投稿は明日だと言ったな、あれは嘘だ。
基本4000文字目標にしてて今書いたら6500越えてました、感想いっぱいきたのでやる気でちゃった♪←
―王都の冒険者ギルド―
無事討伐を果たした私達は翌日の朝、念の為に他にいないか散策し、森の中まで探したが他にティラノ・レックスと思われる魔物は見当たらなかった。
ただあのティラノ・レックスはどう考えてもおかしい、それが私達3人の出した結論だった。
まず本物を見たことはないが、予め調べたティラノ・レックスの皮膚は赤色、更に大きさは5m前後で少なくとも10m越えなどは確認されていない。
更に異常な自然治癒能力、ティラノ・レックスにそんな能力はない。だからこそ今回の件は異常と感じ、私達はその件を冒険者ギルドに報告することになった。
冒険者ギルドのギルド長の部屋。
窓口でその件を話したら慌てた様子で職員が奥に引っ込み、しばらくして否応なしにこの部屋まで案内された。
私としてはベルディア討伐の際に来たので2回目となるがゆんゆんはもちろん、ミツルギさんもこの部屋に来るのは初めてのようだ。
「まさか魔剣の勇者と蒼の賢者がパーティを組んでいるとはな…こちらとしては頼もしい限りだが」
相変わらずお髭が立派な大柄なギルド長はそれが本心なのかとても感慨深い様子で私達を見つめている。
…というかゆんゆんも入れてあげて!が正直なところ。私と常に一緒に行動しているのに何故かゆんゆんには異名がつかない、何故なのか。
「さて、まずは討伐履歴を見せてもらえるか?」
「ひ、ひゃい!?」
ふと見ればゆんゆんはガチガチに緊張していた。やれやれと私は目立たない程度にそっと背中を摩ってあげた。それで落ち着いたのかはわからないけどゆんゆんはテーブルの上に冒険者カードを提出し、ギルド長はそれを受け取る。
カードにはティラノ・レックス(変異種)と記されている。
「やはりお前達もか…」
「…どういうことですか?」
お前達も、と言った。それはまさか似たような事例が他にもあったということなのだろうか?ミツルギさんは固唾を飲んで言葉を待っている。
「今日までに似たようなことが4件発生している、いずれも変異種でありもはやこれは異常事態だ…更に言えば討伐報告をしてきたのはお前達だけだ」
「なっ!?…では他の3件は…」
ミツルギさんの問いにギルド長は無言で首を横に振る。…つまり…討伐できなかった、そしてギルド長の深刻な顔からして…おそらく亡くなってしまったのだろう。私は自然に拳を作っていたし、ゆんゆんは悲愴の表情でそれを隠すように両手で顔を覆い俯いてしまった。ミツルギさんも悔しそうにそのまま歯噛みしている。
冒険者とは常に死と隣り合わせの職業だ。このようなことになるのは珍しいことではない。ふと昨日ギルドで見かけた冒険者は、明日にはいなくなっている可能性すらある。それでも死という概念は元日本人の私やミツルギさん、そしてまだ歳若くそのような経験が浅いゆんゆんには辛い話でしかない。
「その3件の依頼…全て僕達で受けます!やらせてください!」
相談もなくギルド長に告げたミツルギさんだけど気持ちは私やゆんゆんも同じだった。ミツルギさんの言葉を聞いたゆんゆんはそのまま決意を秘めた顔をあげていたし私も同じだ。
「それは頼もしい限りなのだが…3件ともにいたはずのモンスターが全ていなくなっているんだ、無論これは他に討伐されたわけではない、だからギルドの調査員はこの3件を調べてひとつの結論を出した、君達の情報を照らし合わせても間違いないだろう」
「どういうことですか?」
ギルド長の表情は重く険しいままだ。私達は生唾を飲み込むように答えを待っていた。そして驚きの答えを聞いたのだから。
「今回の件、全ては合成獣によるものだ、そして合成獣といえば魔王軍にそれを研究している者がいる」
「…魔王軍…!」
「……そう、魔王軍の幹部にして強化モンスター開発局局長、グロウキメラのシルビアだ。実際シルビアの目撃情報もある、おそらく間違いないだろう、こちらの見解としては新たに作った合成獣のテストのような形で野に放っていたのかもしれんな、それなら既に回収されたと見れば現状の説明はつく」
魔王軍の幹部、グロウキメラのシルビア。私の調べた知識だとベルディアと並ぶ好戦的な側に当たる、少なくともバニルやウィズさん側ではない。というか今思えば本来この2人が異常な立ち位置にいるだけで本来魔王軍幹部とはそういうものだ。
「我々としては今後より警戒する所存ではある、君達も何か情報がはいれば教えて欲しい」
「…わかりました」
ミツルギさんは力なく座ったまま俯いた。私としても亡くなった冒険者のことを考えて憤りを感じるものの、今の状態ではどうしようもできない。精々がまた変異種モンスターが現れた時に討伐することくらいだろう。
「話はこれで終わりだ、今回の討伐ご苦労だったな。追加報酬を加えておくから窓口で受け取ってくれ」
……
それから一週間。
固定パーティとなった私達はほぼ毎日のようにクエストを受けるようになった。新たな犠牲がでないように変異種が発生していそうな依頼はギルドから率先して回してもらえるようにしてまでやってきたものの…魔王軍幹部のシルビアはおろか、変異種モンスターすらも出会えないままだった。
そしてこの件で正義感の塊であるミツルギさんはかなり心身共に堪えていた。正直に言えば私とゆんゆんも連日のクエストでくたくたでもある。だけど想いは同じだったから、私もゆんゆんもそれについて何か言う事はなかった。
それとは別に例の襲撃の件も気を張っていたが今のところそれもないままだった。私個人としてはこれも相まってくたくたを通り越してぐだぐだである。
そんなある日の朝。
―アクセルのカズマ君の屋敷―
いつものように王都へクエストを受ける為に私とゆんゆんは朝食を食べていた。今日で8日連続…正直ここまでハードスケジュールでクエストを受けたことはなかったので疲れが顔に出ていたのかもしれない。だからこそ他の住人から心配されてしまう。
「…アリス、ゆんゆん、まさか今日も王都に行くつもりですか?少しは休んではどうです?」
「あぁ、話は聞いたがいくらなんでも無理をしすぎだ、いざと言う時に動けなくなったら本末転倒だぞ?」
めぐみんとダクネスだった。テーブルの向かい側に座った2人は本当に心配そうにこちらを見つめていた。これには私もゆんゆんも食べる手を止めて自然と俯いてしまう。
「…正直私もそんな気はしてたんですけどね…」
「全く貴女達のやる気を少しはカズマにも分けてもらいたいですよ、カズマはバニルとデストロイヤーの報酬がはいって完全に引きニート状態ですからね、お陰でこちらはゆんゆんとレベル差が広がるばかりですよ」
呆れ顔で言うめぐみんに私とゆんゆんは苦笑しかできないがこちらとしてはカズマ君のやる気の無さを少しはミツルギさんに分けてもらいたいまであったりする。特に例の件があってクエスト意欲が半端ない。私達が何も言わないせいかミツルギさんは遠慮なしに休みなしでクエスト三昧だし、最も私達もそれを今めぐみん達に言われるまで気にしていなかったのもあるけど。
そう思うと疲れがどっと出てきた。ふいにそのまま食べかけの朝食を横目にテーブルに顔を伏せてしまう。
「ゆんゆん、今の体調はどうです?」
「う、うん…私も今言われて気が抜けたから…なんだか凄く疲れて…」
2人揃ってダウンしてしまった。これにはめぐみんもダクネスも呆れるばかりである、恥ずかしい。
「全く…、姉妹みたいに仲がいいとは思っていたがそんなところまで似なくてもいいと思うぞ?とにかく今日は休むといい」
「とは言え…ミツルギさんが待っていると思うのでどの道王都には行きますよ…休むにしてもそれは伝えないと…」
心配してくれる気持ちは嬉しいしミツルギさんも言えばわかってくれるだろう。とりあえず朝ごはんを終えたら行くだけ王都に行かないと、なんて思っていたら居間側の扉が開き、家主が顔を出した。
「おっす、おっ?もう朝飯できてるんだな、悪いなゆんゆん、いつも作ってもらって」
「お、おはようございます、い、いえ、家賃も払わず住ませてもらってますからこれくらいは…」
「おはようございます、カズマ君。首の調子はどうですか?」
「おはようアリス、いや…まだ少し違和感が…」
そう言いつつカズマ君は片手で首を抑えている。聞いた話だとクエストの最中木から落下して首を盛大に捻ってしまい、痛みが引かないらしい。アクア様が治療したにも関わらずに違和感が残ったままというのはこちらとしても違和感しかないのだけどどうしたら回復魔法すら効かない状態になるのだろう?
そしてこの話をするとダクネスもめぐみんも気まずそうに顔を逸らしているのもわからない。
「大丈夫ですか?なんならヒールしますけど」
「あぁ、痛いって訳じゃないから大丈夫だ、ありがとな!」
私がそういうなりカズマ君まで気まずそうにしている。うん、謎だ。とはいえこちらの件で頭がいっぱいなのにカズマ君のことを考えている余裕もあまりなかったりするし、自然とため息がでる。
「あ、そうだ、アリスにゆんゆん、良かったら近々俺達温泉旅行に行くつもりなんだけど2人は来ないか?」
「温泉旅行…ですか?」
「あぁ、俺も首の違和感がとれないし…だったらいっそ旅行でもしようかなって」
カズマ君の提案に私は目をパチクリさせていた。思えばこの世界に来てからそのような考えを持ったことは過去に1度もない。そして聞いたからには是非とも行きたい。隣に座るゆんゆんにちらりと目配せしてみる。
「……お友達と一緒に…温泉旅行……」
ゆんゆんはトリップして完全に自分の世界に入っていた。うん、この反応なら聞くまでもなく行きたいということだろう。
……そこで閃いた。
「ゆんゆん、ぼちぼち待ち合わせ時間が近いです、とりあえず休むにしても王都に行かないと」
「あ、あぁ、うん!」
そこからの私達の食事のペースは圧巻だった。私は閃きにより、ゆんゆんは温泉旅行という素敵ワードで水を得た魚のように元気になり、そして食べ終わるなり屋敷から飛び出したのであった。
……
―王都冒険者ギルド―
早朝ながらギルド内にはそこそこ冒険者がいる。そんな中ミツルギさんは依頼提示板の横の壁に腕を組んでもたれかかり目を閉じていた。
「おはようございます、ミツルギさん」
「……」
返事がない、どうやら眠っているようだ。そんなミツルギさんは寝ているにも関わらずその顔色はあまり良くはない。
私達がこれだけ疲れててミツルギさんが疲れていないはずもなく、まさに気力だけでやってきたのもまた私達と同じなのだろう。…なるほど、この状態は傍から見れば心配しない訳にはいかない。きっと先程のめぐみんやダクネスもこんな気持ちになったのだろうと少しだけ気まずくなった。
「ミツルギさん、起きてください」
とりあえず腕を掴んで揺さぶってみる。ゆんゆんは心配そうに見ているだけだ、いや起こすの手伝ってよ。
「…んっ……はっ!?ね、寝ていたのか僕は!?」
「お、おはようございます…だ、大丈夫ですか?」
ふと気付けばギルドにいる人達のほとんどから視線がこちらに向かっている。まぁこんなところで寝ていたらそうなりますよね、と思わずため息をついてしまう。
「ミツルギさん、とりあえずここからでましょう、お話があります」
「…あ、あぁ、そうだね…すまない…」
気まずそうなミツルギさんを連れて、私達は冒険者ギルドから出て傍にある喫茶店に行くことにした。こうやって冒険者ギルドで気まずくなってここに来るのも何度目だろうか、なんて呆れながらに考えながら。
…
ミツルギさんは朝食も食べていなかったようなので軽食を頼み、私とゆんゆんは紅茶を注文する。しばし食事を摂ってもらい、落ち着いたところでミツルギさんがその口を開けた。
「それで、話とはなんだったのかな?」
「はい、私達のパーティでリーダーって決まってなかったので、この際決めておこうかと思いまして」
私の言葉にミツルギさんは軽く考える素振りを見せる。個人的にはミツルギさんで文句はないのだけど、ここ1週間一緒にクエストを受けてそれでは駄目だと私なりに判断した。はっきり言ってしまうとミツルギさんはリーダー向きではない、少なくともテイラーさんという優秀なリーダーを見てきた私としてはこれだけは覆せない。
パーティリーダーに必要なのは冷静沈着性が1番だと思っている。ミツルギさんにそれがないとは言わないが忘れてはいけない、彼には思い込みの激しさ故の残念性があることを。リーダーがそれ故の暴走をしてしまうと…というかこの一週間暴走していたようなものだが、実際パーティは休み無しの連勤で疲労困憊だ。リーダーはブレーキ役を兼ねないといけない。
そう考えたらダストやキースをなんだかんだでまとめあげるテイラーさんや、曲者三人娘をまとめるカズマ君は尊敬に値するとまで言えてしまう。
「…それは構わないけど…どうやって決めるんだい?」
「無論考えています、投票制にしましょう」
「…投票制?3人しかいないのに…?」
「やり方は簡単です、自分以外の誰かを投票します、これは引き分けの可能性がありますからそうなったら別の方法を提出しますね」
そういうなり私達3人は用意した紙に自分以外のこの人にリーダーになってほしいと思う人の名前を書く。書き始めて見れば意外にも誰もが悩む様子もなくすぐに書き終わる。そして1人ずつ開票する。
「ではまずは私から…ゆんゆんです」
裏返していた紙をひっくり返し、ゆんゆんの名前を書いた紙をテーブル中央に寄せた。
「じゃ、じゃあ…私は…アリスで…」
ゆんゆんはそっと紙を開いて私の名前を書いたそれを私と同じように中央へと寄せる。そしてそれを見たミツルギさんの口元は軽く笑っていた。
「そういうことか…なら、リーダーは君になるな」
どこか諦めた様子でミツルギさんは紙を開く、そこには私の名前がかかれていた。
……ちなみにこれは完全に茶番である。何故からこれを始めた時点で私かゆんゆんかどちらかがリーダーになることは確定しているのだから。
まず自分には投票できない、このルールがあり、更に私とゆんゆんはミツルギさんの名前を書かないと打ち合わせしていたら。
その時点で絶対にミツルギさんの名前がでることはない。ミツルギさんが自分の名前を書けないのだから。
だから必然的にミツルギさんの出した答えがそのままリーダーになる。単純なことなので流石にミツルギさんは勘づいたようだけど笑っていることからして特に文句はないらしい。
それなら私はリーダーとして思うがままにさせてもらうだけだ。
「では不肖ながら私がリーダーとさせて頂きますね♪まず本日のクエストですが皆様疲労困憊の様子なのでお休みとします!」
私が無い胸を張り進行するとゆんゆんは嬉しそうにしていて、ミツルギさんも苦笑気味ながら悪くは捉えていないようだ。よし、それならどんどん提案しようじゃないか!
「そしてっ、まだ細かい日時は決まってませんが近々パーティ結成のお祝いを兼ねて皆で温泉旅行に行きたいと思いますので予定を空けておいてください♪」
「お、温泉旅行!?」
流石にその発想は全くなかったのだろうか、ミツルギさんは驚いた様子で目を瞬かせていた。
「私もありませんがミツルギさんは過去旅行とかしたことありますか?」
「い、いや、それはないがいくらなんでもそれは…」
「いいですかミツルギさん、これは遊びではありません、日頃の疲れを癒す為のあくまでクエストの一環なのです、拒否権はありません、リーダー命令です!」
物は言いようである。かなり強引な気はするけど。
言わせないけどどうせ遊んでる間に魔王軍が攻めてきたらとかそんなことを言うつもりなのだろう。いや言わせないけど。
なおそこまで言うとミツルギさんはまるで諦めたように肩の力を抜いて脱力感を顕にしていた。
「…はぁ…わかったよ…リーダー命令なら、従わないとね…」
私は見逃しませんでしたよ?
そんな風に言いながらも、ミツルギさんの口元は確かに緩んでいたのですから。まぁこんなこと言ってますが私個人は遊ぶ気満々なのですけどね!
温泉旅行に期待を膨らませながら、今日は帰ってそれぞれ休むことにしましたとさ。