ミツルギさん視点
僕の名前は
女神アクア様から魔剣・グラムと呼ばれる神器を賜り、魔王を倒して異世界を救うという使命を受けた僕は魔剣のおかげも大きく、心身共に鍛えられ、この世界でも1番魔王軍の脅威に脅かされている王都でも【魔剣の勇者】と呼ばれるようになるくらいには奮闘してきた。
冒険を初めて間もない頃から世話になっていた仲間、フィオとクレメアもいてくれたこともあり、順調に成長できたと思う。
しかし…偶然アクセルに寄ったところ…なんとあの女神アクア様が檻に閉じ込められているではないか。どうしてここにアクア様がいるのか疑問はあったが僕はすぐさま救出に向かった。…結果的に勘違いなのはわかったのだが、僕はその過程で女神アクア様と行動をともにする男、サトウカズマと決闘することになった。
相手は
そして今、レベルは45になり僕はかつての自信を取り戻しつつあった。そんな時に噂を聞いた。アークプリーストにも関わらずアークウィザード顔負けのスキルを使う【蒼の賢者】の異名を持つ少女のことを。実際に僕は防衛戦で彼女の魔法を見た。味方を一切傷付けず敵を一網打尽にするその魔法は僕の心を大いに震わせた。それに僕がパーティを再結成したとしても職業構成はソードマスターの僕と盗賊と戦士という前衛寄りのスタイルだ。打倒魔王を謳うのであれは優秀な後衛職は是非とも欲しかった。彼女は僕のパーティにうってつけだった。
そんな想いを抱いていたらチャンスが舞い込む。とはいえ犠牲になっている人達からしたらたまったものではないのだが…。王都の東にある村をミノタウロスが襲っているから討伐してくれという緊急クエストだ。そして偶然にも、蒼の賢者である彼女は今この冒険者ギルドにいるのだという。ならばその実力を見込んで是非とも共闘してみたかった。
……だけどこうして顔を合わせたものの、僕と目が合った瞬間から彼女の様子はおかしかった。まるで状況がわからなかったがそれは僕を見てからなのはおそらく間違いない。…もしかしたら僕の知らない内に彼女に何か失礼なことをしてしまったのだろうか?と思っていたら彼女から微かに響夜先輩と呼ぶ声が聞こえた。
…これはどういうことなのか…?今僕はミツルギとしか名乗っていない、だからキョウヤと下の名前が出てくるのは不自然だ。
それに先輩…?先輩なんて呼ばれ方をしたのはこの世界に来て初めてだ。それこそ元の世界ではよくあった…が……?
元の世界…?つまり彼女は僕と同じ転生者で僕の知り合いだとでもいうのか?…いや、少なくとも僕の前世の知人に彼女のような綺麗な金髪で青い目をした女の子などはいない。謎ばかりが深まるものの、今は考える時間はなかった。ミノタウロスを討伐に行かなければこうしてる間にも被害が増えてしまう。
蒼の賢者の相方である紅魔族のアークウィザード、ゆんゆんはテレポートを持っていて偶然にも村の近くに登録してあったらしい。これは実に幸運だった。
戦闘にさえなれば彼女も変わるかと思ったが彼女は最低限
無事に依頼が終わったものの、ギルドに戻ると彼女は報酬も拒否してそのままギルドから立ち去ってしまった。
すぐに後を追おうとするゆんゆんを僕は止めた。既に夜になる、少女1人を街中とはいえ送り出す訳にも行かなかった。ちょうど聞きたいこともあった、僕はゆんゆんに宿で待つように説得するとゆんゆんは渋々ながら了承してくれた。
ゆんゆんを宿まで送り、そして探しに探して夜の公園にひとつの気配がした、ようやく僕は蒼の賢者…いや、アリスを見つけることができたんだ。
……
そうして彼女からようやく話を全て聞くことができた。
まさか彼女が…かつて僕が助けた中学生の少女であったと聞いた時は本当に驚いた。
僕はその話を聞いて……怒りの感情で拳を震わせていた。もちろん彼女に対してではない、日本という社会に対してだ。
確かに彼女は歩きスマホという、僕の生前でも問題視されつつあったことをした、彼女に非がまったくないわけではない。だけどあの日本に歩きスマホなんてしている人が一体何人いるのか?そんなもの街中を歩いていたら誰でも何も考えずやっていたことだ。いざ被害が出たからと彼女を責めるのはどう考えてもおかしい…!
それにいじめをした奴らもだ。僕を慕ってくれてたという気持ちは素直に嬉しい、だけど彼女を責める行動で僕が喜ぶと本気で思っているのか…!?これでは僕は何の為に身を呈して彼女を救ったんだ?そいつらのしたことは僕の死を完全に無駄にしただけじゃないのか…!?
様々な憤りが僕の心を支配していた。これらをぶちまけるのは簡単だ、だけどそれをすることが彼女を真に救うことになるのだろうか?
彼女自身もまた、僕を死なせてしまった罪悪感で心が砕けそうになっているんだ…下手なことを言えば逆効果になりかねない。
なら…彼女が1番欲しい言葉はなんだ…?考えるんだ御剣響夜…考えて考えて考えろ…!
……
…そうして頭を駆け巡り、僕が出した結論は…『許す』ということだった。
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時間はかかったが…彼女はようやく落ち着いてきたのか…段々と泣く声が小さくなってきていた。僕は変わらず彼女の頭を撫で続けていた。その柔らかい髪はとても触り心地がよく、以前アイリス様にもしたことがあったが彼女の髪はアイリス様に近い、繊細で美しいものだった。
「…あ、あの…」
ようやくアリスは口を開いてくれた。僕は安堵した様子でもう大丈夫か?と聞いてみた。すると彼女は顔を真っ赤にしていた。
「……は、はい…その…もう大丈夫ですから…解放してくれると…その恥ずかしくて……」
それを聞いて僕は謝罪しながらもその手を放した。冷静に考えてみると彼女にしてみたら確かに恥ずかしいだろう。ともあれ話はこれで終わりだ、僕にとっても彼女にとってもこれはあくまで前世のこと。遺恨がない訳ではないが考えても仕方ない…それに僕らは今異世界を確かに生きているんだ。ならやるべきことは過去を振り返ることじゃない、前を向いて進むことだ。
「…そうですね…あの…今日はごめんなさい、そしてありがとうございました…」
どうやらまだ本調子とは行かないか…それも仕方ないだろう。何せ15歳の少女なんだ。この世界では大人にはいる年齢だが日本では義務教育をしているギリギリの年齢の子供なのだから。とりあえず後はゆんゆんの元へ送ることだけだな。
「……あっ…」
ふとゆんゆんの名前を出したことで状況を思い出したのだろう。彼女は今まさに心配している。勿論ゆんゆんにもそうしたようにアリスをこのまま1人帰すつもりもない、宿の場所はわかっているから送り届けるつもりだ。
「……貴方が人気だった理由…なんだか分かってきた気がします…」
…僕としては特に人気があった自覚はないのだけど…まぁそう言ってくれることは悪いことでもない。
…今はただ思うのは彼女が自殺したことでいじめをしていた人達に少しでも罪悪感が芽生えていることを切に願うばかりだろう…流石にそこまで自分がいた国が腐ってはいないことを思いたいものだ。
……
ようやく宿が見えてきたと思えば…宿の入口には先程見た人物がいた。…ゆんゆんだった。…まさか僕が送った後部屋にも入らずずっと待っていたのだろうか?今見えるゆんゆんの見た目はクエスト帰りのフル装備のままだ。2時間くらいは経っているのだけど夜は冷えるし風邪を引かなければいいのだが。
なんて考えていたら彼女はこちらに気が付いたようだ、そしてその表情はアリスを見るなり涙ぐんで…駆け寄り……アリスに抱きついた。
「アリスのバカ!バカバカバカ!!すっごく心配したんだから…!!」
「…ごめんなさいゆんゆん……そ、その…くるしいです…」
そんな様子を見て、僕は微笑みを隠せていなかった。とりあえずこれ以上僕がここにいるのも野暮だろう…最後の仕事をしたら、帰るとするか。
僕はゆんゆんに近寄ると、アリスのおかしかった理由を話した。
アリスは昔、僕に似た人に酷い目に合わされたらしい、それで僕を見てそれを思い出したみたいだ。だけど既に誤解は解けたから何も心配はいらないよ、という嘘。
流石にここまでなったらアリスからゆんゆんに事情を話さなければならない、だけど正直に言う訳にもいかない。それはアリスだけでなく僕の転生事情も暴くことになるのだから、嘘をつくのは心苦しいがアリスならわかってくれるだろう。
「そうだったのね…、もう大丈夫、もう大丈夫だからね…!」
「ゆんゆん……だからくるしいです……」
アリスはふと僕と目が合うなり小さくその頭をさげた。どうやら嘘の理由としては問題なかったようだ。僕としても一安心だった。
さて、これ以上ここに居るのは本当に野暮ってものだろうね。昔読んだ漫画のキャラクターの台詞を借りるなら……
御剣響夜はCOOLに去るさ。…なんてね。
「あ、あの…!ありがとうございました!」
おっと、気付かれずに去ろうとしたのだけどゆんゆんに気付かれてしまったようだ。…だけど僕がすることは変わらない。僕は振り向かず、そっと片手をあげた。また会おうという想いを込めて。
今度こそ…この
御剣響夜さんをどこよりもかっこよく書きたいと思って書いたらこうなりました()