内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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初の別キャラ視点で。




episode 31 決意表明

 

私はゆんゆん。紅魔族のアークウィザードです。

 

私は今、お友達のアリスとともに王都まで来てました。

 

きっかけはあまりにも突然。普段アクセルで活動していた私は私用で少しだけ里帰りしてました。そして帰ってきたのはいいものの…アクセルの街の入口でめぐみんに捕まり、最初は嫌だって言ったんだけど友達の頼みが聞けないのですかと言われたら気が付いたら同行してました。…と、友達の為なら、仕方ないよね。

 

そして爆裂魔法を使っためぐみんを背負い、アクセルに帰り着くと馬車の待合所には金髪ツインテールと青いドレスのような服装が特徴のアリスさんの姿が。数少ないお友達がそこにいたので私は迷うことなく声をかけた。

 

するとアリスさんはレベルの問題でアクセルでの活動が難しくなったのでこれから王都に行くとのこと。私の頭は真っ白になりました。

 

私にとって今みたいに気軽に話せるお友達は本当に少ない。リーンさんと仲良くなれたけどそれはあくまでアリスさんがいたから。

そんなお友達が、王都へ行く。アクセルからいなくなる。

 

「私も…一緒に行きます!」

 

気が付いたら自分でもわからないうちにそう言ってた。背負ってためぐみんはかなり驚いてた。

 

自分のレベルも26でアクセルでやって行くにはきびしい、私とアリスさんはパーティメンバーだから。どちらも後からつけた理由だった。

 

ただ、このままアリスさんと離れてしまったら、私はまた1人になってしまう気がして、怖かった。

聞く話によるとめぐみんには既に固定パーティがあるらしいから頼れない。もっともめぐみんはお友達である前にライバルである私とは組めないと言っていたのでもとより頼ることができない。

リーンさんに言えばテイラーさんのパーティに入れて貰えるかもしれないけど…断られるのがこわいし、何よりもアリスさんのいた場所を奪うみたいで嫌だった。

アリスさんが承諾してくれてから、一気に目まぐるしい忙しさになったし、アリスさんにも迷惑かけてしまったけど、アリスさんはまったく気にしてなくて、むしろ私なんかが一緒に来てくれることを本当に嬉しそうにしていた。

 

そして馬車でお話をした際も色々あった。まず私の敬語が気に入らなかったらしい。私はアリスさんも敬語ですよね?というと「めぐみんとは普通に話してますよね?それに人により変わる敬語というのはお友達として壁があるようで私は悲しいです」と言われてしまうと私は慣れないながらも普通に接するようにした。

するとアリスが言ったことがよくわかった。最初は慣れなかったけど気が付いたら自然とめぐみんと話すようにアリスと話せるようになっていた。

凄く心の距離が近くなったような気がして、同時に思った。

 

そっか……壁を作っていたのは、私だったんだ。

 

色々な理由をつけて、遠慮して、確かに私はあちこちに壁を作っていた。それがなくなってしまえば、こんなにも相手を身近に感じる。

勿論それは簡単に踏み込んではいけない領域。もし相手に拒絶されるものならその壁は更に大きくなる。だから私は、それが怖くて無意識のうちに踏み込まなかった。

 

まだまだ人との間の壁の踏み込み方は難しくて、でもアリスは私の壁を自然に壊してくれて…私もそうありたいと思った。

 

王都に着いて街を歩いていたら、ふとピザ屋さんを見つけて、私は自然にそこに行きたいと言った。

内心自分でも驚きの行動だった。少し前の私なら、行きなくないと言われたらどうしようとか考えちゃってまずそんなことは言えないと思う。

 

そしてそのピザ屋さんで、女の子に出会った。

後にイリスと名乗ったその子は、お金がなくてピザが買えないみたいだったから、買ってあげようかな?と少し迷ったけど…ここでのアリスはイリスの後ろから注文を始めた。確かにイリスは買えないんだから仕方ないかもしれないけど、イリスを無視したその行動に少しだけ幻滅した。

だけどそうじゃなかった。買ったピザは3箱。何食わぬ顔で1箱をイリスに手渡すその様子を見て、私はこっそり心の中でアリスに謝ってた。同時にこんな風に自然にできちゃうのが凄いとも思った。

 

成り行きでイリスちゃんと一緒に遊ぶことになった。

あちこち回って、すごく楽しくて、休憩がてらに寄った喫茶店で私はふいに言ってしまった。私達はお友達だからって。

言ってすぐに照れくさかったと同時にやっぱり拒絶されたらどうしようと怖くもあった。

だけどイリスちゃんは、本当に嬉しそうだった。イリスちゃんにはお友達がいないと聞いてなんだが親近感までわいていた。

 

だけど…

 

そんなイリスちゃんは、実はこの国の第一王女……アイリス様だった。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

私とアリスは無言のまま、クレアさんに着いて行ってます。拘束するとは言ったものの、縛ったりはしていないのでアイリス王女に言っていたことは本当なのだと少し安心。…だけどそれでも怖い。あくまでアイリス王女の目前だからこうしている可能性もある、私とアリス、クレアさんだけになった途端に手のひら返しされるなんてこともあるかも…。

 

私達の前を数人の兵士の人に囲まれて歩く王女様は、時折心配そうな顔でこちらを振り向く…ふと目が合ったけど、私は反応できずにいた。だけど王女様は…私の隣にいる人の顔を見て、少し戸惑うように微笑んだ。

 

「ゆんゆん…大丈夫、大丈夫ですから」

 

アリスはアイリス王女と目が合った途端に微笑んでいた。こちらは大丈夫ですよ、と安心させるように。ふと背中をさするアリスの手。言葉通りの感情が伝わってくる、だけど…彼女の手もまた、震えていた。…やっぱりアリスも怖いんだ。なのに、なのにアリスは自分よりも私やアイリス王女を元気づけようとしていた。

 

 

……

 

 

王城に正面からはいる。アイリス王女は早々に別の場所に移されて、私とアリスは地下へ向かっているのか、下へと続く階段を降りて、ひとつの部屋にはいった。

 

そこはテーブルと椅子が4つある、お城にあるとは思えない簡素な応接室のような感じがした。

 

「汚い場所ですまないが、座ってくれ」

 

アリスは気にしない様子で席につくと、私はその隣に座る、そしてテーブルを挟んだ対面にクレアさんが座ると、テーブルにベルのようなものを置いた。

 

「…これが何かわかるか?」

 

アリスはその質問に首を傾げていたけど私は知っていた。確かあれは嘘を見抜く魔道具。嘘をつけばベルが鳴る、わかりやすいもの。

 

「その通りだ、そちらの子は知らないようだから実践してみよう。…今は雨が降っている」

 

チリーン、と大きくも小さくもない音が部屋に響く。今は晴れていたので雨と言う嘘に反応したということ。

 

「先に謝罪しておく。私個人としては君達2人をアイリス様の友人として丁重にもてなしたいくらいなのだが…こうやって王女誘拐容疑がかかっている限りは正規の手段で取り調べをしなければ解放はできないんだ」

 

こちらを安心させるようにそう言ってくれているクレアさんの言葉に私は安堵の溜息をつく。どういった経緯で私達が誘拐犯扱いされているのか気になるけどそれを聞いて答えてくれる気もしない。…そして質問が始まった。

 

「ではまず…君達はアイリス王女と分かっていて一緒にいたのか?」

 

「…身分が高い女の子くらいは思っていましたが、流石に王女様と気付いたのは貴女が来てからです」

 

私もアリスと同じように応えるけど、当然ベルは鳴らない。クレアさんは視線をベルに移すと5秒ほどみつめて…こちらに向き直るとまた口を開いた。

 

「では君達の素性を簡潔に教えてくれるか?」

 

「冒険者です、よければこれを参考にしてください」

 

分かってたかのようにアリスは冒険者カードを出して、私もそれに習う。そしてアリスの言葉は続く。

 

「元はアクセルで活動してましたがレベルがあがりアクセルでやっていくのは辛く感じてきてましたのでゆんゆんとともに今朝王都に参りました」

 

…どうでもいいけどどうしてアリスはこんなに受け答え慣れてるのだろう、少なくとも私1人だったら緊張して何も言えないか余計な事しゃべるとかしそうなだけに今のアリスはかなり頼もしかった。そして冒険者カードを見るクレアさんの表情が変わる。

 

「…片や15歳でレベル30のアークプリーストに…片や14歳でレベル26のアークウィザードの紅魔族…そろそろ本題にはいろう。アイリス様とはどのような状況で出会い、共に行動をしていた?」

 

それからもほとんどアリスが答えてくれて私は頷くだけだった…これ、私がいる意味あるのかな…?というよりも私も、多分アリスも、イライラしてたかもしれない。こういう尋問は初めてされたけど嘘を見抜く魔道具があるのだからもっと単刀直入に聞けばいいのに。

 

 

……

 

 

 

「質問はこれで終わりだ。2人の疑いは完全に晴れた、本当にすまなかった」

 

そういうなりクレアさんは丁寧に頭を下げた。私は単純にホッとして胸を撫で下ろしていた。一方アリスは特に気にする様子もなく、嘘を見抜く魔道具のベルをじっと見つめていた。

 

「私はゆんゆんが嫌いです」

 

突拍子もないアリスの発言に私が思わず、えぇ!?と声を上げると同時にチリーン、と音が鳴る。それを聞くなりからかわれていた事に気がつくと顔を赤くしてしまう。それを見たクレアさんはふっと口元で笑っていた。

 

「なるほど、面白いですねこれ、せっかくなのでここで宣言しておきましょうか」

 

アリスはそのまま私に向き直ると、真剣な眼をしていた。何を宣言するのか想像もできなかったけど少しだけ緊張した。

 

「2週間前、私はめぐみんと2人で古城にはいり、魔王軍幹部のベルディアと戦いました。めぐみんは戦えなかったから私1人で。一矢報いたと思ったけど結果は惨敗でした。あの時、私とめぐみんはベルディアの考えによっては殺されていました。とても悔しかった、めぐみんを守れなかったことが。だから私は強くなりたい、そう思ってこの王都に来ました。大切なお友達を守りたいから。ゆんゆん、貴女はそんな私と一緒にいてくれますか?共に戦ってくれますか?」

 

ここまで…1度もベルは鳴らなかった。私はもちろんクレアさんも絶句していた。

 

アリスは…めぐみんと変わらない小さな体の彼女は、アークプリーストでありながらたった1人で魔王軍幹部と戦ったと言った。私がアクセルにいない間にそんなことがあったなんて…

 

そしてアリスは、お友達を守れる強さが欲しいから、その為に私と一緒にいてくれるか、戦ってくれるのかを聞いた、私に迷いなんてあるはずもなかった。だって…私だって、大切なお友達は守りたいのだから。

 

私は勢いよく返事をした。もちろんベルは鳴らない。

 

「ありがとうございます、ゆんゆん」

 

そこには重荷がとれたようなアリスの健やかな笑顔があった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

話を聞いていたクレアは驚愕した様子を崩すことなく、アリスを見ていた。

 

「魔王軍幹部のベルディアと一騎打ちしただと…?奴は王都の精鋭が何人もかかって返り討ちにしてきた魔王軍随一の武道派だぞ…」

 

「当然ですクレア、彼女は王都で噂の『蒼の賢者』なのですから」

 

そのまま扉が開かれると、そこには美しい純白のドレスにティアラをつけたアイリス王女がいた。とたんに私は緊張してしまう。あの時はなんともなかったけどイリスちゃんは実は王女様…頭撫でたりめちゃくちゃ失礼なことをした気がする私は滝のように冷汗をかいていた。

 

「ゆんゆん、馬車で私が言った事、思い出してくださいね」

 

小声でのアリスの言葉が私にそっと囁かれたと同時に、アイリス王女は私達の元へと近付いてくる。途端に緊張が高まる。目の前に一国の王女様がいる、私なんかの前に…。

 

「あの、此の度は本当にごめんなさい!誘拐犯扱いされたことも、私が本名と身分を偽っていたこともです」

 

「なるほど、アリスとアイリス、確かに似てますね」

 

えっ、と私はアリスの言葉に変な声をあげてしまった。というか、アリスは王女様を前にしてどうしてここまで自然体でいられるの…?

 

「あ、あの…」

 

「私は大丈夫ですよ、事情聴取なんて初めてしたのでいい経験になりましたし、身分を隠すのも仕方ないでしょう、あんな街中でアイリスがいたら大騒ぎになってましたでしょうし」

 

私は混乱していた。何故アリスはこんなに態度がいつも通りなの!?と。王女様を思い切り呼び捨てにしてるしどうしよう、クレアさん絶対怒ってるよね?とクレアさんを見ると同時。

 

「…先程の件は謝罪するが…アイリス様への無礼な口の利き方は軽視できないぞ」

 

「…どうしてでしょう?私とアイリスはお友達ですので、お友達として接しているだけなのですが」

 

「…!?」

 

アリスの当たり前のように放つ言葉を聞いてアイリス王女は本当に驚いて…嬉しそうに微笑んだ。今日1番の笑顔なのは間違いなかった。

 

「貴女は…私の身分を知った上で、本当にそのようなことを言ってくださるのですか…?」

 

「勿論ですよ。それとも、アイリスにとってあれはなかったことにしたいのですか?だとしたら凄く寂しいのですけど」

 

そんな会話を聞いていて、私はアリスの言葉を思い出した。馬車での会話……敬語が云々じゃなくて…相手の立場で考えるってこと。

 

「そんなことはありません…!本当に、…本当に私とお友達になってくださるのですか…?」

 

「…はい。ゆんゆんもそうですよね?」

 

アリスの言葉にアイリス王女は私の方に振り向いた。……そうだよね、私は何を考えていたのだろう。王女様だからといって、イリスちゃんであることは変わりない。ここで王女様だからと態度を変えたら、アイリスちゃんは悲しむと思った。だから、相手の気持ちで考えて、私は…

 

…はいっ、私だってアイリスちゃんのお友達なんですからっ!

 

緊張は隠せないので敬語にはなったけど思った事は言えた。そう答えたら、アイリスちゃんは嬉しそうに涙を流して喜んでいた。この状況でクレアさんも文句を言う訳にもいかず、ただアイリスちゃんを見守っていた。

 

ここまでまったくベルが鳴ることはなかった。それに気付いたクレアさんはどことなく笑っていた気がしました。

 

 

 

 

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