内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 28 王都ベルゼルグ

 

馬車に乗って4日。旅は順調に進んで行き、結果的に魔物や野盗などに襲われることもなく私とゆんゆんは王都ベルゼルグに到着した。

御者のおじさん曰く、ここまで平和に辿り着けたことはあまりないと言っていたことから、普段の危険性が垣間見える。

 

その城下町は大きな城壁に囲まれていて、規模はアクセルとは比べ物にならなかった。また城壁の周囲には川が流れていて、それは見た目に風情を感じると同時に、魔物などに簡単に攻め込まれないようにしているようにも見受けられた。正門には大きな橋が降ろされており、両端には非常に大きな鎖がある。そして、出入りする人々の多さもまた、アクセルとは比べ物にならなかった。

 

比べ物にならないのは人の量もだが、質も高い。冒険者らしき風貌の人は、どの人を見ても駆け出しとは程遠いように見受けられる武具で身を包み、冒険者以外にしてもお金を持っていそうな貴族や商人、またはそれらに付き添う護衛のような人達。正門の入口を守る守衛の人を見てもやはり装備品からアクセルとは比べ物にならなかった。

 

「ここが…王都…!」

 

今の私達はもしかしたら田舎者丸出しなのかもしれない。だけどそう思いながらも、私達2人は王都の存在そのものに圧巻していたのだから。…とりあえず驚いてばかりいても仕方ないと、私は王都正門へ向け歩を進める。ゆんゆんもまた、私に着いて行くようにその足を動かしていた。

 

「待て」

 

いざ門を通ろうとすればふいに声がかかった。振り向くと歳若めで真面目そうな守衛の人が私とゆんゆんを警戒するように見ていた。少し驚いたものの、私は何かご用ですか?と首を傾げた。

 

「見かけない顔だな、何か身分を証明するものは?」

 

…突然職質を受けるとは思わなかったけど私は何食わぬ顔で懐に入れていた冒険者カードを取り出し、守衛さんに提示した。ゆんゆんも少し慌てたように続く。

 

「ふむ、冒険者か。……アークプリーストにアークウィザードとはな。若いのに大したものだ。王都は初めてか?……そうか、冒険者ギルドなら正面を真っ直ぐ行けば見えてくる、行っていいぞ」

 

ただ頷くと守衛の人は私達にギルドの場所を教えてくれた。私達はありがとうございますとだけ告げると足早にギルドへと歩き出した。それはいいのだけど…

 

「…なんだか…お堅い感じがするね…」

 

ゆんゆんのヒソヒソとした声に私はゆっくり頷く。アクセルの守衛さんはもっとおおらかで優しかったのだけどどうもここの守衛さんはピリピリした印象を受けた。それは今話しかけてきた守衛さんだけではなく、他の守衛さんを見てもそれは伺えた。少し考えると、まぁそれはそうだろうな、という感想がでてきた。

この王都は日々魔王軍により攻撃されている。それが何年もずっと続いているのだとか。…だからこそ、大陸の主戦力がこの国に集結し、この国は大きく栄えた。調べた知識ではこの世界での主力国家となっている。つまりこの王都ベルゼルグは最初にして最後の砦。もしこの王都が魔王軍により敗走すれば、瞬く間に他の街などは魔王軍により侵略されてしまうだろう。だからこその緊張感なのかもしれない。

 

さて、冒険者ギルドを案内してくれたはいいけど予定では宿の手配が先だったのでどうしようか迷っていた。とりあえずギルドの場所だけでも把握しようと今向かっているのだけどどうしたものか。

 

「先に冒険者ギルドに行っていいと思うわ、確かアリスは手紙を預かっているのよね?それにギルドの人から宿のある場所とかも聞けると思うし…」

 

言われてみれば確かにそうだと私は笑顔でゆんゆんに同意した。このまま闇雲に宿を探しても時間を無駄に消化しかねないしその方がよほど効率がよかったので私とゆんゆんは冒険者ギルドへ向けてより歩を強めるのだった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

王都の冒険者ギルドに到着した。ギルドは明らかにアクセルの街のものより大きいものの、アクセルと違って酒場の併設はなさそうだ。ゆっくり入ってみると、窓口もアクセルより多く、依頼提示板もまたアクセルより多めのスペースが確保されていた。ちらちらと見渡すと訓練場などもあるようで、少なくともアクセルのようなお気楽性はまったく感じない。逆に重苦しい雰囲気すら感じる。とりあえず手紙を出すだけ出して宿の場所でも聞こうかと私は窓口に向けて歩き、ゆんゆんはどうするのかな?と目配せした。

 

「ま、まだ依頼を受けるわけじゃないけど…わ、私はどんなのがあるか見てみるわね…」

 

そう言うなりゆんゆんは提示板に向けて歩き出したけどどことなく緊張してみえる。大丈夫だろうか?と考えるも、実は私もさっきからこのギルド内の独特の空気に緊張していたりするのでゆんゆんのことを考える余裕もなかったりする。

 

「はい、どのような要件ですか?」

 

窓口にいた人は真面目そうな30代くらいに見える如何にも事務関連のお仕事をしているといった様相の男性だった。私はアクセルから来たことを告げると、ルナさんから貰った手紙を差し出した。

 

「アクセルですか…あ、お預かりします、失礼ですが冒険者カードも提示してくださいますか?」

 

口調も表情も変えず淡々と話す職員の人はまるで機械でも相手にしてるような感じすらした。ルナさんはルナさんであの冒険者ギルドの華だったんだなぁと思えた瞬間でもある。私は冒険者カードを手渡すと、職員の人は黙々と手紙を読み始め……初めてその表情を変えた。

 

「す、すみませんが別室に案内させていただきますので着いてきてください」

 

突然の反応と対応に私はとまどった。手紙に何が書いてあったのだろうか?わからないけど着いてきてくださいと言ってる時点でこちらに拒否はないらしい。若干不安を覚えながらも私は窓口から出てきた職員に着いて行くことにした。

 

 

 

……

 

 

 

 

「どうした?…手紙?ふむ…」

 

入った別室とは…ギルド長の部屋らしい。私は何が何だかわからず混乱していながらも職員の案内のまま手前の椅子に座らされた。テーブルを挟んである偉そうな椅子に座っている立派な髭の男性は先程の職員のように黙々と手紙を読み、私の冒険者カードを拝見していた。…そしてその目が見開かれた。

 

「…このような子供がアークプリーストだと言うのも凄いが…君があの魔王軍幹部ベルディア討伐の立役者の1人だと言うのか!?」

 

本当にルナさんはなんてことを書いてくれたんだろう…。そんなこと書いたら早くも王都で目立ってしまうことは間違いないのにと私は内心落胆していた。すると職員が2人、慌ただしく中に入ってきて袋のようなものを持っていた。

 

「手紙にはこう書いてあった、魔王軍幹部ベルディアの討伐報酬をこちらのギルドで渡して欲しい、とな。金額はこちらで調べたので受けとって頂きたい」

 

そういうなり私の座る前のテーブルには次々と札束が積まれていく…。1束はおそらく100万エリスだろうけどそれが…1.2.3......10.....,..20.........まだ増える…!?

積まれた金額の合計は……なんと6000万エリス。これだけのお金を手紙を見て即座に出せるのは流石王都の冒険者ギルドと思うべきなのか、…ただ私はそれどころではなく、見た事のない大金に絶句していた。というより流石に多すぎである。

 

「そんなことはない、こちらで確認した確かな金額だ」

 

それが正しかったとしてもベルディアの討伐報酬全てを私にくれるのはどう考えてもおかしい。あれは私以外にもカズマ君のパーティも頑張ってくれたし私1人じゃ絶対無理だったのだから。

 

「何か勘違いをしているようだな。魔王軍幹部ベルディアの討伐報酬は3億エリス。報告書によると君と一緒に戦ったサトウカズマのパーティメンバー4人は既にこれと同じ金額を受け取っている。だから何も間違いはない」

 

……もはや私は何も言えずに固まっていた。王都につくなりこんな大金を渡されるとか想像すらしていないのだから。3億エリスって何…?あぁ、5人で割って1人あたりが6000万なのね…えぇ……。

 

「ふん、反応の仕方は年相応みたいだな。だが君とサトウカズマのパーティはそれだけのことをしたのだ。もっと自分とその仲間を誇りに持つといい、それと…」

 

重厚な渋い声のまま、ギルド長は僅かに笑みを浮かべていた。その目には鋭さがあり、私は何も言えずにただ座っていた。

 

「ようこそ、王都ベルゼルグへ。君の王都での活躍に、心から期待させてもらおう」

 

ギルド長がそういうなり職員2人はギルドが用意した大きな鞄に札束をどんどん詰めていた。私は未だに現実が受け止められなくて出されたお茶を手に持ったまま飲むことも出来ずただ呆然としていた。

 

 

……

 

 

 

 

 

「あ、お、おかえりなさい、突然奥に連れていかれるからびっくり……って、アリス?どうしたのその鞄」

 

自身の元々の大きな鞄に加えてそれより大きな鞄を持たされた私は放心状態だった。というよりこのままこんな大金持って城下町を歩きたくないんだけど本当にどうしたらいいのだろうか。とりあえずゆんゆんに説明はしないといけないんだけど今ここで説明はしにくい。

 

「…と、とりあえず宿に行こう?時間がかかってたから、調べておいたわ」

 

ゆんゆんのいい仕事ぷりに全私が泣いた瞬間である。私はその場で両手に持っていた鞄を落とすと、そのまま崩れ落ちるように座り込んで下を向いていた。

 

「ど、どうしたの!?本当に何があったの!?」

 

そんな私を見たゆんゆんは、ただ困惑することしかできなかった。本当にこのお金…どうしよう…。

 

 

 

 

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ゆんゆんのおかげでなんとか宿についた私は、部屋の中を見渡すゆんゆんと違いそのまま鞄を投げ捨ててベッドに飛び込んでうつ伏せになっていた。

 

「ほ、本当にどうしたの…?ギルドから出てずっと様子がおかしいよ…?」

 

…とりあえずゆんゆんには説明しなきゃいけないだろうか。……やったねゆんゆん、しばらく贅沢三昧できますよ!宿もここより高いお城みたいな宿にしちゃいますか!ご飯も豪華なのいっぱい食べれますよ!うふふっ、今夜は眠れそうにないですねっ☆

 

「アリスさんしっかりしてくださいぃ!?全然説明になってませんから!?完全に壊れてますからぁぁ!?」

 

私のあまりの豹変っぷりにゆんゆんの敬語が復活してしまったけど今の私はそれどころでもなかった。結局私が正気に戻ってゆんゆんに説明するまで1時間以上かかるのであった。

 

 

 

 





原作ではベルディアの討伐報酬はアクアの水魔法で破壊した街の修繕費で消えますがここでは使ってないので街は破壊されていません。アリスの広範囲魔法は味方に当たらないどころか地形を変えることもないので破壊したのはせいぜいめぐみんの爆裂魔法で街の外にクレーターを作ったくらいとなってます。

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