内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 30 蒼の賢者

 

 

それから私達3人は王都の街を遊びながらも駆け巡る。

 

服屋ではお互い着せ替え人形にしたり、なったり…装飾品を覗きに行ったり…街を散策してたらひったくりが逃げてる場面に出くわしてウォールで足止めしようとしたらイリスちゃんが他の冒険者から剣を拝借して鞘に入れられたままの剣でひったくり犯を滅多打ちにしてのしたりして周囲から歓声を受けたり…そんなこんなで休憩がてらに喫茶店にはいっています。

 

 

「イリスちゃん…凄く強いんだね…びっくりしちゃった…」

 

「いつも剣はおし…お家で習っていますから、それなりにですが自信はあります……あの、お気持ちは嬉しいのですが、ピザに続いてここまでしていただかなくても…」

 

私達3人の前にはそれぞれにフルーツパフェが行き渡っていた。遠慮しがちにしているイリスにゆんゆんは笑いかけた。

 

「気にしないで。さ、さっきのピザはアリスが払ったから今度は私がご馳走するわね、そ、その、せっかくお友達になれたのだし」

 

笑顔でいたと思えば恥ずかしそうに顔を赤くして目を逸らすゆんゆんだけど一方のイリスはその言葉に目を瞬かせた。

 

「お友達…私とお友達になってくださるのですか?…初めてです、私…お友達になってくださる方なんて初めてです…!」

 

イリスのとても嬉しそうな表情はまさに過去のゆんゆんを想起させるのに充分すぎた。それにしても意外でもあった。ゆんゆんの場合極度の引っ込み思案な性格やらもあるのでまだ理解できなくはないのだけどイリスに至っては欠点がまず見当たらない、あえて言うなら世間知らずなことくらいだろうか。どんな環境であろうとお友達くらいすぐにでもできそうなのだけど。

 

「私は…お家から出ることが滅多にありませんから…」

 

……つまりお友達云々以前にその対象すらいない状態ということなのか。これではゆんゆんよりも絶望的だ。ゆんゆんは本人の努力や周囲の環境次第でまだ候補が見つかるけどイリスの場合はまずその候補が最初からいないのだ。私はそっと目頭を抑えた。

 

「大丈夫だから…!私だって、アリスだってもうイリスちゃんの友達だから…!」

 

ゆんゆんもお友達がいないという苦悩は充分すぎるほど共感できるのか、その瞳は既に潤んでいた。つられるようにイリスの瞳にも光輝くものがみえた。

 

「…はい、アリス様、ゆんゆん様、ありがとうございます…」

 

「あ、駄目よ?イリスちゃん、お友達なんだから様付けはやめようね?」

 

「え…ですが…」

 

「せっかくお友達になれたのに、様付けなんてされたら壁があるように感じちゃうでしょ?」

 

私は内心…いや、既に口に出してクスクスと笑っていた。まさに馬車で私がゆんゆんに言ったことを今はゆんゆんがイリスに言っているのだから笑うなというほうが無理である。

 

「ちょっとアリス、笑わないでよ!?」

 

「…わかりました。でしたらせめてゆんゆんさん、アリスさんで……あ、不思議ですね。呼び方を少し変えただけなのに、皆さんとの距離が縮まった気がします…」

 

涙目のまま本当に楽しそうに話すイリスだけどその気持ちはこちらとしても同じなのですよ。そうやってお友達に心を許せることで距離はどんどん近くなっていくのですから。とりあえず今はさん付けで許しておきましょう。

 

「ふふっ、ありがとうございます、アリスさん」

 

 

嬉しそうに言うイリスにこちらまで嬉しくなれた。お友達って、やっぱりこういうものなのですよね。

 

 

……

 

 

 

 

それからパフェを食べ終わるなり、気が付けば話題は私達2人の話になっていた。今はそれぞれ好きな飲み物を持ち会話していた。

 

「まあっ、お二人は冒険者なのですか?それもどちらも上級職の…私も色々な冒険者の方にお会いしたことがありますが、お二人ほど若い方々はお会いしたことがないです」

 

「私達はアクセルから馬車で今朝この王都に着いたところなの」

 

「アクセルからですか!?アクセルでは最近、魔王軍の幹部が討伐されたとお聞きしておりますが」

 

それを聞いたゆんゆんは、さりげなく私に目配せした。おそらく言いたくてたまらないのかうずうずしている様子が感じられた。私は溜息混じりに首を横に振った。流石に誰が聞いてるかわからないこんな場所で言うことでもない。

それを見たゆんゆんはしゅんとした様子でいたけど納得はしたようでしゃべることはなかった。

 

「その魔王軍の幹部を討伐した方の中に、『蒼の賢者』と称えられた方がいるようなのです」

 

「……蒼の賢者…?」

 

ゆんゆんに続くように私までキョトンとしてしまった。蒼と言う意味合いではアクア様も対象になるのだけど…

 

「あ、これは王都でそう呼ばれているそうです。アークプリーストでありながら、多彩な攻撃魔法を操る青いプリースト風のドレスを身にまとった…」

 

そう言いながらも私を見るイリスの目はキラキラと輝いていた。私の今の服装と照らし合わせているのだろう。私が攻撃魔法を使えるアークプリーストであることは既にゆんゆんがバラしてしまっていたので流石に察してしまったのか。…できれば声のトーンを抑えてくれたらありがたいのだけど。目立ちたくないし。

 

「ごめんなさい…、賢者と聞きましたからてっきり私はもっとご高齢の方を想像してましたので」

 

確かにふと考えてるとイメージするのは老人な感じもする。それにしても何故賢者なのだろうか。完全に名前負けしている気しかしない。

 

「そ、そこまでは…冒険者の方がそう言い出したのがきっかけと聞いてますけど…」

 

…冒険者…仮に転生者だった場合某ゲームで僧侶と魔法使いのどちらの魔法も使える職業を賢者というのがあるからその発想からとったのであればその冒険者は私と同じ転生者の可能性が高い気がした。聞こえ的にアークウィザードプリーストよりはマシだけどやっぱり異名そのものが恥ずかしい。と、いうよりもまだ王都ではまったく活動していないのにも関わらず既にそこまで名前が売れているのは予想外すぎた。まだ討伐して5日しか経っていないというのに魔王軍幹部の討伐のネームバリューの凄まじさに私は静かに頭を抱えた。

 

「…あの、よければスキルを見せてもらったりとかできませんか?」

 

見せるのは構わないのだけどいくら被害の心配がないとはいえ攻撃魔法には変わりないので街中で使ったら騒ぎになることは間違いない。とりあえず私は機会があれば、とだけしか言えなかった。なお一方ゆんゆんは…

 

「蒼の賢者……かっこいい……」

 

黙っているかと思えばやっと呟いたのがこれである。よく忘れていたけどこの子の感性はわからない。もとい紅魔族そのものの感性なのかもしれない。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

喫茶店を出た時には既に午後4時すぎ。ピザ屋でイリスと出逢ったのがお昼前だったので時間としては5時間近く遊んだだろう。流石にイリスはぼちぼち家に帰らないと家の人が心配しているのではないだろうか。普段外出しなくて黙って家から出てきたなら尚更…とそこでふと思った。

イリスは間違いなく貴族以上の出の者だろう。服装や言葉遣いなどからそれは間違いない。そんな彼女が長時間行方不明になっているとなれば家では大騒ぎになっているのではないだろうか。

流石に充分遊んだことだし、そろそろイリスを家に送ることを私は提案した。

 

「…はい、そうですね。仰る通り家の者が心配している可能性は高いです…」

 

落ち込んだ様子で話すイリスだけどこれについては仕方ない。流石にお友達になったとはいえなりたてだし即家庭事情まであれこれ言う訳にもいかない。勿論物申したい気持ちはかなりあるが。

 

「でもずっとお家から出してくれないなんて…いくらなんでもそれは…」

 

どうやら私の気持ちとゆんゆんの気持ちはほぼ同じだったようだ。私はイリスに家の場所を聞くことにした。これから案内するからでもあるけど場所さえわかればお友達としてこれから何かできるかもしれない、そう思って。

 

「いいえ、いいんです。お家にこれ以上迷惑をかける訳にもいきませんし」

「そうですね、すぐにでもお戻りくださいアイリス様」

 

ふと知らない女性の声に振り返る。…気が付いたら私達は視線がキツい印象を受ける剣を携えた女性と、数人の兵士らしき人達に囲まれていた。

 

「クレア!?」

 

イリスがクレアと呼んだ女性は金髪に前髪の一部分に青いメッシュがかかっていて顔立ちの整った、ダクネスとはまた方向性の違う凛とした騎士のように見えた。突然の囲まれるという対応にゆんゆんは怯えるようにしたままでかくいう私も似たようなものだった。

 

「探しましたよアイリス様、そして…」

 

心配したような顔でイリスに駆け寄った女性は視線をするどくさせて私とゆんゆんに向けた。

 

「待ってくださいクレア!彼女達は決して悪い方々では」

 

「…御安心くださいアイリス様、先程の会話は途中からですが私も聞いておりました、この者達にアイリス様をどうこうする意思はおそらくないとも思われます…ですが」

 

そう言いながらも、イリスは他の兵士達により連れていかれていた。イリス…いや、アイリスは悲しそうな視線をこちらに送ることしかできなかった。

 

「非常に心苦しいのだが…お前達には『王女誘拐』の容疑がかけられている、悪いが着いてきてもらうぞ」

 

「えぇ!?!?」

 

私達は2つの意味で驚愕していた。1つは誘拐扱いされていることだけど…これはこれで問題だけど100%誤解なのでおそらくどうにでもなる、問題はもう1つだ。

 

「……王女…様…?」

 

ゆんゆんの驚きはもはや力無く、瞳に光を感じさせない。私としてもこれは驚いた。位の高い貴族の家の子くらいは思ってはいたけどまさか…

 

「…やはり知らなかったようだな。あの御方の名前は…『ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス』この王都ベルゼルグの第一王女であられる御方だ。…知らなかったとはいえ、容疑がかけられている以上私は君達を拘束しなければならない。無いとは思うが逃げようなんて考えるなよ?」

 

あちらもこちらが逃げる気がないのはわかっているのか、私の周囲にいた兵士達のほとんどはアイリスを守るように付き従っていた。勿論そんな愚をするつもりはない、そうすれば誘拐云々を肯定したと言われても文句は言えないのだから。私とゆんゆんは連れていかれるアイリスを眺め、ただ呆然としていた。

 

 

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