアクア様により綺麗に直されていた。

髪をリボンで整える。縛ると同時に気持ちを引き締めるように。

杖を持つとめぐみんの元へ歩く。ふわっと長いツインテールがゆらめいた。

 

 

 

 

 




入れようとしてやめた没案

ひとりぼっちじゃないんだもの…もう何も怖くない。
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