内気な少女がこのすば世界に行ったようです   作:心紅 凛莉

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投稿時間アンケート協力ありがとうございました!圧倒的12時だったのでこのまま行きますね。




episode 63 突撃お宅訪問

 

 

―カズマ君の屋敷―

 

その日の夕刻。色々あったもののクエストをなんとか終わらせて、私達はアクセルにあるカズマ君の屋敷前にゆんゆんのテレポートで帰宅したところだった。

 

「…驚いたな…この大きな屋敷があの佐藤和真の所有物とは…」

 

今回はゲストがいらっしゃってます、もちろんミツルギさんです。

私としては旅行へ行く当日に会って謝罪すればいいと思っていたのだけどミツルギさんは早い内に会わせて欲しいと言ってきた。

確かに私は許してくれると確信しているものの、実際にミツルギさん達が揉めた現場を見ていないのでこればかりは当人達によるもの、私とゆんゆんは完全に蚊帳の外だ。

手ぶらで行くのも失礼だとミツルギさんはわざわざ王都で高級酒を買ってその手に持っている。お酒大好きアクア様はこれでまず許してくれるだろう。

 

「おや?帰っていたのですね、アリスにゆんゆん…と…」

 

門を潜って見えたのはめぐみんだった、普通に買い物をして来たのかいつものようなとんがり帽子や杖はなく、ラフな軽装にローブを羽織った一見すれば村娘のようなスタイルではあるが、赤と黒を基調としているのは彼女なりのこだわりなのかもしれない。なお手には食材が入っているらしき籠が持たれていた。

 

「…久しぶりだね、お邪魔しているよ」

 

「…貴方は確か…マツラギさんでしたか」

 

「ミツルギだ!」

 

個人的には何故間違えるのかわからない。最初はネタでやってるかと思いきやアクア様は勿論、カズマ君もダクネスですらもミツルギさんの名前を覚えていないのだから。

 

「めぐみん、みっつのつるぎと覚えたら覚えやすいかもですよ」

 

「ほう…なるほど、みっつるぎさんですね」

 

「いや…うん、もうそれでいい…」

 

もはや諦めた様子のミツルギさんに軽く同情すると同時に適当な覚え方を教えたちょっぴりの罪悪感を持った私は多分楽しんでたりもするかもしれない。ゆんゆんはただ苦笑してたけど。

 

「めぐみん、皆いますか?ちょっとしたお話があるのですが」

 

「多分いると思いますよ?少なくとも私が買い物に行く時には全員いましたので」

 

そういうなりめぐみんはてくてくと歩き屋敷の扉を開け中に入っていく。今日の夕飯の当番はめぐみんなので買い物してたのだろうと結論付けると、私とゆんゆんも後に続く。

 

「入っていいのかい?」

 

「勿論ですよ、私とゆんゆんのお客様なのですから」

 

ミツルギさんの強ばった表情での疑問に、私は笑顔で応えた。何より入らないなら何しに来たんだという話になる。

ミツルギさんは、少し安堵したような顔つきになると、そのまま私達に着いていくように歩き出した。

 

 

 

……

 

 

 

 

「おかえり、アリス、ゆんゆん……と…カツラギさんだったか?なんであんたが?」

 

「ミツルギだ!!…コホン…お邪魔するよ、佐藤和真」

 

居間にたどり着くなりソファで寛ぐカズマ君が出迎えてくれたけど案の定ミツルギさんを視認するなり怪訝な表情を浮き彫りにしていた。そしてやっぱり名前を間違える始末。

 

「カズマ、彼の覚え方はみっつのつるぎと覚えたらいいらしいですよ」

 

「なるほど、ミッツ☆ツルギさんか」

 

「だからミツルギだと言っているだろう!?全く君という奴は…」

 

「騒がしいわねー、なんなのよ一体?」

 

私が妙な覚え方を教えたことでの罪悪感を再び楽しんで…もとい噛み締めていると階段を降りて居間に入ったのはアクア様。寝ぼけ眼を擦っている様子からして今まで寝ていたのだろうか?その証拠に水色のパジャマ姿だった。

 

「アクア様!?お久しぶりです、今度こそ僕のことを覚えて…」

 

「うーん?……あぁ、確か小林さんだったかしら?」

 

「ミツルギです!!」

 

もうやめて、ミツルギさんのライフはとっくにゼロよ!と言いたくなることこの上ないまであったりするし小林さんってもはや1文字も合っていない。

というより名前ネタでどこまで引っ張るつもりなのだろうか。そんなことまで考えていたら居間に新たな人物が入ってきた。

 

「どうしたんだ?今日はいつにも増して賑やかだが…?」

 

「あ、ダクネス、ただいまですよ」

 

「あぁ、おかえりアリス、ゆんゆんも…それとそこの者は……確かミツルギ殿だったか?」

 

「ミツルギだ!!」

 

「……いやそう呼んだだろ?」

 

「はっ!?…あ、はい…」

 

もはやミツルギさんは疲労困憊だった。これなら帰り際にダンジョンでも潜ってモンスター狩りしてた方が彼にとっては絶対に楽なことなのだろうと私は確信めいた何かを感じた。…ともあれこれで全員が揃った。カズマ君に目を向けると何しに来たんだこいつ?という思いをその顔で表現していた。

 

「ミツルギさん、全員揃いましたし、要件を伝えてはいかがですか?」

 

「…うん、そうだね…佐藤和真、ならびにそのパーティメンバーの方々」

 

気を取り直すように姿勢を正したミツルギさんは、カズマ君に目を向けて、アクア様、めぐみん、ダクネスへと一瞥すると、手に持っていた荷物を床に置き、深々と頭を下げた。

 

「遅くなったが…以前は誤解からの数々の非道な行い、本当にすまなかった」

 

それを受けた面々は揃って目を丸くし、カズマ君は周囲の仲間達を見渡していた。…次第にカズマ君はやれやれといった様子で息を吐く。それを見た私は軽く安堵していた、横目でゆんゆんを見れば、私と同じようにホッとした仕草を見せている。

 

「何の話かと思えばいつのことを言ってるんだよ、そんなこととっくに忘れてたぞ」

 

「ふっ、そう言うなカズマ、こうやって律儀に頭を下げてくれているんだ」

 

呆れたようにカズマ君が言えば、微笑みながらもダクネスがそう返す。室内の雰囲気は和やかなものだった。予想はしていたけど私もゆんゆんもこの様子を微笑みながら見ている。

 

「それにその件はあの時勝負して決着がついてるだろ?だからあんたが気にする事は何一つねーよ」

 

「佐藤和真…すまない…ありがとう…」

 

「だからもういいって、アクアもいいだろ?」

 

カズマ君はソファの後ろに立っているアクア様に目を向けるがアクア様は心底どうでも良さげで、見ればミツルギさんの足元をずっと気にしていた。

 

「ねぇねぇ、高橋さん、貴方のその荷物って、もしかしてお酒?」

 

「ミツルギです……、はい、手ぶらで来るのも悪いと思い…」

 

そんなミツルギさんの言葉を全く気にしないでいつの間にかアクア様はミツルギさんの足元にある荷物の封を開けた。

 

「ちょ、やだこれ王都の中でも飛び切り高いやつじゃない!?」

 

お土産に満足したのか、完全にミツルギさんを無視してアクア様はとても嬉しそうに酒瓶をまるで我が子を抱くように胸に抱いて居間から立ち去って行った。

 

「……なんかすみません、うちのアクアさんが」

 

誰もが唖然とする中、静寂をごまかすようにカズマ君が言った。あえてさん付けにしたのはミツルギさんがアクア様のことを敬愛しているのを知っているからだろう、そんな配慮がその台詞から感じられた。なおミツルギさんは完全にその心がノックアウトされていたのは言うまでもない。

 

 

 

……

 

 

 

「と、言う訳でして、今回の旅行にミツルギさんも一緒に行くことになりました」

 

場がようやくまともな空気になったところで私は改めてミツルギさんと固定パーティを組み、それでいて王都での変異種事件からの一緒に温泉旅行行きましょう的な提案までの流れを全員に説明した。

 

「旅行の件は問題ないですが…固定パーティを組んだことは聞いてましたがアリスがパーティリーダーとは驚きましたね、てっきりそこのみっつるぎさんかと」

 

「そうか?私はアリスならリーダーとしてちゃんとやれると思う、昔のアリスなら分からないが、今のアリスは芯が強い」

 

正直芯が強いと言われてもピンと来ないまである私は少し恥ずかしげに首を傾げていた。ダクネスの表情を見る限り本気で言っているようにはみえるのだけど。

 

「私って…そんなに変わりました?」

 

「「変わったな」」「変わりすぎです」「もはや別人かも…」

 

「…えぇ…」

 

ちなみにカズマ君とダクネス、めぐみん、ゆんゆんの順番で次々と言われた。流石に別人は傷つく。それも1番長く一緒にいるゆんゆんから言われるのは辛い。

 

「あ、えっと、変わったと言っても、良い意味でだからね?」

 

「そうだな、言い方が悪かった。アリスのそれは成長しているということだと思うぞ」

 

「……下げて持ち上げるのは反則です…」

 

めちゃくちゃ恥ずかしい。バニルがいたらめちゃくちゃ喜んでそうって思えるくらい今の私は自分の顔の赤さを自覚できている。

そんな中話に入れないミツルギさんは落ち着かない様子で屋敷の中を見回していた。それに気付いたカズマ君は何やら思い出したのか不敵な笑みを浮かべる。

 

「これなら文句は無いだろ?あの時は馬小屋なんかにアクアを泊まらせるなとか言ってた気がするけど」

 

「…その件はもう忘れたんじゃなかったのか?まぁ確かにこれなら文句は…」

 

どこか誇らしげにカズマ君が言えば、ミツルギさんはバツが悪そうにしていた。そんな中カズマ君がとんでもない爆弾を投下してきた。

 

「なんならお前もここに住んだらどうだ?アリス達とパーティ組んでるなら一緒にいた方が効率がいいだろ?」

 

「「「「えぇぇぇ!?!?」」」」

 

その瞬間私を含めた女性陣全員が絶叫をあげた。いや別に嫌ではないし既にカズマ君がいるからもう1人男の人がいても変わらないだろうとかカズマ君は考えているんだろうけどそれとこれとは話が別だ。ミツルギさんも予想外すぎたのか呆気にとられている。

 

「…ありがたい申し出だが丁重にお断りさせてもらうよ、確かに効率はいいだろうけど僕はそこまでデリカシーに欠ける男ではないつもりだ」

 

「えっ、それじゃ俺がデリカシーに欠けまくりみたいじゃ」

 

「カズマにデリカシーなんて言葉はありませんよね?」

 

「あるわけが無いな」

 

「まぁないですね」

 

「む、むしろあるんですか…?」

 

「お前らなぁ…」

 

ピキピキと青筋を浮かべるカズマ君を横目に、めぐみんは持っていたエプロンを装着してキッチンへと向かう。このいじり慣れもどうなのかと思うけど気付けば私も慣れてしまった。…何より私が変わったと言うのならそれは皆の影響が大きいと思うのだけど。

 

「さて、いい加減に夕飯を作りますかね。みっつるぎさんも食べていくのでしょう?ゆんゆんも手伝ってください」

 

「えっ、あ…うん!」

 

いつもなら当番じゃないと渋るゆんゆんだけど今は話が別だった。自然にミツルギさんの分も作るとなったことは、ミツルギさんを受け入れてくれたってことなのだから。それには私も嬉しくなったし、ミツルギさんの表情も幾分か綻んでいた。

 

「ありがとう、ご馳走になるよ」

 

これで悩みのひとつは解消された。後は来たる温泉旅行で心身ともに安らぐだけだ。アルカンレティア行きはアクア様のワガママにより変えられなかったけどそこは仕方ないと割り切り、私はこの世界で初めての旅行に期待を膨らませていた。

 

 






もしかしたら1部の読者様はこのカズマ綺麗すぎね?とか思っているかもしれませんのでカズマの名誉(?)の為に補足しておきます。
カズマの屋敷に住むと基本カズマにとってはサブ戦力扱いです。
更に今回のように断られても心象は大分違うでしょう、何かあれば手伝ってくれるかもしれないという2段構え。


ちなみにアリスやゆんゆんを誘った時にも似たような考えがあり、誘い文句も嘘はついてません。むしろまともな女の子がそばに欲しいという考えは割と切実だったりする。

基本どちらもアリス視点で書いているのでカズマのそういった細かい意図が省かれてる感じですね。

やっぱりカズマさんはカズマさんでした()



……アンケートのゆんゆん多いですね、予想はしてましたが普段アリゆんしてるやんまだ足りないか!?w
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