内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 45 お引越し

カズマ君が勝訴したその日の夜、冒険者ギルドの酒場ではベルディア討伐の時のような大宴会が開かれた。中央辺りのテーブルにカズマ君のパーティと私とゆんゆんが席に座り、それを囲むようにアクセルの冒険者に囲まれていた。

…これはベルディアの時のように抜け出すのは難しそうだ。360°囲まれているのだから逃げ場がない。この宴会のお金は冒険者達で集めたお金でやってる故にお金は要らないらしいので私は諦めたように夕食として戴くことにした。

 

本来アクセルに来たのはゆんゆんがアクセルの街にテレポート登録をする為である。それが終わったらその日で帰るか1泊くらいして帰ろうと思っていたのだがそれがもう3日以上もアクセルに滞在している。もっともカズマ君の件で慌ただしくあったし急いで王都に戻る理由もなかったのでいいのだけど。週1のアイリスと遊ぶのは明後日にあたるので問題はなかった。

 

カズマ君の屋敷を見て思ったけど私もぼちぼち宿暮らしをやめて拠点として家を買うべきだろうか。お金ならベルディアの報酬は未だに手を付けてないから余裕もある。宿の利点である食事は朝食だけゆんゆんが作ってくれて昼夜は外食なので特に王都の宿に未練はない。

 

「それなら俺の屋敷に住んだらどうだ?」

 

何気ない会話に私も家を買おうかな?と呟いてみたらカズマ君がそう言ってくれた。思わぬ誘いに私は目を瞬かせていた。気持ちはありがたいけど…流石に男の人と暮らすのは抵抗を感じる。とはいえ対象はカズマ君だけだしアクア様やめぐみん、ダクネスもいるのだが。というかそうなると仮定した時にゆんゆんも一緒になるのだけどいいのだろうか?ゆんゆんがどうしたいのかも聞きたいところでもある。

 

「…めぐみん達と一緒に…!…そ、その、私なんかがご迷惑じゃなければ私は構いませんけど…」

 

「ゆんゆんならむしろ大歓迎だ、紅魔族って聞いた時は流石に警戒したけど、挨拶は普通だったし、可愛いし、大人しい感じの常識人みたいだしむしろ来てくださいお願いしますっ!!」

 

「えぇ!?」

 

テーブルの上から土下座するように頼み込むカズマ君と可愛いと言われたからか来てくださいと言われたからか顔を真っ赤にしてるゆんゆん。それにしてもゆんゆんも変わったなぁと思える瞬間でもある。以前なら私なんかがお邪魔して皆さんの仲がいい場の空気を壊したりしたら悪いし…とかもじもじ言ってそうだし。それにしても何故そこまで住居人が欲しいのだろう?

 

「住居人というか…まともで優秀な仲間が欲しい…」

 

「おいコラ、それならとっくにカズマの目の前にいるのですが?何か不満があるなら聞こうじゃないか!」

 

「……とりあえずは爆裂魔法以外の攻撃スキルとってくれ?」

 

「無理ですね、私は…爆裂魔法しか愛せないっ!」

 

「……そーいうとこだぞ?」

 

答えが分かりきってるのか終始冷めた対応するカズマ君に私は苦笑した。そして考える。確かにこれは非常にありがたい話でもある。2日間お世話になってあの屋敷は居心地が良かったし、お風呂は広いし、ゆんゆんと2人でいるよりずっと賑やかだ。王都に行かなきゃ行けない場合はゆんゆんのテレポートがある故に私とゆんゆんは今や拠点はどこでも問題はない。…だけどカズマ君のパーティメンバーという訳ではないので家賃くらいは支払おう。 それでどうだろう?

 

「いや家賃なんか要らないんだけどな、アリスは命の恩人に等しいし俺だってそれくらい考えてるんだぞ?」

 

「とかなんとか色々言ってちゃっかりハーレム要員増やしてんじゃねーぞ!滅びろ!!」

 

「そうだぞふざけんな!!」

 

「あんたアリスとゆんゆんに何かしたら今日拾った命落とすことになるからね?」

 

ふいにカズマ君の背後から頭をグリグリしだしたのはダスト、そしてキースである。そして私とゆんゆんの後ろにいたのにいつの間にかカズマ君の首根っこ掴んでるリーンさん怖いです。

 

「馬鹿言うなよ!?なんなら俺のパーティに聞いてみたらいいだろ?そんなことをした事はない!」

 

リーンやダストの拘束を振りほどき強気な姿勢でそう言い放つカズマ君だったけど…、肝心のパーティメンバーの視線はめちゃくちゃ冷たかった。

 

 

「…私この前寝込みを襲われそうになりましたけど」

 

「…私は風呂で鉢合わせて背中を流せと強要されたが」

 

 

.……

 

やはり考え直した方がいいのだろうかと割と真面目に頭を抱えた。当然のごとくカズマ君は男性冒険者から袋叩きにあい、ゆんゆん含む女性冒険者からは最低、と軽蔑の眼差しを送られることになるのであった。

 

 

 

……

 

 

 

 

色々あったものの、ゆんゆんも前向きだったので私はカズマ君の提案を受けることにした。テレポート登録はカズマ君の屋敷の庭に設定しておき、部屋はそれぞれ元々空き部屋を使っていたのをそのまま使っていいことになった。

 

宴会も大人しくなったところで私達6人は家に帰り、カズマ君とアクア様は飲みすぎで即部屋にはいり就寝、めぐみんとゆんゆんも夜が遅いのでお風呂にはいって寝るとのこと。一方私はダクネスに話があると呼び出され、居間として使っている暖炉や赤いソファーがある部屋に来ていた。

 

「アリスには驚かされてばかりだな、まさかお前からシンフォニア卿の名がでるとは思わなかったぞ」

 

ダクネスは気分良さそうに赤ワインを口に運ぶ。見た目からしてもダクネスは酒場でシュワシュワを飲むよりとこちらの方がかなり似合っていた。…性癖云々はもはや何も言うまい。

シンフォニア卿の名前を出したことは結果論でしかないし嘘も言ってない。あの時アルダープはコロナタイトの件を何処で聞いたか聞いてきたので正直に答えたに過ぎない。もっともそれでベルが鳴らないことでアルダープからして見れば貴族間である私にはクレアさんの後ろ盾があるというデマを信じた形になるのを狙ってなかったと言えばベルは鳴る(嘘になる)だろう。

 

「とにかくクレア様と交流があるのなら私の事も話しておかないとな、これはカズマにしか話してないんだが…」

 

ダクネスは身に付けていた金細工のネックレスを外すと、手の上に置きその装飾を私に向けて差し出した。

 

「我が真名はダスティネス・フォード・ララティーナ。この国の懐刀と言われている家系の娘だ」

 

…正直に言えばダクネスが何を言っているのかわからなかった。ダスティネス家のことならクレアさんと知り合った後に軽く貴族について調べたので知ってはいた。以前アイリスがララティーナもベルディア討伐で活躍したのですねと言ってたことからもはや嘘と言う事はないだろう。

別にそれはいい。初めて見た時のダクネスがそう名乗ったらやっぱりかぁと納得すること請け合いだ。

 

……だけど完全に性癖を知った今となってそれを受け入れるかと聞かれると…うーんと唸ってしまうのは仕方ない。

 

「だから何故お前は途端にそんな目で見るんだ!?今はそんな場面ではないだろう!?…いややめろとは言っていない、むしろ続けてくれ」

 

私は途端に目を逸らした。なんでそんな名門の貴族の娘さんがこんな事になってしまったのだろうと思うのは誰に聞いても許されるはずだ。とりあえず近付かないでくださいと冷めた対応をしてしまうのも許されるはずである。

 

「あふん…その冷たい対応、ゴミを見るような目…カズマほどではないがアリスもなかなかやるな!!」

 

……それはひょっとして褒めているつもりなのだろうか、全く嬉しくない。私はそのまま寝ますと言って、部屋を後にした。此処に住む弊害としてカズマ君は意識してたけどここにある意味それ以上にやばいのがいてやっぱりやめようか割と本気で悩んだ瞬間だったりする。

 

 

 

 

 

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翌日、カズマ君の屋敷に住むことが決まった以上は王都の宿を取り続けるだけお金の無駄なので善は急げと私とゆんゆんはテレポートで王都の宿に帰って荷物を纏めて宿を引き払い、カズマ君の屋敷に戻りお互いの部屋で荷物の整理をしていた。暇だから、とアクア様とめぐみんが手伝ってくれている。今はアクア様がゆんゆんの部屋にいて私の部屋にはめぐみんがいた。なんとなく意外に感じた。

 

「何が意外なのです?別にゆんゆんなら何時でもいじれるからいいのですよ、それより今はアリスです」

 

こちらが荷物を整理しているのにめぐみんは私の荷物をガサゴソと漁っていた。一体何を探しているのだろうかと見れば、めぐみんの手には不格好で黄色い結晶体が握られていた。

 

「…見たことがないですね?なんですかこの魔晶石のようななにかは?」

 

私は本棚の整理をしながらそれの名前を言った。何気に本も地味に貯まってきていた、主にこの世界の事柄の勉強用に集めたのだけど理解してしまうとゴミでしかない。扱いに困ったものである。

 

「は?…コロナタイト!?なんでそんな危険なものをこんな無造作に置いているのですか!?馬鹿なんですか?馬鹿なんですね?馬鹿なんですよね??」

 

唐突に馬鹿を三回も言われてしまった。確かに危険なものではあるけど火種を加えない限りはただの魔晶石でしかないし問題はない…というとフラグにしか聞こえないけど何もしない限り危険がないのは事実である。デストロイヤーのコロナタイトはあくまで長期間稼働してたのが不意に止まった為の暴走であーなっただけで本来は中々暴走などしない。その辺はリサーチ済である。

 

「そ、そうですか、ならいいのですが」

 

まぁこれが原因でカズマ君は濡れ衣を着せられることになったのでめぐみんとしてはあまりいい思い出がないのは確かだろう。

そこで思い出した。このコロナタイトをちゃんと調べる為にウィズさんに見てもらおうと思っていたのだ。

 

「でしたら今から行きますか?片付けもほとんど終わったでしょう、暇ですから付き合いますよ」

 

片付けもほとんど終わったというか、めぐみんはほぼ私の荷物の物色とかしかしてない気がするのだけど。この子絶対片付けとか掃除始めてすぐ昔の漫画とか見つけたら読んじゃうタイプだ。

 

私はため息混じりに了承すると、ゆんゆんを誘いに部屋を覗くが見る限りまだ時間がかかりそうだし案の定アクア様もめぐみんのようにゆんゆんの荷物を物色してるしお手伝いとは何だったのかと遠い目をしたのは言うまでもなかった。

 

 





調子に乗って1日2回投稿してたらストック切れました。次回更新遅れるかもですm(*_ _)m
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