内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 42 緊急クエスト『カズマ君の無罪を勝ち取れ』中編

閑話休題。

 

完璧に話が脱線していた私達だったけどダクネスの帰還によりそれは思い出された。カズマ君のめちゃくちゃ怒ってる顔が幻視できたような感覚がして少し罪悪感を覚えた。

 

「全くお前達は何をやっているんだ…」

 

ダクネスが帰って来て一番の台詞がこれである。それもそのはず、アクア様とゆんゆんはケーキを食べてて、私とめぐみんはじゃれ合う様に取っ組み合いの喧嘩をしていたのだから。

 

「とくにアリスには一番驚いたぞ…君はもっと大人しい印象だったんだが…」

 

個人的にも前世含めてこんなに暴れたのは初めてでもある。これが前世の私なら罪悪感とかが大きく出そうなのだけど、今やってみた感想としては妙にスッキリして楽しかったのもあったりする。喧嘩と言ってもどちらも半ば笑いながら頬を抓ったりとかのレベルなのでゆんゆんもアクア様も特に止めることはなかったしむしろ何をやってるのかしらと呆れた様子で見られてた。ちなみに先程の眼帯パチーンは流石に痛そうだったのですぐにヒールしました。そんな私はダクネスの言葉に顔を赤くして俯いていた。

 

「それでダクネス?収穫はあった?」

 

アクア様の質問にダクネスは軽く挙動不審になると同時に少し落ち着いた様子で顔を顰めた。その様子はあまり良い収穫とは見えない。

 

「裁判は明後日の昼に行われると決定した。今回訴えてきたのは被害者であるアルダープだ。正直かなり難しい裁判になると思う」

 

はて?訴えてきたのは国ではないのだろうか?だからこそ国家転覆罪などという容疑がかかっていると思ったのだけど。それに難しい理由もよくわからない。現状知り得た情報だけでもカズマ君を無罪にすることは難しくはないはずだ。

 

「そうだな、確かにカズマが無罪であることは私も充分にわかっている、問題は相手がアルダープだと言うことだ」

 

「何よそれ?どういう事?」

 

「アルダープは力のある貴族だ。アクセルの街の領主にして王都でも顔が効く、あいつがその気になればちょっとした証拠などがあれば即有罪に出来るほどの権力があるということだ」

 

「なんですかそれは!?そんなの裁判の意味がないではないですか!?」

 

めぐみんに同意である。予想はしていたけどこの世界の裁判は日本の裁判と違って権力が絡んでしまえるらしい。確かにそれではどんなに無罪を主張したとしても勝訴するのは難しい。

 

「……一部の貴族もそれには疑問に思ってはいるようなのだが…アルダープはどういう訳かそういった尻尾を出さないんだ、実際にあいつが関わる裁判ではこれだけの理由でと裁かれた者も多い、だが何故か分からないが…その当時の裁判に参加した者はそれでその時は納得しているらしい」

 

状況を整理すると少しでもカズマ君に黒の気配があればそれはアウトということになる。…それでは流石にきびしいしダクネスの表情にも納得がいく…だけど…だから諦めるのですか?という話でもある。

 

「そんな訳には行きませんよ、カズマは…カズマは爆裂魔法しか使えない、どのパーティにも入れなかった私をパーティに入れてくれた人なのです…、こんな下らないことで終わらせるなんて、私が許しません」

 

「めぐみん……、あ、あの、何ができるかわかりませんけど、その、私も力を貸しますので、どうか諦めないでください!」

 

「……それを言うなら私も同じだ、攻撃を当てられないクルセイダーである私を何だかんだでパーティに入れてくれた、まだ短い時間ではあるが、とても充実していたと思う。まだ私は…こんなことでこのパーティを終わらせたくはない」

 

「はぁ…、まぁ魔王倒すまでは死なれたら困るし、部外者まで協力してくれるのに私が参加しない訳にも行かないわよね…とはいえどうするのよ?今回は力押しでって訳にはいかないでしょ流石に」

 

アクア様の言葉で皆が押し黙る。カズマ君を有罪にしたくない気持ちは皆同じだけどそうする考えが浮かばないのだ。いや、正確には浮かんではいる。おそらくダクネスは既に。だからこそ難しいと言ったのだろうから。

 

カズマ君を確実に助ける方法…それは彼が100%無罪であると誰の目にも認めさせるしかない。

 

「……そうなるな。いくらアルダープでも完全に白の者を黒とは呼べないだろう、だがそれは非常に困難なことだ」

 

それでもやるしかない。カズマ君はもちろん助けたいけど、それとは別にアルダープって人が個人的に気に入らない。

 

とはいえ困難なことには変わりはない。それはカズマ君が日常で健全で真面目な冒険者なら全く問題はないことなのだ。だけど彼はお世辞にも健全で真面目とは言えない。そもそも健全で真面目な冒険者など見たことがない。冒険者なんて基本は荒くれ家業。私とかゆんゆん、ダクネスとかは比較的真面目方面かもしれないけど全くの真っ白か?と聞かれたら素直に首を縦に振る自信はない。でもそれでもなんとかしなければいけない。状況は絶望的だけど100%ではないのだから。

 

とりあえず情報が欲しい私は、なんとかカズマ君と面会が出来ないか聞いてみた。

 

「…多分少しの時間なら大丈夫だと思うが…アリスやそちらのゆんゆんも協力してくれるのか?」

 

「わ、私はこの件に関してはその…役に立てる事が浮かばないし、そのカズマさんって人とも面識はないけど…でもめぐみんのパーティがなくなるのは…」

 

自信無さげに言うゆんゆんの一方、私はそれなりに役に立てる自信はあった。今回の被害者アルダープの屋敷が爆発した時に偶然にも現場にいたのだから被害者側の状況で嘘やでっち上げがあれば即座に指摘できる。

 

「そうなのか!?確かに被害者側の正しい情報がこちらにあることは武器の1つになる、偶然にもアリスが帰ってきてくれたのは本当に幸運だ」

 

「カズマさんの幸運値は無駄に高いからねー、この場合は悪運っていうのかしら?」

 

「どんな運でも構いませんよ、カズマを助けられるなら!」

 

こうして私達は出来る限り情報交換していった。どんな些細なことでもいい、カズマ君の無罪の確率が1%でもあがるなら…

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

翌日の朝。昨夜は結局カズマ君の家に泊めさせてもらった。お風呂は広くて部屋も空いていたので私もゆんゆんもそこはありがたかった。気分転換に夜冒険者ギルドに行くと様々な人達で賑わっていたしテイラーさんのパーティに会うこともできた。私としてもひと時の楽しい時間を過ごせた。お土産としてクッキーの箱を渡せばお酒のつまみとして食べられ、苦笑してたら朝のギルドの閑散模様の訳も知れた。

 

どうやらほとんどの冒険者はカズマ君の無実を訴えて彼が捕まっている刑務所に集まっていたらしい。当然相手にはされないだろうがその慕われていること自体は確かにあちら側にも伝わるはずだ。結果的に私の王都での話よりカズマ君の話が多くなったけどそれでも情報は得ることができた。

 

そして私は今、ダクネスと2人でその刑務所の前にいる。朝早く寒くもあったが刑務所というだけあって重苦しい空気を感じる。城壁並の高さの壁を伝うように歩き、ダクネスが刑務所の人と話をつければ、あっさりと面会を許可してくれた。

…どうしてこうもあっさりと行くのだろうとは思ったけど、私は何よりカズマ君から話を聞きたかったので、ダクネスに離されないように足早にその後を追った。

 

 

……

 

 

 

ダクネスは表で待っているという。元より面会は1人しかできないらしい。私は窮屈な窓が真ん中にある部屋でカズマ君を待っていたら、看守の声とともにカズマ君がゆっくりとでてきた。

 

「…アリス…久しぶりだな…」

 

私は悲しい気持ちになった。当然ながら窓越しに見えるカズマ君の顔には覇気がない。目は虚ろになっていて気の所為か少し痩せているようにも見えた、あるいはやつれているのか、だ。

 

「かっこ悪いところ見せちゃったな…それで…何を聞きたいんだ?」

 

面会時間は少ないので手短に聞きたいことを聞くしかない私は若干早口になりつつも予め聞こうとしていたことをメモにしていて、それをひとつひとつ聞いていた。どの質問にも、カズマ君は力無く答えていて、ふとカズマ君が疑問を口に開いた。

 

「なんか…アリスって真面目だな。」

 

思わぬ言葉に私は首を傾げた。確かに無駄話も一切ないまま質問はしたけどそれをしに来たのだから当然だ。…その時ふと思った。カズマ君は何故ここまで元気がないのだろう?

 

「いや…昨日セナって検察官の人から色々聞かれた時にポカやっちゃってな…嘘を感知する魔道具ってのがあってさ、それで俺は言ったんだよ。俺はテロリストではないってさ」

 

それでベルが鳴らなかったならむしろそれは最大の無罪証明になるのに何故カズマ君はその状態なんだろう?私には話の意図が見えなかった。

 

「その後の質問でさ…貴方は魔王軍の幹部と関わったことがありますか?って聞かれてな…、いいえって答えたら…ベルがなっちゃってさ……って違うぞ?これには理由があるからな?ここだと話せないから、その辺は俺のパーティの誰かに聞いてくれ!」

 

私は驚いた様子で聞いていたが、どんな理由があるのかわからないがそれは確かに致命的だ。私が頭を悩ませていると、看守の人が来て面会の終わりを告げに来た。

 

「ここまでか、…その、来てくれてありがとな…」

 

哀愁漂うその様子には私の知っているカズマ君の姿はまったくなかった。正直この土壇場で致命的な欠陥が見つかり困惑もしているがそれについては事情を聞かなければどうしようもない。私は去り行く彼に、絶対に助けますから!と根拠のない言葉を心を込めて投げかけた。…彼は何も言わなかったが、その口元には僅かながら笑みを感じた。

 

 

魔王軍の幹部と関わったことがある…、それは聞けば誰もが戦慄するのは間違いがない。とりあえず話を聞かないといけない…。だが聞いたとしてどうなるのだろう?少なくともこの場で言えない話なら後ろめたいことではないのか?そう思いながらも、私は絶望的に感じていた。この裁判に勝てる可能性がなくなったに等しいと感じたのだからそれは仕方なかった。

 

 

 

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