内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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episode 46 ウィズ魔法店の店主

 

「いらっしゃいませ!…あぁ!アリスさんお久しぶりですっ、裁判の弁護、凄くかっこよかったですよ!」

 

ウィズ魔法店の扉を開きカウベルが鳴るなり聞こえた声の主は茶髪のロングヘア、紺色の厚手のローブを来た店主ウィズさんだった。どうやら裁判は見に来ていたらしい、それを聞くなり私は照れくさくなり苦笑気味になりながら愛想笑いを浮かべた。

 

「お邪魔しますよウィズ。それに裁判の弁護でしたら私もしっかりしていたのですが」

 

「あ、あぁ、めぐみんさんもいらっしゃいませっ、はい、しっかり見てましたよ、お二人共元はと言えば私のせいで本当にごめんなさい…」

 

正直めぐみんは爆裂魔法云々で完全に黙殺されていたのだけど一応弁護はしていたのでウィズさんとしてはそれを指摘するのは心苦しかったのだろう。完全に困った笑いが表情にでていた。

そういえばウィズさんの友人は今日はいないのだろうか?正直あまり会いたくはないけど裁判の勝利は彼の助言によるものが大きい。今日会えたら一応お礼くらいは言っておこうと思ったのだけど。

 

「私の友人…?もしかしてバニルさんにお会いしたんですか?昨日までは確かに留守を任せてましたけど…今はいないですね。約束でもされていたんですか?」

 

いないならいないで全然構わなかった私は気にしない様子で首を横に振る。約束などしていないししたくもない。会えないならそれでいいのである。そんな様子を見たウィズさんは察したのかただ苦笑していた。

 

「あー…そういう事ですか。バニルさんは人間に危害は加えないので…あ、バニルさんに会ったということは…その…」

 

ウィズさんは言いづらそうにモジモジしている。バニル自体は討伐報酬もでている賞金首だ。魔王軍幹部ということも世間一般的に知られている。つまりそのバニルと友人ということは、そういう事になる。

 

「あ…やっぱり私が魔王軍の幹部でリッチーであることは知られてしまいましたか…その、アリスさんなら大丈夫と思いますが、お願いしますからどうか御内密にしてくれたら…」

 

……別に誰にも言うつもりはないのだけど私は新たな事実を知ってしまった。確かに魔王軍の幹部と確定づけてはいたがリッチー…アンデッドの王とまでは知らなかったのだから衝撃を受けたのは当然でもある。

とはいえ考えたら魔王軍の幹部なのだからそれくらいの大物でないと務まらないだろう。それに今更何かしらやばい事があるならカズマ君達がそのまま親密にしている訳がない。

 

「…ありがとうございます、改めて言いますが私なんて、なんちゃって幹部ですから、ただ魔王城の結界の管理を任されているだけですから」

 

人間に危害を加えてはいないならこちらとしても気にする理由はない。…と言いたいけど気になることもある。ウィズさんはもし私達がその魔王城の結界の管理を放棄してほしいと言えば応じてくれるのだろうか?でなければ魔王を倒すことになる際にウィズさんを敵に回すことになる。

 

「…結界自体は、8人の幹部が残り2、3人になれば…デストロイヤーの結界すら破れたアクア様の力で可能とは思いますけど…」

 

…それはつまりなんちゃって幹部であろうとあくまで魔王軍幹部としての最低限の義務は果たすという風に捉えてもいいのだろうか?例えば私達はベルディアを討伐したがウィズさんからしてみれば仲間を殺されたわけだけどそれについてはどうなのか?そもそもウィズさんはどちらの味方なのだろうか?私としてはこれだけをどうしても確認したかった。

 

「その辺は私達のパーティでも既に言及してますから大丈夫ですよ」

 

私が気が付けば真に迫ったような表情になっていたからか、めぐみんは心配そうにこちらを見ていた。…とはいえこちらの気持ちも分かってもらいたい。仲の良かった常連のお店の店主さんが魔王軍の幹部だなんて言われたらそれはショックでしかない。例えカズマ君達が問題ないとしていても簡単に割り切ることはできない。

 

「ごめんなさいアリスさん…1つずつ説明しますね。まず私はリッチーになった時に魔王様から結界の管理だけでもいいからしてくれと頼まれたので、本当にそれ以外はやってませんし一般的に私には討伐報酬はでていません」

 

ウィズさんは私の聞き方に怯えるように淡々と話していた。なんだか罪悪感すら湧いてくるけどこればかりは私としても本人の口から直接聞きたかった。決してカズマ君のパーティでは楽観視しそうだから心配だなんて思っていない、多分、きっと。

 

「ベルディアさんについては知り合い程度でして…仲がいいというわけではなかったです、友人と呼べる方はバニルさんだけでしたね」

 

「そこまでは私もカズマ達と聞いていますね」

 

「…付け加えるのなら…例えば後1人魔王軍の幹部を倒せば、魔王城の結界を破壊できる、となった時には…私は結界の管理を放棄しても構いません。……出来たら放棄して即魔王城に乗り込むとかそんな流れにして欲しいですけど…」

 

ウィズさんの表情は真剣なものだった。そしてならば何故今やらないか?とは聞かなかった。理由が理解出来たからだ。

仮に今結界の管理を放棄したとしたら魔王軍はどう思うだろうか?それは単純に魔王軍に対する裏切り行為でしかない。討伐されたとかならともかく、そうしてしまえば報復に来る可能性もある。そうなればこの駆け出しだらけのアクセルではひとたまりもない。ベルディアの時とは違い、元魔王軍幹部への報復となれば他の魔王軍の幹部が2、3人とかで攻められてもおかしくはない。それこそ今まで以上の脅威となる。ウィズさんはそれを恐れているのだろう。

 

私はそれを聞くなり謝罪し、静かに頭を下げた。

 

「あ、謝らないでください!元はと言えば、そうなってしまった私が悪いんですから…それに皆さんには私の事を庇うことで余計な気苦労をかけてしまいましたし…」

 

「やれやれ、お互い謝っているならそれでいいじゃないですか、この話はこれくらいにしておきましょう?」

 

お互いに謝っていたらめぐみんに止められ、私とウィズさんはほぼ同時に苦笑しか出来なかった。確かにこのままでは話が進まない。

話題を変えるためにもと、私は懐に入れて置いたコロナタイトの欠片をウィズさんに見せた。

 

「…まさかこれって…コロナタイトですか!?欠けているとはいえこの大きさなら軽く億はいきますよ!?」

 

「っ!?」

 

私より先にめぐみんが声にならない叫びを発していた。元より価値については知っていたしクレアさんから聞いた時に既にめぐみん以上に驚いている。だからこそアルダープを追い込めたのだから。私はこれの使用用途についてウィズさんに詳しく聞きたかったのだ。

 

「…コロナタイト自体が伝説の超レア鉱石と呼ばれているんです、今軽く億は行くと言いましたがちゃんとした価格はわかってないんですよ、なぜなら今言ったように伝説の超レアですからまず市場に流通していません。ですからこれの使用用途と言いますと…デストロイヤーを動かしていた時のようにエネルギーを供給する以外となると…調べてみないとなんとも…」

 

つまりウィズさんならそれが調べられるのだろうか?それなら是非ともお願いしたいところだけど。勿論お金は払うしウィズさんならフレアタイトを買った私がこのコロナタイトをどの様に流用したいか理解しているはず。

 

「はい、勿論分かってますよ。アリスさんの杖に使えそうなら、こちらでも杖にはめ込めるように加工も施しますけど…?」

 

それはいたせり尽くせりすぎるものだった。断る理由は見当たらない。拠点もカズマ君の屋敷にしたのでいつでも取りに来ることは可能だ。私はウィズさんにコロナタイトを手渡すと、そのままウィズ魔法店から立ち去ることにした。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

帰り道。お昼ご飯がまだだったので屋敷に戻り皆を誘ってご飯にしようかなとか考えていたらめぐみんが私の背中辺りに手を伸ばした。

 

「アリス、貴方の背中と杖の間に何か挟まってましたよ?これは手紙でしょうか?」

 

めぐみんが手に持つ手紙が入っているように見える封筒。それには封をするように1枚のシールが貼られていた。…この世界の技術でどうやってこんなシールを作ったのだろう?と見てみると、そのシールには見覚えがあった。

 

それは白と黒の仮面の図柄をしていた。忘れるわけもない、この仮面はバニルと同じものなのだから。

 

「バニルとは先程話していたウィズの友人でしたね、アリスが世話になったらしいですが…読んで見てはどうです?」

 

私の背中にいつの間に入れたのか知らないけど、おそらく私宛なのだろう。私は仮面のシールを破らないようにそっと剥がし、中にある手紙に目を通した。

 

 

 

拝啓・蒼の賢者と冒険者サトウカズマのパーティよ

 

今回、吾輩はダンジョンを入手することに成功した。

そこで魔王軍幹部ベルディアや機動要塞デストロイヤーを倒した冒険者である汝らに吾輩は挑戦状を送り付けることにした。

場所はアクセルで有名な初心者向けのダンジョン、キールのダンジョンだ。

こちらが用意した様々なトラップやモンスターを退け、見事吾輩を倒してみせるがいい!

吾輩はいつまでもダンジョンの最奥で待っておいてやろう

なお、吾輩を倒した暁には、吾輩の最高のお宝を持っていくがいい!

 

ちなみに来る気がないのであれば汝ら全員の恥辱を得る為にあらゆる噂をアクセルの街に流すのでそのつもりでな。

 

 

地獄の公爵にして魔王軍幹部のバニルより

 

 

 

…私はそれを見て血の気が引くのを感じた。

 

「…なんですかこれ…?半ば強制イベントになってませんか?というよりなんでダンジョンなんですか!ダンジョンでは私の爆裂魔法が使えないではないですか!?」

 

違うそうじゃない、ツッコミどころはそこじゃない。と言いたいのだけど私は呆然としていた。

ウィズさんと同じく無害な存在であるはずのバニルからの挑戦状。これの意図が、私にはさっぱり分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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